W 獅子の咆哮 眞魔国歴4008年ーーー冬の第1月末つ方。 月の初めまでに大仕事を終えたルッテンベルク師団は、戦闘が収束した直後に宮廷での《戦い》に向けて師団長が先行した後、兵列を整えながら王都へと帰還しつつあった。武具などの本格的な調整はウェラー領に戻ってからになるが、王都で戦功に応じた報償などが行われるからだ。 眞魔国髄一の訓練機関を擁するルッテンベルク師団は、多岐にわたる能力の形成に尽力しており、その行軍の正確さにも定評がある。 地味な業務ではあるが、実のところ大所帯を正確に…期日通りに目的の場所まで運ぶという能力は、軍隊にとって極めて重要なのである。 コンラートは眞魔国軍の中で誰よりもその事に重きを置いており、このようなときには戦闘術に派手さはないものの、行軍や兵站管理に堅実な才を持つケイル・ポーという男を、副師団長として登用して5人の旅団長を取り纏めさせている。 「やれやれ…王都はまだですかいな、と。なんだか辛気くさい風景が続くじゃないか。早く佳い女を拝みたいねぇ…」 先鋒隊の中で、派手な銀鎧を纏った男が不満げに鼻を鳴らす。 ここ近年、度重なる遠征・防衛戦によって国庫が干上がりつつあるせいか、王都近くだというのに整備が行き届いていない街道には方々に雑草が生い茂り、それが冬の訪れと共に枯れ始めているせいで如何にも物寂しげな様子である。 「あと3日ですよ、アリアズナ准将」 「ケイル…お前さん、相変わらず堅苦しい男だねぇ…階級一緒なんだから、タメ口で良いじゃねぇか」 ケイル・ポーは若い大柄な男で、魔族の男としては珍しい短髪である。麦藁色の髪を刈り詰め、一重ながら大きな瞳をしているので、どこか人懐っこい大型犬のような雰囲気がある。 「自分は、そこを師団長殿に買われているのだと認識しておりますから」 返答もやはり、忠実な犬じみている。 「あっはは、違いない!」 混血にしては綺麗な顔立ちをしたアリアズナ・カナートがにやりと笑うと、野性的な犬歯が覗いて《貴族的》と感じた印象が一瞬にして吹き飛んでしまう。 戦場で巨大な戦斧を振り回し、血飛沫を浴びながら哄笑する姿は《勇猛》を通り越して《気狂い》のようだと評される彼は、《紅斧のアリアズナ》と呼ばれるルッテンベルク師団の斬り込み隊長だ。 なお、《血を浴びすぎたせいさ》と嘯(うそぶ)く彼の瞳は、確かに動脈血を固めたような紅色をしている。 黙っていれば美形なこの男は結構な洒落者でもあり、血を浴びていないときには鎧の整備にも気を使う。今も、王都入りしたときの町娘や酒場女の反応が気になるのか、強い風に煽られた鉄錆色の髪を自分の《決め顔》に収まるように梳かしつけていった。 「まあねぇ…師団長殿は兵の才を見抜く能力に長けてるからな。有り難いことさ…俺なんぞ、他の軍団で旅団長サマなんてものに登用される可能性は皆無に等しいからな」 「そうですね。おそらく、戦場に出ておられる期間よりも営巣入りしておられる期間の方が長いかと…」 「お前も言うようになったねぇ…100歳にもならねぇ儒子っこの癖してよ」 ケイル・ポーは旅団長の中では最も年少であり、己の分も弁えている。 なので、軽口の応酬に際して多少舌の滑りがなめらかになってしまうのは、生来の性分というよりは後天的な訓練によるものだと思う。それにしても…その育成に尽力してしまった人に言われはくはないものだ。 「失礼しました」 「いや、いいさ…あいつだって、《ルッテンベルクの獅子》なんて呼ばれ出した頃には100歳に満たなかったんだ。まぁ…俺もそうだったんだけどさ」 アリアズナの紅色の瞳が、夕日に染め上げられた朱色の空を見詰めた。 昔のことを思いだしたせいか…空の色も、どこか馴染み深い友人を彷彿とさせる。 ゴォオォォォォ…… 強い風が吹き抜けて鉄錆色の髪を巻き上げていくが…アリアズナはもう髪を梳こうとはしなかった。若さ故の衝突や、喜びや哀しみを共有した…もう、今は居ない連中の姿まで思い出してしまったからだ。 『俺も、あいつらも若かった…そして、必死だった…』 ケイル・ポーのような若手が着実に育ってきたことは嬉しいが、アリアズナにとって背中を預けて戦える相手とはなり得ない。 あの頃は《ルッテンベルク》の名自体、今のように光輝に満ちたものではなかったが、がむしゃらな時代を泥まみれになって生き抜いた仲間は特別な意味を持っている。 『へ…っ、肌寂しいせいかな。こういう時はろくな事考えねぇもんだ』 鼻を鳴らしながらアリアズナが視線を前方に向けると、小規模な騎馬隊がこちらに向かって駆けてくるのが立ち上る砂煙から分かった。 一瞬、頬に緊張を走らせたのも束の間…アリアズナは景気の良い叫びを上げると、ぽぅんと剣を宙に舞わせてケイル・ポーの肩をこずいた。 すぐにでも隊列停止命令を出したいのだが、現在師団を預かっているのが誰なのか忘れてしまうほど浮かれているわけではないのだ。 「全軍、停止…っ!師団長殿のお帰りだっ!」 オォォォォオオオオオ………っ!! ケイル・ポーから自分たちの前に何者が接近してくるのかが知らされると、一斉に歓声が沸き立った。 男達の喜びによって、崩れかけた街道とその周囲に何処までも広がる枯れ草の群が、一気に青々と色づいたように感じられたほどだ。 ガガ…ガ……っ! 疾駆してきたコンラートが巧みに急停止をかけ、馬上からルッテンベルク師団特有の敬礼を示してみせれば、師団に属する全員が拳を右のこめかみへと押し当ててにやりと笑う。 これが、彼らの儀式なのだ。 「師団長殿っ!」 ここまで一人の脱落者も出さずに隊列を管理してきたケイル・ポーは馬から降りると、子犬のように駆け出してノーカンティーの傍へと馳せ参じた。 これに倣うように、それぞれ癖のある旅団長達も靴音高らかに駆け寄り、ノーカンティーから引きずり降ろすようにしてコンラートを囲んだ。 「よう、師団長殿っ!」 「お帰りなさいませ…っ!」 「ははは、こいつ!洒落めかしやがってよぉっ!俺達ゃまだ湯も浴びてないんだぜ?」 5人の旅団長は銘々コンラートを荒々しく抱きかかえると、ぐいぐいと脂臭い髭ずらを押しつけて貴公子然とした師団長殿を《我らの獅子》に戻すのだった。 その仕草は、顔を摺り合わせて仲間の確認を行う猛禽類のようだ。 「はっはぁ…っ!師団長殿、首尾良くいったみたいですねぇ!」 「お前のおかげだよ、アリアズナ」 アリアズナの鎧の左胸部分には見事な銀細工の薔薇があるが、左右対称のデザインにもかかわらず右にはこっぽりと薔薇が抜けている。 この失われた装飾こそ、コンラートの宮廷劇の鍵となった薔薇であったのだ。 「あれのおかげで助かった。ありがとう」 「ふふん…お返しは形にして返してくれよな!」 「分かっているさ…あれを見ろ」 「ひょーうっ!」 コンラートの頚に勢いよく腕を回して、アリアズナは高らかな笑い声を上げる。 今宵はまだ野営となるだろうが、旨い酒にありつけそうだ。気の利く師団長殿は自分の守護として配備した騎兵隊に、可能な限りの酒を積ませていたのだ。 糧食は兵站確保に長けたケイル・ポーが計算通り用意しているが、質の良い酒ともなれば話は別だ。随分長い間口にしていないように思えて、ごくりと喉が鳴る。 「おい、ケイル…折角なんだ。景気よく糧食を喰い尽くしちまおうぜ?なーに、1日や2日何にも喰わなくたってなんとかなるぜ」 「いいえ…何があるか分かりませんから、計画通りに召し上がって頂きます」 年長で経験豊富なアリアズナをケイル・ポーは尊敬もしているし、その意見を尊重してもいるのだが…こと兵站関係と私的な借金について彼の意見を容れることはない。言うとおりにしていると、あっという間に懐がすっからかんになってしまうからだ。 「流石だな、ケイル。アリアズナをしっかり御してくれた」 「ちぇっ」 舌打ちするアリアズナであったが、その日の夜…自分用に宛われた皿に多めの肉が盛られていたのを見てにやりと笑った時には、密かにケイル・ポーに目礼を送っていた。 * * * 「来たぞぉ…っ!」 「ルッテンベルク師団だ!」 王都の防衛を勤める警備兵が防御壁の高台から叫ぶと、同僚達や出入りの業者が歓声を上げ、城下街の方に向かって大声で呼ばわる。 「コンラート閣下バンザイ!常勝軍団、バンザイ!」 「おいおい、まだ軍団じゃねぇよ」 「いいんだよ、今や決まったようなもんさ。ルッテンベルク軍団か、ウェラー軍団に格上げ…ってな」 この息苦しい時代の中で輝かしい戦果をもたらしてくれるこの師団に、城下街では誰もが笑顔を浮かべてその帰還に熱狂した。 家々からは女や子どもを中心とした住民が手に手に色紙を掴んで駆け出してくる。 以前は戦勝後の兵団を迎える際には、野山に咲く花々を摘んではその花弁を蒔く習わしだったのだが、季節のせいもあろうが…王都近辺でも年々、野草ですらも花をつけないことが多くなってきたため、こんな時には色紙を蒔いてお祝いをするようになった。 色紙もまた一般庶民にとっては貴重品であるため、蒔いた後には子ども達が拾って回るので、家々の色んな紙が混ざり合ったものが回収されることになる。 「ルッテンベルク師団、お帰りなさーいっ!」 「いっぱい人間を倒してくれてありがとーっ!」 子ども達がこの日のために蓄えておいた色紙を景気よくまき散らせば、風に吹き上げられたそれが花吹雪のように舞って戦地帰りの男達を喜ばせた。 「コンラート様ぁーっ!!」 「ルッテンベルクの獅子っ!」 ノーカンティーを駆りコンラートが入ってくると、宴の時には早馬を駆けて慌ただしく入られてしまったので、騒ぎ損ねた女性達が今度こそはと声を限りに黄色い声で叫ぶ。 にこやかに微笑みながらコンラートが手を振れば、一層声は艶を帯びて…いっそ悩ましいような嬌声に近いものになる。 コンラートに続いて王都入りした旅団長達や、名の知れ始めた大隊長も銘々の渾名を冠して呼ばれ、多少照れながら進んでいった。 彼らを血盟城からの伝令が迎えると、その書状に記された内容を確認するために全軍が停止する。 「一斉、停止ーっ!」 伸びのある声がコンラートの喉から響くと、蹄の音を立てて騎馬が停止し、後続の歩兵団も踵を鳴らして直立姿勢になる。 いずれの顔も戦勝の高揚感と、幾多の戦いを経てきた自負に溢れて輝いていた。 彼らにとって戦いは未だ単純な意味を持つものであり、戦って勝ち、生きて帰る。それだけのものであった。 亡くした友を偲び涙することはあっても、《何故戦わねばならないのか》などと根元的な命題について師団長のように深々と思念の淵に沈む必要はなく、生き延びたことに感謝しながら旨い酒にありつき、佳い女を口説くことへと心は飛び始めていた。 「ルッテンベルク師団の皆様、此度の遠征、まことにお疲れ様でした!師団長ウェラー卿コンラート閣下、旅団長ケイル・ポー閣下、並びにアリアズナ・カナート閣下、ベル・マジャンディー閣下、スターリング・ブロイエル閣下、リーメン・ビューゲル閣下は重要なお話がありますので、こちらの用意しました宿にて旅装を解かれましたら、お疲れとは存じますが血盟城においで下さい。フォンシュピッツヴェーグ卿シュトッフェル様より、重要なお話があります」 頬を染めて一気に読み上げた伝令に罪はないが、コンラートほどには腹芸にこなれていない旅団長達が不快げに顔を顰めてしまう。 「嫌だ…って言うわけにはいかないかねぇ…」 「無理でしょうね」 アリアズナが小声でごねれば、ケイル・ポーが溜息混じりに応える。 誰にとっても…おそらく、相手方にとっても不快であろう面会は、彼らの上官が軍団長フォンシュピッツヴェーグ卿シュトッフェルである限り回避し得ないものなのだ。 結局、短時間ながら交わされた白々しい賞賛と謙遜の応酬に困憊した彼らは、戦場に於ける戦いの数倍に及ぶ疲労を抱えることになったのだった。 * * * ようよう馴染みの酒場に辿り着いたときには、先に開放されていた大隊長達は既に出来上がっていた。 脂臭いつまみと酒の香りが立ち込める空間は、決して薫り高いとは言えないのだけど…包み込まれるような雰囲気に男達はほっと安堵した。 「あぁ〜あ、やれやれ。疲れた疲れた…」 「ご苦労さん」 どかりと木の椅子に腰を下ろしたアリアズナは、肩を叩いて酒杯を掲げてきた男に紅眼を見開いた。 「ヨザックじゃねぇか、久し振りだな!フォンヴォルテールの旦那は良い仕事回してくれるのかい?」 「ああ、とりあえず面白いぜ?」 「隊長の下で働くのより?」 アリアズナが人の悪い笑みを浮かべて《隊長》と呼べば、郷愁のようなものが鼻を掠めてヨザックを苦笑させる。 グリエ・ヨザックの立ち位置というのは時によって変転する。 大戦中…ウィンコット家の剣術指南としてコンラートが招かれている頃に、何かの縁でフォンヴォルテール卿の部下となった彼は、アルノルドに向けて編成されたルッテンベルク師団には再びコンラートの麾下に舞い戻っていた。 あの当時、《ルッテンベルク》の名は地獄だか天国だかへの直送便と同義であった。 けれど…奮い立つ闘志を抱えた混血魔族は、《死》だけではない《何か》が待っていることを祈りながらコンラートの元に集ったのだ。 あの戦いを生き抜いたヨザックは、再びフォンヴォルテール卿のもとに戻っていった。 だが…それがコンラートを必要としなくなったという意味ではないことを、アリアズナは熟知した上で口にしているのだ。 「やな言い回しすんなぁ〜…」 4人掛けのテーブルにコンラートとアリアズナ、ケイル・ポーとで座っていたところにリーメンが入ろうとしていたのだが、ヨザックが入り込んできたことで弾かれたリーメンは、渋々と他の連中のテーブルに回るのだった。 「ま…とにもかくにも乾杯といこうや」 「何に乾杯?」 「再会とか色々あんだろぉ〜?」 素朴な陶磁の酒杯ががつんと荒々しい音を立てて打ち合わされると、男達は思い思いのペースで酒をあおり、思い出話や今後の話に華を咲かせた。 * * * 「なぁ〜隊長ぉー…シュトッフェルの野郎はぁ〜…なんて言ってやがったんだー?」 「いや…特には」 結構な勢いで酒が回っているらしいヨザックが呂律の怪しくなった口調で話し掛ければ、コンラートは苦いものでも含まされたように口端を歪ませる。 正直、思い出したくもないのだろうが…言われてみると奇妙な様子であったことが想起される。 「……何故だろうな。やけに…機嫌が良かった」 「ふぅん…あんたがそう言うからには強がってってわけじゃなく、心底嬉しそうだったって事だよな?」 「ああ…」 「あんなぁ…俺の上司がさ、気ぃつけろって言ってきたんだよ」 「フォンヴォルテール卿がか?」 その家名を口にすれば、また心が跳ねる。 兄の好意と関心が自分に向けられているのではないか…つい、そんなことを考えてしまったのだ。 「そーよん。あんたは今、十貴族のうちの七つまでも味方につけちまった。ウェラー家の十一貴族昇格を阻止したいシュトッフェルにとっては、絶体絶命と言っていい状況だろう?だとすれば…次の十貴族会議までに、奴は何としてでも邪魔をしてくる筈なんだ。ことによると…かなり強引な手を使ってくる可能性もある。だから俺や、複数の諜報員を使って調べを進めてるんだが…どうやら連中、妙な切り札を手に入れたらしいぜ?」 「切り札だと?」 この状況下で一体どのような手を使ってくるつもりなのだろうか。 コンラートも暗殺については重々警戒しており、以前のように単身出歩くことはせずに、今回ルッテンベルク師団本隊から離脱・合流する際にも騎馬隊を率いていた。 だが《切り札》というからは、何かしらコンラートの非を糾弾しうる要素なのだろうか? 「隊長…あんた、心当たりは無いのか?どうも戦闘中の何かに関わる事みたいなんだが」 「……」 無いことは…無い。 だが…幾らシュトッフェルとは言えど、《あの事》をそこまで大きく論(あげつら)ってコンラートを吊し上げることなど出来るのだろうか? 「ヨザ…頼まれてくれるか?」 もしかすると、暗殺ではないにしても…シュトッフェルはかなりの強攻策を敷いてくるかも知れない。 コンラートは幾ら何でもそれはないだろうと思いつつも、用意周到な気質と防衛本能の為せる技で、旧友にあることを依頼した。 * * * 眞魔国歴4008年ーーー冬の第2月中旬。 この日の深夜…眞魔国の運命が大きく動き出そうとしていた。 だが血盟城の魔王居室では、国を主導するはずのツェツィーリエは何も知らないまま遅い夕餉をベッドの上で愛人と楽しみ、頬についた蜂蜜を舐め取る行為から濃厚な愛撫を受けて嬌声を上げていた。 その最中に、華美な装飾を施された扉が慌ただしく叩かれた。 「まぁ…無粋ねぇ…。こんな時間に一体何かしら?」 あまりにしつこい呼びかけに興を削がれたツェツィーリエがガウンを羽織り、愛人に扉を開けるさせると…そこにいたのは顔色を真っ青にした侍女であった。 少々年はいっているが未だ美しさを留めた顔は恐怖に引きつり、揉みしだいていたのだろう手が自分自身の手の甲に爪痕をつけていた。 「魔王陛下…どうか、どうか…気を鎮めてお聞き下さい…っ!」 「まぁ…リリアーナ、あなたの方こそ落ち着いて?顔が真っ青よ?」 「陛下…おぉ……ツェツィーリエ様…っ!」 リリアーナと呼ばれた侍女は喉がつかえたように喉元を掴み、悶絶するようにして声を絞り出した。 「コンラート様が…反逆罪で投獄されます…っ!!」 言葉の意味が俄には理解出来ず、ぽかんと口を開けていたツェツィーリエに絶望したように…リリアーナはばたりとその場に倒れてしまった。 失意が、彼女の意識を失わせたのだろう。 彼女は……かつてコンラートの乳母として彼を慈しんできた女性だったのである。 →次へ |