第三章 XーA
ヴゥン……
虫の羽音みたいな音がしたかと思うと…突然天上に広がった映像に、眞魔国中の魔族が度肝を抜かれた。
どんよりと曇った雨雲が背景であるだけに、その映像は暗幕前のスクリーン上に投影されたかのように鮮明だ。
見上げた空の1/4程度を占める巨大なスクリーンは、眞魔国中の主要な都市で同時に出現したのであったが、それは当事者達にはまだ分からない。
十貴族が治める土地では領主館前の広場、ウェラー領では領主館を兼ねる防壁の内側、そして…眞魔国の領土を護るべく奮闘を強いられているウィンコット軍の前にもその映像は映し出された。
「な…なんだあれは…?」
疲れ果てた顔の兵士達が怯えたようにざわめくと、離れて対峙している敵陣営からも同様の声が上がる。
「落ち着け、法術で生み出した幻影かも知れない」
国境沿いに建設された簡易的な《要塞》は横に長い掘っ立て小屋に近い構造ではあるのだが、多少は《陣》としての風体を保つ役には立っており、ウィンコット軍の指揮官フォンウィンコット卿デル・キアスンがその中で重々しく声を発すると、少しは兵達も落ち着く。
だからといって、幻影が消えてなくなるわけでも無かったので問題解決にはなっていないのだが…。
デル・キアスン自身、味方に自制を求めたものの…この映像が法術によって生み出されたと信じているわけではない。
全く可能性がないとは言わないが…これ程大規模な幻影を出す力があるのなら、人間の軍はとっくにウィンコット軍の防衛線を突破していることだろう。
実際、魔族以上に人間達は浮かび上がった映像に怯えているようだ。
『だとすれば…』
最悪の場合、《禁忌の箱》から放出された創主の力であるという可能性がある。
しかし、その予測を口に出すことは出来ない。どれほど不安を感じていたとしても、指揮官自らその恐れを表面に現していては、軍団は機能することなど叶わなくなってしまう。
デル・キアスンは何を見ても聞いても、決して恐慌状態に陥ることだけは無いようにと自分に言い聞かせながら、油断無く映像を見詰めた。
「あれは…王都じゃないのか?」
王都の防壁前に群がる、青い制服を纏った軍人達がビーレフェルト軍であることはすぐに見て取れた。そうなると、兵達は冷静ではいられなくなる。
「そうだ、間違いない。王都が、攻められているのか?」
「あれは…ビーレフェルト軍?何故…味方が王都を攻めてるんだ!?」
「お…俺達、こんなトコで必死になって闘ってるってのに…王都はどうなっちまうんだ!?」
後方の、護るべき国が崩壊するのではないか…。
兵士達の間にはざわざわと不穏な流言が流れていく。士官には伝えられていた眞魔国内の情勢も一般兵には混乱を招くとして秘されていたのに、こんな時期にまざまざと内紛の状況が伝わってしまうとは…。
『くそ…っ!やはり、創主の力なのか?』
このままでは、一気に士気が低下してしまう!
デル・キアスンは何とかこの映像を打ち消す術は無いのかと周囲を見回したが、そんなに絶大な魔力を持つ者が居るのならこんなに苦戦などしていない。
それでなくとも軍備に於いて遙かに劣るはずの人間の軍勢…それも、遠征を経てきた連中に対峙しながら完全に撃退することが出来ないウィンコット軍が、後方からどのように評されているか考えるとデル・キアスンは暗然とするほかない。
『才能の問題なのか…?』
認めたくはないが…少なくとも能力と覇気の二面に於いて、デル・キアスンが敵陣営の総指揮官であるアルフォード・マキナーに劣ることは間違いないのだろう。
《聖剣を持つ勇者》…《人間世界最後の希望》と称えられるアルフォードは、かつては世界各国を旅する剣士であったという30〜40代の男だ。
王位といった肩書きなど何一つ持たない彼が、ここ近年急速に力をつけて人間の軍を統合したことは聞いていたので、かなりの人望と能力を持つことは予測できていたのだが…。
『だが…これ程とは……っ!』
不十分な装備をどうやってやりくりしているものか…対峙してから数週間、アルフォード軍は眞魔国領を突き破るには至らないものの、確実にこちらの戦力を削ぎ、小さな丘陵などを占拠しては要塞に取り付く隙を狙っている。
その遣り口は敵ながら見事だ。
デル・キアスンは優秀な指揮官である彼に、口に出すことは決して出来ないが…感嘆に近い感情を持ってしまう。
あるいは、そのような感情を抱きやすいからこそデル・キアスンは《お坊っちゃま気質》とからかわれるのかもしれないが。
亡き姉だけはそんな弟のことを、《そういう素直なところが大好きよ》と評してくれたものだが、軍人の資質としてはあまり良いものではなかろうと自虐する。
「ああ…っ!」
映像の向きが変わると、王都に向けてヴォルテール軍が疾駆してくるのが分かる。
それを見詰めるウィンコット軍の心境は複雑だ。士官も情報は知っていたものの、こうして眼前に突きつけられると苦いものが口内に滲む。
本来なら…苦境に立たされているウィンコット軍を助成するために、彼らは軍備を携えてこの国境に来てくれるはずだったのだ。それが直前になって進路転換を余儀なくされたのは、ビーレフェルト軍の王都侵攻によるものだ。
しかも…彼らは、眞魔国に於いては数少なくなってきた強力な軍と、司令官達なのだ。
何故彼らが人間とではなく、魔族同士で闘わねばならないのか…!
誰の頭にも、憤然たる怒りと絶望が込み上げてくる…。
そこで、また映像は切り変わった。
「あれは…魔王陛下ではないのか!?」
再び防壁へと変換された映像には、高見台の上に佇む美貌の魔王陛下が映し出されていた。
美しいもの…可憐なものに餓えていた戦地の兵士達にとってその姿は瞳の甘露であり、見ているだけで我が身を捧げて尽くしたいという願望に突き上げられる。
しかし、彼女が口にした言葉は予想外の内容であった。
『私…第26代魔王、ツェツィーリエは…ここに退位を宣言します!眞王陛下がお隠れになった今、眞魔国の未来を切り開くためにはあなた達の力が必要になるのです!十貴族会議を開き、次代の魔王選出を検討するのです!』
「え…?」
「た…退位だって?」
「どういうことだ?…それに、眞王陛下がお隠れになったって…」
「眞王陛下は亡くなられた?」
「亡くなられたって言やぁ、ずっと前に亡くなられてたわけだけど…」
確かに、ツェツィーリエに魔王としての政治力も意欲もないことは、眞魔国に於いては幼児でも知っている。だが、眞魔国人には《眞王陛下》という絶対的な存在があってこそ国は成り立つものだという意識がある。
《お隠れになった》という正確な意味は分からないが、ともかくツェツィーリエは眞王陛下の指名に依らない魔王を選出しようとしているのだ。
果たして…それは、如何なる者になるのか?
祝福された存在となるのか?
「もしかして…グウェンダル閣下か?」
「いや…まさか、摂政の座から明確に王権を手に入れようと、シュトッフェルがなるつもりなんじゃ…」
そんな会話を交わした兵士達の間では、一瞬膨らみかけた希望がいきなり萎れてしまう。
しかし、後者の可能性は皆無であることはすぐに分かった。
よりにもよって、最悪の方法で。
『お兄様…止めて…っ!私は…魔王として最初で最後の仕事を……っ!』
『魔王陛下はご乱心だ…っ!衛兵…衛兵…っ!!』
目を血走らせ、魔王ツェツィーリエを押さえつけようとしているのは摂政シュトッフェルではないか!
「あの野郎…っ!」
「危ない…っ!魔王陛下……っ!!」
「魔王陛下、後ろ後ろーっ!」
兵達はもう、戦いなどそっちのけで映像に見入っている。
その様は、昭和初期の街頭テレビで力道山の熱戦を見守る庶民のようだ(軽くドリフも入っているが)。
人間側も呆気にとられているので幸いだが、彼らが興味なしなら一気に攻められているところだ。
「うわ…っ!」
揉み合う二人が一瞬離れたかと思うと…勢いがついていたツェツィーリエが身体の均衡を崩した。
そして…高見台の柵を乗り越え、優雅なその肢体が防壁前に落下していく…!
「うわぁぁぁぁ……っ!」
「陛下…陛下ぁぁあああ………っ!!」
兵達の絶叫が響き渡る中…銀色の光が斜めに掠めていった。
暗くどんよりとした景色を切り裂いていくその光が、雲間から一条差し込んだ日差しと…そして、その光によって彩られた巨大な獣なのだということに人々が気付いたのは数瞬後のことであった。
それよりも圧倒的な驚きとして彼らの目を浚ったのは、落下していく魔王陛下の身を間一髪救った者が信じられない人物だったということだ。
ダークブラウンの頭髪を靡かせた長身の男…あれは…
あれは……っ!
「ウ…っ」
言いかけた声が喉奥でつっかえ、周囲もまた同じ音を発し掛けたのを察してから兵達は叫びだした。
兵にとっては軍神にも等しい、その男の名を…!
「ウェラー卿…コンラート……っ!」
「コンラート閣下……っ!」
「ルッテンベルクの…獅子っ!」
何ということだろう…!
人々は、思わず自分たちが目にしたものが都合の良い幻覚なのではないかと疑い、互いに目線を見合わせ…そして再び映像へと目線を戻して、改めて歓喜の絶叫を上げたのだった。
おぉおおおおおおおぉぉぉぉぉ…………っっ!!!
映像の中には空を飛ぶ白銀の獣…巨大な狼らしき生物に跨ったウェラー卿コンラートがおり、母であり主君でもある麗しの魔王陛下と力強く抱きしめ合っている。
その様子は一幅の絵画のようであり…親子感動の再会と言うよりは、美しい恋人同士の逢瀬にも見える。
映像が拡大され…涙を流しながら《二度と離すものか》というように、狂おしく抱きしめ合う二人の表情までが明確になると、観客(?)のボルテージは最高潮に到達した。
「ウェラー卿コンラート閣下が…お戻りになられた…っ!」
「ルッテンベルクの獅子が、逆賊シュトッフルの手から魔王陛下をお救いになったぞ…っ!」
わぁぁああああああ………っっっ!!!
うぉおおおおおおおぉぉ……っっっ!!!
まるで戦いに勝利したかのような圧倒的な歓びの波動に、人間達の軍勢はぽかんとして呆気にとられているようだった…。
* * *
「コンラート…」
そう呟いたまま、老人は瞳を見開き…沸き上がる感情のままに頬を濡らした。
フォンウィンコット卿オーディル…コンラートにとって第二の父とも呼べる存在であった彼は、コンラートを我が息子とも…二つと無き宝とも想っていた。
その彼が眞王廟で消息を絶ったと聞いて独自に調査を進めていたオーディルは、いち早くその噂が極めて真実に近いことを知ってしまった。
眞王廟から搬出され、焼かれたウェラー軍兵士の軍服の一部と…焼け跡から見つかった証拠品を渡されたからだ。
そこには、オーディルがかつてコンラートに譲った煙草入れの袋があった。
その日から…もともと身体に不調を抱えていたオーディルは病床につき、そのまま亡くなるのではないかと誰もが噂していた。それほどに老人の心痛は深かったのだ。
しかし、領主館の前で信じられない映像が浮かんでいると聞くと生来の好奇心が湧いて出て、執事に車椅子を動かせて広場に赴いた。
そこでオーディルは、信じがたい…そして、歓喜の中で昇天してしまいそうな映像を目にしたのであった。
ウェラー卿コンラートが…生きていた。
しかも、本人の嗜好に関わらず華麗で派手な生涯を経てしまうらしい彼は、間一髪の所で魔王陛下を救出するという…何とも英雄らしい出現の仕方を見せてくれたのだ。
『しかし…あの獣は一体?』
もしかすると、精霊の一種なのだろうか?
そういえば以前も、コンラートはシュトッフェルとヴァルトラーナの罠から脱してウェラー領へと逃げ込むに際に、聖域を通ったのだと噂されている。
その彼が、眞王廟からもやはり精霊の力を借りて逃げることに成功したのだろうか?
「英雄とは…あのような男のことをいうのでしょうね…」
普段は派手な言い回しを決してしない控えめな執事が、感に堪えぬと言いたげに目頭を押さえている。ウィンコット家の当主同様、コンラート贔屓であった彼にとっても、この映像は堪らない歓びをもたらしてくれたのだろう。
「ああ…そうだ、そうだとも…!英雄なのだ、あの男は…!」
子どものような顔をしてはしゃぐオーディルの様子に、これまた嬉しそうに執事が微笑む。目尻の皺が柔和な顔つきを更に優しくすると、こっくりと同意を示すように頷く。
「どのように酷い運命を押しつけられ…常の男であれば絶望して自棄になるような状況も打破して、いつもコンラートは立ち上がるのだ…!そして…我らに見せてくれるのだよ。奇蹟というものを…!」
奇蹟…。
ウェラー卿コンラートの見せたこの奇蹟が、実はまだ序章に過ぎないのだと知っている者は…極々少人数である。
* * *
「コンラート…」
呆然としてその光景を見守っていたグウェンダルは、自分が一体どういう表情を浮かべているのか分かりかね…困ったように大きな掌で顔の下半分を覆った。
安堵と驚きと歓喜…そんなものが入り交じってしまい、感情の整合がつかない。
辛うじて全軍に進軍停止の命令を送ったものの…その後は流石の彼にもどうして良いのか分からず、少し距離を置いて状況の変化を見守るほか無かった。
目の前で無惨な死骸となる筈だった母…それを間一髪救い出したコンラート…。
彼が見たこともない獣に跨っているのを目にしたときには、一瞬…天から死したコンラートが母を連れ去りにやってきたのかと思った程だ。
天から差し込む陽光が、一条のスポットライトのように彼らを彩っているのだから尚更だ…。
これでちいさな天使でも舞っていれば立派にルーベンスの絵の前で死ぬ少年と犬状態なのだが、グウェンダルにそんな知識があるはずはない。単に観劇や絵画からの影響である。
このあざといまでの演出が、双黒の大賢者の指示によるものだということもグウェンダルには分からない。
コンラートの英雄性を極めて効果的に演出するこの方法…しかし、村田自身もそれがこれ程までに填り込む状況が生まれるとは予想だにしていなかった。
* * *
『何ともねぇ…』
村田は感心したような呆れたような…複雑な表情を浮かべて白狼族の背からその光景を見守った。
当初、村田が提案したのは次のような作戦であった。
『ビーレフェルト軍とヴォルテール軍が激突するというまさにその瞬間に、効果的に出現する』
その時、最初に出現するのは眞王と双黒の大賢者であるはずだった。
何しろ、眞王廟の一件でビーレフェルト軍については眞王の権威…というより、存在そのものが既に無くなったものとして扱われている。
再び発言権を確立させるためには存在が真(まこと)であることを強く印象づけ、更に双黒の大賢者というオプション付きでドドンと頭を押さえておかなくてはならない。
しかも、それを全眞魔国に広める必要がある。
ヴォルフラムが散々自分たちの正当性を喧伝するために眞王廟が魔窟と化していることを喧伝しやがったものだから、十貴族達はそれぞれの思惑を膨らませてバラバラな方向性を示そうとしているだろうし、民はどうして良いのか分からず狼狽えているだろうと思ったからだ。
だからこそ村田は《奇蹟》を演出するために、有利の持つ四大要素の力を最大限に活用した。
まず、幻影の演出を得意とする土の要素エルンスト・フォーゲルに、その力を魔石に凝縮させたものを複数造らせた。
次いで、その魔石を持たせた火の要素、胡蝶を紅色の蝶の形で分散させて主要地域に派遣し、村田の指揮に合わせて王都前から中継を送れるようにした。ちなみに、この方法で双方向性の受信造影が出来るから、各地域の様子もこれから存分に活用するつもりでいる。
更に、水の要素である水蛇の上様には川の流れに乗って貰い、可能な限り眞魔国中に広がって貰った。これは、後の演出に用いようと考えている。また、幾つかの要素には王都に掛かる雨雲に紛れ、村田達について貰っている。こちらは、ビーレフェルト軍などに眞王や大賢者の真偽を問われたときに活用する予定だ。
そして最後に、村田の考える時間設定の限界まで休息を取らせた巫女のうち、比較的元気がある者を白狼族の背に乗せて、魔剣に納めていた魔石を幾つか持たせて国境沿いに派遣した。これは、ウィンコット軍が戦陣を敷いている場所も含むがそれだけではない…。眞魔国と外界を隔てる国境に、均等な間隔を置いて配備したのだ。
これも、後の演出に関連してくる。
これらは有利と巫女、そして眞王や魔剣に填め込んだ魔石の力などを利用しているのだが、実は展開するのが精一杯で、演出をやりきるだけの十分な魔力はない。
しかし、村田はそこまで計算に入れているのだ。
『魔力は必ず集まる』
その様に展開させてみせるという自信があった。
村田は眞王廟出立時における、彼が持ち得た情報の全てを駆使して計画を立てた。その段階では完璧と思われる計画になっていたと思う。
だが…当然彼にも限界はある。
情報のタイムラグを埋めるだけの方法は流石に持ち得なかったのだ。
『まさか…ツェリ様があんな行動に出るとは思わなかったな…』
賞賛すべき行動であるのは間違いない。
何がきっかけなのかは分からないが、彼女は確かに魔王としての何かに目覚め…力強く行動して見せたのだ。
だが、極めて危ない状況へと展開しつつあった事も否めない。
折角己と国の行く末を見据えて歩み出した魔王陛下は、その煌めきを人々の心に残したまま…無惨に大地へと叩きつけられて非業の最期を遂げるところだったのだ。
あと数瞬レオ…コンラートの動きが遅れていただけで、出現してくる《眞王陛下と大賢者様》の株は大暴落するところであったろう。
『あなた方が完璧な存在であるのなら、何故あの時…魔王陛下を助けてくださらなかったのか…!』
その血を吐くような問いに対して、さらりと《だって完璧じゃないんだもん》と応えることは、流石に厚顔な村田にも出来はしない。
己の間の悪さに苦渋を飲むことになったことだろう。
『きっと、こういうところが《運命に愛されている者》との違いなんだろうな…』
どれほどの知恵と勇気と力があるとしても、運命の女神に寵愛を受けた者には敵わない。
『ま…何事も役割ってものがあるからね』
いつまでも《奇蹟演出者》自身が驚いたりしょぼくれたりしているわけにはいかない。
一応、白狼族に疾風を起こして貰って一条の光が差すように演出はできたし、そもそも村田がここまでお膳立てをしていなければコンラートだとてツェツィーリエを救うことは出来なかったのだ。
「さあ、舞台の幕は上がったようだ。僕の手によってではないのが少々残念だけど…。でも、ここからは僕の掌の上で動いて貰うよ?」
にっこりと微笑んで、村田は白狼族を降下させる。
同時に雲間から降りてきた獣は4頭…。
その背に跨っているのは、眞王とゲインツ中尉、メリアス警備隊長、ヨザック…。
そこに、コンラッドと有利…そして、ギィの姿はない。
彼らには、更に複数の《奇蹟》を演出するという役割があるのだ。
『どんな予想外の要素が加わろうとも…必ず大団円に纏めてみせる…!』
それが、村田の役割なのだから。
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