第三章 ]ーB



 



 アリアズナ・カナートはその夜、飲み屋の姉ちゃんを口説くことは出来なかった。
 振られたわけではない。
 そもそも飲み屋に到達できなかったのである。



「コンラート…!」
「し…っ!声がでかい」

 お忍びのつもりなのか、コンラートは地味な服に身を包んだ上に目深にマントを羽織っていた。
 ルッテンベルク兵が詰めている宿舎の近くで急に肩を掴んでくるものだから、危うく不審者として殴りつけてしまうところだったではないか。

「公式に呼び出すと、作法だなんだと面倒だからな」
「全くねぇ…。やっぱそーゆートコ変わってねぇな…!」

 嬉しくなって、アリアズナは思わずその場で弾んでしまった。
 日中に披露された堂々たる王様ぶりも見事だったが、こうした自由な雰囲気は彼本来の…風のような気質を体現している。

 どれほど位が高くなろうが、名前まで変えてしまおうが、本質的には自分たちの知るコンラートなのだと思うと唯々嬉しかったのである。

「他にも連れがいるのかい?」

 傍らで、やはりマントを被った同行者に目を送ると…ちらりと覗いたその顔貌に息が止まりそうになる。

「え…て……っ!?」
「えへへぇ…お邪魔します」

 新世代の魔王陛下というのは、こんなにも容儀の軽い連中が即位するものなのか…。
 双黒の魔王陛下は磨きのかかった美貌を薄手のマントの下に隠し、へろりと笑って見せた。
 その傍らにいる男は軽く手を挙げただけだったが、間違いなく異世界のウェラー卿コンラート…コンラッドだろう。


 コンラートはポケットから紙切れを出すと、そこに書かれた面々を一室に集めて欲しいと頼んだ。


   

*   *   *




「コンラート陛下…」
「やあ、アルフォード」

 気さくな笑顔で応じるコンラートに、すっかり彼に魅了されているらしいアルフォードは仄かに頬を赤らめた。

 室内にはアルフォードの他に副官のガーディー・ホナーと、ルッテンベルク軍の上級指揮官であるケイル・ポー、アリアズナ、ベル・マジャンディー、スターリング・ブロイエル、リーメン・ビューゲルが集められた。

「相談事とは何だろう?」
「実は…相談というほどでも無いんだけどね。明日の歓迎会の前に各種の動静を伝えておきたかったのと…後は、気楽に語り合いたかっただけだよ」
「そうですか…っ!」

 微笑むコンラートは、重いコートを脱いで春野に飛び出す子どものように溌剌(はつらつ)としており、無邪気とも言える自然な表情は人々を魅了して止まなかった。
 彼を崇拝し始めているアルフォードなどは、ついつい声が弾んでしまう。

『…この方は、自由な心を手に入れておられる…』

 傍らでじっと見守るケイル・ポーの頬にも自然と柔らかな笑みが宿った。

 なんと言っても彼はごくごく自然な態度で有利に接し、以前のような…求めても得られないものに絶望して、飢えた様子がない。

 彼は求めるものを有利から得て、有利にも等価の想いを返していけることに誇らかな喜びを感じているようだった。

 だが、一方でその変化に戸惑っている者もいるようだ…。

「コンラート陛下…」
「何だい?」
「……我が陛下と接触しすぎではないですか?」
「そうかな?」

 笑顔なのだが、妙に背後から負のオーラを放っているのはコンラッドだ。
 室内には何人かで並んで座れるソファがあり、コンラートは殆ど有利を抱き寄せんばかりの位置に並んで座っているのだ。

『………コンラート陛下……なんだか、超自由?』

 ケイル・ポーの背中に変な汗が滲む。

 コンラートが伸び伸びと有利にひっつくものだから、コンラッドの額には軽く怒り筋が浮かんでいるではないか…。

「極力、ユーリ陛下の傍にいたいんだが…駄目かな?」
「……駄……」

 《駄目》…と言おうとしたコンラッドだったが、しょんぼりとコンラートが肩を落とすものだから、突きつけようとした指がへにょりと下がってしまう。

 自分と同じ顔でカワイコぶる姿がかなり気色悪いらしい。
 思いっきり目を背けている…。

 ケイル・ポー等から見ると、《なんてお可愛らしい…》とハートマーク付きで思うのだが、自分と似すぎた姿だとそういう感想を抱くものなのだろうか?

「互いに、魔王としての…品位を貶めぬ範囲での接触にとどめて頂きたい……」
「了解した」

 コンラートは有利の横に悠然と座ると、そこに腰を落ち着けてしまう。
 せめてもの張り合いとしてか、コンラッドの方も逆方向で有利の横に座ったものだから、大柄な男二人に挟まれた有利は常よりも一層小柄に…華奢で愛らしく見えた。

 そういえば…以前よりも身体の線がまろやかになり、ちょっとした仕草や表情に華やぎが増したと思うのは気のせいだろうか? 

「うう…捕獲された宇宙人の気分だ……」

 有利が眉間に皺を寄せて苦言を呈すると、コンラートはさらりと笑顔で応える。

「君を捕獲するような不届き者はいないよ」
「俺は捕獲したいですけどね」
「法で罰するよ?」
「俺はこちらの眞魔国の住人ではありませんから」
「ユーリ陛下、法規制の必要ありですね」

 ライト腹黒合戦を展開していたダブルコンラートだったが、この勝負…有利の勝ちであった。

「え?俺はコンラッドになら捕まっても…」

 素の反応に、コンラートはくすくすと苦笑してしまう。

「あー…これはアテられてしまいましたね」

 脱力気味に笑うコンラートとは対照的に、コンラッドの方は頬を淡く上気させて口元を手で覆っている。脂下がりそうな表情を見られたくないらしい。
 今度は、コンラートの方がそんなコンラッドを気色悪そうに横目で見ているから奇妙なものだ。

「まぁ…それはさておき、本題に入ろうか」

 随分と軽やかにおなりのコンラート陛下だったが、用件を忘れたわけではなさそうだった。
 全員が腰掛けると、簡潔に眞魔国や他国の状況を説明した。



*   *   *




 ルッテンベルク軍の帰還に先立って行われた十貴族会議では、様々な案件が取り沙汰された。

 まずは既成事実化していたコンラートの魔王就任と、グウェンダルの宰相、ギュンターの王佐としての地位が十貴族会議の承認と公文書への記載を経て正式なものになったこと。

 これに伴い、ツェツィーリエの退位と上王就任も正式決定された。

 また、シュトッフェルについては摂政の身分を利用した各種の背任行為を問われたが、各罪状に対して誠実に証言をしているため、極めて平和的に、法に遵守した形で適正な裁きが与えられた。
 シュピッツヴェーグ家の当主についてはシュトッフェルが自主的に退座し、これまで能力がありながら不遇を託(かこ)っていたフォンシュピッツヴェーグ卿ロイフォンという男がその座を継ぐことになった。

 コンラートが苦慮することになったのは、寧ろ自分の弟であるヴォルフラムについてだった。

 眞魔国の法では反逆は重罪であり、首謀者は極刑をもって償わなければならない。

 だが、ビーレフェルト軍が侵攻しようとしたのは王都ではあったが、その狙いは魔王ではなく摂政であり、国を転覆させるというよりは家同士の対立…前当主の死に対する報復行為と考えると、状況によって罪状が随分と変わってしまう。

 この時、状況を打開してくれたのはあろうとか…シュトッフェルであった。

 彼はヴァルトラーナの死に際してシュピッツヴェーグ側の対応が不十分であったことを認め、ビーレフェルト家の行動は無理もないこととして、ヴォルフラムの挙兵を二家の私的な戦闘という落としどころに持って行ったのである。

 このことにより、シュピッツヴェーグとビーレフェルト両家は共に国を乱したとして同罪を与えられることになったが、その負債は当主の実刑でなく、金銭的な賠償金によって購(あがな)われることになった。

 他の十貴族についても、既に国を挙げて《禁忌の箱》廃棄に向けた取り組みと、崩壊しかけていた財政の回復に努めなくてはならないことは理解していた為、特に大きな反対はなかった。

 罪状が決定していく過程で、ヴォルフラムは相変わらず憮然とはしていたのだが…それでも、自分が引き起こした事態の割に家門に対する罰が軽いことは理解しており、他の十貴族に対しても、コンラートに対しても…正式に謝罪をした。

 兄弟として屈託のない交わりをするにはまだ時間がかかるかもしれない。
 だが…今のコンラートには、そう遠くない未来にそれは実現するだろうとの想いがあった。

 王都の防壁前で交わした会話は、十分に暖かな感情を感じさせたのだから…。



 《不肖の息子》という立場で言えば並ぶ者なきフォングランツ卿アーダルベルトも郷里の両親に謝罪し、勘当を解かれることとなった。
 とはいえ…本人はしれっとした顔をしていたものだから、父親が卒中を起こしそうになって大騒ぎになったらしい。

 しかし、勘当を解かれたとはいえアーダルベルトがグランツの家督を継ぐことはないらしい。
 既にアーダルベルトの弟が失墜した家名の回復に努めており、その彼を排して長男を当主の座に据えることは誰も望まなかったのである。

 アーダルベルト本人から《今更継げるかい》と明言したこともあり、彼の身の上は当座の所ルッテンベルク軍に所属することになり、騎兵第2小隊を任されることとなった。

 特に、今回の《禁忌の箱》廃棄の為の遠征にあたっては人間世界の土地に精通したアーダルベルトの知識は有用であり、法石の使い方にも長けた彼は重宝されそうである。 



 《禁忌の箱》廃棄に向けては更に詳細が決定しつつある。

 やはりルッテンベルク軍を主力とする眞魔国軍をコンラートが率い、アルフォード軍(所属人員から考えれば一個大隊か、せいぜい連隊規模でしかないのだが…)もその傘下に客員という形で所属する。

 騎兵を主軸とするこの軍は迅速に《禁忌の箱》が埋没している3地点を確保し、後発の《アニシナ隊》を迎えることになる。

 《アニシナ隊》…ひっそりと…ごく一部では《紅い悪魔隊》と呼ばれるこの小隊は、現在も出発に向けて急ピッチで突貫工事を続けているらしい。どうやらフォンカーベルニコフ卿アニシナの指揮で、《禁忌の箱》を地中から引き上げる為の魔道装置を建造中のようだ。
 大賢者が監修に当たっているとの噂もあり、一部の魔族はその仕上がりに戦々恐々としているらしい…。

 この装置を操作するのは人間世界でも魔力を発揮できる有利であり、魔力温存のためにも《禁忌の箱》の存在する地点が確保されるまでは眞魔国内に待機することになる。当然、護衛としてコンラッドも同様の扱いだ。

 有利も今回については《無茶をしない》《密航しない》と明言し…いや、させられ…よい子でお留守番することを約束した。

 

 一方、人間側の動向は極めて不穏なものがある。

 アルフォードを支援してくれた諸家は、眞魔国からの略奪物を見込んだ財政計画を立てていた為か、《侵攻失敗》、《勇者、魔族に降伏》との報が伝わるやいなや、瞬く間に失脚してしまったらしい。

 幾つかの国々では追いつめられたあげく神に縋るのはまだ良い方で、邪法を用いた秘技によって怪しげな軍勢を用意しているとも聞く。
 最悪の場合、自らも滅ぶ覚悟で《禁忌の箱》に何らかの刺激を与えようとしてくる輩がいるかもしれないというのだ。

 

*   *   *




「…………」

 報告を聞き終えた後、アルフォードは真っ青な顔色で沈黙してしまった。
 先程までの幾らか高揚した気分など、雨の日の綿飴の如くへしゃげてしまったに違いない。

『無理もねぇや…』

 副官たるガーディー・ホナーもまた、地の底に引きずり込まれていくような落胆を覚えずにはいられない。

 何しろ、人間側が明らかに世界崩壊の引き金を引こうとしているのであり、また…これまで(欲得尽くとは言っても)支援してくれた人々が、自分の《裏切り行為》によって失脚した事に衝撃を覚えないはずがない。

 アルフォードの強ばった指が腿を掴んで爪の色を失わせているが、しばらくの間…誰も声を掛ける者はいなかった。

「アル、お茶のもうよ」

 親しげに、可愛らしい声が響くまでは…。

「ユーリ陛下…」
「暑い時期だけど、こういう時は冷たいものをがぶがぶ飲むよりも、あっついお茶で腹を温めた方が良いんだってさ。お袋が言ってた」

 手ずからポットを手に取ると、こぽこぽと良い音をさせてカップにお茶を満たしていく。
 まだ熟成が不十分ながら、その分若々しい香気を放つお茶が室内の空気までも爽やかにしてくれた。

「こういう時…なんて言って良いのか分かんないけど、とにかく…焦ったら何にもなんないって思うんだ」
「はい…」

 手渡されたカップを恭(うやうや)しく受け取り、口に運べば…鼻腔をくゆらす香気が、強い酒よりも精神を活性化させていくのが分かる。

「アル、あんたは憎しみの連鎖を断ち切れる人だ。絶対に…あんたにとって大切な人たちを、本当の意味で救うことが出来る。だってあんたは、本物の勇者だもん!」

 にこりと微笑みながら有利が告げれば、アルフォードは瞳を潤ませて頭を垂れる。
 
「ありがとう…ございます……」
「あはは、そっかー…こっちじゃ、直接会うの初めてなんだよね?そんな丁寧な物言いされると変な感じ!」
 
 朗らかに微笑むと、更に室内の空気が明るく華やいでいく。
 知らず目を細めていたガーディーは、コンラッドに注がれた茶をありがたく受け取ると、やはり喉を潤す液体に心地よさそうな息を漏らした。

「うめぇや…。こんな美人さん達に囲まれてると、一層旨く感じるな」
「確かに、眞魔国の方々は美しい方が多いな。コンラート陛下や異世界のウェラー卿もお美しいが…ユーリ陛下の美しさときたら、天界の精霊もかくやという麗しさだ!」
「なーに言ってんだよっ!」

 感嘆の意を素直すぎるほどに表現するアルフォードに、照れ隠しに《ぎゃはは》と笑いながら有利が突っ込みを入れる。

「おやおや、綺麗だが結構はしたないな。折角可愛らしいのに…そんなんじゃ、お嫁に行けませんよ?」

 ガーディーが何気なくやかまし屋の親父のようなことを言うと、アルフォードが不思議そうに小首を傾げた。

「え?ユーリ陛下は男性だろう?」
「馬鹿言っちゃいけねぇ!幾ら顔の割にがさつだとは言っても、立派な女性を捕まえて男だなんて…。ほら、ユーリ陛下が困っておいでだぞ?」


「いやいや、あんたこそ何言ってんだよ。ユーリ陛下には立派なチンポがついてるぜ?ピンク色でちっちゃくて可愛いけどな」


 つるっと口にしてしまった後で、アリアズナは《は…》っと我に返った。
 
 一部の連中の目つきが…一瞬の驚愕の後に、怒りを浮かべたのだ。

「アリアズナ…覗いていたのは、やはりお前か?」
「覗いて…え?えぇえええ…っ!?」

 コンラッドが苦虫を噛み潰したような顔で睨み付けてくると、きょろきょろと辺りの様子を伺っていた有利が真っ赤になって頬を両手で包み込む。

「アリアズナ…そこのところ、後で詳しく聞かせて貰えるか?」

 ぐわしとコンラートが肩を握ってくる。

「いやいや…ち、ちょっと偶然で…覗く気なんてこれっぽっちもなかったのに、厩(うまや)でユーリ陛下とコンラッドがイチャイチャ始めて、俺がいる方向に向かって御開帳しながらズッコンバッコンやりやがるから…」

『ああぁああああ…っっ!!』
  
 自分でも何を言っているのか分からないくらい取り乱してしまったアリアズナは、頭に血が上るままに詳細な状況報告を始めてしまった。

「ぎゃあああぁぁぁ……っっ!!」
「アリアズナ…その口、今すぐ閉じないと叩っ斬るぞ?」

 有利が絶叫し、コンラッドが鯉口を切ろうとする…。

「コンラッド…君、幾ら婚約者だからってユーリ陛下の扱いが酷くないか!?厩で御開帳って…馬に見せつけるつもりだったのか!?自分が馬並みだと自慢したかったのか!?友人として言わせて貰うが、そういう趣向の変態行為は程々にした方が良いぞ!?」
「こ…コンラッドは変態じゃないよっ!俺が誘ったんだ!」
「何だって!?…意外な放埒さに吃驚…じゃなくてっ!友人として言わせて貰うが、せめて厩は止めよう!接合部に雑菌が入るから!」

 妙なおかしみを纏うようになったコンラートがまた、事態を縺れさせていく…。

「やーっ!も、もーこの話題止めようよっ!」

 これ以上ないと言うほど真っ赤に上気した有利がドカンと一発卓上を殴ったことで、事態は無理矢理収められたのだった…。 



*   *   *




「全く…あんたのせいで無茶苦茶な会合になってしまったじゃないか」
「面目ねぇ…」

 宛われた二人部屋で寝台につくと、アルフォードに責められてガーディーはしょぼくれた。

 ただ、有利が明るくしてくれた空気のせいもあって、二人の声はどこか笑い含みだ。

「しっかしなぁ…あのユーリ陛下は絶対に女の子だと思ったんだが」
「性別を超越した美しさだからな!あの方に、あちらの世界の俺は随分と砕けた対応をしているらしいが…どういう経過で知り合ったのか、今度教えて頂こう」
「うーん…見間違いかぁ…?」

 確かに華奢な容貌は中性的で、ざっくばらんな口調は男の子のそれだが…身体のラインは絶対に女性のものだと思ったのに…。

 ガーディーは、実は自分が正解者であることなど知らず…ちょっとした敗北感に包まれながら眠りについたのだった。



*   *   *




『やれやれ…飲み屋に行き損ねたじゃねーか…』

 アリアズナは騒動の後、ひとっ風呂浴びて晩酌しながら漸くその事を思い出したが、今さら街に繰り出すのも面倒でそのまま寝床に入ってしまった。

 それにしても…有利の姿を思い出すと、ガーディーが見間違えたのも無理からぬ事ではないかと思い始める。

『俺は確かにユーリ陛下の裸体を見たんだが…幾ら華奢だっていっても、痩せたとかいう問題じゃないくらい身体の線が違わねぇか?』
  
 細かいところまではゆったりとした服装のせいで見て取ることは出来なかったが…。
 前よりほっそりした部分もあるが、場所によってはふんわりと柔らかな曲線を描くようになった部分もある。

 妙に気になって《うーん》…と呻(うめ)いていたが、蒸し返すとまた《ルッテンベルクの獅子団》に惨殺されそうになるので聞くことも出来ない。

『ま、いっか…』

 何しろ相手は実りの奇跡を起こすお方だ、今更何があってもおかしくはない…。
 とろとろと押し寄せてくる眠りの波に漂いながら、アリアズナはひとまずこの夜は就寝を果たしたのである。



 




 


 

→次へ