第1夜 

〜君はペット〜











 ふわふわとした感触…ほどよい温もり…そして、瞼を透過する卵色の光。
 何とも言えない心地よさに微睡んでいた有利は、喉を撫でつけられて一層ご機嫌になった。

 ぐるぐる…
 ぐるぐるぐる……

『猫でもいるのかな?気持ちよさそうに喉を鳴らしてら』

 そう思ってくすりと笑おうとしたが、それは声にはならずに《ぐるる…》と振動として喉を震わせることになる。

「…ん、にゃ?……」
「起きた?ユーリ…」

 優しい声に胸が震える。
 気怠るさなど瞬時に吹き飛んで、有利はぱちりと目を開くと声の主に縋り付いた。

「コンにゃッド…っ!」

 寝ぼけているせいか妙な声になるのも構わず逞しい胸に縋り付くと、コンラートもまた息を呑んで有利の体躯を抱きしめた。

「ユーリ…ユーリですよね?どうしてだろう…なんだか急に貴方が鮮やかになった気がする…。ついさっきまで、貴方をとても愛しいと思いながら何かが違う気がして、とても辛かったのに……」

 コンラートは有利の頬を大きな両手で…愛おしげに包み込むとキスをしてきた。
 下唇をつい…と舌先でなぞり、甘噛みし…そろりと忍び込んできた舌が誘いかけるようにうねると、有利も拙いながら愛撫に応えて舌を絡めていく。

 ちゅ…ちゅく……
 くちゅ……

 恥ずかしいほどの水音を立ててかわされるキスに夢中になっている内に、有利の腰からは次第に力が抜けてしまう。
 それはまぁいつものことではあるのだが…今日は妙に身体が柔らかい気がする。
 それに…キスをしている間中、心地よい毛皮の感触が肌を掠めていたので《猫でもいるのかな?》と思っていたのだが、それは猫にしては随分と立派で大きな存在感を持っていた。

「可愛い…ユーリ。キスも上手になったね」
「にゃあ…」

 褒められたのが気恥ずかしくて照れ隠しの言葉を言おうと思ったのに、何故だかやっぱり変な声になってしまう。

「……?」

 何の気なしに辺りの様子を伺うと、そこは血盟城の一室…いつも通り殺風景なコンラートの居室であったが、ベットの端にはふかふかの柔らかそうな毛布が固めておいてあり、その微笑ましいまでのベビーピンクが異彩を放っている。位置関係としては、その毛布でつい先程まで眠りこけていたらしい。

『なんだ、俺…コンラートの部屋で眠り込んじゃったんだ』

 それにしてもなんという夢を見たものだろうか。

『コンラッドが夢魔に取り憑かれて、俺がエッチな夢の中に斬り込んで助け出すなんてさぁ…』

 是非コンラートにも話してやろう…と、振り返ったその先に…
 ……姿見の、大きな鏡があった。
 極めて簡易な鏡であるが、それでも軍装の乱れを確認するために全身が確認出来るほど大きさだけは十分に大きかった。
 何しろコンラートを余裕で映し出せる代物である。 
 勿論、小柄な有利などそれはもうばっちりと映し出されてしまう。

『…………あの……これ』

 夢でないことは分かった。
 いや、寧ろ今この瞬間が夢であること…夢魔の作り出した夢の中なのだということだけはよぉっく分かった…。

『つか……コレは一体、どこから何処までがコンラッドの嗜好なんだよ!?』

 何処までも有利に優しくて爽やかな名付け親…その彼からは到底想像することも出来ないが、彼の嗜好が全く反映されていないはずない。

 何しろ夢魔というのは記憶を読んでその嗜好を反映させ、そこから修飾するらしいのだから。
 有利の今現在の姿を詳細に説明すると…以下のようであった。

 まず、《猫》である。
 それも、生物学的に正しい猫、ないし猫科生物ではなく…萌え人種が抱く夢独特の《まねっこ猫》である。普通は《猫ムスメ》というのかもしれないが、取りあえず有利は《猫ムスコ》のようであった。
 天鵞絨のように滑らかな質感の耳はぴんっと同色の頭髪の上に立ち、白いシャツの裾野から覗く立派な尻尾は第4腰椎の高さから起始し、先程からふりふりと左右に揺れている。

 そして尻尾の下の秘められた部分を申し訳程度に隠しているのは、眞魔国貴族名物(?)紐パン…当然、真っ黒な魔王仕様である。
 更には紐パンの下に続く下肢を覆っているのが、膝上までの黒いニーハイ…。ぬめるような大腿の白さとその黒のとりあわせが絶妙なエロ臭さを漂わせており、有利は思わずシャツの裾を掴んでしゃがみ込んでしまった。
 ぽかんと開けた口の中に白い牙が2本見えるのも妙にチャーミングである。

『うう…この格好がまた情けない……』

 真っ赤に頬を染めて困ったように眉根を寄せた有利が、鏡の中で白いシャツを股間にかき寄せている。
 これでは着替えシーンを覗かれた女の子のようだ

「どうしたのユーリ?」
「コンにゃッド……俺、変にゃ格好……。恥ずかしいにゃ……」

 ポケモンに出てくるニャースのような喋り口調に恥ずかしさが増すが、コンラッドの笑みは益々深くなり、なんだか今まで見たこともないような表情になる。
 琥珀色の瞳の中に銀色の光彩が跳ね回って…実に楽しそうな表情だ。
 少なくともこの格好は、彼をいたく満足させているらしい。

『あ…』

 ふと、有利はアニシナに説明されたことを思い出した。

 夢魔の檻から逃れられた者は過去に数名いる。
 これは、夢の中に入れる術者がその被害者の親しい人物であった場合…という限定された状況でのみ可能な方法なのだそうだが、まず夢の中に入った救出者はその中で被害者の《心の欠片》を捜さなくてはならないらしい。
 《心の欠片》はその被害者の一部であるから、本当に親しい者にしか見つけることが出来ない。しかも、欠片と言うだけあって複数存在するものだから、全ての欠片を合わせないと被害者を救出することは出来ない。

『間違いない…このコンラッドは本当のコンラッドだけど、全部じゃない…やっぱり、何個かに分かれた一部なんだ…』

 一体心の中のどの要素なのかは知らないが、このコンラートを見ていると、いつもと同じところと少し違うところを同時に感じるのだ。
 まず、普段のコンラートはこんなに感情を露わにしない。特に、自分の欲望に関してはとことん隠しきってしまう癖があるのだが…このコンラートはいたく素直にその悦びを態度に表している。
 でも…その表情や仕草から感じられるものはやはりコンラートに違いない。

『このコンラッドを満足させられたらその欠片が手には入るらしいんだけど…』

 具体的にはどうやって満足させればいいのだろう?
 アニシナに聞いたら

『私はそんなふしだらな知識は持ち合わせておりません!セクハラですよ!?』

 と両断されてしまった。

『……ようするに、ふしだらなことで満足させなきゃいけないんだよな…』

 《ご奉仕にゃん!》とポーズの一つも決めればいいのだろうか?

「どうしたんです、ユーリ。招き猫の格好ですか?」

 失敗したらしい…。
 思わず頬を膨らませて服を掴んだら、コンラートは何か取り違えたらしい。

「ああ…遊びたいんですか?いいですよ…ほーら、この球が捕れますか?」

 机上に置いてあった野球のボール(メイドイン眞魔国)を手に取ると、コンラートはぽぅんと床の上に投げた。

「にゃっ!」

 思わず見事なジャンプを見せてボールをキャッチした有利は、その身体の持つ躍動感についつい笑顔を浮かべてしまった。

「コンにゃッド!もっとーっっ!」

 当初の目的はすっかり吹っ飛んだらしい。
 魔王陛下はいたく単純な達であった。

「ええ、良いですよ。そぅら!」

 ぽーん!
 ぴょーんっ!

 跳びはね、転げ回り…小一時間ほどもそうしていたろうか。
 有利は楽しさのあまり夢中になっている内に、酷く喉が渇いていることに気付いた。

「コンにゃッド…お茶頂戴?」
「お茶より、冷えたミルクは如何ですか?」
「うん、飲むーっ!」

 ミルクと聞いて、何故だかとても胸が弾んでしまう。
 普段から好きではあるが、今は無性にあの白い液体を飲み干したい気がする。

『やっぱ腰に手を当てて、瓶入りの牛乳をごいごいっといくのが良いよね!』

 風呂上がりの正しい牛乳の飲み方を想像してぺろりと唇を舐めてしまう有利だった。
 ところが…

「さぁ、どうぞユーリ」 

 コンラートは深い皿に大きなピッチャーからミルクを注いでくれたのだが、その皿を床に置いたのだった。
 飛沫除けに綺麗な布を敷いて、その上に置いてくれたしたものの…流石に這い蹲ってミルクを舐めるのは恥ずかしい。
 思わず皿を手に取った有利だったが…その皿は随分と重い素材で出来ており、しかもなみなみとミルクを注いであったものだから、有利はぐらりと皿を動揺させると勢いよくひっくり返してしまった。

「にゃ…っ!」
「ユーリ!…ああ、可哀相に。ミルクでびしょびしょだ」

 自分の身体と床一面にミルクをぶちまけてしまった有利は申し訳なさそうに耳を伏せていたが、コンラートは特に怒った風もなくタオルを取りに行ってくれた。
 しかし、拭こうとしてタオルを羽織らせてくれたところから手が止まってしまう。

「…」
「…?」

 視線の先を追っていけば…白いシャツは見事に濡れて肌に張り付き…素肌よりも淫猥に有利の身体のラインを露わにしていた。
 呼吸に上下する胸は、勿論男のそれなので膨らんだりはしていないのだが…柔らかそうな…微かな大胸筋の盛り上がりの上で桜色の飾りがシャツ越しにぷくりと立ち上がっているのが伺える。

「…っ!」
「冷たかった?こんなに立ち上がって…俺が暖めてあげるね」

 シャツの上からでも…寄せられた舌の熱さと柔らかな感触が伝わってくる。
 触れられた途端にビィン…っと痛いほど痼って硬さをます突起に、銜えているコンラートの笑みが増した。

「感じやすいね、ユーリ」

 きゅ…っと右の突起を指で押しつぶされれば、布越しの…残酷なくらいもどかしい快感が背筋を奔っていき、揺れていた尻尾がぷぁ…っと膨らんでしまう。

「にゃ……や、にゃぁぁ……っ」
「嫌?でも、ここはこんなに紅く熟れて美味しそうだよ?」

 カリ…と左の突起を囓られ、腕をすぼめてしゃがみ込もうとした身体にするりと左腕が入り込む。その指は正確に有利の紐パンを捉えると…その中央で存在感を示し始めている高まりを指先で突いた。

「胸を弄られただけでもうこんな?意外と有利は淫乱なのかも知れないね」
「淫っ…違……にゃ……」

 頭をふりふりと揺するが、コンラートは物言いとは裏腹な優しい笑顔で…けれど容赦ない的確さで有利の中心を擦りあげていく。

「ねぇ、ユーリ…喉は渇いていない?」
「ん…ぅん……」

 既に朦朧とし始めているものの、生理的な欲求は明確に存在する。
 こくりと頷け…コンラートは漸く有利から身を離したかと思うと、ゆったりとした動作で軍服の上衣をはだけ始めた。

「…!」

 普段は…というか、夜の《情事》の時には有利が恥ずかしくないようにと明かりを全て消して行うものだから…コンラートの裸を性的な意味を込めて凝視するのはこれが初めてかも知れない。
 ヒルドヤードの温泉街などで真っ裸の付き合いをしていた頃が信じられないくらい…有利はコンラートの裸に魅せられていた。

 盛り上がった三角筋が、上腕二頭筋との境でみせるしなやかな隆線…幅広の鎖骨は大胸筋が発達している分、くっきりとした溝で分割されているのだが…これがまた男の色気を纏って有利の眼差しを釘付けにする。
 しゅるりとシャツも脱ぎ去ってしまうと、はっきりと腹直筋の腱画が浮かび上がって…更には脇腹から腸骨の際にかけて斜走する外腹斜筋の発達により、逞しいのに《細い》とさえ表現出来るウエストが際だち…ベルトを微かに緩めたズボンとの間で陽光を弾いている。

 そしてなによりもその身体の随所に見られる傷跡が、彼が歴戦の勇者であることを物語っていて…《雄》としての迫力で有利を圧倒するのだった。

 コンラートは唇の端を思わせぶりに、つい…と引き上げると…無造作に床へ腰を下ろし、有利を誘った。
 凄絶なまでの艶を…その眦に漂わせて。

「こっちに来て、ミルクを舐めてご覧?」 

 そして高くピッチャーを上げたかと思うと…

 トクトク……

 音を立てて流れる白い液体が、コンラートの胸に注がれ…腹部を伝って流れ落ちていく。 その流線に惹かれるように…
 あまやかな芳香に惹き寄せられるように…
 有利は、ふらふらとコンラートの傍まで来ると、コンラートの胸を濡らす液体に舌を這わせた。

「…っ!」 

 口にした途端、有利の目が喜びに輝き渡る。

「美味しい?」

 コンラートが甘く囁く声を耳朶に感じつつ、有利は夢中でぺろぺろとコンラートの肌を舐(ねぶ)った。

『ウマー!アマー!』  

 これは本当に、普通のミルクなのだろうか?
 今まで味わったことのない馥郁(ふくいく)たる香り…そして奥深い味わいに有利は喉を鳴らしてもっと…もっととミルクを強請った。
 コンラートの胸から腹筋から…肌が露出していてミルクに浸された場所を一通り舐めきっても飢えは満たされることはなく、寧ろ更なる食欲でもって有利をせき立てた。 
 そして、その行為がどういう意味を持つかなど殆ど意識せずにコンラートのベルトを外し、庶民派の肌着に吸い込まれたミルクをちゅうちゅうと美味しそうに飲んだのである。

「もっと欲しい?」
「ぅん!…欲しいにゃあっ!」

 こくこくと頷けばミルクは更に注がれて、コンラートの肌着をしとどに濡らす。

 んく…ちゅく……
 ぺろ…ちゅぅぅ……

 舐め上げ、吸い上げしている有利の頭でひこひこと可愛い耳が跳ねるのを、コンラートは面白そうに指でなぜた。

「にゃあ…ん……」

 甘い声を上げて有利が背をしならせる。

「気持ちいいの?」
「変にゃの…ぞくぅ……ってなるの」

 拗音でしか喋れないせいか幼い物言いになっていることにも気付かず、有利は両手で猫耳を隠そうとしたが、当然許されるはずもない。

「駄目だよ、ユーリ。そこを触らせてくれないならミルクはあげない。もっと美味しいミルクがあるのに…」
「もっと?」
 ぴくんっ!と素直に立ち上がる猫耳と、見開かれた瞳の前でコンラートは自分の下着を指し示した。
「俺のを舐めてくれたら、最後にとても美味しいミルクが出るんですよ?」
「本当!?」

 実際の生体ではあり得ない情報なのだが、有利は素直に信じるとずるりと濡れた下着をずらし、すっかり硬く立ち上がっている高まりに遠慮無く唇を寄せていった。

「牙を立てないでね。とても敏感な場所だから、上手にしないとミルクが飲めないよ?そう…優しく裏筋を舐め上げて…口を窄めて吸い上げてご覧?少しだけご褒美のジュースが出てくるよ?」
「ん…ふぅん……」

 先程から頭に霞がかかったようにぼやけて、ただただミルクへの渇望に支配されている有利は、従順にコンラートの《調教》に従っていく。

「良い子だね…ユーリ…とてもおしゃぶりが上手だよ。そう…お尻をもっと高く上げてご覧?」

 コンラートは鏡に映る恋人の艶姿に淫猥な笑みを浮かべた。
 濡れた白いシャツをいまだまとわりつかせた身体から、裾野だけたくし上げれば小さく締まった双丘と、綺麗な長い尻尾が鏡に映し出される。ミルクピッチャーと共に用意していた壺に手を突っ込み、たっぷりと白いジェルを絡ませると…可愛い尻の感触を掌で味わいながらそろりと紐パンの裾を伝う。

「やぅ……んにゃああ……っ」
「そのまま続けないと、ミルクはお預けだよ?」

 その呪文のような言葉に支配されたかのように、有利は牙を立てないように懸命にコンラートのものを銜え込んだ。

『でも…大きくって口の中に入りきんない…あぁ……でも、溢れてくる液、本当に美味しいや……』

 夢魔の設定のせいなのだろうか?
 掛け値なしに美味な液体を零すコンラートのものを、宝物のように含み込んだ有利はいやらしい音に耳孔まで犯されながら愛撫に没頭した。

『や…お尻の方に……コンラッドの指が……っ』

 けれど…振り向くことは出来ない。
 何故ってコンラートの言いつけだし…それに、口の中にある宝物からはとても美味しい飲み物が出てくるのだから。

『コンラッドの…節くれ立ってて硬い指が……じゅるる…って入ってくる……』

 たっぷりとジェルを絡ませた指はずるりと有利の後宮に含み込まれ、その様子は明瞭に鏡に映し出されてコンラートを更に高めてくれる。

『なんていやらしい…素敵な格好なんでしょうね?』

 紐パンで申し訳程度に覆われた双丘の陰で、男の指を3本も美味しそうに銜えた魔王は今…自分の股間に跪いて、これまた美味しそうに男根を舐めしゃぶっている。
 コンラートはつるりと紐パンをずらすと…剥き出しになった蕾に両手の指を銜え込ませ…ゆっくりと広げていった。

「んんんっっ!!」
「よく見えるよユーリ…貴方の高貴で…それでいてとっても淫猥な肉襞がひくひくして物欲しそうに蠢いているのが、俺からはよく見えます。だけど、今はまだ見てはいけませんよ?あとでたっぷり見せてあげる…貴方の身体がどんなにいやらしいか……」

 微かに残る理性を刺激するような物言いに、有利は眦に涙を浮かべてコンラートを見上げた。
 その…こんな行為のただ中にあってさえ澄んだ漆黒を湛える黒瞳に、一瞬…コンラートが目を見張った。

「ユー…リ?」

 何かを思い出そうとするように…コンラートの視線が漂う。
 だが、その視線は鏡に映る恋人の淫らな姿を捉えた途端に再び欲を纏った。

「おや…ユーリは我慢のきかない子だね?自分でこんなところを慰めて、一人でイく気だったの?」
「にゃあああっっ!!」

 きつく自分の高まりを握り込まれて、堪えきれない悲鳴が上がった。
 目の奥がちかちかして、痛みのあまり涙が込み上げてくる。

「ご奉仕の途中に自分だけイこうとするような悪い猫には、俺のミルクはあげられないな」

「…っ!」

 痛み以上の衝撃で、有利は言葉を失った。
 先走りだけでもあんなに美味しいのに、沢山でてきたらどんなだろうと胸躍らせていたご褒美がお預けになってしまう!

「にゃ…だぁ……許して…コンにゃッド……っ!」

 懸命に嫌々をしていたら、《しょうがないな》という表情でコンラートが微笑した。

「じゃあ、仰向けに寝てご覧?」
「?」

 意味が分からなくてきょとんと首を傾げたものの、言われるまま床に背を預けると、素焼きの床材に濡れたシャツが接してひやりと背が震える。

「そう…そのまま、脚を上げてみて……そう……」

 コンラートに両脚の腿を支えられて、ぐぅ…と倒されていくと…普段から柔軟性に富む有利の身体は、猫独特のしなやかさでもって、楽々つま先が床に接することになる。丁度くるりと後方に反る形で丸まったような姿…そんな体勢を取ると、先程自分で高めようとしたものが自分の眼前に晒される。

「さぁ…銜えてご覧?ユーリのそれからも美味しいミルクが出るんだよ?」
「……っ!!」

 あまりと言えばあまりの行為を促されて、流石にとろけていた意識も我に返ってしまう。

「無理…無理にゃの……っ!」
「おや、嘘つきだね?ほら…こんなに余裕で唇の傍にあるじゃないか。試しに先っぽだけでも舐めてご覧?」
「嫌にゃ……」

 首をふりふりして嫌がる有利に、急にコンラートがのし掛かってきたかと思うと…優しい…けれど拒絶を許さない強さを込めて《命令》が下された。

「俺は今なんて言ったかな?…ユーリ、舐めなさい」
 聞き分けのない…好き嫌いをする子どもに親が高圧的に命ずるかのように、コンラートは有利を拘束した。
「…っ」

 涙を浮かべて舌を突きだし…ちょろりと自分自身の高まりを舐めた有利は…そのあまりの美味しさに、今度はたっぷりと舌につくように強く舐め上げ…そのことで込み上げる快感も相まって、夢中で両手を添えると亀頭を含み込んだ。

 ぷくぷくとした感触の滑らかな膨らみの間で…鈴口からしみ出る液は凄まじい甘露でもって有利の羞恥心をそぎ落としてしまった。

 ちゅく……ちゅうううっっ
 べろ…べ……ちゅ……っ

 黒いニーハイに覆われた下肢を大きく開いて…自分自身を舐めしゃぶる恋人の媚態に、限界近くまで高められていたコンラートの男根は腹を打たんばかりに反り返った。

「美味しそうだね、ユーリ…もっと美味しくしてあげる…」 

 コンラートは再びたっぷりと白いジェルを手に取ると、溢れるほどの量を有利の菊華から後宮へと注ぎ込んでいく。
 そして…男根の先端を押し当てると、もう十分すぎるほどにならしたそこへずぶずぶと本体部分を埋め込み始めたのである。

「………っっっ!!」

 埋め込みつつもイイところを明確に抉っていく灼けた肉棒に、有利は一層身体をしならせて深く…より深くと自分のものを含もうとする。

 ぎし…ぎゅ……
 ずぶぶ…ぐちゅ…… 

 軍靴が床を擦って奏でる音と、淫らな粘質の音が明るい部屋の中に響いていく。
 ぐちゃぐちゃに濡れた有利の菊華は涎を垂らしながら恋人の肉棒を求め、抜き差しされるたびに取り縋ってぎゅるりと肉襞を引き絞る。

「イイですよ…ユーリ……貴方のここはなんて淫らに男を銜えるんだろう!生来の娼婦のように淫猥なくせに、少女のようにいつまでも狭いなんて……。男のものを挿れられるためにあるような肉ですね……」
「んにゃああ!」

 コンラートの突き上げが激しさを増す…いや、殆ど天頂部から降るようにして成される腰使いは、寧ろ突き下げとでも表現した方が良いのかも知れない。
 もう、何を言われてもずくずくにとろけた肉と思考は与えられる快感だけを追い…有利はひときわ激しい突きを受けた際に己の迸りを口腔一杯に味わった。

 甘くて…芳醇な美味に酔いしれる。
 その余韻に浸るまもなく、身体の奥で熱い迸りが放たれたのが分かった。

「にゃ…にゃああぁぁっっ!」

 丸まった身体のまま最奥を抉られ…熱いものを存分に注がれた場所が悦びに震えるように間代性の収縮を繰り返せば、コンラートは艶めいた嘆息を零しながら男根を抜き去っていく。

 くぷ…と抜かれた途端……

 溢れ出す液がしとどに双丘を濡らした。
 いまだ黒い布を申し訳程度に股の付け根に絡めた媚肉から零れる、白い情欲の証…。
 それを指でなぞったコンラートは、そのまま恋人の唇にその液を含ませた。 

「美味しい?」
「ん……ぅん……美味しい……」
「そう、でもね…ほら、見てご覧…これはユーリのお尻の穴から溢れているんだよ?」

 言われて…いまだコンラートに大きく開かれている下肢の間を伺えば、とろとろと菊華から溢れたミルクが双丘を伝っていた。

「なんてはしたないんだろう…ユーリは折角のミルクを飲み込めずに零してしまったんだよ?」
「ゴメンにゃさい……」

 瞳を潤ませて謝る有利に、心ある人がこの光景を見たならば声を大にして言うだろう。

『ゆーちゃん!貴方そこ、謝るトコじゃないからっっ!!』

 しかし、コンラートの《心の欠片》は如何にも良識を弁えた大人でございという表情と声で、実に非常識な提案をしてきたのである。

「そうだね、ユーリはちゃんと反省してるよね。だったら…自分でここを綺麗に出来るでしょう?さぁ…そのお口で舐めてご覧?」

 本当に良識る大人がこの光景を見たならば、壁を叩いて叫ぶだろう。

『ゆーちゃん!駄目!それ以上は駄目よぉぉぉぉっっ!!』

 しかし、この場には心も良識も怪しい大人しか居なかったため、可哀相な有利は右脚を自分で支え、左脚床について支えると…毛繕いをする猫のポーズで自分の菊華を…

 ……舐めた。

 ぺろぺろと丁寧に舌を這わせて、自分の体内に注ぎ込まれた欲情の証を舐め取る猫少年…。
 とてつもなく背徳的なその姿に、コンラートは益々笑みを深めるのだった。

「とても良くできたね、ユーリ。ご褒美をあげようか?」
「ん…もぉ……ミルクはお腹一杯……」

 事実、相当量の…それも各種の《ミルク》を平らげてしまった有利は喉の渇きを感じるということはなくなっていた。

「俺がユーリにあげられるのはミルクだけでありませんよ?」
「にぁあっ!」

 怪しく瞳を輝かせて…コンラートの指がくちゅりと清められたばかりの菊華を乱せば、折角舐め上げた場所が再びどろりと溢れたもので汚されてしまう。
 …しかし、その事でもう咎めようという気はないのか(勝手な大人である)、甘い声を上げて啼く《ペット》の陰部を思うさま抉り…乱していく。

「あ…はぁ……にゃ……はぁぁんっ!」
「もっともっとあげる…ユーリが望むだけ。ね…どうして欲しい?ユーリ……」
「ぐちゃ…って、してぇぇ……っ!そこ…もっとぉ……っ!!」

 羞恥心など遠くのゴールポストにオーバーヘッドシュートで蹴りこんでいるのか、有利は腰を淫靡にくゆらせてはコンラートの指を欲した。
 けれど…突然に指は音を立てて引き抜かれると、濡れそぼったその場所は無惨にも放置されてしまう。

「ご…褒美って……言ったにょにぃ……っ」
「ちゃんとあげるよ?だから…今度は自分でお尻の穴を広げてご覧?この鏡に向かって、《俺はコンラッドにココをぐちゃぐちゃにして欲しい、いやらしい猫です》って言ってご覧?」

 心があってもなくても、普通この発言には開いた口が塞がらないだろう。
 しかし…有利の羞恥心は前述の通り遠くのゴールポストを揺らしているので、当分こちらのコートに帰ってくる当てはない。

「ゆったら…してくれる?」
「ええ…約束ですよ」

 おずおずと鏡の前に座り…有利は大きく脚をひらくと、ごくりと唾を飲み込んで震える指を菊華にかけた。

「もっと広がるでしょう?ついさっきまで俺のものを美味しそうに銜えていたんですから…。それに、目を閉じてはいけませんよ?さっき言ったでしょう?貴方は、自分の身体がどんなに嫌らしいか知っておく必要があるんですよ」
 徹底的に言葉責めで苛むつもりらしいコンラートが、敏感な猫耳にふぅ…と息を吹きかけ、揺れる尻尾を乱暴に指で嬲りながら囁きかける。

「ん……」

 限界一杯まで広げられた菊華から、またどろりと白濁した液が漏れ出てくる。
 それは注がれた熱情と、白いジェルがない交ぜになった愛欲の証であった。

「まだ出てくるんだ…とても奥まで飲み込んでいたんだね…。さぁユーリ、なんて言ったらいいか覚えているかな?」
「俺は…」
「ユーリは?」
「コンにゃッドに……ココを……ぐ、ぐちゃぐちゃに……」

 ゆったりとした時間が流れると…《あの〜帰って来ちゃったんですけど…》とでも言いたげに羞恥心が戻ってくる。
 いっそのことそのままどこかで1泊してくれればいいものを…何故律儀に帰ってくるのかと、有利は切なくなって涙が込み上げてきた。

 鼻の奥がつぅん…と痛くなって、ぼろぼろと大粒の涙が零れてくる。

 コンラートを…大切な恋人を助けたい。
 でも……恥ずかしいし、第一…とても悲しい。
 コンラートが心の中でこんな風に…有利を、こんな事が平気で出来るいやらしいヤツだと思っていたのだとしたら、そんな悲しいことはない……。

「ぅ……ぇ……っく……ゴメン……言えにゃい……言えにゃいよぅ………」

 有利はずるりと菊華から指を離すと、両手で顔を覆って泣き始めた。
 そんな有利の肩に、こつん…とコンラートの額が押し当てられる。

「そうだね…ユーリには無理だったね……ゴメン。俺のこと…嫌いになったよね?」
「違…」

 ずるずると鼻を啜りながらしゃくり上げるために上手く言葉が出ない。
 第一、牙が邪魔になって変な拗音しか出ないのだ。

「俺は…いつもこんな事を考えているわけではないんだけど、時々無性に…ユーリがやらしいことが大好きな、エッチな子だったらいいのに…と思うことがあるんだよ。でも、実際のユーリは太陽と野球が好きなまっすぐな子だから…セックスなんて、普通にキスをして身体を合わせるだけで…一発やってしまうだけで満足して眠たくなってしまう……。そんなユーリだから好きになったのに、欲張りな俺は眠ったユーリの顔を見ながら一晩中いやらしい妄想に耽っていたんだ……」
「コンにゃッド……」
「そう……いやらしいのは俺だ、ユーリ。貴方が欲しくて堪らない…いやらしく俺を求めてくる貴方を夢想しては心を紛らわす、浅ましい男なんだ……幻滅、しただろう?」

 絶望を声にしたら、こんな形になるのかと有利は思った。

 自分の欲望の一つの形…それを覆い隠して蓋をして…無かったことにしようとしたコンラート。
 それは何のためだったのか。

 それは…有利を失わないためだ。
 有利に、軽蔑されたくないためだ。

 そして隠して隠して…ひた隠しにしてきた欲望が、夢魔の修飾を受けてこんなにも悪趣味なプレイを完成させてしまったのだろう。
 
 有利は居ても立ても居られなくなって振り返ると、ぎゅうっと思いっきりコンラートの頭を抱きかかえた。

「大しゅき!」
「ユー……」
「大しゅき、コンにゃッド!!俺にょのこと好きでいてくれるにゃら…俺、やるから!こんなコトする俺を好きだっていってくれるにゃら、やるから見ててねっ!!」

 有利はズダーンっ!と勢いよく床に座ると、がばっと大きく脚をかっぴろげ…力の限り菊華をおっぴろげてコンラートに見せると、それはもう大きな声で元気に叫んだ。

「俺はコンにゃッドにケツの孔をぐっちゃんぐっちゃんにして欲しいヤラシー猫にぇす!にゃんでかってゆうと、コンにゃッドが大好きだからにぇす!コンにゃッドが笑ってくれるなら、俺は…はにゃの穴でも耳の穴でもかっぴろげみゃす!」

 そう言って、言葉通り鼻の穴を膨らませたり、耳朶を広げて耳の中を見せようとする有利に、コンラートは泣き笑いの表情を見せた。
 そして…ふわふわとその境界が光につつまれてぼやけていったかと思うと…コンラートの瞳の色と同じ綺麗な石が、床のうえに残されていた。
 
 有利はきゅ…とその石を両手で包み込むと、大切な宝物のように唇に寄せていった。
 
「待っててね…絶対、助けてあげる……っ!」

 必ず、二人で戻るのだ。

 こんな夢の…現実離れした快感などなくてもいいから…。
 現実の世界で、不器用なキスをしよう。


 その方がきっと、もっとずっと心地よいはずだから……。






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あとがき


 てへ、はっちゃけました。
 ノリ的にはいつもの濃口と大して違わない気もしますが…。
 やはりトンデモナイトは我ながら良い設定でした!いやー…何でも許される気がしますね。取りあえず自分を許せる気になります。だって、少々無理をしても有利の身体に障らないし!臭いマズイ苦いの三拍子揃ったザーメンもこの通り甘露甘露!まぁ、美味しそうね有利!私は旦那さんのは飲まないし、そもそも旦那さんはドカチン系の極めて真っ当な嗜好の持ち主なので飲ませようともしないけどね!
 この後もいくつあるか分からない夢魔(狸山)の試練に負けず、頑張ってコンラッドを救い出してね!!

 そして、エロスキーの皆様もよろしければ当分お付き合いくださいませ!
 「こんなエロがみたい!」というのがありましたら拍手文でこっそり教えて下さい!