お嫁においでよ−2



 




 渋谷有利は苦悶していた。

 別にお腹が痛いわけでも精神的な苦痛に苛まされているわけではない。
 どちらかというと、今からしようとしていることは実現すれば《楽しい》ことだ。

 ただ…問題は……

『俺だけがはしゃいでんだったらどうしよう?』

 …と言うことであった。

 有利は携帯電話のメール機能で、お見合いの席でのお詫びとお礼を兼ねたお誘いの文章を打ち込んでいる。後は《ポチっとな》とばかりに送信ボタンに指を押し当てるだけで良い。
 
 この日のためにバイトをしたから十分な金額が溜まったし、足首の捻挫もコンラートのテーピングのお陰もあってかすぐに治っている。
 後は、このボタンを押して返答を待つだけで良いのだ。
 
 では何故こんなにも葛藤しているかと言えば、先程も述べたとおり…有利だけがあの約束を真に受けていたらどうしようかと悩んでいるのだ。

 コンラートは《良かったら、また会わないかい?》と言ってくれたけど、大人の男の人だから…ひょっとして社交辞令ということはないだろうか?

『迷惑かな…どうかな…』

 今更ながら、お誘いの内容がプールなのもどうかと思う。
 今年建てられたばかりのレジャー施設ネプトューヌはこの不況下に大きく出たものだな…と感心するくらいの規模で、特に夏場のプールは各種のウォータースライダー等が充実しており、ファミリーからカップルまで連日大賑わいらしい。
 
 特に、こういうところだと混み合っているのが苦痛…という難点があるが、ネプトューヌではファミリー向けの安価なスペースと、大人向けのちょっとお高めスペースに分けているのが非常に好評らしい。
 有利は奮発して、大人領域のチケット+α分の金額を稼ぎ出したのだ。

『大人向けっていうから良いかなって思ったんだけど…その分、普通はカップルが行くんだよな?』

 そこへ見るからに社会人のコンラートと、高校生(下手をすれば中学生に見えてしまう)有利が行くというのは、引かれたりしないだろうか?

『こないだ振り袖姿見られてるのだって、おかしいと思われてるだろうしな…』

 母に騙された結果とはいえ、普通の嗜好を持つ男子高校生が振り袖を着て、薄化粧までしてあんな立派な場所にいるなんて考えにくいだろう。
 変な奴だと思われているのではないかと、後になればなるほど気になったりもするのだ。

『でも…でも……。このまま時間が経ったらもっと誘いにくくなるよな?』

 このまま自然消滅するのだけは嫌だ。
 もう一度だけでも良いから…あの人に会って、ちゃんとお礼がしたい。

 ポチ…

 想いを込めて、有利は送信ボタンを押した。



*  *  *




 コンラート・ウェラーは焦燥感を覚えていた。

 《良かったら、また会わないかい?》…そう提案したときにはとても喜んでメル番を交換してくれた有利からは、その日の内に一通メールが来た。彼らしい文章でお詫びとお礼を書き綴ってあって、その中には確かに《今度、また会いたいので連絡します》と書かれていたのだ。

 けれど…あれから一週間連絡はない。

 そうこうする内に夏休みも最終週に入ってきたから、このまま行くと会う約束自体がお流れになってしまうのではないだろうか?

 コンラートは結構忙しい職場に務めているので、休みを取ろうとすると週末でも事前に調整が必要だから、できれば早くに連絡が欲しいのだが…。

『こちらからメールしたりすると、鬱陶しがられるかな?』

 ひょっとして、有利的には《また会いたい》というのは社交辞令だったのではないだろうか?
 
『11歳…違うんだよな……』

 国籍も違うし、嗜好や趣味がどういうものなのかも分からない、たった一度会っただけの社会人を、男子高校生が本当に誘ったりするのだろうか?
 自分の立場に置き換えてみると、ちょっと面倒くさいと感じてしまいそうだ。

『振り袖姿、可愛かったな…』

 華のように可憐で、蝶のようにひらひらとしていたけれど…その中に向日葵みたいな快活さがあって、良い意味でアンバランスな魅力を持った子だった。

 有利を気に入って、《また会いたいと思ってます》と言ったらツェツィーリエは狂喜乱舞していたが、別に結婚相手としてどうこうなどと妄想しているわけではない。相手は歴とした男の子だし、女装はしていたが今はやり(?)の男の娘(こ)というわけでもなさそうだった。

 ただ…会いたいのだ。

 理由はよく分からないが、あの子と喋るのは楽しかったし、くるくると変わる表情を見ているだけでもとても面白かった。
 だから、せめてもう一度会ってどんな子なのか知りたいだけなのだ。

『俺にしては珍しいよなぁ…』

 コンラートを慕う者は国境を越えて大勢居るが、コンラートの方は広く浅くが付き合いのモットーで、滅多に懐に入れて愛することはない。女性との恋愛遍歴も多く経てきた方だと思うが、何故かあまり長続きした試しがない。

『俺としては誠意を尽くしているつもりだったんだけど…』

 女性の方が幾度もコンラートの想いを試すような行為を繰り返して、そのうち疲れ果てて別れを持ち出すことが多かったのだ。

『《あなたは私でなくても良いのね》なんて言われてもなぁ…』

 生来淡泊な性質であるせいか、付き合っている彼女が他に男を作ろうが連絡をとってこなくなろうが別段頓着しなかった結果がこれらしい。
 誘われて一緒に過ごしている間はそつなく振る舞って、大切にしてきたつもりだったのだが…何かいけなかったのだろうか。

『確かに…今まではこれほど積極的に、誰かに会いたいと思ったことはないな…』

 恋に限らず、友情にしても親子愛にしてもこういう形での渇望は感じたことはない。
理由はよく分からないが…滅多に持つことがないこの感情は、《あんたは欲望が希薄すぎる》と数少ない友人に指摘される身としては大切にした方が良いような気がする。
 
『どうしよう…』

 仕事の集中力も落ちてきた気がして、携帯に何気ない話題を打ち込んで送信しようとしたその時…丁度メールが届いた。

 有利からだった。

「…っ!」

 慌てて本文を開くと、そこには話題のレジャー施設のチケットがあるから行かないかというお誘いの文章が書かれている。

 嬉しい。

 自分でも可笑しくなるくらいわくわくとした気持ちが込み上げてきて、何度も繰り返してメールを読むと、にやついてしまう口元を隠すために掌で覆った。

 勢いよく返信の文章を書き綴る。
 今週の土曜日か日曜日に必ず時間を作ると約束すると、コンラートはふわふわとした足取りで仕事に戻った。
 そうと決まったら、絶対週末に時間を空けようと思ったのだ。



*  *  *




「ウェラーさん、来てくれてありがとう〜っ!」

 約束の時間の数分前に、渋谷家の前に車を付けると既に有利は荷物を手にして待ち受けていた。
 前回会ったときとはうってかわって、ごく普通の高校生らしい服装…Tシャツにハーフパンツという出で立ちなのだが、これがとてもよく似合っている。
 それに、わふわふと嬉しそうな様子が可愛くてしょうがない。
 
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。プールなんて久し振りだから、楽しみにしてたんだよ」
「でも、お迎えまでしてもらっちゃって悪いなぁ」
「プール代を驕って貰えるんだから、このくらい何てことないよ」

 コンラートが払うと言ったのだが、この日のためにバイトに明け暮れていたらしい有利は、絶対に驕ると言って聞かなかった。どうやら、連絡が少し遅くなったのも確実な財源を確保するまでは…と自重していたらしい。

 相手が年上だから驕って貰って当たり前…とは考えない人種のようで、好感が持てる。

『でも、俺としては色々と驕ってあげたいんだけどね』

 まあ、その辺はプールに行ってから考えよう。
 細いけれどちゃんと筋肉質で引き締まった体躯から見て、結構食べるはずだし。

「ウェラーさん、ラフな服も意外と似合うね」
「そのウェラーさんっていうのやめない?できれば、コンラートって呼んで欲しいな」

 車に乗って暫くすると、有利が何気なく呼びかけてきた言葉に引っかかりを感じてしまう。

「コンラァ…えと、コンラッド…?」
「ああ、そっちの発音をする奴もいるからそれでも良いな」
「んじゃ…コンラッドさん」
「さんもいらないよ。年を感じちゃうからね〜…プールに行く時くらい若返りたいよ。いくら親爺でもね」
「そ…そんなの思ってないしっ!」

 頬を染めて慌てる様子がおかくて、くすくすと笑うと拗ねたように唇が尖る。
 本当に表情豊かな子だ。

「じゃあ…コンラッド?」
「うん、それが良い…ユーリ」
「う…うん!」

 有利は助手席で弾むように頷くと、横目でこちらを伺いながら問いかけてきた。

「あのさ…本当に迷惑じゃなかった?プールとか誘ったりして…」
「嫌だったらこないよ。もう、母の我が儘に付き合ってる訳じゃないからね。これは自由意志だよ」
「ほんと?」
「君に嘘をついたりしないって、約束したからね」
「そっか…」

 ほにほにと嬉しそうに頷くと、有利はぎゅ…っと水泳道具の入ったバッグを抱きしめた。
 きっと、誘うまで順当な内容なのかどうか、本当に誘って良いのかどうか逡巡していたに違いない。
 
『可愛いなあ…』

 この様子だと、有利もまたコンラートに負けず劣らず、義理ではなく本心から会いたいと思っていてくれたのだろう。
 見合いの席で交わした会話は僅かなものだったけれど、もしかして一生ものの付き合いが出来る子なのかも知れない。

『大事にしたいな…』

 無条件に甘える子ではないようだけど、撫で転がすように可愛がりたい衝動がコンラートを突き上げていた。



*  *  *




 夏休み最後の週末とあって、プールは大賑わいだった。
 既に木曜日や金曜日に学校が始まった生徒もいるのだろうが、まだ微かに残る夏休みの余韻を味わおうと、料金の安いエリアは芋の子を洗うような混雑ぶりだ。

『大人エリアのチケットにしといて良かった!』

 こちらは一日の来客数を制限しているので、規定量を超えて殺到するということがないのだ。
 適度な賑わいはあるものの、十分ゆったりと歩いたり泳いだり出来るスペースがあった。

「あ、用意が良いね。もう着込んでたんだ」
「基本基本!」

 着替えエリアに入ると、有利は勢いよくTシャツとハープパンツを脱いで水着姿になった。
 すると…今まで隠されていた肌が露出して、どくんと鼓動が跳ねた。

『意外と…色白なんだな』

 顔や腕はこんがりと焼けていたから勝手に色黒というイメージを持っていたのだが、服の下に隠されていた素肌は透明感のある健康的な白で、胸の桜粒もきれいなピンク色をしている。
 欧米人のコンラートですら淡い鳶色なのに、日本人としては珍しいのではないだろうか?

『………なにか、いけないものを見ているような気がして気恥ずかしいのは俺だけか!?』

 妙に動揺して視線を彷徨わせてしまうのだが、有利の方は別に頓着していないようだ。
 
「コンラッドも早く早く!」

 呼び捨てにしてくれと頼んだのが効を奏したのか、有利はすっかりコンラートに馴染んだ様子だ。
 もう泳ぐ気満々で準備体操もどきの動きを始めている。

「ちょっと待ってててね」

 有利ほどは準備がよろしくなかったコンラートは、個別のブースにはいると手早く着替えた。
 …が、鏡に映った姿を見てちょっと考えてしまう。

『傷…引かれるかな?』

 コンラートは幼少の時分、冒険家の父が存命の間は世界中を回って旅をしていた。その間に野生動物と闘ったり、襲ってきた強盗から逃げる際に崖を滑り降りたせいで全身に傷痕があるのだ。

 機能上は全く問題がないから今まで気にしたことはなかったのだが…そういえば、今まで付き合ったなかには時折、ぎょっとしていた人もいたように思う。

『こんな事を気にするなんて、どうかしてるな…』

 有利はそういうことを気にして、気持ち悪がったりする子ではないだろう…そう言い聞かせてブースから出ると、予想以上の反応が返ってきた。

「コンラッド…凄い、格好良いねぇっ!」
「……え?」

 キラキラと輝く有利の瞳には、眩しいような憧れの色があった。

「凄い良い筋肉…っ!ねえ、胸筋とか腹筋とか、それどうやって鍛えたの!?コツがあるなら教えてっ!」
「いや…そんなに特別なことは…」
「本人は特別じゃないと思っても、何か習慣にしてることとかあるんじゃない?良いな〜…あ、弾力も良いし…こりゃ怪我しにくいしパフォーマンスの高い筋肉だよ〜羨ましい〜っ!」

 無意識に撫でさする手はコンラートよりも小さくて、興味を持って鍛えているのだろうけれど…残念ながら筋肉の付きにくそうな体格は華奢である。

「じゃあ…今度は俺が時々行ってるトレーニングジムに行ってみる?」
「行きたいっ!やったぁ…っ!」

 ぴょんっとうさぎのように跳ねて有利はガッツポーズを取った。

「ええと…ユーリは、傷とかは気にならない?」
「ああ、そういえばいっぱいあるねぇ…!軍隊にいたときについたの?痛くない?」
「もう治ってるから平気だよ。それに…これは父が生きていた頃に旅をしたときの傷だから、思い出でもあるしね」
「そっかぁ…大事なものなんだね?それに、動きに影響しない傷で良かったね!」

 にぱぁ…っと屈託なく笑う有利に、自分で思っていたよりも安心していることに驚いてしまう。
 
『ああ…この子は、やっぱりこういう子なんだ』

 水着姿という、殆ど裸に近い格好なので躊躇してしまうが…そうでなければ抱きしめていたところだ。



*  *  *



  
 二人はロッカーに荷物をしまうと、小銭を入れる袋と鍵だけ手首に付けてプールに入った。ウォータースライダー等もあるが、それは後のお楽しみにして、まずは思いっきり泳ごうと言うことで意見が一致した。

「速いよぉ〜、コンラッド!」

 泳ぎには結構自信があったらしい有利と、競技用にも使えそうなプールで50メートル競泳をしたのだが、結果はコンラートの圧勝であった。

「リーチが違うからね」
「うう…くそぉお〜…俺だってすぐに大きくなるもん!」

 ぷくっと頬を膨らませて前髪を掻き上げると、形の良いおでこが陽光を弾く。
 思わず人差し指の先でそこを突いたら、からかわれたと思ったのかますます頬が膨らむ。

「フグみたい」

 そう言うと、途端にぷしゅ…っと頬がへこむ。
 どうやら無意識の仕草だったらしい。

「ね、もう一回泳ごうよっ!」
「駄目駄目、おじさんはすぐ疲れるからね。次はウォータースライダーに行こう?」
「うーん、じゃあその後でね?」

 コンラートは別に疲れているわけではないのだが(コンラートは学生時代にドーバー海峡も渡った男だ)、有利は全力で泳いで疲れている。野球が大好きでいつもトレーニングしているそうだが、水泳は学校でしかしていないそうだから、急に無理をしない方が良いだろう。

 そう思ってウォータースライダーを選択したのだが…その後、ちょっと間の悪いことが起こった。

 2回ほどコースの違うスライダーを滑走して、きゃあきゃあと歓声をあげる有利の姿を愛でた後、また違うコースに誘おうとしたときだった。

「あら…ウェラーさんじゃない?」
「やーん、指導課長!なんでこんなとこにいるんですかぁ?」
「彼女と来られたの?」

 コンラートの同僚、橋本・沢渡・後藤が女三人連れで遊びに来ていた。
 思い切りの良いマイクロビキニに身を包んでいるだけあって、みんななかなかのスタイルだ。

「いや、こっちの子と一緒だよ」
「あ…こ、こんにちは…」
「やーん、可愛いっ!」

 三人の声が高調音で揃うと、有利は居心地が悪そうに唇を噛んだ。
 その恥じらいを年上のお姉様への引け目と感じたのか、ますます女性陣の目が脂下がる。

「ねえねえ、男二人連れなら私たちと一緒に遊びません?ビーチボール持ってきてるんです!その後で、何か一緒に食べましょうよ!」
「それ良い!ウェラーさん、いっぱい稼いでるんだから、私たちにも奢ってぇ〜!」
「君達…それが目当てだろ?」
「まあまあ、ねー?君もぷりんぷりんのお姉さん達と遊びたいよねー?」

 有無を言わせぬ押しの強さに《遊びたくないです》と言える者はまず居ないだろう。
 淡く頬を染めて、こく…っと頷く有利に橋本が抱きついた。一際豊満な胸元に有利の顔を押しつけて、反応を愉しむように甘い声で囁く。

「素直で良い子ねぇ〜…お姉さん、食っちゃおうかな?」
「肉食系だね…君達」

 何でもないような口ぶりにするのが、至難の業だった。
 無遠慮な動作で有利に触れる橋本も腹立たしいし、その胸元にときめいているらしい有利にも何故か腹が立つ。
 年頃の少年としてはごく当たり前の反応であるはずなのに…。

「そういうウェラーさんって、草食系かと思ってたけど身体はワイルドね?」
「そうそう、折角綺麗な肌してるのに勿体なーい。何でこんなに傷だらけなんですかぁ?」

 橋本の方はわりと褒め言葉として傷を差しているようなのだが、沢渡と後藤は違う感想を持っているようだ。

「折角王子様みたいに綺麗な肌なのに、残念よねー」

 沢渡がコンラートの一際大きな傷…脇腹を抉るようなひきつれに触れると、有利は藻掻くようにして橋本から逃れた。

「残念じゃないよ!」
「え?」
「コンラッドの傷は残念なんかじゃないよ…。か、格好良いし…っ!」

 勢い込んで言ってはみたものの…ちょっと間合いを外してしまったらしく、女性陣は一様にぽかんとしている。
 
「やだ、真面目にとらないでよ」
「君、空気読めない子って言われない?」
 
 沢渡と後藤がそう言うやいなや、コンラートが有利の肩を抱き、橋本ががつんと友人達に拳を入れるのは同時だった。

「ユーリは…俺の傷のことをさっき聞いたばっかりだったから敏感になってたんだよね」

 《庇ってくれてありがとう…》そう囁くと、俯いた有利の目元に微かな涙が浮かぶ。

 頭を抱えて呻いている友人二人に、橋本も追い打ちを掛けた。

「あんた達ねぇ…そんなだと婚期逃すよ?」
「あんたに言われたくないわ!」
「煩い!とにかく、お邪魔みたいだからあっち行くよっ!」
「この仕切屋ーっ!」
「仕切られ好きがやかましいわっ!」

 ぶつぶつ言いながらも二人は橋本についていく。
 喧嘩しながらもそれなりに強固な腐れ縁で繋がっているのか、彼女たちなりに良い間合いがあるのだろう。

「ゴメンね…コンラッド。俺…変なこと言いだしたから、折角あの人達と遊べたのに…邪魔しちゃった…」
「構わないよ。折角ユーリと二人で遊べる貴重な機会だったのに、勝手にあの子達と遊ぶ約束なんかするから…どうやってお仕置きしてやろうかと思ってたくらいだし」
「え…えぇ…っ!?」

 吃驚して目をぱちぱちさせている有利にくすりと微笑みかけると、また別のウォータースライダーを指し示した。

「ね…今日のユーリは、俺だけのものだよ」

 日本語の言い回し的にそれはどうだったのだろうか?
 有利は見事な茹で蛸になっていた。




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