「夜のご指導は如何?」−4









『コンラッド…俺があんたを好きだって、どうしたら信じてくれる?』

 その一言を絞り出した後の一瞬は、まるで永遠のような長さを感じさせた。
 どくん…ばくんと指先から髪の毛の先までが大きく拍動しているような…足下がぐらぐらと覚束ないような…とても不安な心地だった。

 一週間考え続けた有利にとって、一番恐ろしかったのは《あんたは恋愛対象外なんですよ》と苦笑されることだった。

 そしてそれは、実に確率の高い事に思われたのだった。

 だって相手は魔族生活100年越えの《佳い男》なのだから、これまでの生涯の中で狂おしいほどに惹かれた相手だっているに違いない。勿論、言い寄られることも両の手足指だけではとても足りないほどであったろう。
 そんな青年に対して、こんな儒子(こぞう)が《好き》なんて言ったって、軽くあしらわれるのではないか…いや、既に《頭を冷やせ》とあしらわれている。

 《空気を読め!》と言葉裏に告げられているような気もする。
 それでも…一縷の望みを掛けて告げた言葉に、コンラートは応えてくれた。

「さあ…試練の始まりですよ?」

 《試練がなんぼのもんじゃい!》…そう心を鼓舞させた有利であったが、経験不足による困惑は否めない。
 
「ん…んん……」

 彼の印象からは意外なぐらいに激しいキスは、初めての体験となる有利には些か刺激の強すぎる代物だった。一己の生物であるかのように蠢く舌は、有利の口腔内を貪るようにして乱していく。
 その動きの一つ一つが悦楽をもたらし、未成熟な肉体に対して急速な成長を促せば、堪らず喘ぐ声に甘さが滲んだ。

「ぁ…ふぅん……」

 《ひょえぇっ!》…鼻に掛かったように甘えた声が漏れだすと、咄嗟に羞恥が込みあげて身じろいでしまう。だがコンラートは逃れることを許さず、有利の華奢な顎を捕らえると、蜜のような唾液を啜るようにして舌を絡める。

 濃厚な口吻は、まるで二人の境目をとろかしてしまうようだった。

「は…ふぁ……ん」

 すっかり脳髄が熔けてしまった頃、漸く開放された有利にはもう甘い声を恥じて身じろぐ余裕もなかった。キスだけで腰が抜けかけてしまった有利は、コンラートに促されるまま豪奢な寝台に横たえられる。

「ユーリ…今から、約束をしましょうか?」
「やく…そく?」
「ええ。俺は決してあなたを傷つけたくないし、あなたの想いがやはり勘違いだったと分かった後にも、あなたの名付け親として…大切な友人として傍にありたい」
「か…勘違い、ちが…っ」

 力の入らぬ身体を起こして反論しようとするが、宥めるようにキスで口を塞がれてしまう。唇を巧みに舐めあげる舌に思惑通り言葉を押さえ込むと、コンラートは聞き分けのない子どもを諭すような語調で囁いた。

「ひとつ、標(しるし)を決めましょう。意固地なあなたが、行為の途中でも《止めてくれ》と意思表示できるように…。ボクシングの試合でセコンドがタオルを投げるように、逃げ道を作ってあげます」
「そんなの…」
「自信があるのなら、受けられるでしょう?」
「…うん……」

 こくんと頷いた有利だったが、《少し待っていて》と言い残した後、暫くしてから戻ってきたコンラートに《標》の用意をされると…かなり自分の言葉を後悔した。

『これ、つけんの?』

 きょん…っと有利は小首を傾げた。
 コンラートが用意したのは、不思議な…本来の用途がよく分からない道具だったのだ。



*  *  * 




『逃げ道を作ってあげる』

 さて…それは、誰のための逃げ道なのだろうか?

『あなたをこれまでにないほど《手に入れる》代わりに、絶望的なほど《失う》ことが…俺は何よりも恐ろしい』

 だからコンラートは、有利に《試練》を提示して事前に回避してくれるかどうかを伺ってみた。
 幅広の硬いゴム紐の先に革製のバンドを繋いだその道具は、本来は腕の立つ武人を拘束する為のものだ。膝を曲げさせた状態で両脚にゴム紐を巻き、足首をバンドで固定すると、動こうとすればするほど反発力によって疲労を強いられるのだが、勿論有利に対してそんな形の拘束をするわけではない。

「さあ、ユーリ…昨日のように服を脱いで御覧。ああ…シャツと下着はつけたままで良いから、ズボンは脱いでね」
「う…うん…っ!」

 よく分かっていない様子の有利が寝台の上でひょいひょいと脱ぐと、右の太腿にバンドの一つを回し、痛くない程度の硬さで締めておいた。白い内腿の肌に濃い色彩の革が映え、何とも蠱惑的な映像になるのだが…生唾を飲むコンラートとは対照的に、有利の方は未だにきょとんとしている。

「…?」
「はい、屈んで」
「うん…」

 屈んだ首の後ろにゴム紐を引っかけ、左の太腿にも同様にバンドを繋ぐと、ゆっくりと有利の上体を起こして枕山の上へと倒していく。

「……っ!」

 有利も漸く自分がどういう体勢をとらされているかに気付いたらしい。首に引っかかったゴム紐がどうしても太腿を引っ張ってしまい、コンラートに向かって大きく下肢を開くような形になるのだ。
 白いシャツが微妙に隠している内腿に、じわりと汗が滲むのが感じられた。

 慌てて陰部を隠そうとする手を取って指先にキスを落とし、後ろ手に緩く布地を巻く。

「途中で嫌になったら頭を屈めて、手で引っ張って御覧。そうしたらすぐにゴム紐は外れるから、そんな恥ずかしい格好を強いられることはないよ。手首も同じだよ。俺を拒絶して暴れようとすれば、簡単に解ける」
「嫌になんか…ならないよ。拒絶もしない」

 挑むように視線を返してくるから、余計に《意固地になってるんだろうな…》と気持ちの高まりを鎮めてしまう。

「そう?」

 曖昧な微笑みを浮かべて、コンラートはゴムバンドと共に持ち込んだオイル瓶を傾ける。麝香(ジャコウ)のような香りを放つオイルを掌でしっかりと暖めると、昨夜のようにとろりと胸へと滴らせていく。 

「もう感じ始めているの?ユーリはやっぱり、躰で引きずられやすいんだろうな…」
「ゃう…っ…」

 オイルによって透けたシャツは素肌に張り付き、ぷっくりと膨らみ始めた桜粒を強調してしまう。その尖りを嬲るようにして抓れば、抗議するように鋭い声を上げつつも、びくん…っと花茎が反応を示すのが分かった。

『こんなに感じやすいのに…どうして《射精できないかも》なんて心配したの?』

 そんな心配さえしなければ、コンラートの心を試練に晒すことなど無かったのに…。

 ああ…《試練》という言葉は寧ろ、コンラートにこそ相応しい。
 有利の心を試しながらも、彼が怯えたり自分の過ちに気付いたとき…コンラート自身は留まることが出来るのか。それをこそ試すことになるだろう。

「ん…ゃ…っ…」

 拒否を意味する言葉を発しようとした唇が寸前で噛みしめられ、《負けるもんか》という顔をした有利は頬を真っ赤にして堪えている。

「も…もっと、どんとこい!」
「いっても良いの?」

 くすくすと笑みを零しながらシャツの谷間を探り、黒い紐パンに覆われた花茎をまさぐると、既に半ば勃ちとなったそれは蜜を漏らして布地の色を変えていた。
 つん…っと先端部分に指を這わせれば、乾いた布地にじゅわりと沁みていくから、オイルに濡れていた昨日よりも如実に興奮の度を教えてくれる。

『俺に触れられるのは、本当に好きなんだろうな…』

 例え勘違いなのだとしても、それだけは純粋に嬉しかった。誘われるように指を絡め、上下させていけばもどかしそうに上体がくねり、えもいえぬ色香を漂わせて朱唇が愛撫を強請る。

「昨日みたいに…直接、触ってぇ…っ…」
「うちの魔王陛下は、エッチなことが大好きなんだって事だけは信じて良いですね」
「…くぅん…っ」

 上体を被せて耳朶に囁けば、ぞくぞくと目に見えて肩が震えて目元が潤む。滲む涙は幾ばくかの悔しさと、それを打ち消すほどの情欲に満ちていた。

 ぴ…っと紐の一端を引っ張って小さな下着をはだけると、サーモンピンクの花茎が覗いてぷくりと蜜を浮かべてみせる。漸く狭い場所から解放されたのが嬉しいのか、あるいは外気に晒されたことに刺激を覚えたのか、ぬくりと勃ちあがる花茎は軽く指を添わせただけで、すぐに腹を打つ角度に成長した。  

「良い感度だ…。それに、とても可愛いですよ」
「そんなトコ…かわいいもん…?」

 もごもごとくぐもった声で呟くのは照れているからなのだろうか?いや、唯単に羞恥を感じているためなのか…。

 コンラートはオイルを再び手に取ると、花茎には触れないまま、とゅる…っと蕾へと指を埋め込んでいく。
 わざと指の形状を知らしめるように、ゆっくり…ずぶずぶと沈めていけば、流石に違和感が強いか有利の内腿がひくりと引きつる。

「降参なら頭を下げれば良いよ」
「違うよ…っ!ち、ちょっと脚がつりそうになっただけ…」
「そう?では、もう少し頑張れるかな?ああ…そうだ、今何が起きているのかちゃんと分かった方が良いかな?」
「へ?」

 きょとんとしている有利の蕾からぬるりと指を抜き出すと、壁面に掛けられた大きな姿見鏡を移動させてコトリと置く。

「…っ!」

 有利の喉がこくりと上下する。
 清楚な印象の彼からは想像もつかないような体位を取らされていることに、今更ながらに気付いたらしい。

 姿見に映し出された白い内腿にはぬめるような艶を持ち、まるで全ての人に見せつけるかのように大きく下肢を開いている。オイルに濡れて、ひく…っと蠢く蕾も、勃ちあがった花茎も…そこから溢れる蜜に濡れた小袋も、シャツを張り付かせて身体の線を明瞭にした上体も…全てが淫らに露出されていた。

「恥ずかしい?」
「う…そりゃあ…。あ、で…でも…平気だから!」

 ぷるぷると首を振った有利は、そんな姿勢から繰り出すには不思議なくらい純朴な眼差しを送る。

「あんたにされるんだん。イヤってのわけじゃないよ?」
「…っ…」

 今度は、絶句させられたのはコンラートの方だった。

『この子は…』

 何という甘い誘惑だろうか?

 渾身の精神力を発揮して自分を律しようとするコンラートを嘲笑うかのように、あまりにも容易く心の鍵を破壊していく少年に、追いつめられているのは自分の方なのだと知らされる。

 ぷく…っと突き出された唇が否応なしにコンラートを惹き寄せるから、くらくらと揺らぐ脳髄は《試練》の筈の行為を変質させようとしてしまう。

 《いけない…これ以上は……》分かっているのに止められない。

 麻薬にも似た誘因力に、コンラートは引きずられるようにしてズボンの前立てに手を掛けた。硬い軍服の下に隠された欲情をずるりと引き出せば、愛欲に濡れそぼってそそり立つ雄蕊に、漆黒の瞳が見開かれた。

「見て…ユーリ。これが、俺の性器ですよ」
「お…きぃ……」
「俺とセックスするってことは、この孔で俺に抱かれるということですよ?」
「ひぅ…っ!」

 つぷりと中指の一節を含ませれば、それだけで有利の腿は跳ねて鼻に掛かった悲鳴があがる。

「ねぇ、ユーリ…。それでもあなたは、俺を好きだと言えますか?抱かれても良いと…言えますか?」

 ちいさな頭部を両手で包み込み、愛らしい唇に…触れるか触れないかの位置まで雄蕊を沿わせてやる。独特の香気が、彼の鼻腔に燻らされているだろうか?逞しい肉の威容が、怯えを感じさせているだろうか…?

 嫌がるように顔を避けるか。
 受け入れるように唇を寄せてくるか…。

 どくん…
 どくん……

 余裕のある態度とは裏腹に、小娘のように脈打つ胸に苦悶を感じていたコンラートは、次の瞬間…己の欲がぬるりとした空間に導き入れられたのを感じた。

 ちいさな口が見る間に大きく開かれて雄茎を含み込み、あまりの恥ずかしさと蜜の味に衝撃を覚えているのか、固く閉じられた瞼がふるふると震えて少年の不慣れな…だからこそ淫靡な様を知らしめる。

「ん…むく…ん……」

 快感に流されているだけではない。理性を残したまま、有利は自らの意志で雄蕊を銜え込んでいくと、大きすぎる肉と特有の薫りに噎せながらも舌を使っていく。ぎこちない稚拙な愛撫はしかし、どんな手練れの娼婦よりもコンラートの雄を育てていく。

『気持ち…ぃい……っ…』

 なんということだろう。最早、コンラートは意志力をもって有利の行為を止めることが出来なかった。それどころか、腰を揺らめかせて狂おしく有利の愛撫をねだってしまう。

「ユーリ…ユーリ、もう…そこまでしてしまったら……戻れないよ?」

 どこに戻れないのかと明示することはなかったが、有利にも同じ感慨があったらしい。ぬるついた雄蕊を口腔から引き出すと、《はふ…》っと息をつきながら亀頭にキスを落とす。

 愛おしげに…全てを受け入れるように。

「良いんだ…。俺、戻らなくて良いんだ。あんたと…新しい関係、つくりたいって思ったから…」

 そう呟いて微笑む有利は、もう昨日までのあどけない少年ではなかった。



*  *  *




 コンラートの陰茎を突きつけられたとき、正直に言えば怖じ気づく気持ちがあった。
 有利は真性の男性愛好者などではなく、射精を促す行為を受け止めるまでは、コンラートのことも《大好きな名付け親》としか見ていなかった。
 お風呂などで逞しい裸体に感心することはあっても、そのしなやかな隆線に《欲情》したことはない。

 それが…どうだろう?

 今、有利の雄はコンラートを求めて屹立しているではないか。
 《肉体的な興奮》という些か不純な切っ掛けではあるが、それでもやはり《こういった意味》でコンラートを求めていることを否定することなど出来ない。

「勘違いなんかじゃ…ないよ?俺は、あんたが…」

 ほぅ…と漏らした息は熱く、伸ばした舌先はしょっぱいような苦いような蜜をすくい取って滑らかに動く。

「……欲しいよ」
「……っ…!」

 コンラートは今、どんな気持ちでいるのだろうか?
 頭ごなしに否定するのではなく、《試練》という形で有利を試す以上、全く見込みがないわけではないはずだと一縷の望みを掛けた甲斐はあったのだろうか?

 懸命に舌を使って愛撫を続けたのだが、そろりと頭蓋に沿わされた両手が二人を引き剥がす方向へと促していく。

『やだ…っ!』

 この期に及んで中断させられるのかと不安が募り、意地になってむしゃぶりつけば、無理に含み込んだ亀頭が喉奥を刺激して涙が頬を伝う。その涙の粒を優しくなぞりながら、コンラートは幾らか掠れた声で囁いた。

「あなたには…負けました」
「ふきゅ…?」

 《口にものを入れて話してはいけません》と母に怒られたものだが、この時はそれどころではなかった。コンラートの言葉の意味を知りたくて顔を上げると、切なげに瞼を伏せた彼の姿があった。その表情はどこか、諦めのような…それでいて、酷く嬉しそうな貌であった。

「信じて…良いんですね?」
「あっひゃりまえはよっ」

 むぐむぐと亀頭部分を含み込みながら言えば、にっこりと微笑んだコンラートにまた頭蓋を誘導されて陰茎から口が外れてしまう。隆々と屹立したものをどうするのかな…と思っていたら、身を屈めたコンラートは限界近いであろう自分の逸物は放ったまま、全開にされた有利の下肢の間に陣取り、蕾へとぬるりと舌を差し入れてきた。

「ひぁ…っ!?」

 よもやそんなところに舌戯を施されるとは想像もしていなかった有利のこと、飛び上がって身を捩るが、背を反らした分、余計に脚は開大されて股関節が悲鳴を上げる。

「痛…っ…」

 涙混じりにあげた悲鳴に対して、コンラートの反応は早かった。
 素早く腿を拘束するバンドを外すと、淡く跡が付いた腿に幾つもキスを落としながら下肢をくつろげさせ、大きく開かれて軋む関節をやさしく撫でつける。

「すみません…無理を、させました…」
「良いよ…俺が、良いって言ったんだから良いんだ。だって、これで試練はおしまいでしょ?」

 安堵の息を吐きながら有利が笑うと、コンラートは少し困ったように微笑む。
  
「試練は終わりです。でも…愛の営みは続けてみませんか?」
「へ?」

 ころんと転がされたかと思うと、大きな両手が今度掴んできたのは頭蓋ではなく双丘だった。おかげで俯せのままお尻を大きく突き上げるというかなりお恥ずかしい体位を取らされた有利は、ぱくりと二つの肉を割られて谷間に咲く蕾へと軟体物を挿入される。
 意図があるのか忘れているのか、腰の辺りで後ろ手に縛られているのは相変わらずなので、彼の行為を止めることは出来なかった。

「ひゃやあ…っ!?」

 ぬぢゅ…
 ぐちち……

 なんとも淫らすぎる水音が背後から響いてくる。

 その内、解されたそこに今度は硬い異物を含み込まされて、ぶるる…っと背筋が震えるような快感を迸らせた。硬いものは少しずつ数を増やして、三つの塊が水泡を立ててオイルを含み込ませた頃合いになると、ぬりゅ…っと引き抜かれる。
 馴染ませるために銜え込まされたのは、どうやらコンラートの指であったらしい。

 解される間に散々後宮内の肉粒を弄られたものだから、花茎はいとどに濡れて…ぽとぽととはしたなく蜜を零してシーツを濡らしている。コンラートは感じやすい場所を丁寧に探し出す癖に、どうやらわざと頂点を遂げさせるのは避けて焦らしているらしい。

「あなたに欲して貰えて…こんなに幸せなことはありません」
「そ…りゃ……」

 ぴとりと蕾に押し当てられた熱と硬さ、太さ…。それは先程…唇で愛した陰茎では無かろうか?

 《怖い》…でも、ここでコンラートと《ひとつになる》のだと察すると、えもいえぬ期待感に胸が震えてしまう。有利は怯える気持ちを奮い立たせて手首を捩り、開放された手で自ら蕾に指を掛けた。

「……挿れて…っ…」

 啜り泣くような声でねだると、有利の尻に添えられた両の指が痛いくらいに双丘を鷲づかみにして…ずぶずぶと、まるで性器の形を教えるように…残酷なくらいゆっくりと肉筒の中へと埋め込まれていく。

「は…く……ぅう……っ……」

 痛いというより、苦しい。
 圧倒的な圧迫感にもう上体を維持することは出来ず、シーツに胸から上がくたりと頽れるような形で、お尻だけが高く持ち上げられてコンラートの雄蕊を受け止める。

 ぬぷぷ…
 ず……ぶ……

 最後に《ぐぷり》と音を立てて最奥まで突き込まれると、コンラートの陰毛が微かに双丘を撫でた。

『コンラッドが、全部はいってるんだ…』

 そう感じた途端、これまで感じたことのない充実感で眦が熱く染まるのを感じた。
 同時に…限界近かった花茎へと指が絡むのも。

「ひぁあああ……っっ!!…や…ゃ……っっ!!!」

 恐ろしいほどに巧みな手淫が有利の理性を浚っていく。にるにるとぬめる肉棒を片手で器用に嬲られれば、簡単に弾けた欲望が恥ずかしいくらいの勢いで有利の腹とシーツとを白く染めていく。

「は…ぁ…っ…あ…っ……っ!」

 《気持ちよすぎるっ》…そう感じたのも束の間、頂点はそこではなかったことをすぐに教えられる。到達して感じやすくなった身体の中で、埋め込まれた熱い楔が注挿運動を開始したのである。

「ゃぁあああ……っ!?」

 信じられない。
 どうして…お尻の孔をこんなにされて、陰茎で到達するのよりも激しく奥深い悦楽を感じてしまうのだろうか?摩擦と突き上げは肉を抉るほどの勢いだというのに、有利は痛みを凌駕する性欲に耽溺してしまった。

「ぁあん…っ!コンラッド…コンラッドぉお…っ!!」

 狂おしく叫ぶ有利の背を宥めるように、覆い被さってきたコンラートが見る間に素肌を晒していく。もっと…ずっと密着したいのだと教えるようにシャツを脱いだ肌が汗ばむ背筋に押し当てられ、こりっとした胸の尖りが肌を掻いた。

「ユーリ…あなたと……ひとつに……っ…」
「コンラッド…おれも…ぁぁあん…っっ!!」

 狂おしい想いが突き上げて、コンラートを貪るように肉筒を習練させると、埋め込まれた雄蕊の形が明瞭に感じ取れる。

『俺…コンラッドと……繋がってる…っ!』

 繋がっているのは、きっと…身体だけではなく、心もだと思う。

 嬉しかった。
 きっと…コンラートも同じように感じてくれているのだと思ったら、もっともっと嬉しくなった。

 どくん…っと体奥内に熱い迸りを放たれたときにも、有利の意識を染め上げたのは生まれて初めて感じる、充足感に満ちた幸福であった。






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