「次男天獄」A

 







 

「ここ…?」

「ええ、お馴染みの…ここ」

 コンラートに抱きかかえられて連れてこられたのは執務室…普段、有利が執政に励んでいる…まあ、彼なりに精一杯励んでいる、国家の中枢である。

 重厚な質感を持つ濃飴色の書斎机が存在感を放ち、壁一面に仕舞われた書物の数々には古今の国家情勢が刻まれている。

 中庭に面した窓には臙脂色の厚いカーテンがひかれているが…窓硝子の向こうには明かりの灯った執務室を見守る兵士達がいるだろう。

 

 第一…ここは……

 

『な…なんか流石に、身近すぎてマズイよっ!!』

 有利の机と直角に位置するのは、普段グウェンダルが愛用している机…。その上には青銅製の文鎮や、彼の手に馴染んだペンなどが綺麗に整頓されており、近寄れば彼の息づかいを思い出せそうなほど気配が残っている。

 グウェンダルは現在フォンヴォルテール領に所用で滞在しているため、今夜急に帰ってくる心配はない。だが…彼の机にちょこんと載せられた有利は身を捩って涙目になった。

「コンラッド…ここは、ちょっと……」

 執務に取り組むべき仕事場で乱れた姿を晒すなど…ましてや、グウェンダルの机の上で恥ずかしいほど濡れた身体を捩らせるなど…。

『なんか…グウェンに見られてるみたいに感じるよ…っ!』

 恥ずかしくて仕方がない…だが、それが一層熱くなった有利の身体を煽り、吐息を甘いものへと変えてしまう。

 ああ…こうしている今も、どっしりとした革張り椅子から彼が見つめているのを感じる。

 濃灰色の瞳を眇め、有利を咎めるように向けられた視線が、淫らな王を責めている…。

 ぞくぞくするような背徳感に、身体中の皮膚が沫だって…敏感さを増していくようだ。

「じゃあ、我慢します?」

「ん…っ!」

 廊下を運ばれる間もちらちらと掠めてきた悪戯な指が…ドレスの裾野からするりと内腿を撫で上げれば、限界近くまで勃ちあがっていた花茎はぷくりと蜜を滲ませる。

 くちくちと鈴口を弄られて息を詰めてしまうが、解放を迎えることは出来ない。

「お漏らししてはいけませんからね」 

 にっこり爽やかに微笑んだコンラートによって、付け根部分を残酷な厳密さで締めあげられると、苦しげに花茎の赤みが増した。

「お願い…コンラッド……も、いかせて……っ!」

「いかせてしまったらお仕置きにならないでしょう?ユーリ…いけない子には、厳格な指導が必要なこともあるんですよ?」

「や…意地悪……しないで……っ」

「意地悪だなんて…心外ですね?俺はあなたの未来を憂うからこそ、こんな事をしているんですよ?」

 にっこりと微笑む笑顔は凶悪なまでに美しく、つい…と引き上げられた口元は、とてもこの状況を憂うているとはおもわれない…。 

  憂うているというのならどうして、花茎の付け根を締めあげながらぷにぷにとした先端の感触を唇で味わい、楽しげな笑みを浮かべているのか…。

『絶対…半分くらいは楽しんでると思うっ!』

 実際問題として、現時点のコンラートは半分どころか9割方この状況を楽しんでいるわけだが、有利はそこまでは穿った見方を出来ない。

 半分くらいは…自分のせいだと思っているものだから、なかなか効果的な抵抗ができないのだった。

「ど…したら、いかせてくれるんだよ?」

「そうですね、まずここはこうしておいて…」

「ゃ…っ!」

 勝手知ったるグウェンダルの机を開き、分厚い書類の下から天鵞絨地の紅いリボンを取り出すと、きゅっと絶妙な力度で花茎の付け根を縛ってしまう。

 鬱血して痛みを訴えるほどではないが、いくにいけない…こんな縛り方を一体何処で習得してくるのやら!それとも、天性の才能だというのだろうか?

「そして、こちらを可愛がってあげますから…そのまま腰をあげて?」

「無理…」

 仰向けのまま膝裏を持ち上げられれば、腰が浮くほど双丘が高い位置にもちあげられ、大きく開かれた大腿…ガーターベルトも艶やかな、絹のストッキングに包まれた腿がドレスの中から露わに晒され、高いヒールを履いたままの足がぷらりと宙を掻く。

『なんて眺めだ…っ!』

 コンラートは有利に気付かれないよう生唾を飲み込むと、腿の付け根の…そこだけはストッキングに包まれていない生肌部分をきつく、何カ所も吸い上げては紅い花を散らしていった。

「ゃ…や……っ!」

 その度に面白いくらい有利の足はぴくぴくと跳ね、含みきれない唾液が頬を伝ってなんとも凄艶な様を晒す…。普段の健康的な彼からは想像もつかないような乱れぶりだ。

「お願い…も……触って……っ!」

 それが花茎と言うことなのか、それとも…入り口だけ悪戯をするように舌先で弄られながらも、奥深い刺激を与えられていない後宮のことなのか…有利自身にも判別のつかないところであった。

「どこに触って欲しいの?ちゃんと言わないと分からないよ?」

「分かんない…分かんないよぉ……」

 ひっく…ひっくと泣きじゃっくりが止まらない有利に、なおもコンラートの《意地悪》は続く。

「分からない?どうしてかな…。ユーリ自身のことだよ?」

「だって…分かんないもん…っ!」

 身体中が熱くて甘くて…コンラートに与えられるどんな刺激でも狂おしく感じてしまうのだから、もうどうして欲しいのかすら正確には分からないのだ。

「じゃあ…俺が好きにしてしまうよ?…良い?」

「うん…うん。良いよ…っ!」

 涙を零しながら思わずそう答えてしまう有利だったが、今夜の恋人は大変な根性悪であった…。

 くぷ…っと可憐な蕾の入り口に含まされた感触に、一瞬は狂喜した有利だったが…すぐにそれが命をもたない無機質な物体なのだと気付いてしまった。

「なに…を……」

「好きにして良いと言っていたからね。ユーリは何が入っても良いんだろう?俺のこと…おねだりしてくれなかったんだもの…」

『あんたナニかわいこぶりっこして拗ねてんですかー!?』

 普段の有利ならすかさずそう突っ込むところだが、今回はそうもいかない。

 くぷぷ…となおも挿入される棒状のものは、グウェンダルが愛用している太めのペン軸だったのである。

 グウェンダルは、以前は眞魔国で一般的に使用されている羽根ペンを使っていたのだが…怒りが込み上げるたびにへし折ってしまうため、手に馴染んだものが次々廃棄されてしまうのに困り果てて、モデルチェンジを行ったのである。

 現在使用しているものは異国から取り寄せた、飴色の木製軸に金属のペン先を填め込むタイプのもので、
手に馴染みがよいようにとグウェンダルの大きな手に合わせて彫られた特注品だ。

 それが…有利の身体の奥へと入ってくる…!

「凄いね…見慣れたグウェンのペン軸が、有利の可愛い蕾にずっぷりと銜え込まれているなんて…グウェンの手に、犯されてるみたい?」

「なに…言って……っ!」

「嫉妬してしまうな…こんなに感じてるなんて」

 ペン軸はコンラートの雄蕊に比べれば遙かに細いものの、くり…っと弱い場所を押されれば、有利の身体は貪欲にそれを悦楽として受け止めてしまう。

 無機質な物体に煽られるという現実が、有利を居たたまれない心地にさせた。

「やだ…こんなの……やだよ……っ!」

「じゃあ、なにが欲しいの?」

「……こ、これじゃ…ないやつ……」    

 コンラートの部屋では《コンラッドの欲望に応えなきゃ!》と意気込んでいた有利も、媚薬を使ったことを怒られ何が目的だったのかもばれてしまうと、また生来の羞恥心が頭を擡(もた)げてくる。

 その事が余計にコンラートの嗜虐心を刺激するとも知らずに…。

「ふぅん…」

 コンラートは物思うげに小首を傾げると、ゆっくりとペン軸を引き抜いていった。

 勿論、欠片ほども有利に傷を付けることは考えていないので、ゆっくり…ゆっくり…それはもう、有利が《赦してっ!》と叫ぶくらいねちっこい速度で、良いトコを掠めながら引き抜いていったのだったが。

「《これじゃないやつ》なんて曖昧な返事では、次は何を入れてしまうか分からないな…」

 《いけない子だね》とでも咎めるように眉端を上げると、コンラートはつくん…と蕾の入り口を爪の先で突いた。

「何を入れたい?これかな…?それとも…これ?」

 意地悪な男が指し示すものは全てグウェンダルの文具で、太い棒状の文鎮を見せられたときには泣きそうになってしまった。

「違う…そんなの…や……っ!」

「そうだろうね。ここはもっと…熱いものが欲しいんじゃないかな?」

「……欲しい……よ…」

 堪えきれずに頷けば、コンラートの指示は更にエスカレートしてくる。

「何が欲しいか、ちゃんと言ってご覧?」

 羞恥を誘うお願いの筈なのに…声は何処か命令と言うよりも懇願の色を含んでいて、有利の胸はきゅん…っと疼いてしまう。

『そーだよ…もともとの目的は、コンラッドを満足させてあげることじゃん!』

 有利に無理を強いないために、人一倍強い欲情を押さえ込んで、自慰で発散させていたコンラート…。その彼が、《おしおき》という名目でちょっと(?)はっちゃけようとしているくらい、容認できなくては当初の目的は達成できないではないか。

 有利は唇をきゅ…っと噛みしめると、頬を真っ赤に染めて淫語を口にした。

「コンラッドの…ちんこ…挿れて……っ」

「欲しい?…本当に?」

「欲しいよ…凄く欲しいっ!あんたの太くて熱いので…俺の中、ぐちゃぐちゃにして…っ!何回でも出して良いからっ!!」

 開き直った有利の唇からは、本心からの願いと、コンラートが喜ぶであろう…との願いを込めた語句が迸る。

「良くできました!」

 コンラートは満足げに頷くと、グウェンダルの椅子を引き…その前に床面に厚手のクッションを並べてから、どっかりと椅子に腰を下ろした。

「……コンラッド?」

「ね…ユーリ。ここで、ユーリが大好きなものをしゃぶってくれる?」

「……っ!」

 《言うにことかいてあんた、どーゆー願いですかっ!!》…と、首筋まで朱に染めてしまうが…今宵の有利はひと味違う。使命感に燃える少年は、快感にぐらつく身体をどうにか床上に降ろすと、重ねられたクッションの上にちょこんと乗り…おずおずとコンラートの前立てをくつろげ始めたのだった。

『で…でか……っ!』

 涼しい顔をしていたくせに、軍服の硬い布地から解放された雄蕊は下着を突き上げており、おそるおそる布地を引き下ろせば、隆と聳(そび)えるような逸品がぴこんと腹を打つ勢いで飛び出してくる。

 如何にも硬質な肉は熱く怒張しており、これが後で有利を愛したり…苛めたりするのだと嫌でも感じさせられる。

「…っ」

 ごく…っと喉が鳴るのが恐怖からのものなのか…それとも、期待であるのか分からない。

 ただ、今なお拘束され続けている有利の花茎が、じゅくりと堪えきれない蜜を零したのは確かだった。  

「さあ…銜えて?」

「ん……」

 傷だらけの大きな手…けれど、基本的な骨組みは極めて優雅で…平時であるからなのか有利のためなのか…爪がいつも綺麗に整えられていることを有利は知っている。その手が、有利の頭髪を愛おしげに撫でつけ、そ…っと引き寄せるものだから、有利は怯える唇を雄蕊の先端に触れさせると、思い切って唇の中にグミのような亀頭を含み込んだ。

『意外と、むにむにしてる…』

 海綿体の怒張により硬く張りつめた竿部分とは異なり、感じやすい先端部分は塩気の強い蜜を零し続けてぬらりと濡れており、意外な柔らかさで有利を驚かせた。

 ぷにぷにぷに…っと唇で甘噛みし、ちゅう…っと軽く吸い上げただけで、コンラートの声に甘いものが滲むのが分かる。

「いいよ…ユーリ。とても気持ちいい…」

「ほんにょ?」

 口に物を入れて喋るのは止めましょう…という感じだが、その舌っ足らずな声がコンラートのものを銜えているせいなのだと思えば、それだけでコンラートの雄蕊は猛ってしまう。

『自慰の最中には何度も夢想していたけれど…こうして目の当たりにする衝撃は凄まじいな…っ!』

 コンラートの股間に陣取り、幼子が乳を求めるような熱心さでちゅくちゅくと太い雄蕊を銜える有利の姿に、今すぐ押し倒して突き込みたいという衝動を感じる。

 だが…二度と来ないであろうこのような好機を逃すわけにはいかない。

 今日だけは、何をしても許されるはずなのだから!(調子に乗りすぎという話も…)

「ユーリ、喉の方まで入れられる?無理はしなくても良いから…」

「くん…む……じぇんぶは…むり……。あんたの…でか……」

 それでも喉奥一杯まで含み込んだ有利は、自分がされていたのを思い出すように強く吸い上げながら頭を前後させ、懸命に奉仕に励んだ。

 じゅぶ…

 ちゅぶ……っ

 淫猥な水音が耳朶をうち、片手でコンラートの雄蕊を支えながらも、空いた方の手がどうしても花茎に絡まっていく。

「ん…くぅ…っ!」

 コンラートの雄蕊を喉と唇で愛しながら、自分の花茎に与える自慰は強烈で、痛みさえ訴えるほどの悦楽が有利の腰を蕩けさせていく…。

『出したい…。たまってるやつ、一杯出したいよぉ…っ!』

 きっと今放てば、鋭角で宙を飛ぶほどに勢いよく白濁を飛ばしてしまうことだろう。

 だが、コンラートは有利の自慰は許してくれたものの(と、いうより…積極的に視姦して楽しんでいる)、花茎のリボンは未だ外してくれず…また、ここで外そうものならタイルの上にぶちまけてしまうのは必至だった。

「もう…限界?」

「ぅん…も……コンラッド、ちょうだい?」

 ふるふると肩を揺らしながら愛らしくねだれば、有利の身体はふわりと持ち上げられ、グウェンダルの机へと俯せに寝かせられる。ただ、上体は机の上面に伏せているのだが、下肢は机にもたれるようにして地面に接地している。

「じゃあ、有利の何処に欲しいか、指で開いて教えてくれる?」

「…あ、あんたってば……っ!」

 また何か言ってくるのではないかという予感はしていたが…。

 えらいことを言ってくれる。

「教えてくれないと、有利のお尻に掛けてしまうよ?」

「…っ!」

 それは困る。ここまで高められた肉体をこれ以上焦らされては、おかしくなってしまいそうだ。

「……こ…こに……お願い…っ!」

 スカートを大きくたくし上げ…細い指で双丘を割って、ひそやかな淡紅色にそまる蕾を開けば、外気に濡れた粘膜がいやがおうにも羞恥をそそる。その一点に、燃えるような視線が集中しているような気がする。

『み…みられてる…っ!』

 はい。見てます。

 ウェラー卿はがっつりと見てます。

『なんてやらしくて…可愛い姿だろう!』

 有利以外の者にこんな恰好をさせようとは思わないし、どんな美女がやっていたとしても(男は論外だ)、その淫猥さに寧ろ引いてしまうだろう。だが…有利がしているというだけで全身の血液が沸騰するような興奮を感じる。

 くぷ…と先端を含ませれば、散々焦らされた身体は清楚な容貌を裏切るように、貪欲に腰を振り…肉襞は誘い込むように収斂してコンラートを導いていく。

「ぁ…ぁ…ぁっ…あ……んっ」

 机の上に零れた涎で頬がぬめるが、そんなことを気にしている余裕はなかった。有利は感じやすい場所を雄蕊で抉られるともうたまらなくなって、全身でコンラートを求めて嬌声を上げ続けた。

「もっと…してぇ…っ!ごりごりって、抉って…っ!」

「いいよ…ユーリ。待たせた分、たくさんしてあげる」

 熱い楔が何度も何度も打ち込まれるたびに、体奥に潜ませていたラブエッグが熔け崩れて腸壁を刺激し、有利を淫らな性奴に堕としてしまう。

「ぁん…あぁんっ!気持ちいい…っ!きもひいぃよぉぉ…っ!!」

 あられもない嬌声が奏でられるたびに水音は激しくなり、コンラートの下腹と有利の双丘とが奏でる打撃音も高い音調になっていく。

 腰の辺りまで素肌が露わになった有利のドレスデザインに感謝しつつ、遠慮無く唇を落とせば…弓なりに反り返る背筋が艶やかに色づく。

 肩甲骨の下角が天使の羽根のように浮き上がってくるのをかりりと甘噛みしてやれば、有利はたまらずに悲鳴をあげた。

「出させて…せーえき…出したいよぉ……っ!」

「良いよ、じゃあ…こうして…っ!」

 コンラートは有利の大腿を背後から抱え上げると、凄まじい膂力によってふわりと有利の身体全体を抱え上げてしまう。勿論、接合部は深々と刺し貫いているわけだから、有利は角度の変わった楔に耐えきれない悲鳴を上げる。

「ぃにゃぁあああ…っっ!!」

「いって…ユーリっ!」

 幼獣じみた嬌声を上げて啼く有利の花茎が、ようやくリボンの拘束から解放される。

 どくん…どくん…っ!跳ねるようにして花茎が震え、数回にわたって拍出された白濁は…容赦なく有利自身とグウェンダルの机を汚していく。

「はぁ…は……っ!」

 ちいさな子どもがおしっこをさせて貰っているような恰好で、良いだけ欲望を吐出した有利だったが…下肢に籠もっていた熱がいったんひくと、激しい羞恥に晒された。

 艶のある深飴色の卓上に散る白い液体は己の欲望の証で、そのあまりの量の多さに頬が染まってしまう。

 それに…有利は、この時初めて知ったのだった。

 執務室の壁面に掛けられた大型の姿見鏡によって、コンラートから有利の痴態が丸見えであったことに…。

「ゃああっ!」

 慌てて股間を隠そうとしてももう遅い。

 コンラートの硬い雄蕊に串刺しされた身体はぐっぐっと突き上げられ、グウェンダルの椅子に腰を下ろしたコンラートは、長期戦で有利を嬲る構えのようだ。

「良い恰好だね…ユーリ……。こんなとこ、グウェンが見たら何て言うかな?それに…この部屋だと、普段はほら…あそこの本棚の前にギュンターが立っているよね?」

 言われて視線を遣れば、そこに近年理性が崩壊気味の美形魔族の姿が思い起こされる。有利とセックスを含めた付き合いがしたいと熱望しているようだが…そんな彼が有利のこの姿を見れば、何と思うだろう?

 かれもまたコンラートのように、自分を想って自慰をするのだろうか?

「それに…時々、ヴォルフもやってきてユーリに絡むよね。婚約者らしく、手を出せ…とかね?自分の兄に、その婚約者が何をされているかも知らずにね…。申し訳ないけど、ヴォルフが奥手で助かったよ。もしも手の早い男だったら…血みどろの闘いをしなくてはならないからね」

 ヴォルフラムはどちらかというと、有利を抱きたいというよりも、有利に抱かれたいと思っているらしいが…彼は、自分の婚約者が兄に雄蕊を埋め込まれ、啼かされていると知ればなんと思うだろう?

 一緒のベットに同衾しながらも、いっかな進展の無かった自分を恥じて…眠る有利に実力行使に出るだろうか?

 寝間着を剥ぎ、乳首を舐め上げ…花茎を手で扱きながら《お前が悪いんだ》とでも叫ぶのだろうか?

『ごめん…ごめんな、ヴォルフ……』

 出会った頃の印象から考えれば信じられないくらいだが、彼は実にいい男に成長した。

 だが…やはり有利の中でのヴォルフラムは気の置けない友人であり、間違ってもこのように肉を絡め合うような仲になりたいとは思えないのだ。

「彼らのことを思い出してしまいましたか?」

 自分から話を振ったくせに、有利の意識が離れたと見るやコンラートの腰使いが一層激しさを増す。

「ぁん…あ……」

 《もう抜いて…っ!》そう叫びたいが、実のところあれだけ意地悪なことをしておきながら、コンラート自身は有利をいかせるばかりでまだ一度もいっていないことを知っている。

 だから、有利はせめてもの自主性を見せるために、少し無理をして身体を捻ると…コンラートの首に手を回して、唇を寄せていったのだった。

「…っ!」

 柔軟性に富む有利だからこそできる姿勢で、刺し貫かれながら深い口吻を交わすと…コンラートの技巧性に富んだ舌遣いが再び有利に火をつけていく。

「ん…も……いって…っ!俺の中に、あついのを出してっ!!」

「良いよ…ユーリ……。あなたの望むままに!」

 どくりと弾けた迸りが腸壁を押し広く感覚に、有利の腰からは甘く爛れるような悦楽が登り詰めてくるのだった…。

 

 

 

 

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