「リバーシブルで愛して」 2








 時を遡ること3日前、渋谷有利は自宅で激怒していた。

「なんじゃこらぁああ…っ!?」

 自分の身に発生した事態は理解できなかったが、犯人は即座に分かった。有利が名探偵だったからではない。風呂に細工をした人物が明確だったから、他に疑いようがなかったのだ。

「勝利っ!」
「ぶほうっ!ゆーちゃん流石にお兄ちゃんの前では前を隠しなさいっ!はしたないっ!!」
「こんな身体にした奴が言うなっ!」

 そう…勝利が買ってきたという入浴剤に使ってから数分もしないうちに、有利の身体には異変が起きていた。なんと、むちむちぷりん♪な女の子の身体になっていたのである。鏡をちらりと覗いてみると、顔の方もどこか甘めになっており、唇もやや紅が濃くなってぷるんとしている。全くの他人であれば、《可愛い》とさえ思ったかも知れないが、自分の身となるとそうもいかない。

「あの入浴剤の効果、知ってたのかよ勝利っ!」
「ふふ〜ん、勿論っ!お兄ちゃんがぱちもんに散財するような馬鹿に見えるか?」
「弟を妹にするような馬鹿じゃ救いようがねぇよ!自己破産するような奴の方がまだかわいげがあるわーっ!」

 ぷるんぷるんと胸を上下させながら憤れば、勝利は目のやり場に困ったように大判のタオルを羽織らせてくれた。正直、勝利がくれたものなど拒絶したいが、確かにこんな情けない姿を晒すのは恥ずかしくなってきた。

「なんだ?どうした、こんな時間に大声で…」
「しょーちゃん、ゆーちゃん、ご近所迷惑…」

 珍しく世間体を気にしたような台詞で登場した両親だったが、変わり果てた次男の姿を見ると、怒鳴り合う兄弟を遙かにしのぐ声で絶叫した。

「ゆゆゆゆゆゆ、ゆーちゃん…っ!?」
「いやぁああん…っ!か、可愛い…じゃなくて、どうしちゃったのゆーちゃんっ!?」
「勝利に聞けよっ!」

 言った途端に、ぼろ…っと涙がこぼれた。
 
 そうだ。有利は悪の秘密結社ではなく、よりにもよって実の兄に改造されたのだ。喧嘩はしても、それなりに仲の良い兄弟だと信じていたのに…。

「勝利…が、俺より…い、妹の方が良いって…女の子の方が、可愛いからって…俺なんて…いなくなってもいいって…っ!」
「ばばば…馬鹿っ!そんな訳ないだろうっ!?」

 怒り顔よりも泣き顔の方が効果が高いのはやはり基本であるらしい。勝利は目に見えて動揺すると、何を思ったのか有利を浴室に引き入れてシャワーを浴びせかけた。

「や…冷た…っ!」
「水じゃないと意味がないんだよ。ほら…」
「え…?」

 見る間に身体が変わっていく。体感的には別に痛いとも痒いともないのに、数秒の間奇妙な違和感があった。そして…有利の身体は元通りの姿に戻ったのである。

「も…どった?」
「ああ、流石に俺のせいで一生涯の問題になっちゃ拙いからな。水を掛けると元の姿に戻れるって漢方薬を手に入れたんだよ。なんでも中国の辺境地で昔、女性が溺れた悲劇的伝説のある泉があって、そこの成分を抽出したものらしい」
「なんかそれ、どっかで聞いたような…」

 豚やアヒルになるよりはマシだろうか?

「……すまなかった。まさか、あんなにお前が泣くとは思わなくて…。その…ちょっと、元に戻すのを条件に、一回だけコスプレして《お兄ちゃん》と呼んで貰おうと…」
「それ、まんま脅迫だよね?」
「…………面目ない」

 今更のように反省したらしい勝利は肩を落としてしょんぼりしている。普段は温厚な両親も、流石に今回の件は見逃せなかったらしく顔色を変えて怒っているから、もうこんなことはしないだろう。

「もう…良いよ。元に戻れたしさ」
「ゆーちゃん…ゴメンな?」
「良いよ。もう…。ところで、どういうコスプレさせたかったんだよ」
「ああ、これだ」

 着替えを入れる籐の籠に入っていたのは、えらく露出度の激しいミニスカサンタ服だった…。

「お兄ちゃんはゆーちゃんが男でも全然構わないんだが、ディティールには凝る方なんだ。ほら、見て御覧?胸元がぱっくり開いているだろう?これだとゆーちゃんの貧…いや、微乳では桜色の乳首が見えてしまって、いやらしい印象になっちゃうだろ?お兄ちゃんは決してゆーちゃんをいやらしい目で見てはいないので、どうしても胸が欲しく…」
「…金輪際、俺に口をきくな」

 《死ね》と言わなかっただけ有り難いと思って欲しい。
 がっくりと項垂れた勝利からサンタ服をもぎ取ると、脱衣所から叩き出した。

「もう…なんちゅー兄だよ…っ!」

 コンラートと違って、なんて品性に欠けた兄なのだろう?しかも倫理感まで欠如してきたとあっては、血が繋がっていることを恨みたくなる。大体、なんだって血の繋がった弟がそこまで可愛いと思うのか。

 唇を尖らせた有利は不吉な湯を抜くと丹念に浴槽を洗い、また湯が溜まるのを待つのは面倒だったので、そのままシャワーで済ませることにした。

 …が、湯を被って数秒の後、有利は湯を流してしまったことを激しく後悔する。

「なあ、勝利。まだあのお湯ってある?」

 勝利の部屋の扉越しに囁きかけると、勢い込んで飛び出してきた。

「おお〜っ!ゆーちゃん、俺の為にサンタコスをしてくれる気になったのか!?」

 勿論なってはいなかった。
 有利は単に、兄に対する最大の復讐は彼も同じ身の上にしてしまうことだと思っただけだ。
 そう…有利が怒り心頭に達することに、もはやこの身体は普通のお湯を被っても女体化するようになっていたのである…。

 こうして、渋谷兄弟は晴れ時々渋谷姉妹となったのである。

 しかし、そんな馬鹿馬鹿しい体質も三日もすると慣れてくる。ちょっと女体化した自分の身体を見て、童貞君が知り得ない秘密を垣間見たりするような余裕も出てきた。
 そうすると頭を擡げてきたのは…この身体なら、ひょっとするとコンラートに相手にして貰えるのではないかと言うことだった。

『そうだ、勝利の馬鹿が用意したサンタ服…』

 クリスマスというイベントに合わせて、《サンタがプレゼントを持ってきました》とでも言えば、いつもよりも可愛がってくれるかも知れない。ただ、正体が有利だと知ったら、クリスマスの夜でもおかまいなしに名医を捜し求めそうだから、そっくりの別人とでもしておこう。

 そう考えた有利は、多少本末転倒な気はしたがクリスマスイブのコンラートからのお誘いを断り、夜中にマンションを訪ねることにしたのである。勿論、家族には内緒でこっそり家出してきており、道中は周囲の人たちに気付かれないよう、衣装は裾の長いダウンコートの下にして隠しておいた。

 そしてドキドキしながらマンションに行ってみると、いつものように合い鍵でオートロックを解除する。そういえば、合い鍵を持っている段階で有利だとばれそうな気はしたが、サンタなのだから多少神出鬼没でもおかしくないだろうか?

 もう身体が覚えてしまっている経路を辿って部屋の前に来ると、ダウンコートは白い大袋にしまって、サンタらしく肩に担ぐ。我ながら立派なサンタ姿だ(他の人に見られる前に扉を開けて欲しいが…)。

「…ユーリ?」

 扉が開くと、開口一番名前を呼ばれてしまう。
 はっきりと胸が露出しているのに…何故分かるのか。

 不思議に思ってみてみると、コンラートは珍しく泥酔しているようだった。琥珀色の瞳はお日様に溶けた蜂蜜みたいに濡れて、とろりとしているし、白皙の肌も淡く上気してなんだか色っぽかった。

 普段は清潔感があって、きっちりと合わされているシャツの襟元もネクタイごと緩められており、綺麗な鎖骨が垣間見える。

「え…っ?あ、あの…俺…いや、あの…わたし、は…サンタですっ!」

 動揺しながら懸命に《あんたの知ってる有利じゃないよ》と主張すれば、《分かっているよ》という風にコンラートが笑った。

「サンタのユーリでしょう?」
「え?あ…ハイ…」

 どうやらしたたか酔いしれているらしいコンラートは、一人で納得して部屋に入れてくれた。
 その室内には むぁ…っと酒の香りが立ちこめていた。

『これ…全部飲んだの!?』

 夥しい量の酒瓶が開けられており、その中には滅多に飲まないおみやげ物のテキーラだとか、火を噴きそうなアルコール度数のウォッカなどがあった。コンラートは酒に強く、滅多に飲まれてしまうことはないし、そもそも誘われなければ晩酌にこれほどの量をあけることはない。それがどうして今日に限って、家中の酒類に手を出してしまったのだろう?

 コンラートに《疲れているの?》と聞いたら《寂しいんだ》と返ってきて、例の彼女にふられたのかと、一瞬胸が弾む。しかも重ねて聞いていけば、そもそもあれは彼女などではなくコンラート狙いの肉食女子だったというではないか。

 しかもしかも…コンラートがこんなに寂しそうにしている原因は、有利だというのだ…!

『やばい…メチャメチャ嬉しい…っ!』

 歓喜に打ち震えていたら、大型のわんこみたいに可愛く擦り寄っていたコンラートが、勢い余って直に腿へと触れてしまう。それは思いがけないほどの心地を有利にもたらした。

『頬とかスゲェ滑らか…。髪もサラサラで気持ちいい…』

 ほわほわと香る強いアルコールに当てられたせいもあるのだろうが、有利の思考は次第にとろりと溶けてきて、内腿の奥に《じゅん…》と滲むものを感じた。
 最初の内、おしっこに行きたいのかと思ったがそういうわけでもない。行く前にしっかりトイレには行っているし、いつものそういう感じではない。

 もっと、下腹あたりがじんじんするような…濡れた感覚。
 はっと気付いた時には、下着がぬるりとしたもので汚れていた。
 
『う…嘘ぉ…!?』

 信じられない。
 有利の身体はコンラートが腿に触れているというだけで、性的な高ぶりを感じているのだ。
 女の子というのはそんなに感じやすいものなのだろうか?

 いや…これは、コンラートが有利を思っていてくれたという自覚からも来ているのかも知れない。だって、ちょっと好奇心で雌芯を弄った時にはくすぐったいばかりで何も感じなかったのだから。

『今は…指を入れて、ぐちゃぐちゃに掻き回したいよ…っ!』
 
 意識すればするほどコンラートの頬の熱や吐息にまで感じてしまい、どんどん蜜が溢れてしまう。もはやぐっしょりと濡れたそこは女の香りを放ち始めて、コンラートに気取られるのも時間の問題かと思われた。

 案の定、もじもじしている有利にコンラートが声を掛けてきた。

「ユーリ…どうかしたの?」
「なんでもないよ。ちょっと…トイレ借りても良い?」
「ああ、良いよ」

 快く承諾して貰うと、離れていくコンラートを勿体なく思いながらもトイレにひた走る。 慌てて入ったから、トイレの鍵を閉めるのも忘れていた。

『うわ…』

 パンツを少し降ろしてみたら、濃厚な雌の匂いが立ち上り…くらくらと目眩がする。それは南国の果物が腐敗寸前まで熟した時の香りに似ていた。

『コンラッドに興奮して…濡れてるんだ』

 どきどきと弾む心臓を押さえかねて、下着の中につるりと指を挿入していく。この下着がまた純白のシルクで、シンプルながら女性らしいラインが自分で目にしてもセクシーだ。

『ちょっと抜いたら、ラクになるかも…』

 童貞君の哀しい無知であった。
 男の生理しか知らない有利は、女性も一度オーガニズムの頂点に達すればそこで快感は打ち止めだと思っていたのである。

 しかし…男性が打ち上げ花火なら、女性の性感はどちらかというと線香花火に似ている。下腹に滾る熱がぱちぱちと爆ぜ、一度弾けた後にも焦りつくような感覚をもたらすとは知らなかった。

 早くコンラートのもとに返りたい一心でぬるりと下着の中に指を差し入れれば、先日試した時との違いに驚嘆してしまう。

『すごい…熱くて、とろとろになってる…っ!』

 有利の拙い指遣いにすらそれなりの快感が爆ぜるのだが、本能的にもっと奥深い部分の悦楽があるのだと感じていた。もっと上手にやれば、きっともっと感じられるはず…。

「ん…コンラッド…っ…」 

 コンラートの素肌、声、眼差し…そんなものを思い浮かべた途端に、ぐぁ…っと感覚が濃度を増していく。身体の奥で何かが噴きだすような感触すら覚えて仰け反っていると、突然…トイレの扉が開かれた。

「こ…っ!?」
「おや…トイレの使い方が分からなかったのかな?」
「う…ん…て、いやぁ…っ!」

 コンラートが楽しそうに笑って天然風味の発言をするものだから便乗しようとするが、そうもいかなかった。有無を言わさず双丘を捕らえられると、便器の上蓋に伏せる形でコンラートに向かって尻を突き上げてしまった。

「な…なにっ!?」
「手伝ってあげる。ここで…イきたいんでしょう?」
「ぁあ…っ…」

 信じられない…。
 あの清廉なコンラートの舌が、別の生き物のように蠢いてぬるぬるとショーツ越しに雌芯を嬲っているのだ。

「ダメ…や、やだぁ…っ!」
「我が儘を言わないで、ユーリ。上手に出来ないと、お漏らししてしまうよ?」

 双丘の間で酒臭い息が淫らにくぐもり、《ぴちゅ…れぢゅ…》というあられもない音が狭い個室の中に響く。
 コンラートの家のトイレはウォシュレットつきの清潔なもので、青いタオル地のカバーをかけた上蓋越しにも暖かいが、如何に言ってもトイレというのは異常空間だ。

 そもそも…憧れの名付け親に淫部を舐めしゃぶられているなど、そうそう信じられることではない。

「ああ…ほら、またお漏らしした…。いけない子だね、ユーリは…」
「ひぅ…っ」

 びゅる…っと溢れてくる愛液は確かに下着をしとどに濡らしてしまい、とうとう白い内腿を伝ってきたのが分かる。きっと純白のシルクは蜜を吸って透明度を増し、コンラートの瞳にいやらしい姿を露呈していることだろう。

「コンラッド…は、恥ずかしいよう…み、見ないでぇえ…」
「おや、ユーリは相変わらず恥ずかしがり屋だな…」

 コンラートは今、男の有利と女のユーリを混合しているのだろうか?きっと、とんでもなくエッチな夢を見ていると思っているのだろう。行為に遠慮というものがなく、ぺろりと下着を捲った動作も淀みがなかった。室内に比べるとひんやりした空気が触れて、あられもない場所を晒しているのだと嫌でも自覚させられる。
 
 しかも…ゆっくりと、確かめるように薄いヒダが捲られていく。溢れ出す蜜液は言い訳しようもないほどの量で、たらりと滴った分が恥毛を濡らす。

「や、やだぁあ…っ!ヒダ、開かないで…っ!」
「良く見せて御覧?」

 ヒダを掻き分けられれば、コンラートの視線を感じてまた身体が火照ってくる。セクシーな声音も凶悪に艶めかしくて、まるで知らない大人のひとのようだ。
 指使いは決して痛みを与えることなく、丁寧だ。けれど、抵抗を許さぬ強さで肉壁が開かれると、敏感な粘膜にコンラートの息を感じた。

『嘘…お、奥の方まで見られてる…っ!?』

 自分でも見たことのない奥津城をコンラートに暴かれている。その事を自覚するだけで、身体中がじんじんと甘い痺れに襲われてしまった。

「ああ…予想通り、綺麗なピンク色だ…清楚に整った形をしているのに、こんなに蜜を滴らせて…いやらしい子だね。ここをどうして欲しいの?」
「やっ…や…っ!」

 うねるような動きで舐め上げてきた舌は、それでなくとも感じやすいクリトリスをこりこりと刺激していく。時折掠めるようにして歯先で甘噛みしたり、きゅうっと強く吸い上げられるものだから、多彩な愛撫に気が狂いそうだ。

「ぁん…そこぉ……っ…や、もぉ…っ」

 痼った肉粒を舌先で何度も弾かれると、その度に感度が高まって便座カバーに上体を擦りつけてしまう。気が付くと肩ひものないドレスはすっかりずれて、形良い乳房が露わになっていた。おまけに胸の桜粒はこりこりと硬く痼っており、荒いタオル地に擦りつけられるたびに赤みを帯びていく。

「あれ?こっちの苺は勝手に熟れてしまったみたいだ…。俺のお口で育てようと思ったのに…」
「ふわ…っ!」

 身体をころりと転がされて正面を向くと、そのまま便座の上に座らされた。そして感じきったままびくびくと身体を震わせていると、何を思ったのかコンラートがトイレから出て行ってしまう。

『よ、酔いが醒めちゃったのかな…?』

 ほっとする反面、何故かがっかりしている自分がいた。まるで、これ以上のことを期待していたかのように…。

 しかし、期待(?)していた以上にコンラートの酔いは深かった。すっかり上機嫌で何やら腕一杯の道具を持ってきたコンラートは、トイレの扉を全開にすると、有利の草野球チームの試合撮影にも使ったカメラ・ビデオ機能を併せ持った機械を慣れた手つきで三脚上に設置した。

 まさか…まさか……。

「やっぱり、アイテムは全部使わないと失礼だよね。それに、万が一夢が記録できたりすると面白いから、一応回しておこう」

 感じすぎて動けない手首が後ろ手に拘束され、足首にもワインレッドの箱から取り出した紅いロープが結ばれて、黒いニーハイに包まれた下肢が大きく開かれる。トイレ本体にロープを引っかけられたのだ。否応なしに開かれた雌芯は呼吸の度に蠢いて、物欲しそうに涎を垂らしているように見える。

「嘘…こ、コンラッド…」
「これはどう使うんだろう?ええと…ニップルリング。乳首に使うのかな?」

 コンラートは小首を捻ると、箱の中にあったカードを手に取る。あの妙にころころとした字体は…間違いなく、コンラートの親友にして悪友、ヨザックのものだ。どうやら、彼から贈られたクリスマスプレゼントであるらしく、まだパッケージに入ったままの真新しい玩具は、有利にも使い道の分からないものだった。

 カラフルなシリコンの輪っかにはフックの様なものが付随している。一見すると台所のお役立ち道具のようだが、ヨザックの説明文を読むと、得心いったように頷いてから有利の桜粒を摘んだ。

「こう…かな?」
「や…っ!」

 乳首を樹脂に挟み込まれると、痛いようなむず痒いような感覚が沸き上がる。まるで熟れていることを強調するようにぷくりと立ち上がったそこに、ちろちろとコンラートの舌先が踊った。

「コンラッド…ゃ…くすぐったい…」
「そう?やっぱり説明書きの通りにしないとダメかな…ユーリが痛いと嫌だなと思ったんだけど…」
「え?」

 コンラートは多少不本意そうではあったが、きつく桜粒を吸い上げると、反対側の樹脂を痛いほどひっぱり上げた。

「やーっっ!」
「なるほど…少し痛いくらいな方がユーリは濡れるんだね?」

 感心したようにコンラートが言うと、確かに雌芯は言い訳しようもないほど勃ちあがっており、紅く腫れてこりこりとした質感を呈しているし、ヒダから溢れる蜜もタオル地の色が変わるほどになっている。
 しかも、その一部始終がビデオに記録されているのである。

「じゃあ…次は、これかな」
「やだ…も、やだよぅ…コンラッド……っ」

 泣きじゃくる有利にコンラートが唇を重ねてくると、とろとろと絡みついてくる心地よい舌に酔ってしまう。口腔内には芳醇な酒の気配も残っているから、それも手伝って意識がぼやけてきた。胸のニップルリングもやわやわと引かれれば、強い痛みではなくもどかしいような快感を伝えてくる。

『キス…コンラッドのキスぅ…っ!』

 我ながら、何と現金なのだろう…。コンラートが愛おしげにキスをしてくれていると言うだけで(そもそもファーストキスの前にクンニをされてしまっているのは如何なものか…)、気分は天にも昇らんばかりに羽ばたいてしまう。
 ふくふくとした幸せな気持ちが沸き上がるのを自覚しては。これは認めざるを得なかった。

 有利はコンラートとセックスするような間柄になることを、悦んでいるのだ…。

「よし、大人しくなったね?これは使って良いってしるしだね?」
「ふ…ぅ……」

 とろんとした有利の雌芯に、何かか押し当てられる。こりこりになったそこは樹脂状の物体に当たっているだけでも感じてしまうが、コンラートは更に電源を入れた。途端に、狂おしいほど甘い電流がクリトリスを中心として下腹や胸へと放散していった。

「ひぃい…っ!!」
「ああ…微振動で刺激するのか。色々、世の中にはあるもんだなぁ…」

 感心するコンラートは、クリトリスを持続的にローターで刺激しながら、しげしげと有利の淫部を観察しながらゆっくりと中指を挿入していった。

『コンラッドの指…節くれ立ってるのが、俺の恥ずかしいところのお肉で感じられる…』

 爪…遠位指節関節…近位指節関節…ああ、ぐっぷりと付け根まで差し込まれた。しかも、その様をコンラートからまじまじと観察されているではないか。更に人差し指も挿入されると、蜜壷の中で淫らな淫音を響かせながら愛液が混ぜられる。 

 ぐちゅ…じゅ…
 ぷじゅじゅ…っ…

「ユーリはとてもエッチな身体をしているんだね…ほら、凄い愛液だ。指で掻き混ぜたら泡立っているよ?それに…なんて淫らな音だろう」
「や…言わないでぇ…」

 コンラートの技量は有利の拙い手淫などとは比べものにならず、触れた場所から肉がとけろけるみたいに感じてしまう。

「どうして?とても素敵だよ。ほら…全部カメラに撮ってあげる」
「やぁ……っ!!」

 もう嬌声を止めることも出来なくて、ただただコンラートのからの愛撫に酔いしれて頭髪をふるった。あえやかに開かれた唇からは唾液が滴り、恥ずかしいのに止められない。

「凄い…ユーリの中、熱くてぐしょぐしょだ…。不思議だな…ユーリの身体が女の子で、俺の指を美味しそうにしゃぶっているなんて…さすがは夢。そうだ…クンニも好きだったよね?奥の方までローターを入れて、クリを舌で愛してあげたらもっと気持ちいいかな?」

 そう言うと、コンラートは微震動を続けるローターを《じゅぶ》っと蜜壷の中に押し込み、美味しそうに蜜を吸い上げながらカリリとクリトリスを甘噛みした。

「ぁ…あ…っ!」

 あまりにも刺激的な快感が脳髄の中でスパークをおこし、有利は伸びやかに背筋を逸らしてオーガニズムの頂点を迎えた。ぴぃん…と突っ張った下肢は爪先まで感じきっていて、肉壺からはぷしゃあ…っ!と勢いよく飛沫が上がってコンラートの顔を濡らした。
 
 びくん…びく、と感じすぎた身体は今や全身が性器になってしまったかのように打ち震える。今ならどんなに強引な愛撫にでも感じてしまいそうだ。

「コンラッド…好きぃ……」

 もっと俺を欲しがって。
 もっと強引に奪って…。

 哀願するように啼けば、ごく…っとコンラートが息を呑むのが分かった。

「ユーリ…俺のを、慰めて貰っても良い?」
「は…ふ?」

 もう真っ当な意識など殆ど残っていないと思ったのに、目の前にそそり立つ雄蕊を突きつけられた時には…流石に怯えてしまった。

『なぐさめる…どうやって?』

 分からないまま、《ダメ…?》と哀願する声に抵抗できなくてこくりと頷いたら、独特の香りを持つ肉棒が口腔内にねじ込まれた。  

   

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