「次男天獄」 ※ゆりな様のリクエストで、「眞魔国アニメ版前提、灰色次男と平均的有利がつきあい始めの時期、次男は底なしの欲望を有利に押しつけてはならじと我慢しているが、そんな次男の一人エッチを偶然見てしまった有利が、自ら次男が満足するまでエッチをして欲しいと訴えて…。どうなる次男の自制心!どうなる有利の腰!」…というお話です。 「あんたが…好きなんだっ!」 「ユーリ…」 離れている時間の長さがそうさせたのか、それとも…もうずっと前からこの想いは芽生えていたのか…。 眞王の命令で有利から離反することを余儀なくされていたコンラートが再び眞魔国の地を踏んでから数ヶ月の後、有利は思いの丈をコンラートにぶちまけることとなった。 想いに気付いたときは悩んだし、相手にされないのではないかと…最悪、有利と気まずくなることを恐れてコンラートが再び眞魔国を去ってしまうのではないかと恐れた時期もあった。 けれど、どうしても膨らみ…成長した想いの奔流は押さえておくことができなくて、結局…ほんの些細な遣り取りの中で溢れ出てしまったのだった。 恐怖と…奇妙な安堵に満ちた一瞬を乗り越えた後、有利の身体はすっぽりとコンラートの腕の中に収まった。 それからの数週間というもの有利の頭蓋内にはお花畑が広がり、色鮮やかな蝶々がほわほわと飛び交うような心地が続いている。 『しあわせ…幸せ、しあわせだよぉ……っ!』 * * *
「まいったな…」 自室に戻ってきたコンラートは深い溜息をつくと、彼らしくもない無造作な動きでソファに身を投げ出した。 疲れているわけではない。 寧ろ…活力・精力が有り余っているのだ。 はぁぁぁ〜…… 深い深い溜息が、肺活量の壮大さを誇るように、長く長く続いていく。 「ユーリ…ああ、ユーリ…っ!」 精悍な面差しを歪め、沈痛な影を琥珀色の双弁に掠めながら苦鳴する様子をみれば、大抵の者は《御主君のために心を痛めてらっしゃるのねっ!》と胸をときめかすことだろう。 その見解もあながち間違ってはいないのだが…。 「ユーリ…ああ、なんだってあの方は、あんなにも可愛らしいんだ…っ!?」 グリエ・ヨザックが聞けば、《あんた…すっかり変っちまったもんだねぇ…》と呆れ顔で嘆息するであろうし、フォンビーレフェルト卿ヴォルフラム辺りが聞けば、激怒して大暴れすることだろう(彼はいまだに、自分の婚約者だと信じて疑わない少年が誰のものになってしまったのか気付いてはいないのだ)。 が…ウェラー卿コンラート自身は至って真面目なのである。 「あんなに愛らしい仕草をされては、その辺りの草むらに押し倒してしまうじゃないか!」 ある意味、大シマロンに滞在することを余儀なくされていた日々よりも真剣に、現在の状況に懸念を抱いている。 何しろ、有利から離反している間は《どう転んでも赦されるはずがない》という、ある種の諦観があった。 あの頃にはとにかく《ユーリが幸せでいてくれればそれでいい》との想いで心の痛みを癒やし、縋り付くようにして辛さに耐えていた。 そうやって生きていくしかなかったのだ。 だが今…コンラートは史上空前の幸福の中にあり、それ故(ゆえ)にこそ苦悩しているのである。 昨夜も大変だったのだ…。 ヴォルフラムが親戚筋の結婚式でビーレフェルトの領地に呼び出されたおかげで、広い魔王居室のベットで事に及んだコンラートは腕の中で絶頂を迎えた有利ににっこりと微笑みかけられた。 『ふわぁ…凄っごい気持ちよかったーっ!』 色っぽさとか恥じらいとかいったものには欠けるものの、健康至極なその発言は、コンラートにとっては実に愛らしく感じられた。 《そんなに気持ちよかったのならもう一度》…と思うのが、正直な男心というものだろう。 だが…実に清々しい表情で有利はにぱりと笑った。 『溜まってたもんが全部出たみたいに、なんか身体がすっきりしたよっ!おかげで今日はぐっすり眠れそうだー……』 そう言うなり三秒も経たないうちに…健やかな寝息を立て始めたのである。 『えーっっ!?』 心地よさそうにすやすやと眠る少年に手が出せるほど、コンラートは非道な男ではなかった…。結局、泣く泣く自室へと帰ってきたのである。 しかもこれは昨夜に限ったことではない。 幾度かの会瀬でじっくりと開発を施した有利の身体は感じやすく、蕩けやすい肉体にはなったはずである。だが…その体腔内に内在された精神は極めて健全なものであり、すっきり爽やかなセックスを一回こなすと、大抵満足しきって眠ってしまうのである。 今日は今日で、ツェツィーリエに押し切られて可愛いドレスに身を包み、ガーターベルトとストッキングというコンラートのツボ所の衣装をフル装備してくれたにもかかわらず…さり気なくベットに誘うコンラートに対して、 『あー…窮屈だよー、口紅がべたべたするよー…。早く脱いで風呂入りたいよぉー』 と、涙目で訴えられては堪らない…。 そのまま物陰に連れ込みたい…という欲望を、爽やかな笑顔の影にきゅうきゅうと押し込み、紳士然とした態度で自室にお連れしてしまった。 「うー…あぁ〜…母上はご覧になったんだろうな…ユーリの腿…」 我ながら情けない声が漏れてしまう…。 抜けるように白い肌に、銀と薄紫の小花をあしらったガーターはさぞかし映えることだろう…。恥ずかしがる下肢を割って、どんな形状の下着なのかまじまじと観察したい…。 「あの衣装のままベットにお連れできればどんなにか…いや、いつも通りの服だって別に構わないんだ…もーちょっとこう…何回か余計に出来れば……せめて2回…出来れば3回……いや、ちょっと次の日に響いても大丈夫な状況なら4回とか…」 正直すぎる心情を吐露していると、ついつい自室という気楽さも手伝って…少年時分のように己の下肢へと手が伸びてしまう。 「………っ」 微かな羞恥と…瞼の裏に結像する有利の痴態を肉体的な快楽で裏打ちしたいという欲望…。そんなものが綯い交ぜになって…何とも言えない背徳心に煽られると、彼らしくもなく息が上がってしまう。 ぺろ…と紅い舌が淫靡な動きを見せて唇を嘗め、無骨な掌が硬く勃ち上がり始めた雄蕊をゆっくりと擦り上げていく。 「ユー…リ……っ」 くらりと目眩うような感覚が掠め、ぬちりと音を立てて先走りを塗り込めれば…掌の動きはスムーズなものへと変わっていき、勝手知ったる指先がそそり立つ先端部分を嬲って快楽を深めていく。 「ユーリ、あぁ…嘗めて……下さい…っ!」 悩ましい声音を漏らしながらダークブラウンの頭髪をぱさりと振るい、空いている方の手で掻き上げる。一方の手は勿論…露出した強大な肉を擦り上げ、絶頂へと導こうとしている。 「く…ぅ……っ」 咄嗟にハンカチを被せて白濁を受け止めるが、脳裏に浮かぶ有利の…愛らしい唇や小さな舌がぱふりと雄蕊に添えられる様を夢想すれば、再び勢いを増したものが精気を漲ぎらせ…手を離すことが出来なくなってしまう。 「ユーリ…ユー…リ……っ」 狂おしく名を呼びながら、コンラートがその日吐き出した熱情は…途中で数えることを断念するほどの回数に及んだ。 《若さの証明だ》…と、コンラートは主張したいだろうが…グウェンダルが知ればこう断言することだろう。 『お前が助平なだけだ』 …と。 * * * トントン… トントントン…っ! 悶々とした日々を送るコンラートが、自室での自慰を習慣化させつつあったある日のこと。とっぷりと日も暮れた時分に、居室の扉が切羽詰まったような勢いのノックを受けた。 一体何事かと扉に近寄る際にはやや不機嫌だったコンラートも(有利のことを考えながら、また自慰に耽るつもりだったらしい。思春期の中学生並である)、扉の向こうから感じられる存在感に、すっかり機嫌を直してしまう。 姿を見ずとも分かる…この気配は有利のものだ。 扉の向こうの彼は、どこか切羽詰まったような気配も漂わせていた。 「どうしました?ユーリ…」 「あ…あのさ?今、部屋入っても良い?」 「ええ、勿論…あなたに対して閉じる扉など持ち合わせておりませんよ」 扉を開けると、案の定普段と異なる表情を浮かべた有利が頬を赤らめながらコンラートを見上げていた。彼は初夏というこの季節には不似合いなロングコートにすっぽりと全身を覆われており、人目を忍んでここまでやってきた様子であった。 ヴォルフラムを寝かしつけてからこっそりとやってきたに違いない。 「ユーリ、それで…今日はどうしたんですか?」 有利は普段、コンラートの居室を訪ねると決まって座るソファにも腰掛けず(何度か勧めても固辞してきた)、伏せ目がちに唇を噛みしめたままなかなか口を開かなかった。 華奢な手はがっしりとコートの合わせを掴み、すじが浮かぶほど強く握りしめているのが分かる。 「ゴメンね…もう、寝るトコだった?」 「いいえ、まだ宵の口ですから…。少し本でも読もうと思っていたところですよ」 《嘘です》 《一人エッチしようと思ってました》 まさか口に出してそんなことを言えるはずもなく…。コンラートは尤もらしいことを言いながら爽やかな笑顔を浮かべている。 しかし…次の瞬間、有利の口から飛び出してきた爆弾発言には、さしものコンラートも平静を装うことなど出来なかった。 「コンラッド…もし、嫌じゃなかったら…俺を、今から抱いてくれる?」 「…は?」 その瞬間…コンラートは思わず、《自慰のやりすぎで聴覚異常を起こしているのか?》と、自分で自分に自信が持てなくなった。 だが、すぐには返事をしてくれないコンラートに焦れたように有利は瞳を震わせ、耐えきれない様子で我が身を掻き抱くと…潤んだ眼差しでコンラートを見つめてきた。 「駄目…かな?」 都合の良い幻覚でないとしたら…有利の様子は淫欲に犯されているようにしか見えない。 濡れたように潤んだ瞳は、普段の健康的な闊達さを失った分…つややかな妖艶さを孕んで揺れ、何かに耐えるように噛みしめた唇は紅を差したようにあえやかな朱に染まっており、男を誘うように紅い舌がぺろりと舐め上げていく。 淡く上気した頬は水蜜桃のようにまろやかな流線を描いており、その下層で熟れ始めている肉体が、つるりとした舌触りを予感させて唾液が湧いてくる…。 「駄目なはずがないでしょう?寧ろ…今から冗談でした、なんて言うのは反則ですよ?」 「言わない…だから……お願い。いっぱい…して?」 抱き寄せた身体はコート越しにも熱を帯びており、しっとりと汗ばんだ肌から香るようなにおいが立ちこめ、コンラートの鼻腔を燻らす。 するりとコートの合わせ目から忍ばせた手が有利の腿を探れば、思いがけない感触にコンラートは狂喜の叫びを上げそうになった。 「ユーリ、まさか…?」 「ツェリ様が、コンラッドはこういうの好きだって言ってたから……こないだも、喜んでたって聞いたから……」 おずおずとコートを脱げば…無骨な茶色い布地の下に隠されていたものは、コンラートが毎夜《おかず》にしていたドレス姿を凌ぐ、なんとも妖艶なドレスであった。 有利の肌に映える水色と紫色とが淡く透けて、互いに蕩けるような色合いをたたえた配色で、煌めく小さなビーズがふんだんに配された生地は天の羽衣のようにふんわりと胸を包んでいる。 露わになったデコルテの美しさは特筆すべきもので、明瞭な鎖骨のラインには今すぐ歯を立てたいくらいだ。 ドレスの下にはきっちりとした体型補正肌着を装着しているらしく、少年であるはずの肉体は微乳の存在を疑わせる陰影を覗かせ、ほっそりとした腰を一層強調している。 そして何と言ってもコンラートを唸らせたのが、すらりとした下肢が右腿の付け根から露わになる深いスリットであった。 ひらりふわりとたっぷりドレープをとった裾野自体は長いのだが、そのスリットのおかげで下着が随分と大胆なハイレグであること…そして、コンラートの大好物(…)である蝶の柄入りストッキングと凝った造りのガーターベルトを際だたせ、ぬめやかな白い肌を美しく彩っている。 「よ…汚しても良いからって…言われたんだけど、本当に…良いの、かな?」 ここまで言われて手を出さない男がいたら、それはとんでもない変態だと思う(自分以外が手を出したら瞬殺するが)。 「俺で汚したいよ…今すぐ」 勿論、コンラートは少なくともそういった種類の変態ではないので(他の方面については色々な因子を持っているが…)、すぐさま深い口吻を交わすと、銀色の糸を引きながら抜き出した舌で、そのまま念願の鎖骨を嘗めあげるのだった。 「んん…っ!」 ドレスの胸元をそっと引き下ろせば、細かなレースを施された下着がお目見えする。 やわらかな細い銀糸を幾重にも織り込んだレースに紫と薄紅色の華模様が絡み、蔓草のような紐が巧みに支え合って有利の胸を押し上げ、まるで少女のように清楚な…だからこそ淫靡にも見えるふくらみを形成していた。 『母上…一体ナニを考えてこのような下着とドレス一式をユーリに?』 息子思いなのか、単にユーリで遊びたかったのか不分明である。 『まあいい…とにかく、感謝いたしますっ!』 つぅ…と布地の上から舌を這わせれば、暖かな唾液が沁みた布地の下から、先程よりも明瞭な硬さを持って桜色の突起が存在を主張し始める。 「ユーリはここ…好きだったよね?」 「ぁ…んん…っ!」 くちくちと音をたててしゃぶり、見せつけるように舌で押し上げれば有利は首筋まで朱に染めて瞳を潤ませる。 いつもなら《恥ずかしいからそういう言い方止めろよっ!》と、半ば本気で怒り出すのに…どうしたものか、今日は否定的な言葉を吐くどころか、なおもコンラートを喜ばせるような甘いおねだりをするのだった。 「噛んで…ね、お願い……痛くして、良いから……」 「……っ!」 確かに、実はそういう愛撫を有利が好むことは知っている。 口腔内に含み込んで舌先でちょろちょろと刺激した後、急に吸い上げて付け根を甘噛みする…それも、痛さと快感との境界域で適切に調整された刺激量を受けたとき、有利は高ぶりに直接触れられなくても花茎を勃ち上がらせてしまうのだ。 だが、有利はそれを自覚することを嫌がっていたはずだ。 《男》であることを必要以上に意識する有利は、自分が感じやすい身体であることにコンプレックスを抱いている様子だった。 ことに、胸を弄られて泣くほど感じてしまうことが女のようだと思うらしく(実際には、女性だってあんなに乳首だけを愛撫されて乱れたりはしないはずなのだが、言えばもっと恥ずかしがるだろう)、今まで許容したことはなかった。 それが…今日は一体どうしてしまったのだろう? 不思議に思いつつも目の前に晒された甘い肢体の誘惑には勝てず、コンラートは溺れるようにしてスリットの中へと手を忍ばせていった。 『母上…素晴らしいデザインです…っ!』 冗談みたいに布地の少ない下着は、沈静時にはどうにか花茎を包んでいたのだろうが…すっかり濡れそぼってしまった先端のぬめりと、勃ち上がってくる少年の勢いを押しとどめる程の拘束力はない。 コンラートが微かに触った刺激だけでぷるりと震えてしまった花茎は、窮屈な下着を逃れてスカートの下に入り込んでしまった。 その時…コンラートの心には、ついつい悪戯心が沸き上がってきた。 もしかしたら自慰生活がちょっぴり長くなってしまったせいで、持ち前の妄想力が大いなる翼を羽ばたかせてしまったのだろうか? 詩的な表現を敢えて避けるとすれば、《エロイ事ばっかり考えてたんで、この際エッチなお願いをしてみたくなった》…というところである。 「ね…ユーリ……」 「…何?」 荒い息をつきながら頬を染めていた有利は、悪戯っぽいコンラートの瞳に微かに怯えたような表情を浮かべた。 そんな眼差しが、余計に男心を擽るとも知らないで…。 「そのドレスの下がどうなっているか…捲って、俺に見せて下さいませんか?」 「……っ!」 …《変態》 いや、《羞恥心に耐えながら恥ずかしい姿を披露する恋人》を堪能したいというのは、相手の了承さえ取れていれば犯罪にはあたらないので、多少表現を軟らかくするとすれば…。 《助平》…というところか(あまり扱いは変わっていないような…)。 有利が目に見えてふるふると肩を揺らし始めたので。コンラートは最初のうち《調子に乗りすぎたか》と懸念していた。 だが…有利は意を決したように唇を噛むと、ゆっくりと…その速度が一層コンラートを興奮させてしまうとも知らずに、夢幻のように美しいドレスを捲って…欲望に高められた幼い花茎を恋人の目の前に晒したのだった。 「ユーリ…今日は一体どうしたんですか?いやらしい蜜をこんなに滴らせて…もしかして、乳首だけもう暫く弄ったら、イってしまうかも知れないね?」 「…っ!」 有利が密かに好む刺激…乳首の付け根を大きく含み、かりりと甘噛みする愛撫を繰り返せば、予言通り有利は極限まで花茎に蜜を溜め…ほんの少しの物理的刺激を加えるだけで達してしまいそうな様相となった。 堪えきれなくなったのだろう…殆ど無意識に己の花茎に絡めようとしていた手が、大ぶりな男の手に止められてしまう。 「…コンラッド…っ!も…イかせて…っ!」 切羽詰まったようにあえやかな息を吐く有利を赦さず、コンラートは婉然と微笑むと有利の足下に跪いた。 「姫…お手を煩わせることはありません。あなたの騎士に命じて下さい」 「え…え?こ、コンラッド…」 「命じて?ユーリ……」 《命じて》と言いつ…彼が何を求めているのかを理解して、有利はあうあうと空気を飲み込んだ。 コンラートは…有利に、おねだりしろと言っているのだ。 愛撫してくれと求めろと…。 どうかと思ったのも一瞬のこと…やはり、今宵の有利は普段とは違った顔を覗かせている。 「…な、嘗めて…俺を、イかせて……っ」 消え入りそうな、恥じらいに満ちた声…けれど、いやらしい台詞は明確にその意図を伝えてきた。 「ご命令の通りに…」 そんなことを言いながら、コンラートの手は器用に有利の両手首にしゅるりと腰のリボンを巻き付けると、後ろ手に縛ってしまう。しかもそのまま壁際に追いつめられた有利は、自分では高めることの出来ない欲望をコンラートに晒したまま、ふるふると花茎を揺らすしかなかった。 「なんていやらしくて、可愛いんだろうね?」 ちゅ…っと音を立てて先端にキスを送れば、悦びにうち震えるようにぷくりと雫が浮き上がり、限界に近いのか、白濁したものさえ滲ませて先端部分が潤っている。 「小振りで形がいいけど、流石にこんな華奢な下着では覆いきれないね…。ほら、すっかり下着からはみ出て…美味しそうだ」 「ゃう…っ!」 はむりと先端を含み込まれれば、痛いほどに熱く感じる粘膜が有利の花茎を嫌がおうにも煽り立ててしまう。そのままちるちると鈴口を嬲られ、溢れる蜜を吸い上げられ…器用な指が巧みな手淫で誘い込めば、有利はとうとう熱い白濁を放って果ててしまった。 「は…ぁ……っ」 もう、とても立っていることなど出来なくて…ずるる…っと壁に伝いながら頽れそうになるが、そんな肢体を羽根のように軽やかに抱え上げると、コンラートはそのままふわりとソファに座らせた。 床に転がすなど、出来ようはずもなかったからだ。 だが…ソファにお尻をつけた途端、有利の身体が甘い苦鳴を上げて反り返った。 「…っ!」 「…ユーリ!?」 ただならぬ様子に…コンラートは有利の身体を反転させるとスカートをたくし上げ、白濁に濡れそぼる紐パンツもしゅるりと取り払うとすべらかな双丘を露わにした。 「…駄目…っ!」 なけなしの力で抵抗しようとしても、コンラートの拘束をふりほどけるはずもない。そもそもの力もそうであるし、今は後ろ手に縛られた状態なのだ。 「ユーリ…まさか……っ」 一見したところ、すべやかな質感を持つ水蜜桃然とした双丘がごく普通に(男の眼前で剥き出しにされているということを除けば…)存在しているだけだ。 だが、きゅっと恥ずかしげに閉じられた蕾からかおる香気には覚えがあった。 これは強い催淫性を持つ卵状の固形物…《ラブエッグ》の薫りの筈だ。 有利が望んで手に入れるはずもなく、ましてや自分からこんな場所に含ませることなど考えられないことだった。 「母上に勧められたのですか!?…悪戯にも程がある…っ!子どもにこんな…っ!」 コンラートは怒りに目が眩みそうになった。 ラブエッグは粘膜から直接吸収できる媚薬で、嗜みなく性欲に溺れた女が夜ごと精力の限りを尽くして男に抱かれる際に使用するものである。 こんな強い媚薬を使われては、有利が常になく乱れ、素直に欲望を口にするのも頷ける。おそらく…強すぎる劣情に炙られて、コンラートに抱かれるまでの間、気も狂わんばかりであったに違いない。 しかもゆっくりと熔けていく性質故に、挿入時には結構な異物感があったはずだ。純粋無垢な少年には、あまりにも大きな物理的・精神的負荷も掛かったことだろう。 『辛かったろうに…っ!』 こんなものを有利の肉体に使用するとは…幾ら母とはいえど赦されることではない。 「母上には、後で厳しく言っておきます。すみませんユーリ…俺の母のせいでこんな…っ!」 しかし、有利の返答は予想外のものだった。 「駄目…っ!ツェリ様を、叱らないで…っ!」 「…何故です!?」 「これは…お、俺が頼んだんだよ…っ!」 「母を庇って下さるのですね?ですが…今度ばかりは流石に悪戯が過ぎます!」 「違うんだよ…っ!本当に、俺があんたに好きなだけ抱いて欲しくて頼んだんだ…っ!」 「俺に…好きなだけ?」 何故急にそんなことを…それも、媚薬をつかってまで為そうとしたのか?コンラートは急に背筋が薄ら冷えるような感覚をおぼえた。 「…………ユーリ…何故急にそんなことを思いつかれたのですか?俺はいつだって好きなだけあなたを抱いて…」 「…違うだろ?」 静かに、有利は呟く。 その瞳は追いつめられたような切なさを含んで、うっすらと涙さえ浮かべていた。 「満足してたら…あんなに一人エッチしたりしないだろ?」 その言葉の意味を理解した瞬間…コンラートは生まれて初めて、《宇宙に逃げたくなるほどの羞恥心》を覚えた。 『今すぐ星になりたいっ!!』 しかし…しかし…一体何故!? 何故…有利がその事を知っているのか? コンラートはポーカーフェイスのままで涼やかな表情を崩さなかったが、内心は動揺の嵐である。背中にだくだくと脂汗をかきつつ頭蓋内に大量のクエスチョンマークを飛ばすのだった。 気配に聡いコンラートのこと…いくら自慰に没頭していたとはいえ、有利の気配に気付かぬはずがない。 「ユーリ………どうして…それを……?」 「ごめんね…。俺、コンラッドを驚かせようと思って…アニシナさんが発明した《気配キエール魔の36号》を使ったんだ…。それで気配を隠して部屋に入って…吃驚させるつもりだったんだけど…そこで、見ちゃったんだ……。コンラートが一人でしてるトコ」 『アーニーシーナーかーいっ!!』 大体それ、下手をすると暗殺用の道具として使われる危険性がないか? コンラートは色んな意味で、その道具が世に出回る前に始末をつけるべきだと思った。 伏せ目がちになって自嘲するコンラートに、有利は勢いよく頭を振った。 「違うよ…俺の方こそ、恥ずかしくなったんだ…。俺…コンラッドと恋人同士になれたのが嬉しくて嬉しくて…浮かれちゃってて…すっかすり忘れてたんだ。コンラッドが《夜の帝王》なんて呼ばれるくらい、精力絶倫なんだってコト…」 「……ちなみに、その呼称は一体誰からお聞きになったんですか?」 「…ヨザック……」 「ほう…」 奴のことだから在ること無いこと吹き込んでいそうだ…。今度、問いただしておく必要があるだろう。 「だから、俺みたいなガキ相手じゃ満足できるわけないよな…って思ったら、凄く哀しくて…寂しくて……」 ぽろ…と、堪えきれずに零れた涙が、綺麗な雫になって華奢な顎から滴っていった。 「それは違います、ユーリ…っ!俺は……っ!」 「少なくとも、あんなあっさりしたエッチじゃ満足は出来なかったんだろ?」 「……それは…」 満足していたら自慰などするはずがない…それは、まさにその通りであった。 「最初はどうして良いのか分かんなくて、随分悩んだんだ。そしたらツェリ様が声を掛けてくれて…つい、うちあけたら…怒られちゃったんだ。コンラッドを満足させることができないのなら、恋人の資格…ないって……」 実は、ツェツィーリエはそうとまで言ったわけではない。 『魔族にとってセックスは愛の代名詞とも言える行為ですもの。ゆめゆめ疎かに出来るものではありませんわっ!ましてやコンラートは愛の狩人たるあたくしの血を誰よりも色濃く受ける息子…性の奥義を究めた者として、愛する陛下のお身体を麗しく開花させ、しとどに濡らしたいと考えるのは当然のことですわっ!陛下…あたくしからもお願い…っ!是非、コンラートを満足させてあげてくださいな…っ!』 滔々とかき口説くように訴えて下さったわけだが、要約すると有利にとってはその様な受け止めとなったらしい。 「そんで、このドレスと媚薬をもらって…ここに来たってわけ」 「なんとまぁ……」 呆れたものやら感心したものやら…何とも大まじめに、有利はコンラートの欲望解消の手だてを考えてくれたようだ。 幼いなりにコンラートを想い、精一杯の愛情で背伸びをしてくれたのだ。 そう思えば、自慰を見られてしまったという羞恥を凌駕する愛情が、じんわりと胸に沁みていく…。 『全く…敵わないな、あなたには……』 全てを明かしてしょんぼりと項垂れる有利は、精神的ショックが大きかったのだろうか…いっとき、性的な興奮を忘れてしまったようにちんまりと肩を竦めている。 だが…使われた媚薬の効果は、一度手淫で果てたくらいで収まるような代物ではない…。 「でも……っ!」 「あの手の薬は習慣性があるんですよ?あなたの身体に害があるようなものは、あなた自身が選んで使うのだとしても俺は赦しません。いいですか?」 「はい…ゴメンナサイ……」 厳然として強く叱るコンラートに、ますます有利は小さくなってしまう。 コンラートが自分の身を思っていてくれることが理解できるからこそ、初めてと言っても良いほど強い語調で叱られることに、奇妙な快感さえ感じてしまうほどだ。 「約束して下さいますね?」 「う…うんっ!もう絶対しないっ!!」 「では、覗きも止めていただけますか?」 直截な言い方ながら、先程の真剣な語調とはうってかわって…苦笑すら浮かべて言われたのだが、内容が内容なだけに有利の罪悪感はより強いものになった。 「…そ、それは…本当にもー、ゴメンナサイっ!二度とやりませんっ!!」 ぺこぺことちいさな頭を何度も下げて謝罪する有利に、コンラートの胸にはむらむらと悪戯心がわき出してくるのだった。 「本当に?」 「うん、絶対しないから…っ!」 「本当かなぁ…?」 「し…信じてくんないの?」 うる…っと黒瞳に涙を滲ませて訴える有利に、コンラートは艶のある笑いで応えるのだった。 「もう二度としたくなくなるように、お仕置きをしても良い?」 「お仕置き…って……」 「ユーリにも、俺と同じくらい恥ずかしい想いをして貰おうかな」 「……っ!」 コンラートと同じくらい恥ずかしい思い…一体、何をされるのか。 何をしなくてはいけないのか…。 鼓動がいやに強く拍動を始めるが、不快というより…どこかその興奮が、淫蕩な悦びへと繋がっていることに有利は気付いていない。 身体の奥がじんじんと熱く拍動し…蕩けるほどに潤んでいることにも…。 それが、コンラートに甘い羞恥を味あわされることに対する《期待》なのだと…まだ、有利には理解できてはいなかった。 ただ、口元に引き寄せた両手を揉みしだき…かり…っと噛みしめた指の節が、奇妙な甘さを感じさせることに驚いていた。 「良い?」 琥珀色の瞳が細められると、興奮を示すように鮮やかな銀の光彩が煌めいた。 「……」 嫌だと言えば、コンラートは決して強要しないだろう。 あくまで、彼は有利の同意を求めているのだ。 「…良い…よ……」 こくりと頷く有利の体腔内で、期待に打ち震える何かが熱く疼いていた。
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