「次男天国」B
石畳の上を、規則正しい歩様で靴音が響いていく。 その音を子守歌のように聞いていた有利だったが、不意に掛けられた声音に意識を覚醒させた。 「おんやぁ…?隊長…坊ちゃんはどうしちゃったんで?」 『よ…ヨザック!?』 びくりと肩を震わせる有利は、少し考えてからやっと今の状況を飲み込んだ。 コンラートは何度か有利の中に欲望を放ってから一度は抜いてくれたものの、まだまだ満足していないらしく…《ここを片づけたら俺の部屋に戻って、落ち着いてやりましょうね》と、語尾にハートマークを飛ばしながらおねだりしてきたのだった。 しかも…まだ、《おしおき》とやらは続行中…。 ドレスの上から厚手のコートでくるみ、有利の身体を人の目に触れさせないようにしつつ…コンラートの指は、有利の後宮に含まされたままなのだ。 大量の精液を流し込まれたそこはぐちゃりと濡れており、コンラートの指が動いたり、有利の腹圧が変わるたびに溢れ出しそうになってしまう。 『やばい…やばいよ……こ、こんなこと…ヨザックにばれたら…っ!』 有利の焦りとは裏腹に、友人達は親しげな会話を交わしている。 「ヨザ…グウェンなら居ないぞ?」 「知ってますよぅ。今日はあんたと酒を飲みに来たんだよ。忘れたのかい?良い酒が入ったからってんで、一緒に飲むって約束してくれたろ?」 「あー……」 すっかりぽんと忘れ果てていた。 勿論、その約束は一言《都合が悪くなった》と言って次の機会にまわせばいいだけの話なのだが…この時、コンラートは勘の良い友人に見せつけたくなって…ついついこんな事を言い出したのであった。 「そうだな。じゃあ、今から部屋で飲むか?」 「おう。で…坊ちゃんは?」 「勿論、一緒に連れて行くさ」 くちゅ…っと有利の体内で二本の指が蠢き、感じやすい突隆部を擦り上げる。 「…っ!」 途端に息を詰めて跳ねる有利をどう思ったのだろうか…ヨザックは不審げに眉を寄せた。 「…隊長。坊ちゃんは歓迎してないみたいだぜ?あぁ〜ん…グリ江、嫌われちゃったのかしら?」 オカマ臭い言葉を使いながらも、野性的な眼差しは苦い色を含み…彼らしくもなく《傷ついた》という感情を露呈してみせる。これには、彼を大切な友人だと思っている有利は堪らなかった。 「ち…違…っ!ゃん…っ!!」 否定の言葉を出そうとするのに、悪戯な指に愛撫されて声が甘く跳ねてしまう。 「…ぉやぁん?…妙に声が出ましたね。何処かお加減でも悪いんで?」 「う…ぅん……」 こくこくと頷く有利の頬が、どうしても淡紅色に染まってしまう。 親しい友人と声を交わしながらも、有利の恥ずかしい場所には男の指が二本も埋め込まれているのだから…。 「どこが悪いんだい?たーいちょ」 「まぁ…ちょっと、な…」 『何がちょっとだい、この野郎…』 ヨザックは内心、呆れたように舌打ちした。 コンラートが長年の想いを実らせて(しかも、有利の方から告白される形で)肉体関係も含めた恋仲になっていたことは知っていた。 だが…こんな年端もいかない少年に(魔族的みてくれは80歳くらいだが、確か彼はまだ17歳であったはずだ)城内の廊下で愛撫を施すとは…見せつけてくれるものである。 正直なところ、ヨザックはコンラートに対しても有利に対しても深い友情を感じているが、同時に、やはり両人に対して性的な興味も持っているのだ。 享楽的な性生活を送っているヨザックとしては、二人の内どちらから求められても喜んで床を共にする…というくらいには、その肉体への執着を持っている(押し倒したりするのは主義ではない)。 精悍な面差しのコンラートが見せる痴態はさぞかしそそるだろうなーとか、有利があどけない肢体を露わにされて、羞恥に啼く姿は愛らしかろうなー…とか。 『全く…見せつけるような真似しやがって…想像だけでイっちゃいそうじゃねぇか…』 大体、今日の酒席はコンラートから招いたものであったはずだ。 前述のような心理も手伝って、ヨザックの心境はこの時…実に意地悪な色彩を滲ませていた。 「坊ちゃん、何処が悪いんですか?ひょっとしてお腹?」 殊更心配そうな声と表情を装って、厚手のコートの下に手を忍ばせようとすれば…怯えたように有利の肩が揺れた。 「ゃ…っ!」 「あ…すみません……。俺なんかの手が触れちゃあ…陛下が汚れちまいますよね…。すみません、調子に乗ってました」 神妙な顔をして落ち込む(ふりをする)ヨザックに、有利は泣きそうな顔をした。 「違う…違うんだよ、ヨザック…俺は…っ!」 「いいんです…分かってますよ陛下。幾らこちらの世界に来られた当初からの付き合いだ…って言っても、俺はしがない混血…コンラッドみたいに立派な肩書きや爵位がある訳じゃない。俺みたいな者と親しげに口をきいたりしても何の利もありませんからね。陛下にも魔王としての自覚が出てきたんだって…喜ぶべきなんだろうな。すみません、今後…二度と今までみたいな口をきいたりしませんから、どうかご容赦下さい」 そう言って、貴人に対する礼をするヨザックは…そのまま二度と有利と口をきいてはくれないような雰囲気であった。 「違う…っ!」 有利はコンラートの指を含んだまま両腕を伸ばし、身を捩ると…勢いをつけてヨザックにしがみついていった。 「ヨザックは…いつだって…いまも、俺の大事なともだちだよっ!」 泣きながらそう言う有利を抱き返せば、華奢な肩を震わせて有利はなおも続けた。 「だから…だから、口きかないとか…陛下とか言わないで…っ!」 「すみません…坊ちゃん。最初から分かってたんです。でも…ちょっと意地悪したくなっただけなんですよ」 「そーなん…ぅん…っ!?」 ヨザックに抱きついたまま、有利の背筋がびくりと跳ねた。コンラートに抱えられた下半身が熱く疼き、くちくちと指が蠢く感覚に声が甘さを含んでしまう。 「ゃん…ゃあ……だ、駄目…コンラッ…あぁっ…っ!」 『うっひゃー…っ!』 ヨザックは間近に感じる甘い息づかいと、頬に触れる漆黒の髪…そこから仄かに薫る彼独特の香気にくらりと目眩を覚えた。 厚手のコートの下から垣間見えるドレスは艶やかに有利の細い肢体を彩り、ことに露出したデコルテの透明感は息を呑むほどだ。女装愛好家であるヨザックとしては、少々嫉妬を感じてしまうが…。 昼間の瑞々しい少年ぶりからは予想もつかないような媚態に、前立てを押し上げて雄蕊が成長してしまう。こんなものを育てても、目の前の強欲な男に叩ききられるのがオチだとは知っているので、なんとか沈静化しようと試みるがどうにも上手くいかない。これは、二人と別れてから速攻馴染みの店に飛び込む必要があるだろう。 「ああ…ヨザ。すまない…。陛下は随分と容態がお悪いようだ。気になるので、陛下の部屋にお連れするよ。俺の酒は好きなだけ持っていってくれ。部屋なら空いているから」 ひらひらと手を振ると、ヨザックは名残惜しげに有利の腕を剥がしつつ…ちょっとした《おみやげ》を頂いたのだった。 「それじゃ、お休みなさーい」 「へぁ…?」 「…っ!」 ちゅ…っと音を立てて、水蜜桃の頬と…そして、引き締まった精悍な頬にキスを贈ると同時に…ヨザックは脱兎の勢いで逃げ出した。 「あ…あいつ……」 有利だけにキスをすればあからさまな嫉妬で有利が苛められるとでも思ったのか、単にコンラートの方にも興味があったからなのかは不明だが…二人はほぼ同時に一人の男からキスを送られて狼狽したのであった…。 * * * 魔王陛下の居室に入ると、豪奢な寝台には珍しくヴォルフラムもグレタも居なかった。コンラートの部屋に赴く前に、色々と理由をつけて部屋に入らせないように予防線を張っておいた成果だ。 寝台に載せられ、コートを剥がされると…のし掛かってきたコンラートに性急な仕草で頬を嘗め回された。 それは、大型犬が主を確かめようとして嘗め回しているような様子であった。 「ちょ…くすぐった…っ!」 「ヨザに嘗められていたところを消毒しているだけです」 「んな事言ったら、あんただってキスされてたじゃん」 「では、あなたが消毒してし下さいますか?」 「……いーよ!」 乞われるままにぺろぺろとコンラートの頬を嘗める。 こちらは仔猫のように愛らしい仕草だ。 そして…一拍おいて離れてから…くすりと吹き出してみせる。 「なんか…ちょっと、おっかしーの!」 「何がです?」 「だってさ?あんたって普段いつだってしれってしてて…落ち着き払ってるから、こんな風に嫉妬丸出しで来られるとなんか不思議な感じがする」 「…あなたの前ではなるべく恰好悪いところは見せないように気を配っていますからね。今日は…特別です」 「ねぇ…本当に、今日だけ?」 「え…?」 有利の問いかけに、コンラートは意図を掴み損ねて小首を傾げた。 「今日だけあんなにはっちゃけて、また溜め込んじゃうの?ねえ、俺にもあんたの色んなとこ、もっと見せてよ。だって俺はそのまんま、へなちょこなトコ色々見られてるんだし…俺、あんたの意地悪なとこも少し抜けてるところも、その…エッチなとこも…全部ひっくるめて好きだよ?」 「ユーリ…」 「俺達…コイビトだろ?」 照れたように鼻の頭を掻きながら有利が言うと、コンラートはこつん…と額を寄せてきた。 「ユーリは…ほんの短い期間で大人になっていくんですね」 「そーだよ!この年頃のオトコノコは成長めざましいんだからなっ!そのうち、こんな恰好なんてコンラッドの方から《勘弁してくれ》って言うようになるぜ?」 「それはどうでしょうね…もっと熟してから見せて頂いても、それはそれで味わいがありそうですが…」 熟女ならぬ、熟男になっても…一層有利の艶は増しているような気がする。 「…ですが、確かに今の瑞々しいうつくしさは時期限定のものかも知れませんね。ユーリの有り難い言葉も頂いたことですし…ここはしっぽりと楽しませて頂きましょうか?」 「え…?」 言うが早いか、器用な指先はするするとドレスのホックを外していき…紫陽花のような布地を纏わせたまま、細い肢体を一層引き絞るコルセットや、ガーターベルト、微乳を包むレースのブラジャーを愛でるのだった。 「綺麗ですね…また、こういう服を着て見せてくれますか?」 「う…それは今回限りって事で……」 恥ずかしげに布地を引き寄せようとするが、その胸元に音を立ててキスされてしまう。 「時々で良いから…ね?」 「ぅ……っ」 コンラートの上目づかいの眼差しに酷く弱い有利は、声を詰まらせて身を捩った。 「えと…。み、見苦しくない程度の若さの時に、あと…一回くらいなら……」 「では、その時まで忘れないように…この姿の痴態を目に焼き付けさせて下さいね?」 言うが早いか、コンラートはするりとブラジャーをずらして桜色の突起を含み込み、彼が好むように舌先で転がしながら、強く乳輪ごと吸い上げるのだった。 「ゃあ…んっ!」 「先程は散々焦らして済みません、ユーリ…今度は、沢山イって下さいね?この寝台ならシーツを洗うだけで済みますから…」 「ゃん…ゃ…あっ!」 片脚を上げて肩に掛けると、露わになった花茎に指が絡み…巧みな手淫が有利を高めていく。 既に三度は放っている有利だったが、若さなのか媚薬のためなのか…コンラートに煽られるままに硬度を上げていく花茎は、また蜜を滴らせて愛撫に酔っていた。 「ひぃ…ん……っ!」 「こちらにも…欲しいだけ、差し上げますよ?」 花茎を嬲ったまま、既に潤みきった蕾へと雄蕊を突き込まれれば…ぐぶ…っと音を立てて白濁が継ぎ目から溢れてくる。 先に飲み込ませていた精液と、ラブエッグの残渣が混じり合い…女の愛液のように湧いてくるようだ。 「凄いな…感じて、濡れてるみたいだよ?」 「ひぁ…っ!」 出し入れされるたびに淡いピンクがかった液が漏れだし、ぐぢゅ…びじゅ…っと恥ずかしい水音を立てていく。 「俺が欲しくて堪らないみたいだ…」 「欲しい…よ、だから…もっとして…っ!ぁ……ひっ!」 素直ないらえに雄蕊が一層容積を拡大し、有利に甘い悲鳴を上げさせる。 「いくよ…ユーリ……」 擦り上げられる花茎への刺激が激しさを増し、蕾への注送が頂点を極めたとき…有利とコンラートはほぼ同時に果てたのだった。 * * *
翌日…空が白みきった時分に有利が目を覚ますと、ドロドロに汚されていた筈のシーツは取り替えられ、有利の身体も、身につけているパジャマも薫りよい清潔なものにかえられていた。 そつのない護衛はいつもの清涼たる表情で寝台脇に跪いており、一瞬…有利は全てが夢だっのたではないかと疑ったくらいだ。 それが現実のものであったのだと自覚したのは…ランニングに出かけようとして勢いよく起き出し掛けたときであった。 「い…てぇぇぇぇ……っ!!」 「ああ…ユーリ。無茶しないで下さい。あれだけやったんですから腰が無事な筈がないでしょう」 そう…結局、コンラートの欲望が収まるまで何度も何度も交接を繰り返していたら、有利の蕾も腰も限界を悟るほどに疲弊しきってしまったのである。 「ぅう…な、なんであんたは無事なんだよ!?」 「軍人ですから」 けろっとして微笑むコンラートに、昨夜の淫行の痕跡は感じられない。 ただ…いつもよりも一層すっきりとした顔をしているくらいだ。 「…………コンラッド…俺、やっぱり考えを変えたよ」 「何です?」 「あのさ…やっぱ、これから長いこと付き合っていくためにはお互い無理をしちゃあいけないんだ。やっぱりあんたには申し訳ないけどオナニーで発散して貰って、俺とのエッチは1回で終わらせてくれ!」 「えぇぇぇぇえええ!?そんな殺生なっ!」 「殺生なのはこっちの方だ!俺はこの年でケツの孔がガバガバになるのはゴメンだよっ!」 「顎が外れるよっ!あんた薬も使ってないのに全部で10回くらいイってただろ?俺なんて最後の方はカスカスになって透明な液しか出なくなってのに…。どんだけ無尽蔵な精力なんだよっ!!」 有利とコンラートの痴話喧嘩は延々と続き…午前中は腰の痛みもあって、結局魔王居室から一歩も出ないまま時が過ぎていった。当然、執務は今朝方フォンヴォルテール領から帰ったばかりのグウェンダルへとしわ寄せが行ってしまう。
* * * 一方…気の毒なグウェンダルはどうしていたかというと…。 『何故だ…この部屋に、何かいい知れない桃色の空気を感じるのは……』 いつもは鬱陶しいほどにバカップルオーラを放っている魔王陛下とその護衛が居ないにもかかわらず…執務室の中には、彼らの痕跡を思わせる存在感がひしひしと感じられるのだ…。 別に匂いがするとか、そういったことではない。 ただ…濃い気配がするのだ。 『特に…何故か私の机や椅子から濃厚に感じるのだが……』 手に持った馴染みのペン軸にさえ違和感を感じてしまう。 『くそ…一体なんだと言うんだ』 グウェンダルが渋面を更に深めて頭を抱えているところに、ヨザックが慣れた様子で入ってきた。 「あんれぇ?どうなさったんでぇ?閣下…」 「別にどうもしない。ただ…この部屋、妙ではないか?」 「妙?」 魔力を感知できないヨザックには特段おかしな所は感じられなかったが…ふと、昨日廊下であった出来事を想いだす。 『あーあ…隊長ってば……。ここでやりやがったな?』 あの恥ずかしがり屋の魔王陛下が何故やらせてくれたのかは謎だが、おそらく…彼らはこの執務室でセックスしていたのだ。 魔力の一際強い有利のエクスタシー残渣が、気配として残っていてもおかしくはない。 「ぇえ〜?これはぁ〜、言っちゃって良いのかどうか、わーかーんーなーいぃ〜」 「女学生かお前はっ!とっとと言え!!」 ヨザックの襟元をぎゅうぎゅうと締めあげた挙げ句真実を知ったグウェンダルは…聞かなければ良かったと後悔することになるのだった…。 そしてグウェンダルは、彼としては非常に珍しいことに…《おしおき》をすることに決めた。 * * * 「陛下、ここにお座り下さい」 「え…えと……あの……グウェン…ダル、さん……怒ってる?」 「魔王陛下が昼を廻ってから漸くのお越しとあっては、怒っていない方がどうかと思うが如何か?」 「ご…ごもっともデス……」 しょぼんと肩を落とし、身を竦める有利に、グウェンダルはまた指示を出してきた。 「だから、ここに座れと言っている」 「ええと…グウェンのお膝に、俺…乗るの?」 「早くしろっ!」 「は…はいぃっ!」 大喝されてわたわたとグウェンダルの膝に乗っかれば、腿や背後に感じる逞しい筋肉に、嫌でも昨日のことが蘇ってくる…。 ここで、コンラートに抱えられて…雄蕊を恥ずかしい場所に突き込まれてあられもない姿で啼き続けたのだ。 膝裏を子どものように抱えられ、ガーターベルトと蝶柄のストッキングも艶やかな腿を露わにされて…何度も何度も突き上げられた。 『ぁん…ゃあ……っ!』 『可愛い、ユーリ…ほら、またユーリの中で俺のが大きくなったの…分かる?ユーリの恥 ずかしい恰好に煽られたからだよ?』 恥ずかしい台詞を言われ…言わされ、耳朶を甘噛みされてこの卓上に白濁を放った…。 『う…わー……っ!』 いますぐここから全力疾走で逃げ出したいが、グウェンダルに更に叱られるのは必至であろう。 「グウェン…重くないかい?それに、ユー…いや、陛下が起きてこられなかったのには俺にも責任があるんだよ。だから…あまり怒らないでもらえないか?」 「そうか、ではお前も同罪だな。コンラート、そこの机の上で《もうしません》の書き取りをしろ一枚の用紙に100個…それを10枚書け。陛下はここでお書き下さい」 そう言って差し出されたペン軸に、コンラートは息を呑んだ。 基本的に、文具の共有をよしとしないはずのグウェンダルが差し出したのは、彼愛用のペン軸…昨夜、有利の後宮に飲み込ませたものであった。 『まさか…グウェン……知っているのか?』 ひやりと変な汗が背筋を伝うが、聞いて藪蛇になるのはもっと望ましくない。 言われるままに席に着き、子どもの時以来の反省文を延々書き続ける。 ふと見ると…有利の背中から覆い被さっているグウェンダルが、渋面のままで有利の文字に指導を入れていた。 「まだこんな字を書いているのか?仕方のない奴だ…。ほら、こうして書くと美しい筆跡になるだろう?」 「あ…本当だ!凄ーい」 「ああ…なかなか、綺麗だぞ?」 笑みを含んだ…腰に響くような重低音で囁かれると、有利の背筋がびくりと震えてしまう。 「ちょ…あんたそんな良い声で首筋に息かけんなよっ!」 「掛けたつもりはない」 「もー…無自覚?兄弟揃って声佳すぎんだからあんたらはさー…」 「私の声に弱いのか?」 ふ…と耳朶に甘い声を掛けられて、有利はふるりと肩を震わせた。 「ゃ…っ!」 「なんだ、妙な声を出すな…」 《こちらまで、おかしな気分になるではないか…》艶かしい声音で囁く美丈夫に、ちらりと意味ありげな微笑を投げかけられると…べきりっ!とコンラートが持っていたペン軸がまっぷたつに折れた。 「おい、コンラート。人の愛用品を折るとは何事だ。弁償して貰うぞ?」 「は…す、すみません…」 怒りをふつふつと煮え立たせながらも、コンラートは頭を上げることが出来ない。 『グウェン…やりますね……』 いつも可哀相な星回りにある兄が、立派にツェツィーリエの息子なのだと実感したコンラートであった……。 おしまい
あとがき ええええぇぇぇ…!?こんなオチ!? …と、がっかりされているのではないかと大焦りな狸山です。 しまった…リクエスト通りなら1で止めておけばよかったですね! ついつい1では不完全燃焼だったものですから、2では羞恥プレイもどきではっちゃけてしまい、はっちゃけたしわ寄せにグウェンダルが気の毒なことになりそうだったので名誉回復(?)をはかったところ…なにやらもともとのリクエスト内容から大きく逸脱してしまったような…。 うう…す、すみません…!羞恥プレイ大好きなもんですから…。そして、グウェンダルも好きなもんですから…っ! リクエストして下さったゆりな様、こんなんでもよろしいでしょうか!? ブラウザバックでお戻り下さい |