〜青桐山間道の恋人−4〜
















有利side:3



 薬を盛られたというコンラートの媚態に、有利は不安と同時に奮い立つような意欲を感じてもいた。

『俺が…コンラッドの役に立てるかもしんないっ!』

 思えば、有利は出会いからこっち…コンラートの世話になったことはあっても何かをして上げたという記憶がない。

『今度こそ役に…っ!』

 ……という意欲もなのだが、ついでに…と言ってはなんだが、大変利己的な意味でも有利は萌え立つものを感じていた。

『コンラッドってば…色っぽいんだもん…っ!』

 この場にヨザックや、コンラート狙いの男が居なくて本当に良かった…っ!と思うくらい、媚薬に煽られたコンラートの仕草は艶やかで…野生の獣が誘いかけてでもいるかのような、危険な魅力に満ちている。

 こういう姿を見せられて、《抱きたい》ではなく《抱かれたい》と思っている自分にちょっぴり忸怩たる思いを抱かずには居られないが…それはもう、彼の手管があまりにも巧みであったからと説明するほか無い。

 サキュバスに肉体を侵されていたとはいえ、コンラートが有利の身体で奏でた淫靡な技は狂おしいほどので、半ば薬が抜け掛けた頃合いにも身体の奥が疼いて堪らなかった。

 だからこそ彼に触れられることが怖くて、ちょっとした接触にも怯えていたのだけれど…。今日は、もうそんな怯えなど吹き飛ばさねばならない。

 有利は覚悟を決めると、コンラートのズボンから取りだした雄蕊に唇を寄せた。

 ぬる…
 ちゅく……

 辿々しい愛撫ながら、以前して貰って気持ちの良かった動きを思い出しては、なぞるように舌遣いを施していく。

「ん…良いよ。ユーリ…もっと、銜え込める…?」
「んん…ぅん……っ」

 精一杯喉奥まで銜えてもコンラートの高ぶりを全て口にすることは出来ない。有利が懸命に吸い上げ、咽頭まで使って頭を上下させると卑猥な水音が車内に響いた。

 じゅ…
 ちゅ…ぐちゅ……

 腹を打つばかりに成育した雄蕊を愛おしげに指先で擦り上げれば、ふるると盛り上がった水滴が堪えきれずに伝い落ちていく…。

 しょっぱいその液すらも美味に感じてしまう自分を奇妙に思いながらも、心地よさそうな嬌声を上げる男が愛おしくて、もっともっとと有利の行為は大胆になっていく。

「ね…俺の口で達って?」
「駄目だよ…ユーリ。苦いよ?」
「平気…多分。ね…お願い。あんたに…気持ちよくなって欲しいよ」
「ん…」

 ひくりとコンラートの喉が反り返ると、普段はきっちりとスーツに隠されたそこが、実は透明感を湛えた白さを呈していることに気付く。

 ちぅ…っと吸い上げながら扱く手の動きを早めれば、隆と高ぶる雄蕊から溢れんばかりの白濁が吹き出してきて、有利は慌てて喉を動かした。

「ん…くふ……ぅん…っ!」

 噎せそうになりながらも必至で飲み下せば、流石に青臭い液に涙が浮かぶ。

 だが、請け負った手前…そして、こんなに綺麗な車を汚すわけにはいかなくて、有利は結局尿道に残された残渣までも吸い上げて、綺麗に飲み下してしまった。

『ぅわぁ……』

 快感に酔うコンラートは後部座席で伸びを打ち、すらりとしたその肢体が薄紅色に染まる。その様子はあまりにも美しくて、有利は口角に白濁を滴らせたままうっとりと見惚れてしまうのだった。

「ユーリ…」
「は…はひぃ!?」
「口…汚しちゃったね」

 くすりと笑うコンラートは、シートに肘をついて上体を伸ばすとぺろりと有利の口を嘗めた。

「苦い…」
「そう?…美味しかったよ?」

 強がってぺろりと口元を嘗めれば、コンラートの笑みが一層深まり…唇が重なってくる。

「ん…」

 液の苦さも漠然とするくらいに深い口吻が交わされれば、コンラートの手はするすると有利の服を脱がせ、はだけられた肌が外気に触れてぞわりと震えると、己の熱さを伝えようとでも言うように…舌が有利の胸筋を辿る。

「ゃ…駄目……今日は俺がやるの…っ!」
「そう?」

 舌を出したまま少し残念そうに…でも引いてくれるコンラートを再びシートに押し倒すと、有利は自らズボンを降ろすと、微かに躊躇しながらも…一気に下着を脱いで蒼いシャツだけを纏った姿で自分の蕾を押し開こうとした。

 けれど、頑ななそこは有利の指先一つ分を受け入れるのにも苦痛を帯び、ぎゅ…っと閉じた眦に涙が浮かんでしまう。

「ユーリ…ユーリ。流石にそれは無理だよ?前はサキュバスのせいで濡れていたんだから…オイルか何かで濡らさないと」
「でも…俺……そんなの持ってな……」
「ほら、こっちにおいで?」

 コンラートは鞄から青みががった瓶を取り出すと、掌に注いだオイルを体温で暖めてから有利の双丘へと伝わせた。

「ゃん…だ…ダメ……自分でするからっ!」

 有利はコンラートの手から瓶を奪い取ると、掌に取って自分の蕾に添える。

「ん…んん……くぅ……」

 くちくちとオイルを塗り込めれば、何とか入り口までは解すことが出来た。…が、有利の指ではそこまでしか濡らすことは出来ない。

 諦めてオイルを更に手に取ると、有利の痴態に煽られてか再び隆起してきた雄蕊にぬるぬると絡めていく。

「大丈夫?もっと…馴らさないと……」
「だって、あんただって限界だろ?さっき達ったばっかりなのにもうこんなじゃんか」

 ぷにりと鈴口を強めに擦れば、コンラートも苦笑してしまう。確かに、今すぐにでも放出してしまいそうな勢いだ。

「行くよ…」

 コンラートの下肢を跨いで、双丘をゆっくりと降ろしていけば…敏感な蕾に熱い粘膜が接触してくる感覚にびくりと腰が震えてしまう。

「無理しないで?ユーリ…苦しくなったら途中で抜いていいから」
「コンラッドこそ、俺が下手なせいで苦しかったら言ってね?ペキっとかいって折れたら切ないし」
「そりゃ切ないね…」
「きぅ……っ」

 首根っこを掴まれた仔犬のような声を上げて腰を沈めていけば、オイルのぬめりと自重を借りてなんとか少しずつ雄蕊が埋め込まれていく。

『ぅわ…俺の中……コンラッドの形になってく……っ』

 ゆっくりと…男の肉棒の形状と熱さを感じ取りながら沈み込んでいく有利に、コンラートは少し苦しげな…けれど、隠しきれない欲望を見せて艶やかに唇を舐めた。

 紅い舌が薄い唇を伝う様はひどく扇情的で、ぞくぞくと背筋を震わせながら有利の花茎も硬さを持ち始めていた。

『ヤバ…気持ちイィ……っ』

 こんな恥ずかしい姿を晒しながら、感じてしまっている自分が恥ずかしい。
 でも…もっと奥まで…自分でも知らない奥を暴かれたくて有利は一気に体重を乗せた。

「ひぁぁ…っあ……っ!」

 感じやすい場所を掠めた雄蕊に、有利の嬌声が響いた瞬間…対向車線から接近してくる車のライトが有利の背中を照らし出した。 







コンラートside:3



「……っ!」

 蒼いシャツ一枚を羽織っただけの有利の背後から車のライトが輝き、白い乗用車がゆっくりと減速して来るのが分かる。

 有利はずっぷりと体腔内に雄蕊を銜え込んだまま、怯えきった眼差しを浮かべて硬直していた。

 だが…その姿のなんと美しいことだろう?

 夏場はこんがりと焼けていた(…と、本人は主張する)肌は、冬場の弱い日差しのためか透き通るような白さを呈し、今はうっすらとかいた汗のせいでぬめるような光沢を湛えている。

 シャツの合間から覗く桜粒は喘ぐ胸の上でぷっくらと尖り、口吻を求めて色づいている。

 そして衝撃により揺れる花茎の先からは、とろりとした雫が盛り上がってきて…彼が後宮の充足感と視覚的な興奮だけで、到達間近まで硬度を増していることを物語っていた。

「ど…しよ……ゃ……っ」

 車が近くに停まり、扉の開く音がしてこちらに歩いてくるのが分かる。
 こんな田舎道に停車しているのを不審に思ったのかも知れない。

 有利は何とか雄蕊を引き抜こうと腰を上げるが、焦っているせいか上手くいかない。
 しかも身じろいだ刺激がそのまま自分自身への愛撫となってしまい、びくびくと腹筋が震えてしまう。

「ユーリ…おいで?」
「え?」

 あわあわと半泣きになっている有利を抱き寄せれば、繋がる角度が変わって《はぅ》…っと息を呑むものの、コンラートの腕の中という安心感のせいか有利の怯えがおさまる。

 コンコン…

 人の良さそうな中年男が後部座席の扉を叩くが、覗き込んだ瞳がぱかりと開大する。

「…っ!」

 ばつが悪そうに頭を下げる男に苦笑しながらぺこりと会釈すると、男はひょこひょこと駆けて自分の車に戻っていった。どうやら家族連れらしく、窓から見える中学生くらいの子ども達や中年女性がどっと笑うのが確認出来た。

 何らかの事故か、体調不良者でもいるのでは…と心配していたら、《馬鹿ップルのカーセックス》だったということで笑いの種になってしまったらしい。有利は華奢な体格だし、シャツ一枚を羽織っていたから女の子だと思われたのだろう。

 ブロォォオオ……

 排気音と共に、乗用車が去っていくのが分かる。

「ユーリ、もう行ったみたいだよ?」
「うん…」

 コンラートの胸に顔を埋めたまま真っ赤になって身じろぐ有利は《それでは再開》…と言うわけにはいかなそうだ。

「ぁん…っ」

 人に見られるという羞恥に花茎が竦むと思いきや…身じろいだ拍子に押しつけられたそこはすっかり硬く高ぶっており、いまにも達っしてしまいそうに白い液を滲ませていた。

『見られて…興奮した?』

 という台詞が喉奥まででかかったものの、彼自身がそれを自覚して瞳を潤ませているものだからとても追求など出来ない。

 そんな様子が可愛くて可愛くて…コンラートは恥ずかしそうに目線を逸らす有利の頬を両手で包み込み、軽く音を立てて小鳥が啄むようなキスを顔中に降らせた。

「良い…?動くよ?」
「え…?ひゃ…っ!」

 とんとん…っと軽く揺すってぬめりを確認すると、コンラートの腰の動きは次第に激しいものに変わっていき…有利の身体は人形のように跳ね、道路の照明を浴びて艶やかに踊った。    

「ぁん…ぁあん……っ!」
「可愛い声…それに、とっても綺麗だ。ユーリ…君の中で達って良い?」
「あ…でも……シート、汚れちゃ……っ」
「すぐに体位変換すれば大丈夫…多分」

 ずちゃ…
 ぐちゅ…ず……っ! 

 淫猥な音が車両内に響き渡り…目の前に踊る桜粒に吸い付けば、感じやすい有利は一層高い声を上げて背筋を逸らし、もっと舐めて欲しいみたいに胸を捧げてみせる。

 有利の花茎はと言えば、濡れきった先端部分と裏筋とがコンラートのシャツに押し当てられ、恥ずかしいくらいに布地の色を変えてしまっている。だが、まだ体腔への刺激だけでは到達するところまでは行けないのか、もどかしそうに身じろぐと、殆ど無意識のうちにコンラートの鍛えられた下腹に花茎を擦りつけてくる。

 こんなに清廉な容貌だというのに…奥底に眠る淫蕾は、ほんの少しの開発で簡単に開花してしまいそうだ。
 有利自身、己の反応に戸惑うように身悶えする。

「ど…しよ…ぃ…達ったらあんたの服…汚しちゃ……っ」
「良いよ。着替えは持ってきてるから…このまま達って?俺の服に一杯掛けてよ…ユーリが感じたって証…」
「ひゃん…っ!」

 コンラートの節くれ立った大きな手が絡めばもう堪えきることなど出来ず、有利は堪りかねた迸りを勢いよく放って、コンラートが求めるとおりに白い飛沫をシャツや顔へと飛ばしてしまった。

 同時に、きつく窄められた有利の体腔内にもコンラートの情欲が弾け、熱い液体がぶわりと溢れて、一瞬…有利の肉壁の形を変える。

「ゃーっっ!」

 反り返ってびくびくと震える身体を抱き竦め、最後の一滴まで絞り尽くすかのような肉壁を愛おしげに擦り上げれば、すぐさま硬度を蘇られた雄蕊がぬめりながら有利のイイ所を啼かせていく。

「ひぃ…んんっ!ダメ…も……おかしく、なっちゃ……っ!」
「いいよ…おかしくなっても」

 感じすぎて啼きだした有利をシートに跪く形に移動させると、車両を揺らす勢いでコンラートの腰が叩きつけられ、すべらかな双丘が軽い打撃音と淫靡な水音とを響かせていく。

 まるでお仕置きでもしているような体勢にコンラートの唇が苦笑の形に歪むが、有利の方はもうそれどころではないようだ。

 繋がったまま幾度も体勢を変えられ…肉筒のなかへと熱を放たれるたびに心地よさが増していくらしく、涎を零しながら乱れ…たまらなく扇情的な嬌声を上げて啼いた。

 このままでは流石に白濁を受け止めきれなくなるな…と思い、途中から2回コンドームを変えたものの…先に飲ませた分が既に大量であったらしく、突き上げの度に蕾の縁から液が零れてくる。

「あーっっ!!」

 一際高い声を上げて有利が到達した時、がくりと膝から下の力が抜けてしまう。

 だが…既に5回到達している筈のコンラートは媚薬の効果のためかもともとの体力・精力が無限大なのか、いっこうに充足感を得るところまでいっていない。

 くたりと力が抜けて気絶している有利を、後背位で抱き込み繋がった場所を燻らせていたが…その内、有利の覚醒を待つことも出来なくなって……コンラートはそのまま腰を上下に振り始めてしまった。

「ん…んん…?」

 殆ど夢心地のままコンラートを受け止め続ける有利の唇からは、寝ぼけたような淡い嬌声が断続的に続いている。

 繋がった場所からは受け止め切れなくなった白濁が、突き上げのためにいやらしい音を立てながら溢れ出しは有利の双丘をべたべたに汚している。なんとか二人の下にクッションを引いてその液を受け止めさせているので、革製のシートはギリギリ無事なのだが…クッションはこのままお亡くなりになりそうな予感がする。

『こんなに気持ちいいんだから…クッションくらいこの際どうなっても良い…っ!』

 コンラートは気絶したままの有利の首筋に齧り付くと、腰を振るって強く突き上げ…最早どろどろになった有利の内腔へと新たな液を放つのだった…。そろそろ、コンドームを替えないと、車内がえらいことになってしまいそうだ。










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