「真冬のマーメイド」−2
『あ…れ?』
大井田啓治は自分の目を疑い、ごしごしと目元を擦ってみたが、やはり目に映っている映像に変化はない。
『嘘…あれ、渋谷!?』
陸上部の強豪高校に推薦入学した大井田だったが、同級生だった渋谷有利のことを忘れたことはない。高校に入ってからも何かと理由を付けては遊びに誘ったりしているから、その有利が間違いなく男の子であるというのは、夏のプールでも確認済みのことであった。
だが、複合アミューズメントパーク《メルト》で目にした有利は、素晴らしい脚線美とふくよかな胸を持つ美少女と化していた。蒼いビキニに包まれた胸は、《はち切れそう》とまでは言えないものの、十分Cカップはありそうだ。それに、楚々とした印象の胸元を恥ずかしそうにパーカーの下に隠しているのが、余計に可愛らしくて男心をそそる。
そう思っているのは大井田だけではないようで、更衣室から出てくるなり華に集まる蜂のような男達がぷぃ〜んと飛んできた。
「ねえ君、超カワイイねっ!」
「あっちで俺たちと泳がない?」
「俺、ビーチボール持ってきてるんだ。一緒に遊ぼうよ!」
むかっと怒りの波動が湧いてきて、荒々しい足取りで近寄っていくと、先に細身の少年が間に割り込んできた。確か、中学時代に大井田や有利と同じクラスにいた村田健だ。そう言えば、夏頃に再会してから草野球チームのマネージャーをするなど、親しくしていると言ってたっけ。
「僕の連れに何か用ですか?」
「ああ?何だよお前、この子の彼氏なわけ?」
大井田もその点は大いに気になったのだが、村田が口を開く前に、つるっと有利の方が返事をしてしまった。
「村田は友達だよ。それよか、あんた達こういう人知らない?」
有利が差し出したのは一枚の写真で、大井田もこっそり近寄って覗き込むと、それはダークブラウンの頭髪に琥珀色の瞳を持つサラリーマン風の青年だった。見覚えはないが、身体的特徴からピンとくるものがある。
『こいつ、コンラッドとかいう奴か?』
有利が小学生の頃、《おれ、コンラッドの嫁さんになるって約束してるんだ〜》と嬉しそうに言っていた。あの時初めて、大井田は友達とは違う意味で有利のことを好きなのだと気付いた。あんなに煮え滾るような嫉妬を感じたのは、初めてだったのだ。
初恋に気付くと同時に失恋というスピードコースを辿った大井田は、刺々しい口調で有利を馬鹿にした。《男はお嫁さんにはなれないんだぞ?オカマさんになるだけだ》と吐き捨てるように言ったとき、大井田にだけ秘密を明かした有利は、泣きそうな顔をして駆け出したが、後を追いかけて慰めるには、大井田はまだ子ども過ぎた。
翌日、泣きはらしたような顔で学校に来た彼は、一言だけ《昨日の、忘れて》と、少し大人びた顔で言ったから、彼にとってもあの日は初めての失恋体験だったのだろう。きっかけを作った大井田を恨む気持ちはあったのか無かったのかは分からない。それでも、数日すれば今までと同じように付き合うようになったのは、大井田が有利の性癖について言いふらしたりしなかったからだろう。
《信頼できる奴》とは、認識してくれたらしい。
『それで良いや。時々会って、楽しい気持ちになるって事だけで十分さ。下手にのめり込んだって、あいつは男だし』
進路が別れたのを幸いに、大井田は積極的に《そう思おう》と努めてきた。
だが…一体どういう手段を執ったものか、有利は夏から今日までの間に、完璧な性転換を果たしたらしい。肉体のどこまで改造しているのかは分からないが、封印していた恋情が蘇るには十分すぎるほどの姿だ。
「渋谷…」
「あれ、大井田っ!?」
大井田の姿を目にすると、自分のことを誤魔化し損ねたのにも気付いたのか、有利は真っ青になって逃げ出そうとした。
「おい、待てよ渋谷っ!」
「や、ややや〜っ!やめっ、離せよっ!!」
涙目になって恐慌状態に陥っている有利に、思わず声を荒げてしまう。だって仕方ないだろう。村田には付き添いをさせているのに、かつては親友だと思っていた大井田からは逃げようとするのだ。そんなの許せるものではない。
「何で逃げるんだよっ!」
ほっそりとした手首を捕らえると、折れそうなほど華奢な感触が伝わってくる。しかも、引き留めた衝撃でぷるんと愛らしく胸が揺れるのだ。何だか酷く悪いことをしているみたいだ。
端で見ている連中にとっては、余計にそう伝わったらしい。
「ちょ…っ!お前、何してくれてんだよっ!その子、嫌がってるだろ?」
「あれか?ストーカーか?お前!?」
「ちげーよ!お前らこそ他人のくせに、こいつに構ってんじゃねーよっ!」
揉み合うようにして争うと、先程までは逃げようとしていた有利も踵を返して止めに掛かる。
「止めてくれよ!こいつ、別に悪い奴じゃないんだ。単に水着姿見られて、気まずかっただけなんだよ」
「え〜?ホント?脅されたりしてるんだったらちゃんと言いなよ?俺、めっさ力になっちゃうよ?」
「ありがと」
男気を前面に出して軟派男がそう言うと、有利はにか…っと太陽が輝くみたいな独特の笑顔を浮かべる。男の時には《ああ、こいつ良い奴だ》と思う位だったのが、女の子の姿でやると威力絶大だ。周囲の連中はみんな頬を染めて、ぽ〜っと見惚れてしまっている。
「じゃあ、早速力貸して欲しいんだけど良いかな?」
「良いともぉ〜」
懐かしのテレホンシ○ッキングみたいなポーズを取りながら、脂下がった男が叫ぶと、有利はまた写真を出して聞いてきた。
「この写真の人がどこにいるか、見覚えがあったら教えてくんない?」
「あ、そういえばそれがさっきの要件だっけ?」
男は渋々と言った感じて写真を受け取ると、嫌な予感を覚えていそうな顔で聞いてきた。
「あのさ…この人って、君とどういう関係なわけ?」
「名付け親なんだ。そんで…今、肉食系の女の人たちに貞操を狙われてるんだよ!」
「ええと…君は、その名付け親さんが好きなわけ?」
言われた途端に、かぁああ〜っと見事に有利の頬が染まってしまう。男達の胸で淡い恋心が砕ける音が聞こえるような気がした。
「渋谷、俺も探してやるよ。だから、事情聞かせてくれ」
「大井田…」
戸惑うようではあったが、押し切る形で強引に付き添っていった。
* * *
コンラートが今どこにいるのかは分からなかったが、ある時間になればやってくるという場所には見当が付いた。コンラートは《メルト》で開催される水着美人コンテストの審査員になっており、そこで質問や審査をしなくてはならないようだ。企画張り紙によると、あと2時間くらいで始まるらしい。その仕事が完全に終わるまでは声を掛けにくいだろうか?
そうすると、暫くは時間が中途半端に空いてしまうのだが…。
『こ、困ったなあ…』
有利は先程から頭を抱えていた。
人気のアミューズメントパークだから地元の友人達に鉢合わせするのも覚悟はしていたのだが、何しろ水着姿なのだからどこからどう見たって《女体》だ。はっきりと性別が違う以上、《渋谷?誰それ?》という態度を貫けば通ると思っていたのに、不意を突かれて思わず肯定してしまった。
それに、怒ったような顔をしてぶっきらぼうに話しかけられると、ついつい声が上擦ってしまう。人工的にこんな身体になっているせいか、何だか後ろめたさを感じてしまうようだ。
「渋谷、その身体どうなってんの?」
「えと、村田の知り合いが作った薬を飲んだんだ。一日だけ、性転換できるやつ」
「ソレ飲んで、コンラッドって奴と何するつもりなんだよ」
「肉食系お姉さんから助け出すんだ!」
「そんで、お前が喰っちゃうのかよ」
「そういう訳じゃ…」
「でも、そういう事だろう?」
有利は頬を染めていたが、キッっと上向くと開き直ったように胸を張った。
「そーだよ!あわよくば、そーゆーコトしちゃうおうと思ってんだ。悪いか!だって俺は、コンラッドの嫁さんになりたいなんて、マジで思ってたんだからなっ!!」
「別に悪くはねーよ」
「へ?」
罵倒されるのを予測でもしていたのか、有利は素っ頓狂な声を出してずっこけてしまう。そんな様子に、村田がぽつりと呟いた。
「へえ、渋谷にトラウマを植え付けたにしては、随分と殊勝な態度だねぇ?」
「何が言いたい」
「実は大井田君こそ、渋谷に惚れてたんじゃないの?昔から、さ」
「…っ!?」
頬に朱が掃かれるが、開き直った有利を前にして誤魔化し続ける間は困難だった。
「…そうだよ!俺にとっては、渋谷が初恋だったんだ!」
「えぇええ…っ!?」
ぱちくりと目を見開いた有利の視線が痛い。そうだ、《オカマ》なんて馬鹿にしておいて、大井田自身が有利をそういう目で見ていたのだ。
「渋谷、あんな風に言って悪かったよ。だから、今からでも考えてくれないか?その人じゃなくて、俺を選ぶって」
「ゴメン」
半ば予測はしていたが、打てば響くような否定の言葉に、ズゴンと頭を殴打されたような衝撃が加わる。
「駄目かよ」
「ゴメンな?でも告白してくれたの、嬉しかった。なんか、自分にそんだけの価値があるんだよって教えられたみたいで、凄い元気が出てきた!」
「そーかよ。んじゃ、またこれからは友達な?」
「良いの?」
ほっと安堵したように微笑んでくれる有利はやっぱり良い奴で、胸が苦しい位に可愛くて…大井田は諦めきれない心の痛みに目を眇めると、詫びを入れながら肩を掴み、そっと抱き寄せていった。
「ちょ…っ!大井田!?」
「ゴメン…少しだけ、こうしててよ。あと1分こうしたら、俺、本当に友達に戻るから」
「う、うん…」
有利にとっての大井田は、こんな行為を赦してくれる位には大事な存在であったらしい。尤も、肩や肘の強張りが抜ける気配はないから、やはり赦すのが精一杯なのだろう。
『ゴメン…』
諦めようとして、未練がましく想い続けている友人を、どうかこのまま一分間、赦し続けて欲しい。
この時、大井田は予想だにしていなかった。
自分が得た1分間が、有利に何をもたらすことになるのかを。
* * *
ぽんっ
長く感じられる1分間に耐えかねて大井田の胸を押そうとしたら、丁度後ろから肩を叩かれた。
「ユーリ、何をしているんだい?」
「…っ!コンラッドっ!!」
大好きな人の声を突然耳にして飛び上がるが、振り向いた先にあった表情に、何故か息を呑んでしまう。
コンラートは笑顔を浮かべていた。
なのに、どうして《怖い》なんて思うのだろうか?
いつもはきらきらと銀色の光彩を跳ねさせている瞳だのに、暖かみを帯びていたはずの煌めきが、今は研がれた刃先のように不吉なぎらつきを帯びている。笑みの形をしているだけに、余計に猟奇的な恐怖を感じるのだ。
この人を前にしてこんなに怯えた事なんて、生まれて初めてのことだろう。
「コンラッド、どうして俺だって分かったの?」
恐怖を認めたくなくて、引きつった笑いを浮かべながら問いかけてみたのだけれど、きっととても馬鹿なことを聞いてしまったのだと思う。コンラートはもう笑顔を偽ることも出来なくなって、哀しみに歪んだ表情で嗤った。
「俺に君が分からないと、本気で思うんだね?」
「コンラッド…」
謝ろうとしたのだけど、それを赦さない強さで肩を掴まれ、大井田から強引に引き剥がされる。
「渋谷!」
同時に村田と大井田が叫ぶが、振り返ったコンラートの表情を目にすると、凍り付いたようにその場に立ちつくしてしまう。コンラートの眼差しがよほど恐ろしかったのだろうか?親しい有利すら怖いと思ったのだから、他人なら尚更だろう。
「すまないけど、二人にしてくれるかな?」
「渋谷は嫌がってるみたいだぜ?」
大井田が頬を硬直させながらも挑むように声を低めると、有利の肩を掴む力がまた強くなる。下手をすると痕になるかもしれないが、こんな風に傷ついたコンラートの為に、何かせずにはおられなかった。
『俺が急に性転換したと思って、両親から貰った大事な身体に疵を付けたって怒ってるのかも知れない』
きっとそうだ。コンラートは有利に甘いけれど、有利の身や人生にとって有害なことがあれば、ちゃんと叱ってもくれる。だったら変に怯えたりしていないで、ちゃんと怒って貰おう。
「俺は全然、嫌がってないよ!」
「渋谷、危ないって!この人の目つき、普通じゃないぜ?」
大井田は上擦った声で忠告するが、有利はぱたくたと手を振って否定した。
「んなことないよ。村田もここまで付き合わせて悪かったけど、ゴメンな?ちょっとコンラッドと二人で話してくるよ」
「君が良いなら、それで良いよ」
村田の返事は大井田とは対照的に淡々としていて、その様子に激高した大井田まで止めてくれる。
「行きなよ。どんなことになっても、僕は君が幸せならそれで良い」
村田は頭が良いせいか、時々謎めいた言い回しをする。何やら言葉の影に含むものを感じはしたが、慌てていたせいもあって気に留めることは出来なかった。
「ありがと、じゃあな!」
礼を言うと、足早に去ろうとするコンラートに歩調を合わせて、有利はその場を去った。
* * *
『ここは?』
コンラートに連れてこられたのは、ちいさな備品室か何かだった。新設の遊戯施設だけあってどこもかしこもピカピカではあるが、基本的には人目に触れない場所なせいか、表のエリアに比べると雑然とした雰囲気があった。
押し込まれるようにして狭い室内に促されると、カシャンと後ろ手にコンラートが鍵を閉める。きっと、怒られてしょげている有利を他の人に見せない為の配慮だろう。
『こんな良い人を怒らせちゃったんだ』
今更ながらに、馬鹿な方法を採ったのかも知れないと反省する。コンラートは女の子だからと言って手当たり次第に食らいつくような飢えた男ではないのに、どうして単純に《女の子になればチャンスがある》なんて信じてしまったのだろう?
「コンラッド、怒ってる?」
「怒らせたっていう自覚はあるんだ」
コンラートの声は相変わらず怒りを根底に敷いた嗤い声で、それが辛くて有利は手を伸ばした。
「勝手に女の子になったから怒ってるんだろ?これ、村田がアニシナって人の薬をくれて、一時的になってるだけなんだ。一日経ったら元の身体に戻るから、別に手術とかはしてないよ?」
「ふぅん。その間に色々と手玉にとって、上手に遊んでいるんだね。知らなかったよ。自分を狙っている男の前で、別の男と抱き合って嫉妬し合わてるなんてね。俺を弄んでいる間も、随分と愉しんでいたんだろうね?突き放して、傍に寄って…眠っている間、俺にキスしたり甘い吐息を漏らす癖に、起きたらけろりと《清純でござい》という貌をして、俺の誘惑を拒むんだから」
「え?」
コンラートの口から出るとは思えないような闇い声音は、強い毒を含んで聴覚を侵す。言われている言葉の半分以上が理解できなかったのだが、一点だけ明確であったのは、コンラートが眠っている間に欲情していたのがバレバレだったということだった。
「し、知ってたんだ…」
「ああ、知っていたさ。何度飛びかかって襲ってやろうと思ったことか!それでも耐えていたのは、君がゲイであることを許容できないと思ったからだ。それがまさか…こんな方法を使って、男を銜え込もうとしているなんてね!」
「くわえ?」
有利に難しい言葉は分からない。
なので、この時も仔猫の首根っこをくわえる親猫の姿を想像したりしていたわけだが、正しい理解に結びつく前に、《いつだって頼りになる、物知りな名付け親》が強制的に教えてくれた。
きょとんとしたまま逃げることも出来ない有利をスポンジマットの山に押しつけ、噛みつくようなディープキスを仕掛けてきたのである。
「ん…っ!?」
有利が眠るコンラートから掠め取ったようなキスとは、大きく質と密度を異にしている。舌が深く絡みつき、縦横無尽に口蓋や歯肉を責め立て、感じやすい場所に舌先をちらつかせる。
これはもう、立派な《セックス》だ。
「ん…ん、ふぅん…」
「佳い声だね、ユーリ」
ねっとりと口角を舐めあげられて、びくりと震えた顎を捕らえられる。怖い位に甘く艶めいた声は蠱惑的な響きを乗せて脳髄を溶かしていくから、がっしりとしているけれど、優美なラインを描く指が下歯をなぞっても、決して噛みつこうとは思わなかった。
従順な有利をどう思っているのか、コンラートの愁眉が晴れることはない。更に試すように、するりと口の中に二本の指を含み込ませ、やわやわと舌を摘んで遊んでいる。
『あ、ヤベ。涎出てきちゃう』
口角から垂れる唾液が恥ずかしくて手の甲で拭おうとするのだが、コンラートは尚も舌を寄せて顎を舐めると、そのまま首筋を伝って胸元へと舌を這わせていく。すべらかな肌をするすると伝う粘膜は、辿る経路に合わせて甘い蜜を注がれるようであった。
にる…
「…!」
水着の胸部分から濡れた指が入り込んで、にぐにぐと乳首を弄り始めると、流石に大人しくはしていられなくてピョコンと垂直に飛んでしまう。
「ここここ…コンラッド!?」
「大人をからかうとどういう目に遭うか、教えて上げる」
見下ろせば、蒼い水着の影からぽろりと白い乳房が零れだし、先端を淡紅色に痼らせているのが明瞭になってしまう。
「キスだけで感じてしまう身体なんだ?」
コンラートは掠れるように苦い低音で呟くと、形良い唇で乳首の先端にキスをして、有利に見せつけるようにして咥内に取り込んだ。
「あ…っ!」
熱い。
コンラートは体温が低い方なのだけれど、乳首を取り込んだ咥内だけは灼けるように熱い。その上、舌先でちょろちょろと先端部分を掠められたり、巧みな指遣いで付け根をぐにぐにと揉み込まれるから、乳の奥まった部分にまで痺れるような熱さを感じてしまう。右の乳房だけを執拗に弄られるのだけど、左は放置プレイ状態なのも切ない。
くに…っ、きゅ……
れる…
何だか異様に気持ちが良い。
それは確かなのだが、事ここに及んで、有利はやっとのことでこれが緊急事態なのではないかということに気付いた。
『あれ…?そういえば、なんでコンラッドってば俺のおっぱい舐めてんの?つか、凄い怒りながらだけど、キスしてくれたんだよな?俺がこっそりコンラッドにハアハア言ってたのも、知ってて赦してくれてたんだよね?』
それは一体、どういうことなのだろうか?
まさかとは思うが、ひょっとしてひょっとすると…。
『コンラッドが俺を迎えに来てくれたとき、実は本気でお嫁に貰ってくれるつもりだったのかな!?』
なんという事だろう!
だとしたら、有利はわざわざとんでもない遠回りをしていたことになる。
一周回って元通り…なんて都合の良い展開になるのだろうか?
有利はどう話しかけて良いのか分からないまま、コンラートの愛撫に翻弄されていった。
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