第三章 ]UーB



 





 ドドッ…ドドド……ッ!
 ドドドドド………ッ!


 近づいてくる…。
 近づいてくる……っ!

 蹄が大地を蹴り、馬の嘶(いなな)く音声が大気と大地を震撼させる。
 ガチャガチャと鳴る馬具や武器の擦れ合う音さえもが、次第に鮮明なものになっていった…。

 ゾーンウォーツ国の辺境…ロンバルディア国にほど近い集落では、脚の速い少年が斥候となって眞魔国軍の到来を伝えると、人々は必死の形相で魔族の襲撃に備えた。
 備え…とは言っても、眞魔国軍に対する出方を伺っていたゾーンウォーツ王宮が急遽《やり過ごす》という結論を出した為、軍は全て王都の守護に回されてしまい、実際彼らが出来たことと言えば、家の窓や扉にありったけの木材で封をしたことだけだった。
 
「母ーたん…」
「大丈夫…大丈夫だからね?長老様が言っておられたもの…窓と扉をしっかりと閉じておけば、魔族は何もせずに行ってしまうって…」
「うん……」

 ナターリャは抱き潰してしまいそうな強さで幼い娘を抱きしめ、このぬくもりを奪われてなるものかと唇を噛んだ。
 
 娘を怯えさせない為に明るい情報だけを流しているが、聡い幼子には母の不安が伝わっているのだろう。
 《魔族がやってくる》…その知らせを受けて行われた集会で伝えられたことの全てを、ナターリャは話してはいない。


『万が一…魔族が襲いかかってきたら、操を護る為に自決せよ』


 敬虔な教会信徒である長老は集まった女達に厳命し、懐刀を磨いておくように指示した。

 《犯されそうになったら死ね》…ナターリャがまだ子を持たぬ身であれば、迷わずに従ったことだろう。
 だが…彼女には夫亡き今、二人の子どもを守り育てるという役目がある。
 ろくに食べさせてやれない為に痩せ細り…こうして抱きしめていると、ごつごつとした背骨が手に食い込んでくめるのだけれど…それでも、この子は生きているのだ。

 ナターリャが死んだ後…一体誰が息子と娘を養ってくれるというのか?
 みんな、自分たちが生きていくことで精一杯だというのに…。

『恐ろしい…でも、私……死にたくない…っ!』

 ドド…
 ドドド……っ!

 いよいよ高まってくる地響きに胸は早鐘のように打ち鳴らされ、ぞくぞくとした悪寒が酷い風邪の前触れのように背筋を奔る。
 ナターリャは娘を抱きしめながら、不意に気付いた。

「ロイ……っ!?」

 悲鳴のような声が喉を突く。

 ロイ…好奇心いっぱいのナターリャの息子が、何故いまここにいないのだ?
 先程まで、すぐ傍にいたはずなのに…っ!

「ま…さか……っ!」

 恐ろしい予感が首筋の毛をざわつかせる。

 ロイは娯楽も何もない辺境地の生活の中で不意に出現した《魔族襲来》の知らせを、おそらくは唯一人《お祭り騒ぎ》のように感じていたお調子者であった。

『なあ、母ちゃん。魔族ってどんな格好してんだろうな?やっぱり、棘のついた尻尾とかが生えているのかな?』

 栄養不足のせいか、3歳の頃に真っ白になってしまった産毛のような髪をわしわしやりながら、ロイは実に面白そうに笑っていなかったか?

「まさか…まさか……っ!」


 魔族を…見に行ったのでは…っ!?


 ぞっとするような予感に足が竦む。
 もしものことがあれば…ロイは血祭りに上げられるのではないか?
   
「……っ!レンレン…。ここで…良い子にしておける?毛布を頭まですっぽり被って、じっとしておくの」
「母ーたんは!?」

 レンレンは真っ青になって叫ぶが、ナターリャは敢えて明るい表情を作り出して頭を撫でつけてやった。

「ロイを探してくるわ。大丈夫…見つけたら拳骨を喰らわして引っ張ってくるから、そしたら三人で隠れていよう?」
「すぐに…すぐに帰ってきてね!?」

 怯えきって涙を浮かべるものの、レンレンはもう母を引き留めようとはしなかった。
 兄にもしも危険が及ぶ可能性があるのなら、それは防がなくてはならないと幼心に感じたのだろう。

 すぐに《まふ》っと毛羽の立った毛布を被り、ぷるぷると震えながらも声を殺して縮こまった。

『…行かなきゃ…!』

 ナターリャは心を鼓舞して立ち上がった。



*   *   *




『もうじきかな……?』

 ゾーンウォーツ辺境の集落では往来に人の気配が失せ、大きな木の枝にしがみついて様子を伺っているロイだけが、土煙を上げながら進行してくる大規模な軍団の姿を目にしていた。

 十二歳になるロイは、年の割に肉付きが悪くひょろひょろとした枯れ木のような体つきをしている。だがそれは別段珍しいことではなく、この辺り一帯の子どもに見られる平均的な体格と言っていい。

 彼が平均的でないのは、その目の輝きくらいなものだろうか?

 どんなにご時世が暗く淀んでいても、大人に比べて子どもは適応性が高く、何かしらの楽しみを見つけるのが上手い。
 その中でも、このロイという少年は特段その技に長けていた。

 大人達は乏しい収穫を目にする度に《昔は良かった》と嘆くのだが、ロイにはそんな時代の記憶などない。
 そうであるならば、ロイは自分自身が知る世界と記憶の中で出来るだけ楽しいことを見つけたいのだ。

 そうやって家族や友人に腹を抱えて笑わせてやるのが、ロイの一番の娯楽なのである。

 この《魔族襲来》も、彼にとってはまたとない好機であった。
 何としてもこの目に直接その姿を焼き付け、みんなに自慢してやりたいではないか。

『お…見えてきた見えてきた…!』

 貧相な人々と服装しか見たことのないロイにとって、それは衝撃的な映像であった。

『…て、う……ぉお……っ!?』

 恰幅の良い騎馬は美々しい革と金属を絡めた馬具で飾られ、鎧姿の武者達も基本様式を同じくするものの、武器や装飾の類で個性を醸し出している。
 吹き流される獅子王旗と部隊旗も色鮮やかで、豪奢な金糸銀糸が眩しい夏の陽光を弾いて鮮やかに目を灼いた。

 それらが小気味よいほど揃えられた速度で堂々たる進軍をしてくる様は、少年の心をときめかさずにはおられなかった。    

 しかも…魔族の容貌のなんと凛々しく美しいことだろうか…!?

 ロイは自分の母親を一番の美女だと思っており、今もそれは変わらないが…魔族の先頭を走る一際立派な黒衣の青年は、世界中の男の中で一番の美人に違いないと思った。

『凄ぇ…なんて綺麗なんだろう?』

 お伽噺に出てくる王子様のような青年は、ダークブラウンの長めの髪を風に靡かせ、宝玉のような琥珀色の瞳に淡く笑みを浮かべているように見える。

 とても大人達が言うように、人間を捕らえて虐殺するような男には見えなかった。

 少なくとも、今回は《隠れていれば何もしない》…《筈》というお触れも出ているくらいなのだから、ひょっとすると魔族の中では特例的に《いい人》か《いい魔族》なのかもしれない。

 黒衣の青年の姿がもっと見たくなったロイは、この時…欲を出してしまった。

 枝の付け根部分のまばらな葉っぱの中に、保護色になるような服を着て(単に襤褸とも言うが)隠れていたのだが、そろりそろりと這い上がってもっと視界の開けた場所に出ようとしたのだ。

 眞魔国軍は今まさにロイの眼下にまで差し掛かっていたから、このまま通過させてしまうと後ろ姿しか見えなくなってしまう。

「よい…しょ……っ!?」

  
 ボキン……っ!

 
 衝撃が、聴覚と深部感覚の両方で感じ取られた瞬間…ロイの身体は宙に投げだされた。
 幾ら枯れ枝に似ているとはいえ、やはりロイは生身の人間であったらしく、負荷に耐えきれなくなった脆弱な枝が根方からボキンと折れてしまったらしい。

「……っ!」

 叫ぶ間もあればこそ、ロイは重力に従って落下していく。
 このままでは馬脚に蹴散らされるか、そうでなくとも大地に叩きつけられて死んでしまう…

 …筈だった。

「……?」

 ドスン…っ!という衝撃があるにはあったのだが、それはロイが予想していたものとは大幅に違っていた。
 力強い何かが柔軟にロイの身体を抱き込み、衝撃を緩めてくれたのだ。


「全軍…停止……っ!!」


 伸びやかな低音は今まで聞いたことがないくらい耳朶に心地よく、長老の家にだけある立派なラッパよりも、綺麗な音楽を奏でているようだった。

 その声が呼びかけた途端、見事な迅速さで蹄の音が止まる。

「君…あんなところに登っては危ないよ?」

 軽やかな笑いを含む声音が頭上から降り注がれたものだから、ロイは吃驚して反射的に目を開き、そして…

 …あんぐりと口を開いて言葉を失ってしまった。

 なんと言うことだろう…ロイが見惚れていた黒衣の青年が、にっこりと微笑んでいるではないか!
 ロイの痩せっぽちの身体はしっかりと青年に抱き寄せられ、キズ一ついていないようだった。

「ご…ごめっ…ごめんなさい……っ!」
「ああ、慌てて動くと危ないよ?すぐに降ろしてあげるから」

 青年はロイを抱えたままひらりと地上に降り立つ。

「ありがとう…ございます……」

 まだ呆然としたままのロイが何とかお礼の言葉をひりだしていた時…不意に叫び声が聞こえた。

「ロイ……っ!」
「あ、母ちゃん!?」

 妹と隠れていたはずの母が血相を変えて突進してくる。
 少々痩せすぎだが、こんな田舎で過酷な労働をしているにしては美しさをとどめたナターリャは、近所の連中からも《魔族がやってきたら一番に気をつけなくてはならない》と言い含められていた。

 この素敵な魔族が母に対して何かするとは思われないのだが…それでも、こんなに魔族がいるのなら、もしかしてナターリャを大勢で辱めようとするような輩が居るかもしれない。

『ど…どうしよう…っ!』

 慌てる頭でロイが弾きだした答えは、《この青年に縋る》という選択肢であった。

「母ちゃんに…何もしないでっ!」
「するように見えるかい?」

 青年は気を害することもなく、ふわりと華のように微笑んでみせた。

「しないと…思う」

 頬を上気させるロイをやさしく地上に降ろすと、青年はそっと背中を押してくれた。

「母上をあまり心配させてはいけないよ。ほら…寿命が随分と縮んだような顔をしておられる」

 青年の言うとおり、ナターリャは並み居る魔族に怯えながらも、まだ傷つけられていないロイの姿に《どぅ…》っと涙を溢れさせて抱きついてきた。

「ロイ…ロイ…っ!この馬鹿…っ!一体何をしていたの…っ!?」
「ゴメンね…母ちゃん。あのさ、俺…どうしても魔族が見てみたかったんだ」

 ロイに抱きついたまま、腰が抜けたようになってしまったナターリャはぼろぼろと涙をこぼし、勇気と恐怖の鬩(せめ)ぎ合いに疲れ果ててしまったかに見えた。

「お騒がせして申し訳ありません。大丈夫ですか?」
「……っ!」

 黒衣の青年が跪いて気遣わしげな声を掛けると、ナターリャはびくりと震えて目を見開き…そのまま、ぽう…っと頬を染めてしまった。

「な…な……っ!」
「立てますか?」
「え…ぇえ……」

 こくこくと頷いてはみたものの、今度は恐怖とは違う何かに心を奪われてしまったらしいナターリャは、身じろぐ事しかできなかった。

「失礼…」

 青年は優雅な動作でナターリャを抱き上げると、軍勢の進行方向から外れた切り株に腰掛けさせた。
 そして、ロイに視線を向けると諭すように語りかけたのだった。

「この辺りでは魔族を毛嫌いしていると聞く。我々と口をきいたことは、他の人たちには内緒にしておくんだよ?」
「は…はいっ!」
「大丈夫かな…?君が困るだけじゃない。君の家族も巻き添えになる恐れがあるのだから、決して軽率な行動をとってはいけないよ?」
「はい…っ!」

 ロイが力強く返事をすると、青年は右のこめかみに拳を当てるという変わった敬礼をしてから、くるりと踵(きびす)を返した。
 翻(ひるがえ)る緋のマントが鮮やかに弧を描く様子に、親子はうっとりと見惚れてしまったのだった…。

「進軍…っ!」

 ひらりと馬上に復した青年が、最後にもう一度だけ振り返って敬礼をすると、ロイは反射的にビィン…っと背筋を伸ばして答礼を施した。勿論、青年がしていたのと同じ形でだ。

 すると、眞魔国軍の他の兵士達もにしゃりと笑い…見るからに屈強そうな戦士達が敬礼を寄越してくれたのだった。
 
「わ…っ!」

 かぁ…っと胸の奥が沸き立つような感動を覚えながら、ロイはブンブンと手を振り続けた。



*   *   *




「魔王…あれが……魔族の王……」
「え…?あの人…魔王なのっ!?」

 ナターリャの呟きに、ロイは吃驚仰天していた。
 漆黒を纏う者が魔王だという噂を、息子は知らなかったらしい。

「そうよ…あの方は、魔王……」

 眞魔国軍がすっかり集落を抜けて、微かに遠景を臨める程度になってもナターリャは腰を抜かしたまま切り株に腰を下ろしていた。
 彼女の胸を浸すのはもはや恐怖などではなく、甘酸っぱい恋のときめきに似たものであった。

 一目惚れというほど深刻に愛してしまった訳ではないにせよ、田舎の主婦にとってあれほど美麗な青年…それも、恐怖の対象であったはずの魔王が爽やかな好青年であったという事実は、巨大な衝撃でナターリャの心をひっくり返したのであった。 

 息子以外の誰かに、青年のことを話そうとは思わない。
 熱心な信徒が多いこの集落でそんな話をすれば、下手をすれば肉体的拘束を伴う吊し上げにあってしまう。

 けれど…この胸には留めておいて良いのではないだろうか?

『あの方は…きっと、噂されているような悪逆非道の輩などではないわ…!だって…進軍を妨げたロイを受け止めてくれた上に、私達の暮らしのことまで心配してくれたんだものっ!』


 強い確信を込めて、ナターリャは《ほぅ…》っと熱い息を吐くのだった。



*   *   *




 眞魔国軍はゾーンウォーツ国を衝突無しで抜けると、更に内陸部を目指した。
 その過程で、《禁忌の箱》に至る経路上の国々では激論が交わされることとなった。

 あくまで魔族の存在を否定し戦うのか…あるいは、見なかったふりをして通過させるのか…。

 ロンバルディア、ゾーンウォーツ両国、またはカロリアの事例を挙げて人々は語り合い、その結果採用された選択肢は概ねゾーンウォーツ国に倣うものであった。

 ここまでの経路で眞魔国軍が見せた行動を見るにつけ、当初人間世界で懸念されていた事項…[眞魔国軍が《禁忌の箱》を滅ぼすというのは詭弁に過ぎず、実際には大陸征服を目指しているのではないか]という疑いが薄くなってきたのも一因である。

 実際のところ、物理的な事情から眞魔国軍と《やり合う》よりは《やり過ごす》ことの方が、どう考えても得策であるという事情もあった。
 眞魔国軍はあまりにも強大であり、正面切って戦うことは極めて困難であることがロンバルディア軍との戦いで証明されているからだ。

 魔王コンラートは大軍を擁することに慢心することなく、迅速な用兵によって必要な場所に必要な時だけ戦力を集中させることが出来たし、そもそも…その戦場に至るまでの情報収集力の差も歴然としていたのである。

 また、彼らは人間達に対して静観できるだけの心の余裕をくれた。

 《敵対はしない》という意志を示したゾーンウォーツでは、彼らは風のように国土を縦断し、民は勿論のこと草木にすら疵をつけることもなかった。
 極めて紳士的な立ち居振る舞いは、ナターリャのように《魔族がやってくる》と怯えていた人々をも安堵させたくらいである。

 そう、魔族側が最も恐れていた事態…逆上した人々による集団自決は今のところは全く発生していないのだ。

 このため、静観論者の比率は随分と高くなってきた。

 だが…世の中というものは一つの大きな流れがある時、逆流を試みる者…そして、更に大きな波に乗ろうとする者が出現しがちである。
 
 前者の代表例は言わずとしれた教会勢力である。
 その守護軍団である《聖騎士団》と、熱心な信徒を国主とする国々は聖都テンペストに集結して剣を研ぎ始めた。

 そして後者の…おそらく唯一の例が、王宮内に於いて激論を交わした結果…ついに《眞魔国軍に協力する》という決断をしたアリスティア公国であった。

 周囲国…ことに、教会には極秘とはいうものの、正式に手持ちの軍隊からの派兵を決めたその要因がいったい何であったのか…真実を知る者は公国内でも少数に絞られる。

 このアリスティアという公国は国土のほぼ中央に巨大な湖を持ち、これを取り巻くようにして都市と防御壁とを構築している。
 内陸部にあって確実な水源を持つ国は周囲国に狙われやすいというお約束がある中、アリスティア公国は驚くべき事に数千年の歴史を閲(けみ)する伝統国として国の枠組みを維持してきた。

 《禁忌の箱》暴発以降は殆どの国がその歴史に幕を閉じ…というより、幕を踏みつぶされ、蹴散らされるような最期を遂げたのに対して、アリスティア公国は一度として国土を他国の兵に蹂躙されたことがない。
 もともとアリスティア公国を傘下に入れていた王国が、その名さえ忘れられるようになったのとは対照的な《持ちの良さ》である。

 その要因の一つが、この国をぐるりと一周する円形防御壁の信じがたいほどの堅牢さだ。数千年前に作られたとはとても思えないほど頑丈な石造りの防壁は極めて丈高く、どのような投石を行っても崩れることがない。
 しかも国内に大きな水源を持つこの国にとって、籠城作戦など屁でもないのだ。
 過去に数度行われたその手の作戦は全て攻撃側の惨敗に終わっており、ここ数百年は試みようとした者さえいない。

 また、もう一つの要因は大公位を継ぐ者達が《世渡り上手》であったことだ。
 何しろ、この国に於ける継承条件は武道や学術に秀でることではなく、《口八丁手八丁》で人転がしが上手い人物であることなのだ。

 歴代の大公達は巧みに教会勢力と折り合いをつけ、周囲を取り巻く国同士の均衡を見計らい、気がつけば殆ど孤立することなく歴史を刻んでこれたのである。

 だが…当代の大公、ポラリス・カティアスがここに来て突然眞魔国に与(くみ)することを決定した理由については、公国中枢以外の者には全く理解できなかった。

 この為、実際に《協力要員》として選出された軍人達の中には、《呪われた魔族に何故積極的な協力をするのか》と激怒している者も少なくない。

 軍団長マルティン将軍はポラリス大公の古くからの友人であり、彼を敬愛していることからその決断を受け入れはしたが…配下の兵達の憤りを簡単に纏めることは困難だろうとも予感していた。


 特に、彼の双子の息子達…アマルとカマルの激怒は手に負えないものがあった。








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