「グリューネヒルダ号の変人」F












コンラートside:F



 有利の身体から辛うじて絡んでいたエプロンと靴下を脱がせると、コンラートは自分も種々の体液で汚れてしまった衣服を脱ぎ、有利を横抱きにして浴室に向かった。大理石の浴槽にはまだ湯を張っていないはずだが、取りあえずシャワーで流している間に張ればいいだろう。

 …と、思ったのだが……脱衣所に入るなり、硝子張りの壁面が湯気で曇り、誰かが入浴しているのが分かる。
 誰であるか…など、湯気越しにも明瞭に分かる。

 グリエ・ヨザックだ。

 ご丁寧に淡いピンク色の泡風呂にした中に薔薇の花弁を散らし、コンラート達が入ってくるのに合わせてシンクロよろしく筋肉隆々とした下肢を一本水面から伸ばしてくる。
 長めの後ろ髪をバレッタでアップにしているのがまた小憎らしい。

「ヨザ…お前〜……」
「よ…ヨザックさんっ!?」

 身を任せきって脱力していた有利も、コンラートの剣幕に吃驚して腕の中で飛び跳ねる。

「いよぉ〜う。グリ江ちゃんたら、気遣いが細やかでしょう〜?そろそろ来る頃かなーと思って、浴室の準備して待ってましたぁ〜」

 確かにこのスウィートを共有しても良いと言った。
 言ったが…だからといって、ここまで共有することはないだろう?…と、コンラートは歯噛みする。
 バルコニーに出ればジャグジーもあるのだが、どのみちこの様子だとそちらにも付いてくるだろうから意味はない。

「坊や、アナルビーズはもう取っちゃったのかい?」

 意地悪な笑みを浮かべてからかうように声を掛けてくると、コンラートは内心ぎくりとしてしまう。
 よりによってその話題を振るか…。

「……はい…。でも…幾らヨザックさんでもあれはやりすぎじゃないですか?」
「へぇ…?」

 一瞬きょとんとしてから目線を送ってくるから、《合わせろ!》と必死で眼差しを送る。
 《に〜んまり…》としか表現できない彼特有の笑みが、激しくコンラートの焦りを誘った。

「やー…坊やの反応が見たくてさ」
「いや…その……元はと言えば、俺が変態くさい趣味の持ち主だからいけないんだよ。ユーリ…すまない。だが…幾ら誕生日と言っても、些かサービスが過ぎるぞ?ヨザ…」
「あー…ハイハイ。そーねぇ〜…」

 《そういうことですか…》説明臭いコンラートの台詞から大体の流れを汲み取ると、ヨザックはニヤリと嗤って手招きをした。

「ま、そんなトコに突っ立ってないでおいでなさいって、二人とも…」
「え…でも……」
「今更恥ずかしがること無いだろ?どうせ男同士なんだ、温泉みたいなもんじゃねーか」
「あ、確かに」

 こっくりと有利は頷く。

『納得しちゃったんだね…』

 内心溜息を漏らしつつも、嘘をついている分コンラートの押しは弱い。
 ヨザックに警戒を示しつつも、手桶でざらっと身体を流すと浴槽に漬かった。

 流石に最高級のスウィートルームの浴槽だけあって、男三人で漬かっても容積にはまだ余裕がある。しかも滑ってしまわないように壁面が緩く窪んでいるので、コンラートは有利を抱えたまますっぽりと収まった。

「はぁ…気持ちいい……」

 《大のお風呂スキー》を自認する有利は思わず状況も忘れて、うっとりと身を湯の中で緩めた。
 が…急にぴくんと身体が震える。

「あ…」
「どうしたの?ユーリ…」
「えと…お、俺…お風呂でる。ゴメン…汚しそう……」

 わたわたと藻掻くけれど、泡風呂であることや脱力していることが災いして上手く湯から出ることが出来ない。

「ああ、ケツの孔からコンラッドのザーメンが溢れてくんだろう?気にしなくて良いって。グリ江はこいつのザーメンなら、寧ろ直接口つけてちゅーちゅー吸いたいくらいだから」
「ヨザーっ!!」

 ヨザックの腕が有利を引き留めるように絡んでくる事と、話題の両面と…どちらにより多く突っ込んで良いのか分からない。

「ほら…綺麗にしてやんよ…股開けな?」
「だ…駄目…ゃあ……ヨザックさん……っ」

 湯の中の動きなので正確には分からないが、ヨザックの指は有利の蕾の中に分け入りとろりと溢れ掛けた白濁を掻き出そうとしているらしい。有利の身体がぴくん…ぴくんっと跳ねた。

「ひゅう…色っぽいじゃねーか。コンラッド、あんた短期間に随分調教進めやがったな?いゃ〜ん、変態〜。ひゅーひゅーっ」
「よせっ!ユーリに触れるなっ!」
「あー?独占欲強ぇーなぁ〜。んじゃ、あんたがやって良いからさ…ちょっとはお裾分け寄越せよ」

 《じゃないと、バラしちゃうぜ?》…そっと耳朶に囁かれて(ついでに犬歯でかしりと首筋を甘噛みされ…)コンラートは苦悩にくらりと眩暈を感じた。

『しまった…』

 何とか誤魔化して、部屋から閉め出しておけば良かった。
 一度懐に入り込まれれば、この男は大抵の無理難題は押し通してしまうのだから…。
 
「なぁ…坊や。俺の指が嫌なら、コンラッドに掻き出して貰いなよ」
「え…?」
「ただね?ちょーっと俺にもその様子を見せて欲しいのさ。だって俺…コンラッドが大好きなのに、ずーっとお預け喰らっててよ?コンラッドの為に東奔西走して頑張ってるってのに、ちっともご褒美がないんだぜ?」
「え………っ!?」

 有利はぎょっとして、コンラートとヨザックへと交互に視線を送る。
 
「よよよ…ヨザックさんて……コンラッドが好きなの?」
「そーよーん?それなのに恋敵の坊やを助けてさぁ…涙ぐましいと思わない?」
「そりゃあ…そうだけど…でも、俺…コンラッドはあげらんない…」
「分かってるって。だからお裾分けって言ってるデショ?」
「でも〜…俺が恥ずかしいカッコしてんのが何でお裾分けになるの!?」
「なるなる」

 有利は戸惑っておろおろとしていたが、そのうち…救いを求めるようにコンラートの方に目線を送ってきた。見捨てることなど出来よう筈もない。
 コンラートは覚悟を決めて爆弾発言をした。 


「………ヨザ……そんなに見たけりゃ俺のを見せてやる」


 苦汁でも飲み込んだみたいな声を絞り出せば、ヨザックは《してやったり》という顔をして嗤い、有利は豆鉄砲を喰らった鳩みたいな顔をする。
 
「一回だけだからな…!瞬きしていて見逃したなんて手は通じないぞ?」

 ざば…っと水音も荒々しく立ち上がれば、ヨザックは《ひゅう…!》と口笛を吹きながらニヤニヤと茶々を入れてきた。

「よっ!男前〜。恋人の為に身体張っちゃってるねぇ。あ…ちょっとなら舐めたり指先入れたりしても良い?」
「見るだけだと言っただろうか!」
「見せるだけでも駄目ーっ!」

 《うわぁあんっ!》と、泣き出しそうな顔をして有利が間に分け入ってきた。
 
「えー?ケチー」
「だって、ヨザックさん…近くで見せたら絶対に悪戯しそうな気がするもんっ!」

 流石の有利も、色々と見抜き始めたらしい。

「お願い…。やっぱり俺ので我慢して?」
「どっしよっかなー」
「ヨザ…っ!」

 両手を合わせて、涙ぐんだ瞳で上目づかいにお願いすると…流石のヨザックもへにゃりと頬が綻んでくる。
 好みのタイプとは違うと言っても、やはり有利の魅力にはふらつくものがあるらしい。

「じ…じゃあ…見ててね?」

 有利は真っ赤に頬を染めながらも浴槽の縁に腰掛けると、ゆっくりと淡い薔薇色に染まった内腿を開帳して見せた。

「やっぱ…媚薬の効果はまだ切れてないみたいだな」

 ヨザックの言葉に有利はひくりと内腿を引きつらせる。
 そう…ヨザックとコンラートの前に晒された股間では…再び花茎が息づいていたのだ。
 もう吐き出すものも無さそうなのに、下腹に凝る熱は何時までも有利を責め続けているようだ。

「コンラッド…中和剤は欲しくないかい?」
「……持っているのか!?」
「ああ…一通り持ってきた中に、適合するヤツがあったのさ。なぁ…欲しい?」

 野性的でハスキーな声に欲を滲ませて、ヨザックはラムネ菓子に似た錠剤をちらつかせてみせる。

「……俺のを見せろと?」
「そいつは坊やが嫌がったろ?俺もワルじゃねぇ…」

 時代劇の悪役みたいな台詞回しを一体何処で修得してくるのやら…ヨザックはがっしりとした指でコンラートの濡れた髪を掻き上げながら至近距離で囁く。

「俺の前で、シテみせてよ。よーく見えるように、俺に向いて背面起座位でね」
「……この…変態っ!」
「あんただって変態だろ?ほらほら…坊やが待ってるぜ?」

 有利は半泣きの顔にはなっていたが、苦痛を感じるほどに媚薬で煽られる現状を考えると…やはり中和剤は欲しいらしく、浴槽の中で立ち上がったコンラートの腰に頬を寄せてきた。
 そして…おずおずと唇を開けると、今は力無く下垂していた雄蕊を誘い込んだのだった。

「ん…っ…ユーリ…!?」
「おぉ〜…良い舌遣いじゃないか。喉奥まで銜えられるかい?坊や…。カリのとこに下の歯を軽く引っかけてプリンっと弾いてみな?」
「ん…くむ……」

 律儀にヨザックの指導を忠実に聞く有利は、懸命に覚えたての舌戯を絡めてくる。

『う…上手い……っ』

 流石にこういった行為に慣れたヨザックの指導だと的確なのだろうか?ポイントを捉えた口淫はじわじわとコンラートの欲情を再燃させていく。立ったままでは少し苦しいほどだ。

「く…ユーリ……。無理は…しなくて良いから…」
「らい…りょうぶ…」
「掠れた声も色っぽいねぇ…旦那。ぞくぞくするぜ…」

 獣の欲に浸った瞳がコンラートを視姦し、目線があわだつ肌を舐めるようにして上下していく。友人の視線を振り切るように有利を見詰めれば、ちいさな形良い唇が大きく開かれて男の雄蕊を銜える様が強い淫欲を掻き立てた。

『拙い…』


 欲情と煙る湯気の熱気でくらくらして…常識を見失ってしまいそうだ。




有利side:G 



『おっきぃ…』

 口腔粘膜を圧迫する雄蕊の存在感に、有利は窒息しそうになりながらも舌戯を加え続けた。
 明るい部屋で…それも、第三者が見守る中での口淫はかなりの羞恥を掻き立てるのだが、ヨザックは男臭いのに何故だかするりとその場の雰囲気に溶け込んでしまう滑らかさを持っており、行為に没頭すればするほど彼が居ることを異常とは感じなくなってきた。

「良いぜ…そろそろ口から出してみな?」
「ん…」

 ヨザックに言われるがまま行った口淫は余程コンラートを煽ったのだろう。幾度も達した後とは思えないくらい早い回復を見せて、雄蕊は腹を打たんばかりに成育していた。

「旨そうだな…。俺も銜えてぇ…」

 ヨザックがぺろりと肉厚な舌で唇を舐めるから、有利は激しく焦ってしまう。

「だ…駄目だからっ!」
「分ーかってるってぇ…。ほら、坊や…自分でこいつを跨いでみな?」
「う…うん……」

 ヨザックへの対抗意識もあってか、彼には触れることの出来ないコンラートを独占するという罪悪感と優越感とが有利の行動を大胆にさせる。
 
 自分から双丘を両手で抱えて蕾を晒し、コンラートの先端へと触れさせれば…熱く滾り、先走りに濡れた鈴口が粘膜を驚かせる。先程までずっと交わっていたのに、改めて触れるとこんなにも熱く感じてしまう。

 コンラートの指が誘い込むように蕾に掛かれば、ふわ…っと拡げられた蕾からたらりと白濁が溢れてきた。

「コンラッドのちんぽに蜜でもかけるみてぇだな…良く濡れて、いやらしいねぇ…坊や」
「…っ…」

 ここまで来るとヨザックの卑猥な言葉も身体の火照りを高める道具にしかならず、有利は《くぷ…》っと音を立ててコンラートの雄蕊を体腔内に招き入れてしまった。

「ぁ…っ…くん…ぁ……」

 背筋を反らしながら自重を掛けていくと、既にとろとろに解していた内腔は滑りながら男の肉棒を受け止めていく。
 
「おーお、可愛い乳首してんなぁ…まーだピンク色で、綺麗な形してやがる」
「ひ…っ!」

 胸の桜粒を《ぴん》…っと指先で弾かれれば、ゆっくりと体重を乗せていくことなんか出来ない。コンラートの腿に手を突きながらではあったが…殆ど一気に雄蕊を呑み込んでしまう。

「やー……っっ!」
「お…っと……」

 あまりの摩擦と急激な悦楽に果てそうになってしまうが、あろうことか…《触れない》という約束をしたはずのヨザックが花茎の付け根を握りしめてくるではないか。

「だめ…やぁ……さ、さわんないって…言ったのにぃ……」

 痛みと快感の丁度境目のような刺激を与えながら、ヨザックの太い指は《ぐちゅ…》っと音を立てて鈴口を潰すように弄る。そのまま上下されれば甘い嬌声がひっきりなしに溢れ出して、きゅ…きゅっとコンラートを締め付けてしまった。

「く…はぁ……っ」

『コンラッドも…感じてる……』

 首筋にセクシーな喘ぎ声と熱い息が掛かる…。
 前を別の男に弄られながら後宮を恋人に犯されるという異常事態に、有利は心とは裏腹に腰を揺すってしまうのだった。

 早く…中和剤が欲しい。
 こんな風に乱れすぎる自分は恥ずかしすぎる。

「お願い…」
「あどけない口調がまた可愛いねぇ…。どーだろ?アナルビーズと媚薬でぐちゅぐちゅになってる今なら、二輪刺しとかもしけるかな?」
「ヨザ……っ!」

 有利を背後から抱きしめ…やはり急激な悦楽によって息も切れ切れなコンラートが、それでも瞳に険を込めて友人を牽制するのが分かった。

「冗談でも止めろ…っ!」
「へいへい…しょうがないな。じゃあ、これで我慢しといてやるよ」
「ふ…わ…っ」

 ヨザックは身を屈ませると有利の花茎を旨そうに口に含むと、ちゅぐちゅぐと慣れた動作で愛撫を加えていく。肉厚な舌と唇は乱暴に扱っているようでもえも言えぬ快楽を醸しだし、後ろの小袋を吸い上げながら大きな掌で茎を上下されればビクビクっと若鮎のように花茎が震える。

「も…駄目……いっちゃ……」

 ぼろぼろと涙を零してよがる有利の前で、ヨザックが《ざば》…っと立ち上がる。
 
「……っ!」

 そこには、猛々しくそそり立った雄蕊があった。
 コンラートよりも幾らか浅黒いそこは奥から滲むような紅色を纏い、先走りを通り越して白濁を涎のように垂らしている。
 その主たるヨザックもまた…口角に垂れた有利の蜜を旨そうに舐め上げていた。

「さーて…頂いちゃおうかな?三連団子と行きますか…」
「ヨ…ザック…さ……」

 ヨザックの腕が伸び…有利ごとコンラートの腰を捉える。
 反転させて尻を出させたところを一気に貫こうとしているのだろうか!?

「駄目…駄目……やーっっ!!」

 《コンラートの貞操危うしっ!》…必死になって藻掻いた有利は…全く予想外の動きをしてしまった。


 ガ…ッ!


「ぐぬほへ…は……っ…!」

 今…有利は……ヨザックのナニかを蹴ってしまった。ナニとはまぁ…言いにくいナニのことだ。
 本人も意識していなかった無作為な動きは、百戦錬磨のヨザックをして避けようのないトリッキーなものであったらしい。

 ヨザックは顔を真っ青にしたり赤黒くしたりしながら苦悶の表情を浮かべて撃沈し…コンラートはこの繋がった状況を何とかしようと有利の脚を背後から抱え、勢いよく突き上げて頂点を目指す。

「あっ…あ……ああああぁぁぁ……っっ!!」

 ヨザックの拘束を逃れた花茎は、突き上げられる度にぷくぷくと白濁を滲ませていたかと思うと、《ぐりゅ…》っと一際強く抉られた瞬間に情欲の証をぶちまけてしまった。

 ヨザックの…顔に……。

「やって…くれるねぇ……」

 顔や胸元に薄い白濁を浴びながらヨザックは不敵に嗤う。



 まだまだ…彼は凝りそうにもないようだ。


 
 
 

 

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