【!ご注意!】



 
下記の話は「蒼いきりん」の仔上圭様に2007年に捧げました「聖夜の4P大作戦」の続きのような代物です。昨年のものにつきましては闇きりんに収納して頂きましたので、併せてお読み頂ければ幸いです。

  《ギリギリ次男受け風味》 《4P》 《羞恥プレイ》 という圭様の嗜好を混ぜ込みご飯にしました。
 そこに、頼まれてはいない狸山の 《女体好き》 要素まで加わって、猫まんま的なマニアック極まりないストーリー展開となっております。

 自分の嗜好と照らし合わせて、「よしOK!」と思われるところまでよくよく考えてから読んで頂けますようお願い致します。

 今後のエロは全部この傾向になるとかいうことではございませんので、一夜の悪夢と思ってスルーしてください。
 


 



〜突撃★隣のカップルさんに乱入4P話〜

「大賢者様の野望」@








 窓の外には記録的な豪雪が降り積もり、激しい寒気で窓硝子が割れるのを防ぐためか、至る所に木戸が掛けられている。
 そのせいもあって、石造りの眞王廟は昼間だというのにどこか薄暗く…陰鬱な空気を漂わせていた。

 この建造物の中で…いや、眞魔国全土にあっても最重要人物である少年もまた、どこか気怠げな様子で過ごしていた。

「はぁ…どうしよっかな……」

 先程までは何冊かの本を斜め読みし、紅茶やお菓子を口にしていたものの…それにも飽きてしまったらしい大賢者様は、憂いを帯びた眼差しでメイドに囁いた。
 背筋を正していれば冷然とした知的少年なのに、甘えた風な目元は凶悪なまでに愛らしく、じぃ…っと物言いたげに見詰められると何でも聞いてあげたくなってしまう。

 しかし…メイドは意識的に6つに割れた腹直筋に力を込め、《何も感じていませんよ》という顔をした。

「ねぇ…グリ江ちゃん。僕がどうしてさっきから溜息をついてるか分かる?」

 桜色の唇を尖らせて、甘い声を出すのは止めて欲しい。
 グラグラするではないか。

「いやぁ…偉大なる大賢者様でさえ解決できないようなお悩みなら、俺なんぞがどうこうできることではないかと思いましてぇ…」

 ピンクのふりふりメイド服に身を包んだ屈強な男は、精一杯肩を縮めてかわいこぶったが、主には綺麗にスルーされてしまう。

 いや…そもそも《主》とは言っても好き放題使われているだけで、この方から給与を頂いているわけではないのだが…何だか、一目あったその日から恋の華咲くことがあるように、大賢者様とお庭番の使役関係は何時の間にやら前世からの宿縁とも呼べるほど絶対的な上下関係になっているのである。

「おや…じゃあ、僕は一人で悩まなくちゃなんないのかな?」
「いやいやいや……」

 上目づかいに《くすん》…としょぼくれて見せる大賢者様に、ヨザックは震度7でグラグラと揺れる理性を両手で押さえつけた。

『駄目だ…上手くかわせグリエ・ヨザック…!これ以上聞いたら巻き込まれるからっ!』

 誓って言うが、ヨザックは給与が支払われないことに拘っているわけではない。

 双黒の大賢者…村田健のことは尊敬しているし、それ以上に…個人的にうにゃうにゃな感情も抱いている。
 だが…この見てくれよりも遙かに破天荒な人物の嗜好には、流石のヨザックも時々ついていけないことがあるのだ。

 何しろ、去年の《クリスマス》とやらいうイベントの際にはえらいことをしてしまった。

 少々セックス依存症の気がある村田は、親友である魔王陛下がいつまでもお子ちゃまで、その護衛との間にヌルい性交しか確立していないことがご不満であった。
 しかも、村田はこの魔王陛下の容貌が凄まじい勢いで大好きなのである。
 

『渋谷のエッチな恰好がどうしても見たいんだっ!』


 ねちねちとお強請りされて折れてしまった結果、ヨザックはあろうことか…元上司で親友(?)のコンラートが見ている前で魔王陛下の花茎を銜えてイかせ、大賢者様が後宮を嬲るのをお手伝いしてしまったのだ。

 挙げ句…コンラートが後背位で責めた魔王陛下の花茎を、達する瞬間に大賢者のそれと合わせることで尿道の奥まで犯し、それまで平穏なセックスしかしたことのない少年に超高度技を仕掛けてしまった…。



 
その事件後のコンラートの視線がまあ怖い怖い…っ!



 近寄るたびに《殺ス》という顔をしているくせに、有利の前だと努めて笑顔を保っているものだから余計に怖いのだ。

 結局、冷たい空気感に堪えきれなくなったヨザックが平身低頭謝りまくって、ようやくここ最近普通の顔をして貰えるようになった。
 村田も大好きだが、有利やコンラートのことも大切に想っているヨザックにとって、あまりに不本意な行為を強いるのは望ましいことではない。

『だって怖いんだもん
グリ江、乙女だから…』

 さて、それが去年のことだというのに何故いまヨザックがびくびくと怯えているかといえば、ここ数日《えらい台詞》を村田が囁いてくるからなのだ。

 寝台の上での村田の痴態はヨザックにとって大変好ましく、激しく求めてくれることは至上の悦びですらある。だが…その最中に囁かれる《お願い事》は血の気が引くようなものばかりで、《意外と俺って肝が小さかったんだ》…と、ヨザックは自分の器のミニマムさに驚いたりしている。

「グリ江ちゃんは…エッチなこと嫌い?」

 それは、村田の嗜好を…村田自身を嫌いなのかと聞いているようで、ヨザックは大慌ててソファに駆け寄った。

「いやいやいや…!俺が嫌いな訳ないでしょ!?俺ぁ、はっきりぱっくり享楽的な性向の男ですから!猊下のエロい恰好とか台詞とか、ぞくぞくするくらい大好きですっ!愛してますっ!!」
「うーん…君のそういう犬系のトコロ…嫌いじゃないけど、不満かなぁ…」
「ガーン…グリ江、ショック……」

 冗談めかした口調ながら、内心本気で凹んでしまって涙目になる。

「僕はさぁ…
羞恥プレイがとにかく大好きなんだよね。なのに、君ってばどんな恰好させてもそれなりに様になっちゃうし、嫌がらないし…。その点、渋谷はやっぱりイイよねぇ…!」

 《たっはー》…っと、大賢者様は妄想の世界に入ってしまわれた。

「恥ずかしそうにあの澄んだ漆黒のお目々をうるうるさせちゃってさ…《止めて…村田ぁ》…なんて舌っ足らずに懇願してくれるのに、ちゃんと感じちゃってておちんちん硬くさせて…先っちょも恥ずかしいくらい濡らしてるの」
「う…まぁ……確かに、可愛かったですよね」

 有利を可哀想に思いつつも、確かにあの羞恥ぶりと押し殺した艶っぽさに煽られたのは確かだ。禁じられたことをしているという背徳感が否応なしに性感をそそり、ラブエッグを含ませてとろとろにした小さな蕾に、荒々しく雄蕊を突き込みたいのをすんでの所で堪えていた…。

「それに、ウェラー卿もイイんだよね。何なんだろうねぇ…あの男の色気!渋谷にエロいことしたくてしょうがない癖にギリギリのところで堪えてる感じとか…。彼自身を羞恥で啼かせてみたいな〜とかも思っちゃうよね。ねぇヨザ、渋谷が駄目ならウェラー卿を罠に填めて、僕の前で犯ってみる気ない?」

 確かに、コンラートの禁欲的な眼差しを羞恥と悦楽に染めるのはさぞかし燃え立つ行為だろうが…。

「あの…猊下、それって…
俺に死ねってことですか?

 
行為直後に惨殺決定である。

「やだなぁ。君の身体は僕にしっくりきてるから、死なせたりするはずないじゃないか」
「か…身体目当て宣言…」
「あ、中身も気に入ってるよ?こういうコト、下心無しで聞いてくれて、僕を丸ごと包んでくれる男なんて君くらいだもん」
「転がし上手……」
 
 分かりやすくコロコロと転がされて、それでも大好きな大賢者様にヨザックはしっとりと眦を濡らす。
 我ながら、エライ人に惚れたものである。   

「でもさぁ…君、その様子だと渋谷とウェラー卿の痴態自体はみたいんじゃないの?」
「そりゃそうですよ。嗜好としては、畏れながら猊下と俺は結構近しいもん持ってますからね」
「じゃ、ネックは彼らに後で変な目で見られることなんだ」

 にぃ…っとタチの悪い笑みを浮かべて村田が嗤う。
 何がタチが悪いかと言えば…悪魔的に凶悪なくせに、天使のように可愛いことだ。

「ね…じゃあ、僕の案を聞いてみない?」
「………………」

 却下など、出来なかった。
 結局だだ流しに巻き込まれていくヨザックは、己の身が嵐の河に投げ出された木の葉も同然であることを思い知るのであった。



*  *  *





「渋谷、アニシナさんの実験に付き合うことになったんだって?」
「えー?もう知ってんのかよ村田…」

 血盟城の廊下で声を掛けられた有利は、慌てて村田を横道に連れ込んだ。

「グウェンには言うなよ?心配するから…」
「分かってるって。安心してよ」

 村田はにこにこともの柔らかな笑みを浮かべて、眉根を寄せた友人を見やった。



 お人好しの渋谷有利君は、今朝方アニシナのもとにお願いにあがったのだ。

『グウェン、生まれたばっかりの仔猫のことが心配みたいだから、暫くは実験に付き合わせないようにしてもらえる?』
『良いでしょう、その代わり…』

人魚姫に脚を与えた魔女よろしく…にたりと嗤ったマッドサイエンティストは、有利にある《提案》をしてきたのだ。



「君とウェラー卿の欲望が反映される夢…ねぇ。僕も見てみたいなー」
「全世界野球大会とかかな?」
「どうかなあ…意外と、自分でも自覚してない欲望なんかが出てきて面白いんじゃないかな?」
「うーん…。恥ずかしい夢だったらやだけど…。アニシナさんには後でどうしてもデータが行っちゃうんだよね。あんまりな夢だったら内緒にしてくれないかな…」

 流石にコンラートと恋仲になってからそれなりに場数も踏んでしまった有利は、村田の言わんとするところもある程度飲み込めるらしい。
 頬を真っ赤に染めて言う《恥ずかしい夢》とは、コンラートとの逢瀬だろう。

「ねぇ…僕がちょっと酷いことしゃってから、どういうエッチしてんの?」
「アレを《ちょっと》で済ませるお前に心底吃驚だけどな…」

 そうは言いつつも、からりとした顔で笑ってくれる友人を見ていると、ヨザックの心配もまんざら分からないでもない。
 有利のこういう素直な愛らしさというものは、全力で護ってあげたくなるものだ。

 だが…自覚のある
《ドS》である村田にとっては、むらむらと嗜虐心を掻き立てられるものでもある。

「俺だってさ、あれからは結構頑張ってるんだぜ?コンラッドが《もうきついでしょ?》とか言って、まだ満足しきってない癖に止めようとしたら、《まだまだぁ…もう一本!》って、捕まえて逆に押し倒してんだ。コンラッドに馬乗りになって腰上下運動!ジョーバ効果でウエストが2cm細くなったんだ!一晩5ラウンドだっていけるぜ?」

 拳を握って誇らしげに胸を張る有利は、本人の意図とは裏腹に激しく健康的だ。
 きっと、やり終えた後には腰に手を当てて勢いよく牛乳瓶を傾けるのだろう。

「もう一本って…君、それじゃ柔道の組み手だよ……いや、ラウンド制ならボクシングか…」
「ん?何か言った?」
「何でもないよぉ〜」

『君のそういう開けっぴろげなところも好きなんだけどね。時々は…羞恥に噎び啼く姿も見てみたいんだよ。君の知らない欲望の華を、その身体で咲かせてあげたくなる…』

 小動物みたいな顔をしてやたらと男前な友人に、村田はそっと淫靡な笑みを向けるのだった…。 

 

 アニシナと村田は今回、協定を結んでいる。
 
 アニシナの改良型《夢芝居》には、予め村田がプログラミングした《夢》が仕組まれており、何も知らない有利とコンラートはその主人公として行動させられる。しかも、その中に自由意志を持った存在として村田とヨザックが入り込むのだ…。

 有利は五感へとリアルに接続されたその夢…淫夢の中で新しい自分を発見することだろう。

 それが、自分の《願望》と信じながら…。

『隠れた《嗜好》を見いだして、今よりずっと仲良くなろうね…渋谷』



 二人の友人達は、端から見れば同じくらい愛らしい微笑みを交わしながら別れた。






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