「白黒インパクト」−5






黒次男side−4




 
 爆音が響いたわりに、コンラートが怪我をしたときとは違って視界はすぐに晴れた。
 ただ…晴れ方が問題であった。

「あ…れ、ここ…どこ…?」
「さてはて…こいつはどうも、妙な事になっているようですよ?」

 有利は自分を庇ってくれていたコンラートの影からぴょこりと顔を覗かせると、そこが暗闇の中にピンク色の照明を落とした広大な寝台であること、そして…5mほど離れた場所に、やけに見覚えのある男達がいることに気付いた。

「えっ!?」

 ぎょっとしているのはこちらだけではない。
 向こうはあろうことか、全裸のコンラートと…そして、有利にそっくりな少年なのだが、あちらはあちらで実に驚愕していて、ぴょこんと顔を出した少年が叫んでいた。

「こ…コンラッド!?」

 その声を聞くと、ぴくりと有利を抱きしめているコンラートが感応する。

「おやおや…ユーリの初めてを頂くのは俺と決めていたんですけどね。よもや、別の世界の俺にやってしまうとは思いもよりませんでしたよ」

 その声は多分にぎらつくような殺意と苛立ちを含んでいたのだけれど、全裸なのも忘れて駆け出したあちらの《ユーリ》が懐に飛び込んでくると、やはり拒絶することなく抱きしめていた。

「その口調…やっぱり…コンラッド、コンラッドだぁあ…っ!!」
「そんなに素直に喜んでいて良いんですか?どんなことをされたか正直に仰いっ!たくさんお仕置きして差し上げますから」
「しても良いよ。何しても良いから…もう、俺から離れないで…っ!俺の為に無理して優しくなんかしなくて良い…酷くして、良いから…っ!」
「ユーリ…」

 腹黒コンラートの毒気よりも、純朴で…多少Mっ気の強い有利の熱意の方が勝ったらしい。コンラートの怒りはすぐに鎮まり、わんわん泣いている有利の頭を撫でつけている。

「もう…そんな風に泣かれたら、苛められないでしょう?」
「ふぇ…っ…う…、ご、ゴメン…」
「謝らないで?もう…良いんです。俺も、勘違いで浮気しかけてましたから」

 そう囁きかけるコンラートの表情には先程までの険が消え、愛おしくて堪らないという顔になる。つくづく、有利に対してだけは反応が違うのだ。

「じゃあ…ホントのコンラッドも、俺のこと…好き?」
「ええ、好きですよ。いつも信じて頂けてなかったですけどね」
「だって、冗談めかして言うから…からかってるんだって思ってた」
「あなたに対してだけは、何時だって真剣ですよ?」
「コンラッド…嬉しい。俺も…俺も、ずっと好きだったんだよ?」
「ユーリ…」

 激しい口づけに溺れていく二人を横目で見ながら、有利は駆け出していた。あちらで真っ青な顔をして人生に絶望しているコンラートを、サルベージしなくてはならないようだ。




白次男side−5 
 
 


『これは、一体…!?』

 爆音から守ろうと庇っていた有利が、コンラートの影からぴょこりと顔を出したかと思うと、全速力で駆け出した。一糸纏わぬ濡れた身体であるのも忘れて、一心に向かった先は…あろうことか、コンラート自身であった。

 どこか妖艶な風情を漂わせるコンラートは、最初の内は怒りを湛えて有利を括り殺さんばかりの表情を浮かべていたが、一心不乱にしがみつかれるとすぐに怒りを消していた。

 すると、その横で呆然としていたあちらの《ユーリ》がこちらに向かって駆けてくる。

「コンラッド…っ!」

 ああ、今なら分かる…。
 全く同じように見えても、幾分先程までの有利よりも凛々しいこの人が、コンラートの唯一人の、《ユーリ》だ。

「……っ!」
「ちょっと待ったーっ!!落ち込むの無しっ!お互い様だからっ!!」

 有利を取り違えてた。
 自分の存在意義に関わるような絶望を突きつけられて、よほど死にそうな顔をしていたのだろう。有利はコンラートの肩を掴むと、乱暴に揺すりながら大声を上げていた。

「俺、あっちのコンラッドが…俺を抱く勇気が欲しくて性格を変えたんだってヨザックに聞いて…真に受けて、セックスするところだったんだ。あんたもそうじゃない?」
「ええ、俺は…身体を使ってでものし上がっていく不貞不貞しい俺だったのが、あなたに釣り合う清廉な性格を手に入れようとして生み出された人格なのだと言われて…」
「だったらお互い様だ」

 きっぱりと言い切れば、コンラートは漸く顔色を取り戻して、乱れた寝間着姿の有利を抱きしめた。

「そうですね…仕切治しを、しても良いですか?今更かも知れないけれど…」
「ううん、全然遅くなんかない。もっと早く勇気を出してれば良かったかも知れないけど…今だって、大丈夫だよね?俺…あんたのことが大好きだ。ちょっと自分を責めすぎるところがあるけど…どこまでも人に優しくて自分に厳しい、騎士の鑑みたいなあんたが、心から大好きだよ?」
「大胆にあなたを浚う、侠気のある俺でなくても良いですか?」
「あはは…!確かにあれもドキドキしちゃったけど、俺には…包み込んでくれるあんたが良いみたい」
「愛しています…ユーリ。こんなヘタレでよかったら、貰って遣って下さい」
「俺こそ、不束者だけど…よろしくね?」

 そっと恥じらいながら唇を合わせていると、そこに…聞き慣れた声が響いた。

『えーえー、本日はお日柄も良く』
『本日天気晴朗なれど波高しぃ〜』

 ぎょっとして顔を上げると、それはどこから聞こえてくるのか分からないが、間違いなくアニシナと村田の声だった。それも、微妙にタイミングをずらしてそれぞれ二人ずつ喋っているようだ。

 その彼らが言うには、有利たちはこの亜空間でそれぞれにセックスをすることで、偶発的に出会ってしまった異世界の恋人への想いを断ち切らねばならないらしい。

『健闘を祈ります!上手くいけば、それぞれの世界に戻れるでしょう…!』
 
 ブチっ!
 ツー…ツー…ツー…

 ぶち切られた回線からは、三回ほど受話器から流れ出てきそうな音が響いた後、完全に音を消した。

「せ、セックスって…そんな、今日告白したばかりなのにイキナリ…」
「ええ、困りましたね…」

 全裸を隠したくてもじもじしているコンラートと、濡れた下着が恥ずかしくてやはりもじもじしている有利だったが、一方のカップルの方は既に甘いキスの嵐から、そのままセックスに移行しようとしていた。

「ん…んんぅ…」
「感度の良いことだ、ユーリ。もう一人の俺にどんな悪戯をされたの?」
「ゃあ…っ!」
「ふふ、気持ちよくさせてくれるのなら誰の指でも良いの?」
「ちがぁうぅ…こんら…らからぁ、きもち…ぃいよぉ…」
「可愛いな…声がすっかり淫乱な雌猫になってますよ?」
「ひぁ…ぅうん…っ…」

 なんかもう、AVも吃驚な展開が始まっていてわたわたと狼狽えてしまう。

「どどどど…どうしよう〜っ!」
「この居たたまれない空間から脱出する為には、俺たちもセックスするしかありませんね」
「でも…っ!は、恥ずかしいよぅ〜っ!!」

 度胸試ししかならいざ知らず、セックスともなるとやはり未経験者としては怖じ気づいてしまう。特に、ごく至近距離に別の連中がいるのを知った上で痴態を晒すなんて、とても出来そうにもなかった。

「じゃあ…目を瞑っていて?その間に俺がするから」
「コンラッド…」

 ピンク色の空間の中では赤みを帯びて見えるコンラートの瞳が、真摯な色合いを湛えて有利を見つめている。絶対的な守護者は戸惑う有利を嬲るようなことはせず、全てを我が身に抱えるつもりのようだ。

「これから起こることは全て、夢だよ?気が付いたら、いつものように寝台に横たわっていて、綺麗なままのユーリでいられる。だから…今はただ気持ち良い行為に耽って良いんだ」
「…ヤダ」
「聞き分けのないことを言わないで?俺を…信じて?」
「ダメ…ダメだよ?コンラッド…俺が目を閉じたまま、何も見ずにセックスをして元の世界に戻ったら、また今までの関係に戻るつもりで居るんだろ?そんなのヤダ!俺は、あんたとの初体験を絶対忘れたくないもん。どんなに不本意なシチュエーションだとしても、相手があんたなら…全部忘れずにいたいよ…っ!」
「分かったよ、ユーリ…一緒にしよう?」
「うんっ!」

 どんな恥ずかしいことだって、二人ならできる。
 そう信じて、有利はコンラートに身を委ねた。




【御連絡】



 この告知を出すのもお久しぶりデスっ!
 
 ここから先は要約すると、
「それぞれのコンユはエッチを経て、《やっぱり自分のトコのコンラッド(ユーリ)が最高!パートナーが喜んでくれるなら、こんな俺も最高!》との自己肯定感を抱く」という展開です。

 
「ぬおーっ!久しぶりじゃのう…。ウハハっ!白黒コンユのエロ、3Pでも4Pでも構わずにまとめ喰いじゃーい!」という豪の者の内、「フハハ…そうよのぅ、成人…しとるのぅ。かなり前にのぅ…。パチンコしよっても夜道を歩きよっても、補導もされんわい。こないだ、《おばちゃん、夜道は危ないけぇ気を付けて帰りんさいよ》とは言われたが、どっちかっちゅーとアレは、徘徊を心配しとったのぉ…》」という方や、「この春高校を卒業しました」「高校は出てないけど大学には入学できる年だよ」という方は別缶に向かって下さい。

 別缶への道順が分からない方は狸山にメールをして下さい。大概ディープなネタがあるとこなので、うっかり行ってちらちら見て、気分が悪くなられても責任は持てませんが。

 
「めんどくせぇ」という方や、「大体想像できるし」という方や、「何か嫌な予感がする」(←良い勘してらっしゃる)という方の他、激しく見たいけどお子ちゃまな方は回避して  に進んで下さい。