第三章 XーG








 かつては青々とした草原であったものの、今では乾いた土と岩に覆われて白っぽい茶色を呈する平原の奥に、堅固な防壁が屹立している。その屋上にあたる場所は平原に向かう部分が柵状になっている他は何もない広場になっており、交代制の番兵の他に暇そうな兵士達が幾人か屯(たむろ)していた。

 ここはウェラー領の防壁を兼ねた領主館であり、番兵以外の兵士達がここにいる理由は居心地がよいからではなく…その平原の向こうに何かが見えることを期待しているからだ。

 その内の一人…アリアズナは眼前に広がる荒野を眺めながらケナ草を噛んだ。
 良質なものを加工すれば煙草の原料ともなるケナ草は、草のまま噛んでも煙草に似た味がする。本来は繁殖力の強い植物なのだが、それでも岩壁からはい出してくる草は年々数が減っている。今噛んでいるのも久し振りに見つけ出した代物だ。

 今朝方からしつこく噛み続けているせいか、もはやケナ草の風味というよりは自分の口内の味しかしない。

「あーあ…やーだねぇ…。やることないったら…。俺ってば都会派の男なのにさー。あーあ、佳い女抱きてぇ〜…」

 《昔は良かったな〜…》等と、年寄りくさい感慨を口にしながらしつこくケナ草を噛み続ける。
 
 かつてはルッテンベルク師団…それも、旅団長クラスであれば王都の城下町でも引く手あまたで、紅い髪と瞳がやや不吉な印象を与えるものの、基本形が美麗なアリアズナなどは押し倒されんばかりの勢いで女達にモテたものだ(押し倒してくる男どもは容赦なく蹴り上げてきたわけだが)。

 それが、シュトッフェルとヴァルトラーナによって名誉と誇りを踏み躙られ、追われる身となった…。

 コンラートに率いられて戦闘を展開できた頃は良かったものの、ここ一ヶ月は彼の生死さえ知れない状態であり、欲求不満と不安で爆発しそうだ。

「畜生…っ!」

 こんな時は、佳い女を抱くに限る。
 だが、領主たるコンラートの意向でウェラー領には娼館がなく、自由恋愛に託すほか無い。しかし、アリアズナは特定の女性に尽くすという地道さに欠けているため、女日照りが続いているのだ。

「あぁ〜う〜…畜生ー…。ボンキュッバーンと勢いの良い身体の娘っ子が抱きてぇよぉ〜…」
「…………何回か真面目な顔で口説けば、靡いてくれそうな娘だっているのに…。どこまでも無精なんだから…」
「何か言ったかぁー?」
「何でもないですよ」

 軽くコメントを寄越したものの、深く語り合う気はなさそうなのはケイル・ポーである。

 ケナ草を囓りながらだべっているアリアズナとは対照的に、生真面目なこの男は独特の長剣を振るう訓練に余念がない。ただ、その目的は《いざというときに備えて》というよりは、そうしていると少しだけ気が紛れる…という理由が大きいように感じられる。

 ルッテンベルク軍をコンラートから委ねられたこの男が、本当は誰よりも不安なのだろうと分かっているから…アリアズナは敢えて指摘はしなかった。

『帰って来いよ…』

 アリアズナの紅い瞳は、また平原に送られる。

その瞳に…妙なものが映った。

「…………?……」

 《それ》は、平原にいたのではない。
 空に…浮いているのだ。

「……おい…っ!ケイル・ポーよぅ…っ!ありゃあ…何だと思う?」
「………っ!…」

 ケイル・ポーも、警備兵達もアリアズナの上げた声で空を見つめ、信じがたい光景に目を剥いた。
 白銀の狼のような獣が空を飛び、それに跨った男達が一直線にウェラー領へと向かっている。

 しかも…その背に乗っている者は…。
 あれは……っ!

「コン…ラート……?」
「黒髪の…子ども?」

 ヨザックらしきオレンジ髪が存在することなど二の次であった。
 先陣を切って飛ぶ男が、髪がやや短くなっているもののウェラー卿コンラート以外の何者でもないこと…帯同している少年が見間違いではなく、明らかな黒髪と黒瞳を持つ双黒であることに気付くと、防壁の兵士達は《わぁあ…っ!》…っと歓声を上げた。

「コンラート…っ!」
「コンラート閣下…っ!!」

 涙混じりの声が沸き上がり、不思議な空飛ぶ獣に乗っていることなどどうでも良くなってきた。
 何しろウェラー卿コンラートは大亀精霊ボルドーですら手懐けた男だ。今更空飛ぶ獣の一匹や二匹、双黒の少年の一人や二人連れてきたところで驚くべきではないのかも知れない。

 とにもかくにも、コンラートさえ帰ってきてくれれば何とでもなるのだ。

 ゴウ…っ!

 空飛ぶ獣が見た目の重量感とは裏腹に、ふわ…っと軽やかな足取りで防壁の屋上に降り立つと、優雅な動作でコンラートは背から降り、素早く双黒の少年の手を取る。
 その周囲には、あっという間に黒山の人だかりが出来た。
 騒ぎを聞きつけて防壁の内部からもわらわらと人が溢れてきたからだ。

「おい、コンラート…この野郎っ!さんざ心配かけやがってよぅっ!今まで何やってたんだよ!?おー?散髪するような暇まであったのかよ?つか、何だよー。何で正規軍の軍服なんて着てんだ?」
「閣下…ご無事で…っ!」

 アリアズナは荒々しく《コンラート》に抱きつくとわしゃわしゃとダークブラウンの頭髪を掻き回し、ケイル・ポーはその傍でわふわふと仔犬のような眼差しで見詰めてくる。

「アリアズナ…っ!」

 よく見ると眉に大きめの傷が斜走していたが、すっかり塞がってはいるようだ。負傷した後、すぐ腕の良い術者に治癒されたのだろうか?少しだけ不思議に思ったものの、そんな気づきはすぐどこかに吹き飛んでしまう。

 その下にある琥珀色の眼差しが眇められ…微かに涙さえ滲ませているように見えたからだ。
 
『あはは…っ!こいつも寂しかったんだな?』

 この男にしては珍しい反応にアリアズナはすっかり機嫌が良くなってにまにまと笑い、照れ隠しがてらに痛みを与えるほど無精髭を擦りつける。その様子を、ぱちくりと開いた黒瞳で少年が見詰めていた。

「…っ!」

 コンラートが帰ってきたことがあまりに嬉しくて失念していたが…少しばかり人心地ついたところでようやくアリアズナは信じがたい存在に意識を奪われた。

『ふへ…なんてぇ綺麗な子だい…』

 くりくりとした瞳は驚くほど純粋な漆黒で、夜の色と同じだというのに不思議なほどの暖かさがあり、何時までも見詰めていたいような心地にさせる。ちんまりとした鼻に小造りで形良い唇、華奢な顎…眞魔国人の中には類例を見いだすことのできない顔立ちは何とも可愛らしく見える。
 興奮のせいか淡く上気した頬もすべらかで…つい指を伸ばしてその滑らかさを確認してしまう。

『うひょ…こりゃあまた、すべすべじゃねえか!』

 肌理の細かい肌は、無骨な掌で触れることが躊躇われるほどだ。
 それでも心地よさに惹かれてそのまま撫で回そうとすると…

 …突然、コンラートの纏う気配が変わった。

「すまないが…触れないでくれ」
「へ…?」

 ぴり…っと、触れた頬から痛みを感じるほどの冷気を感じる。
 アリアズナの手首はコンラートにがっしりと握り込まれ、少年の頬から引き剥がされていた。

「ど…どうしたってんだよ…。血相変えてよ?」

 アリアズナはぴりりと首筋の産毛を逆立て…無意識のうちに眼差しを険のあるものにしてコンラートを睨み付ける。
 するとコンラートも、は…っと我に返ったように琥珀色の瞳を揺らめかせ、詫びるような…戸惑うような色を乗せてアリアズナを見るのだった。

『何なんだ…?一体…』

 状況がよくわからないのだが、取りあえず言えることはコンラートがこの少年をこの上なく大切なものとして扱っているということだ。
 馴染み深い同胞が触れることさえ厭うほどの、嫉妬まで漂わせながら…。

 嫉妬。
 そう…嫉妬以外のなにものでもないだろう。

 コンラートはこれまで幾多の美女の心を捕らえてきたが、自分自身がその存在に耽溺したことはなかった筈だ。
 とろけるように優しい眼差しを送り…どんな我が儘だって聞いてやったとしても、常に冷静な観察者の眼差しで女性を見ていた。
 冷たさに気付いた女性がそのことを詰ると、二人の関係は速やかに終焉を迎えることになる。コンラートの口から恐ろしくあっさりと、別れの言葉が飛び出してくるのだ。

 自分への愛を過信していた女が半狂乱になってコンラートに取り縋ろうと…どれほど涙ながらに哀願しようと、コンラートは鮮やかな微笑みを浮かべて決別する。

『ごきげんよう…』
           
 そんな…他人行儀の言葉ひとつを投げかける口ぶりは何の未練も感じさせず、女は自分がコンラートにとっての《過去》に変わってしまったことを理解したと聞く。

 そのコンラートが、思わず同胞の手を制するほどに執着している相手がこの少年だというのか?

 改めて少年に視線を送ると少し吃驚したように瞳を開いていたが、すぐににぱりと微笑んで頭を下げた。

「初めまして!俺、渋谷有利っていいます。これから、こっちの世界でしばらくお世話になります」

 どうやら、少なくとも高慢ちきな少年でないことは確かであるらしい。
 眞魔国に存在する限り、どんな生まれであっても王侯並みの待遇を約束されている双黒でありながら、随分と気さくな性質のようだ。
 好奇心に溢れる素直な瞳できょろきょろと辺りを見回しては、目が合った人々に微笑みと会釈を振りまいている。

 だが…アリアズナとしてはどうにも居心地が悪い。
 手を引っ込めてもなお、有利の方を見ようとするたびにコンラートの気配が色を変えるからだ。

「おい…コンラートよぅ。別に俺はこの坊やを傷つけるつもりはないぜ?」
「すまない。分かっているつもりなんだが…つい、反射的に手が出てしまった」

 恥ずかしげに睫を伏せて謝られれば、その素直さにも瞠目してしまう。

『何でだ?』

 どうしてだろう…何か、奇妙な差異を感じる。

 よくよく見知っているはずの男で、間違いなくそうだという印象もあるのに…薄膜を被ったようなこの違和感は何なのだろう?

 一瞬、殺意まで掠めさせるほどの警戒を示したくせに、アリアズナの苛立ちを察知したとたんにふにゃりと泣きそうな目をしてみせるのはどうしてなのだろう?
 その瞳の奥に…どうして《罪悪感》が滲んでいるのだろう?

 それは、思わぬ反応をしてしまったなどという一局面の話だけではないような気がした。

 ふと傍らを見やれば、ケイル・ポーも微妙な顔をしている。
 おそらく、アリアズナと同じような印象を抱いているのではないだろうか?
 彼は、誰よりも純粋にコンラートを敬愛しているから…。

「閣下…詳しい話を聞かせていただけますか?沢山…お聞きしたいことがあるのです」

 心なしか堅い言葉回しでケイル・ポーが問いかけると、コンラートは彼に対しては懐かしそうな…少し驚いたような眼差しを送る。

「ケイル・ポー…立派になって…っ!」
「え…?」

 予想外の発言に、ケイル・ポーはなんと答えていいのか分からないと言いたげに小首をかしげてみせる。体格に優れた青年なのだが、そのような仕草をすると仔犬のように見えた。

「すまない…妙な感じがするだろう?」
「は…いえ……その……」

 しどろもどろで返答に窮するケイル・ポーに、コンラートは驚くべき一言を発したのであった。


「俺は君たちが知るウェラー卿コンラートではないんだ…。全くの別物として認識して貰えると助かる」



*   *   * 




「別の世界から来た…コンラートねぇ……」
「異世界の、魔王陛下……」

 会議室の卓上で、アリアズナやケイル・ポーを含めた指揮官が揃ってあんぐりと口を開ける様はなかなかの見物(みもの)であった。
 戦場においては如何なる危地に立たされようとも、余裕の笑みすら浮かべてみせる一騎当千の強者たちが…揃って《なんじゃそら》という顔をしている。

 だが、信じないわけにはいかなかった。

 会議室の中央に映し出された画面には確かに彼らのよく知る《ウェラー卿コンラート》がいるし、異世界のコンラートだという《コンラッド》と有利に帯同していたのは、紛れもなくこちらの世界のグリエ・ヨザックだと確認できたからだ。

「坊やなんて呼んじゃあ、失礼だったわけですねぇ…。ユーリ陛下」

 皮肉げな笑みを浮かべて有利を見やれば、あわあわと両手を回転させながら首を振るという器用なまねをしてみせる。

「いいよー、ユーリで。こっちの世界の魔王じゃないんだしさ。こっちのみんなが畏まることないって!そもそも、俺…陛下って呼ばれるの嫌いなんだよ。俺には名前があるのに、無視されてるような気がするからさ」
「ふぅん…確かにねぇ」

 有利の反応はえらく好ましいもので、アリアズナは《きょん》っと驚きに目を見開く。
 自分を過剰に大きくも小さくも見せない…一己の個人として成り立たせるものは確かに、肩書きではなく名前というものであろう。彼は、その名をとても大切なものとして感じているらしい。

 なかなか、王侯らしからぬ価値観の持ち主である。

「だから、他のみんなもユーリって呼んでくれる?」

 にこ…っと微笑んで呼びかければ、皆…一様に頬を上気させてこくこくと頷く。
 顔中に刻まれた大きな傷がひきつれて異相を示すリーメンもそのような様子で、横から見ていると微笑ましいのと気持ち悪いのと半々といった感じだ。
 牛を思わせる幅広の顔が赤黒く染まり、膨らんだ小鼻からは《ぴすーっ!》と蒸気混じりの息が噴き出す。

「ゆ、ユーリ…」
「うん、なぁに?」

 《試しに》…といったふうにリーメンが呼びかければ(語尾にハートマーク付き)、やはりにこにこと笑って有利が返事をするのだが、その瞳に見惚れて見つめ合っていると…

 …何故だかすぐにリーメンの顔が硬直してしまう。

 原因はすぐに分かった。 
 複数の方面から殺気が突き刺さってくるからだ。

 殺気の源は、有利の脇に座って形だけは素敵な笑顔を浮かべているコンラッドと、画面中で、やっぱり素敵な笑顔を浮かべているコンラートだ。
 更にはコンラートの背後に、顔の一部だけ映り込んでいる《双黒の大賢者》からも同じような殺気が感じられる。特に彼の場合、眼鏡が光線を反射しているのか…ぎらぎらと光っている様子がやけに怖い。

《あんまり馴れ馴れしくするなよ?》

 彼らの瞳は雄弁に語っている…。

「こ…これは失礼しました!やはりユーリ陛下とお呼びした方が…その…俺は無骨者の武人で、しかも混血ですし……」
「俺も混血だよ?一緒一緒!」
「はい?」

 有利が自分の胸を親指で差しながら気安く言うと、またしても一同の口がぱかりと開いてしまう。

「俺、父親が魔族で母親が人間なんだよ」
「混…血……なのに、魔王になれたのか…?純血貴族たちは反対しなかったのか?」

 アリアズナの問いに、同じ思いらしい一同がずずいっと身を乗り出す。

「んー。そりゃまぁ、最初はね。グウェンとかヴォルフとかめちゃめちゃ怒って、どこの馬の骨ともわかんない奴に魔王なんてーっ!とか言ってたけど…そのうち馴染んできたよ?」
「ヴォルフ…」
「グウェン……」

 その呼称で呼ばれている者たちが自分たちの知る…あの、壮絶に自尊心の高い連中と同じであるのなら、有利はとんでもない世界から来たことになる。

「混血が魔王になれる国なのか…!」

 どう息をしていいのか分からなくて幾分酸欠気味に喘げば、画面の中からしみじみとコンラートが…傍らではヨザックが呟いた。

「そうだ…。ユーリ陛下の眞魔国では、混血は等しく純血と同じ権利を認められ、結婚や就職に際しても…軍籍にある者が出世する基準も全く同条件なんだ。そして…眞魔国を中心とする、人間世界との同盟までが結ばれている」
「人間と…っ!?」
「そうだ。更には《禁忌の箱》もユーリ陛下によって滅ぼされ、世界は平和と豊かな実りの中で、幸福を謳歌している…」
「なんてぇこった…」

 それらの言葉はアリアズナたちのこれまでの価値観を根底から覆すものであり、流石に信じがたくて声を上げるのだが…コンラートの真面目な顔に真実なのだと悟ると、自分たちの世界との差異に目眩すら覚えてしまう。

『こっちゃあ幸福だの平和だのを追求する以前に、明日食うもんがあるかどうかさえ怪しいってのによ…』

 暗い思考が沸いてくるが、ふと…あることに気付く。

『て……待てよ?』

「そんなに幸せいっぱいほいさっさな環境から…何で魔王陛下がこんな、危険極まりない世界に来てんだ…?」

 とても物見遊山に訪れたとは思われない。
 有利に対する臣下の絶対的な崇拝…というか、執着めいた感情を考えれば、観光目的の出立を許すなどとは到底思われない…。 

 もしかして…
 もしかして……っ!?

「おい…コンラート…この子は、いや…この方は……っ!」

 アリアズナの紅色の瞳が希望に燃え立ち、握りしめた拳が律動的に弾む。

「そうだ…。ユーリ陛下は、この世界を救おうとしておられるんだ。既に眞王廟を魔窟に変えていた《禁忌の箱》…《鏡の水底》を封印し、眞王陛下を救っておられる」
「えー…いや、それは村田が手伝ってくれたからであって…。つか、レオまで敬語とかやめてよ〜」

 もじもじと恥ずかしげに肩を竦めるこの少年が…小動物みたいに可愛いこの少年が…そんな偉業を成し遂げたというのか?
 それも直接的には何の関わりもない、死に瀕した世界を救うために…幸福に満ちた世界から来てくれたというのか?

「そうか…っ!」

 確信に満ちた声が、アリアズナの喉から溢れ出る。
 何故そうまでして有利が来てくれたのか。その理由に気付いた(ような気がした)からだ。

「またやってくれたなコンラート!あんた、このユーリ陛下をコマしてくれたんだな?いやぁ〜…ありがてぇ!」

 《愛しいコンラートの為に、危険を顧みずに世界を救おうなんざ大したもんだ》…そう続けようとしたアリアズナの脳天に……

 ゴ……っ!

 …強烈な一撃がお見舞いされた。

 またしても反射的に動いてしまったコンラッドの拳が、天頂部から垂直に冠状縫合を襲ったのだ。
 脳漿が素敵にシェイクされる……。

 バタ……っ!

 そのままアリアズナの意識は失われてしまい…その後周囲で、

『コンラッドーっ!何してんのーっ!?』
『すみません…つい』
『ついじゃないよ!陛下とか呼んじゃうレベルの問題じゃないし!うわーん!紅いお兄さん、目を覚ましてーっ!』
『大丈夫です、ユーリ…。赤い奴は三倍早いですから…』
『何との比較だよ!?…つか、移動速度と傷の損傷度関係ないしっ!』


 などというやりとりが行われたことも、画面の向こうでコンラートが物凄〜く複雑そうな顔をしているのも見てはいない。

 



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