2011年バレンタインリレー企画
~単発リクエスト~
「チョコレートアロマ」-2
『んん~気持ちいい』
とろんとした心地でうっとりと身を委ねていたユーリは、暫くの間すっかり油断しきっていた。何しろコンラートが傍にいてくれるのだから、決してユーリの身に危害が及ぶはずもない。そう確信しているからこその安心感であった。
コンラートの掌には幾つも傷跡や剣ダコがあるのだが、鍛えられた鞣し革のような皮膚がオイルでぬめると、なんとも心地よい感触になる。彼の手首が柔軟であり、常に皮膚へと掌が密着しているのもその心地よさに拍車を掛けていた。
『オイルがチョコレートみたいな匂いがするのも、凄く良いなー』
大量のチョコレートを湯煎に掛けた時には辟易した匂いも、こうして仄かに漂っていると上品で心地よい香りとして感じられる。まるで、とぷんと甘いチョコに浸されているみたいに心地よい。
『とろとろに溶けちゃいそう』
はふぅと甘い息を吐いて力を抜いていたのだが、ぱちぱちと瞬きしていたら、少しだけ普段の意識が戻ってきた。
『あれ?俺…なんか、全裸じゃない?』
はたと気付けば例の黒紐パンまでもが脱がされて、寝台脇のチェストの上で所在なげに転がっている。コンラートにとっては名付け子のパンツを剥ぎ取ったことなど大したことではないようで、ぬるぬるとオイルを滑らせては腿の際どいところまで撫でつけていた。
「コンラッド、俺…あのぉ…」
上体を少し起こして言いにくそうに囁くと、コンラートは実に佳い笑顔を見せながら察してくれた。ユーリが言いたいのとは別の方向に。
「ああ、そうだね。仰向けもやってあげるよ。さっきして貰って凄く気持ちよかったから、腸腰筋を特に丁寧にね」
「え?」
ころんと仰向けにされる時もちゃんと大判のタオルをずらしてくれたから、秘密の埼玉県民ブースはモロ出しになったりはしなかった。だが、タオルからにょこりと伸び出した脚は完全に剥き出しで、鼠経部の限界ぎりぎりまでが露出していた。
「はい、脚をしっかり開いてね?」
響きの良い美声で囁かれて、コンラートの姿が見える状態でぱかりと下肢を大きく開かれると、御開帳寸前のポーズに頬が真っ赤に染まってしまう。
『こここここ…これって、物凄い恥ずかしい状況なのではっ!?』
コンラートの方は全く気にしていない風な所から見て、多分、眞魔国の全力マッサージとはこういう感じなのだろう。そういえば、オイルを使うと服が汚れた時になかなか落ちないかも知れないから(体勢を変えた時にシーツにはついているのだが)、これが普通なのかも知れない。
『そ、そーだよな。コンラッドが俺に変なことするはずないし』
三兄弟の中では一見地味そうに見えて、実は恋愛関係については百戦錬磨の狩人なのではないかと疑われるコンラートのことだ、こんなところで子ども相手にセクハラ紛いのことをして愉しむなんて性癖はないだろう。
「ユーリ、気持ちいい?」
「うん…コンラッド、マッサージ凄い上手いよね」
「嬉しいな。ね…もっと気持ちよくなって?」
「…っ!」
ユーリがそうしたように、腰を跨ぐようにして陣取ったコンラートが、覆い被さりながら甘く囁きかけてくる。ユーリよりも遙かに大きな体躯がすっぽりと覆い尽くすような影を投げかけ、あまりにも近すぎる距離に、彼独特の香気がにおやかに伝わってくる。
こんなのは反則だ!ぞくぞくと背筋が震えて、知らず甘い吐息が漏れてしまう。
タオルに包まれた秘密の埼玉県民ブースが、むくりと鎌首を擡げてしまうのを、一体どうすればいいのだろうか?
『も…無理…っ!!』
女の子みたいに《あんあん》言ってしまいそうな自分が恥ずかしくて堪らず、ユーリはちいさく震える声で必死にお願いした。
どうか、股間がどうにかなっていることにコンラートが気づきませんように!
「コンラッド…脚……ちょっと、恥ずかしい…」
「ああ、そうだね。仰向けになると流石に男同士でも恥ずかしいかな?」
どうにもこうにも限界を覚えて懇請すれば、コンラートは実に爽やかに了解してくれた。ユーリだけが羞恥と、変な高ぶりを覚えているのが申し訳ないくらいだ。
「はい、これで良いかな?」
「…っ!」
コンラートはすっぽりと下肢を大判のタオルで包んでくれた。ただし、それは上体を包んでいたものを下方に平行移動してきただけだから、今度は胸元から下腹にかけてが剥き出しになってしまい、危うくギャランドゥがお目見えしそうになる。
「ああ、でもこれじゃあ寒いか。ゴメンね、ユーリ。ここも、すっかり硬くなっちゃってる」
「ひぁ…っ!」
《いま変な声出たぁ~っ!》心の中は大パニックだが、身体の方はあまりの衝撃にフリーズ状態に陥っている。コンラートの武人らしいがっしりとした指が、優しいタッチで胸の尖りに触れくると、そこが知らないうちに硬く痼っていたこと…そして、誰かに触れられると飛び上がるような甘い電流を流すことを、初めて知ってしまった。
押さえようとして両手で口元を覆っても、合間から《ん…んっ》とAV女優みたいに感じきった声が漏れ出てしまう。
『こんなとこで大人の階段登っちゃった!』
恥ずかしさに消え失せてしまいたいのだが、コンラートはそんなユーリを宥めるように、掌で暖めたオイルをたっぷりと塗りつけてくる。ぬるぬると滑る掌が肌に密着して、死ぬほど…気持ちいい。
「ほら、こうすると暖かいでしょう?」
「う…ぅん……」
半泣き状態でもそもそと身を捩るが、それすらも自分を興奮させる要素となってしまう。コンラートの手がぬるぬると胸筋や側腹部をなぞる動きが、身じろぐことで余計リアルになるのだ。
『いま…絶対、俺のあそこ…たっちゃってる……っ』
膝を軽く曲げているから気付かれてはいないかもしれないが、軽く股間を掠められたらおしまいだ。察しの良いコンラートはきっと気付いてしまうに違いない。
「コンラッド…あ、ありがと…でも、もう遅いし…このくらいで良いよ?」
「そうですか?では、また今度しましょうか?」
「…………うん」
こくんと頷くユーリは、《マッサージ券》の残り3枚がどう使われるのかについて、色々と考え込んでしまった。
* * *
『やってしまった……』
落ち込んでいたのはユーリだけではない。コンラートもまた、自分でやらかしておいて激しく後悔していた。ユーリはあれから消え入りそうな声で《お風呂貸して、お願い》と頼み込むと、声を殺しながら《何か》をしていた。
何をしていたかは想像つくし、《突撃、我が家の風呂場訪問ーっ!》なんて言いながら突撃していくことも物理的には可能だったが、精神的に無理だった。
そんなことをしたら、二度と許してはくれないだろう。
『マッサージも二度とさせてくれないだろうな』
当たり前だ。あんなセクハラ紛いのことをして、罵倒されなかっただけ有り難いと思わなくてはならないだろう。全くもってユーリがあそこのまで耐えてくれたのは、コンラートを性対象として捉えていないことと、警戒心が皆無だったせいだろう。
『それでも、涙目になってたな』
真っ赤に上気した頬、あえやかな吐息を漏らしていた愛らしい唇、切なく尖った胸の桜粒、それに…タオルに包まれながら隆起しかけていた、ユーリの大切な器官。
『流石に、あそこにオイルを塗ったら嫌われただろうな…』
あ・た・り・ま・え・だ。
一文字一文字、抉り込むようにして一人突っ込みしてしまう。
それ以外の際どい場所やすべやかな肌の感触を思うさま味わっただけでも、普通なら不敬罪で首が飛ぶところだ。いや、コンラートにとってはユーリから軽蔑の眼差しを送られる方が辛い。そんなことになったら、両目をくりぬきたいと切望してしまうことだろう。
「…暫くは、大人しくしていよう」
物凄く不本意ではあるが致し方あるまい。ユーリが《あれって何だったのかな?》なんて思い出さなくなる頃まで、マッサージ券は封印してしまおう。
* * *
それから数日後の事だった。夜分遅くにコンラートの部屋の扉が鳴り、伝わってきた気配に飛び起きてしまう。扉を開ける前からそれと知れた相手は、勿論ユーリだ。一応は衛兵を連れているとはいえ、こんな夜更けにどうしたのだろう?
問うてみると、ユーリの方が不本意そうに唇を尖らせている。
「だって…あんた、ここんとこ全然俺に構ってくれないじゃん!マッサージ券だって、折角あげたのに使ってくんないしっ!!」
《ナニ言ってるんですか、あなた》と、自分のことを棚に上げて呆れそうになる。けれど、ユーリはコンラートが何か言おうとするのを封じるようにして捲し立てた。
「俺がマッサージするのでも、されるのでもいいから…使ってよ、あの券」
「…良いんですか?」
ごくりと喉が鳴りそうになるのをどうにか止める。拗ねたように唇を尖らせて、視線を逸らしながら眦を朱に染めた様の何と艶かしいことだろう?無邪気なだけだったつい先日までのユーリとは、明らかに様相を異にしていた。
まるで、開きかけた蕾が強い芳香を放つように、コンラートという虫を激しく誘引する。
こんな魅力に対して、抵抗など出来るはずがないではないか。
「お願いしても、良いですか?」
マッサージする方、される方、いずれを選ぶかで激しく葛藤したコンラートだったが、一瞬の躊躇の後にされる方を選んだ。ギリギリのところで、結局まだしも欲情を堪えられそうな方を選択してしまったのだ。(←ギリギリヘタレ)
「じゃあ、服を脱いで?」
「え?」
きりりと上げた眼差しは、慌てふためいて真っ赤になっていた先日とはうって変わって、能動的な意欲に満ちている。そして、肩に提げていた荷物の中からは一目見て上等と知れるオイルが出てきた。
「俺もオイルマッサージする!」
「はあ…」
ちょっと分かってきた気がする。
もしかすると、これはユーリなりの《復讐》なのかもしれない。コンラートの行き過ぎた行為が、ユーリの反応を愉しむ為のからかいだったのだと思いこんでいて、今度は逆にコンラートを煽って《これで恨みっこ無し》としたいのだろう。
『ユーリらしいや』
何だかくすくすと笑いたいような心地になって、コンラートはつい先程まで感じていた鬱屈をすっかり忘れてしまった。
「こないだやってもらったみたいに、端から端までぜーんぶやるからな?」
《途中で音を上げるなよ?》と言いたげな顔つきは、どこからどう見ても《俺は誰の挑戦でも受ける》という風情だ。心なしか、背中に《猪○!ボンバイエ!》というコールが聞こえる。
「ありがとうございます。ユーリに全身くまなくマッサージして頂けるなんて、光栄です」
「おうよ」
気持ち、大またに雄々しく歩きながらユーリはやる気満々で腕まくりした。
「では、失礼して」
「…っ!」
思い切りよく寝間着を脱いで、あっという間に全裸になってしまったコンラートに、一瞬だけユーリは息を呑んだ。そういえば、ヒルドヤードでは下着着用入浴だったから、コンラートの裸体を見せたのはこれが初めてだ。
「うぅ~…。い、良い身体してんなぁ…」
どこか悔しそうに呟くのは、羨ましくてしょうがないせいらしい。《ユーリも大きくなったらこのくらいの筋肉はつきますよ》と言ったが、できればそうなって欲しくないというのは、決して告げることが出来ないコンラートだけの秘密の願いだ。
「さ、どこからでもお願いしますよ?」
「うん」
とぷ…
ユーリは見よう見まねで掌にオイルを垂らすと、暖めようとして失敗して、ぱたた…っとコンラートの背中にまだ冷たい滴を零してしまう。
「あ…ゴメン」
「いいえ、平気ですよ」
一瞬冷たいなとは感じたが、それよりも気になったのはほわりと立ち上った芳香だ。コンラートが以前使用したオイルに似てチョコレートみたいな甘い匂いだが、より強く香る。どこか官能的でさえある芳香は、まるで媚薬のようだ。
『ユーリに限って、まさかな』
そうは思うが、拙い手がぬるぬると太腿や下腹を撫でつけていくと、タオルに包まれたコンラートのギャラクティカマグナムは奇妙な反応を示すようになった。愛する少年からの愛撫を受けていれば当たり前の反応ではあるのだが、普段のコンラートは自律神経の機能もバイオフィードバックでコントロールできる。ところが、どれほど制動を掛けても容赦なく、コンラートの息子さんはむくむくと勃ちあがっていくのである。
『これがホントの、親知らず。いや、息子の一人勃ち?』
なんて、馬鹿なことを思いついている場合ではない。
のし掛かってマッサージを加えていたユーリも、ふとした瞬間にタオルを押し上げているトーテムポールに気付いたようだ。
心なしか、《ふふん》と満足げに見えるのは気のせいだろうか?まさかとは思うが、本当に媚薬効果がある薬を使って自分と同じ体験をさせようとしているのだろうか?
『つけ込んだら拙いよな…』
ユーリの気持ちも分からないではないが、それでなくとも欲望にまっしぐらな欲棒を、こんなに勢いづかせられては堪らない。今だってユーリが自分の腰に股がっている様子を見ていると、《ちょっとだけ位置をずらした瞬間に脚を払えば、自重でずっぷり…》なんてあくどい発想が湧いている。
『辛抱たまらんっ』
分かってはいるが、ぎりぎりの鬩ぎ合いで耐えているコンラートに、ユーリは悪戯猫みたいに手酷い愛撫を加えてくれる。
「気持ちよくない?ほら…これとか。あんたにやられた時、俺なんて変な声とか出そうになっちゃったぜ?」
にやにやと愉しそうに含み笑いしながら、胸の尖りをくりくりと濡れた指先で弄られれば、固く痼ったそこが逞しい胸筋の上で強く存在を主張する。
うっかり、《ちょっと囓ってみませんか?》なんて誘いたくなるではないか。
「とっても気持ちいいですよ?俺の方こそ、あられもない声が出そうで焦ってます」
「…」
むぅ、と下唇の方が出てくるのは不満な証拠なのか。もっとコンラートに慌てふためいて、恥ずかしがって欲しいのか?だが、なかなか恥ずかしがる演技というのは難しい。これだけ切羽詰まった状態でやると、イタいオカマ芸みたいになりそうだし。
「もー、なんであんたは全然余裕なんだろ!」
「ああ…そんな乱暴な。あーれー」
「棒読みで村娘みたいなこと言うな!」
きゅっと痛いくらいに摘まれた乳首に感じてしまう自分は、立派な変態さんかも知れない。(←今更)
それでも、もう流石に限界だと感じてそろりそろそろと腕を伸ばしかけた時、ユーリが諦めたように身体を退けた。
「ちぇ。ツェリ様に貰ったオイル使えば、絶対気分が高揚して切羽詰まると思ったのにな!」
「そうやって、全力で仕返しをしようとするユーリは可愛いですよ」
「可愛い言うな!」
ぷんっとほっぺを膨らませて言ってから、ユーリは別の方向で気がかりな事に気付いたらしい。
「あ…俺、折角あんたに日頃お世話になってるお礼にってマッサージ券あげたのに、《仕返し》の為に一枚使っちゃうなんて…悪かったかな?」
本気で反省を始めてしまったのか、急に申し訳なさそうにもじもじしてしまうユーリは本当に可愛らしい性格をしている。ああ、この人を好きになって良かった。うっかり4000年分の記憶を所持している某身も心も黒いヒトなんかを好きになっていたら、きっと1万年くらい全力で虐められたことだろう。
「いいえ、ちっとも。俺はユーリに構ってもらえるだけで凄く嬉しいですよ?ほら、今日だって恥ずかしいところが恥ずかしいことになっちゃうくらい感じてましたし」
「ホントに恥ずかしかった?」
目的を遂げて嬉しいのか嬉しくないのか、複雑そうな表情を浮かべてユーリが小首を傾げている。頼むから、人の寝台の上で速攻押し倒したくなるような可愛い顔をしないで欲しい。両手が不随意的にわきわきするではないか。
「恥ずかしいですとも。ただ、こういう刺激で勃たなくなったら男として終わってる気もするので、ちゃんと機能してて嬉しいような気もしますけどね」
「あはは、何ソレ!」
ぷっと噴き出したユーリに、コンラートも調子を合わせてくすくすと笑う。
「だから、ユーリの若い身体が俺のマッサージに反応してどうにかなってしまったのだって、ごく普通のことなんですよ?」
「そっかなー。なんか、経験がないのがモロ出しになっちゃったみたいで、正直すげぇショックだったんだけど」
「俺だって同じようになってるでしょ?」
ツェツィーリエのオイルとくれば、おそらく美香蘭のような効果を持つものであったのだろうから、その分、不利と言えば不利だったわけだが、それでも最終的な状況は一緒だ。
「ね、これでおあいこにしませんか?」
「うん。俺も仕返ししなきゃ!ってのもあったけど、何かあんたと気まずいのはもっと嫌だったもん」
「ふふ…俺だってそうですよ!」
にこにこほのぼのと笑い合う二人の間で、牧歌的でないのは凶悪なまでの大きさと角度を誇るトーテルポール化したギャラクティカマグナムだ。オイルの効能なのか、いまだにギンギンぎらぎらとタオルを押し上げているそれに、ユーリは改めて興味を持ってしまった。
「うーん…あんたのって、やっぱ普通にしてても凄そうなのに、こんなになると大変なコトになっちゃうね!?」
「ええ、そうなんですよ。ですから、武士の情けでそろそろ助けて頂けませんか?」
それは勿論、尺八吹いてくれとかそういう意味ではなくて、純粋に《風呂で抜かせて下さい》というお願いだったわけだが、ユーリは面白い玩具を突きつけられた猫みたいに、トーテム(以下略)から目を離せない様子だ。
「あの…大変不躾なお願いで恐縮なんですが……」
「…はい?」
何だろう。
激しく嫌な予感がする。
大きく開かれた漆黒の瞳が、特別な化学実験を前にした小学生みたいにキラキラと輝いている。この目は、もしかして…。
「あ、あのさ…後学のために、あんたのソレ…一目、見せて貰っても良い!?」
「えー…」
流石のコンラートも即答出来ずに、返事とも何ともつかない弱々しい声音を漏らしてしまう。
銜えてもくれないのに見てみたいたいなんて、そんな殺生な!それこそ、村娘のように《あーれー》と言いながらクルクルされちゃう気分だ。
「み…見たい…ですか?」
「うん!あ…勿論、どうしてもあんたが嫌って言うなら我慢するよ!でもでも、なんかこー、凄い大きいものって見たくなるじゃん?世界一身長が高い人とか、世界一大きなお好み焼きとか」
コンラートのトー(以下略)は多分世界一ではないと思うが、取りあえず、ユーリが今まで目にした中では一番大きそうなのだろう。
『どうする俺!?』
絶望的な戦場に赴けと言われた時だって、こんなに葛藤した事はない。
無邪気で素直なユーリの、純粋すぎる好奇心の前に、コンラートは膝を突きそうな自分を感じていた。
「あ~…ゴメン、そんなに嫌だった!?そ、そーだよな。他人に見られて気持ちの良いもんじゃないよな!?」
ユーリは今更ながらに真っ赤になって、自分がどれだけ恥ずかしいことを要求していたかを実感したのか、あたふたと逃げだそうとした。
いかん。このままではまた気まずい時を過ごさねばならなくなってしまう…っ!
それだけは嫌だ!!
コンラートは反射的にユーリの手首を捕らえると、切羽詰まったように叫んでいた。
「では、見せあいこしましょう!!」
しょう…ょう…ぅ……
我ながら大きすぎる声が、殺風景な自室の中に殷々と響き渡る。
恐ろしいほどの静寂の中で、何を口にして良いか本気で分からなくなったコンラートの前で、ユーリがちいさく頷いた。
「……うん」
と、掠れるような声で囁きながら。
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