〜先生と俺の日常生活シリーズ〜
「夏の君もぴかぴか★」

有利視点


11.「暑い暑い」「じゃあ離れれば?」

  

 日射病になった有利は病院にも行ってみたが、特に問題はないとのことだった。
 それでも、念のため翌日も安静にしておくようにと申し渡されたのは、当日回復しても翌日になって少し運動したためにまた倒れることがあるからだ。

「折角の夏休みなのにぃ〜」
「まあまあ」

 有利はすっかりしょげかえってしまったが、コンラートも自宅で作業を進めてくれると聞いて機嫌を直した。コンラートは非常勤講師なので、決められた講義の時間以外は学校に行っても給料にはならない。行けば自宅の冷房代が浮くくらいなものなのだ。

『だったら…俺がずっと具合悪かったら、ずっと一緒にいてくれるのかな?』

 ぽこん…とそんな考えまで浮かんできて、ぷるぷると首を振る。
 これでは厄介な粘着性の彼女みたいだ。

『そーだよ。そんなことより、コンラッドに俺がちゃんと好きだって分かって貰わなきゃ!』

 具体的にどうすればいいのか分からないのだが…。
 


*   *   *




 ぴと。

 夕食後、ソファに座ってテレビを見ているコンラートの横に座り、そっと上体を寄せてみた。

『暑い…かな?』

 キス以上の触れあいというのが具体的にどういうものなのか分からないまま、一時的接触を試みてみたのだが…基本的に有利の方が体温が高いから、好意を示すためには、夏場は寧ろ逆効果だろうか?

『じゃあ…離れてみようか?』

 コンラートの顔を見るのも何だか恥ずかしくて、寄り添ったのと同じくらい唐突に身体を離そうとしたのだけれど…するりと絡んできた腕に捕らえられてしまう。
 視線を送れば、微かに頬を染めたコンラートがこちらを見つめていた。

「もう少し…このままで良い?」
「う…うんっ!」

 ぴと…っと引っ付いたまま一緒にテレビを見る。
 画面の中では楽しそうにクイズ番組が展開されているけれど、出演者も出題内容も何一つ頭に入らない。
 ばくばくと心臓が跳ねる音を感じながらひたすら黙っていた。

「熱いね…身体」
「…離れようか?」
「ううん…このまま」

 すり…っと額が肩口に寄せられる。
 体温の低いコンラートの肌はさらりとしていて、タンクトップ姿の有利はくすぐったさと心地よさに目を細める。

 相変わらず胸はドキドキするけれど、こうして触れあっているのはやっぱりとっても気持ちいいし、コンラートもそうなのだと思ったら嬉しくて堪らなかった。

『コンラッドと、ずっと一緒にいられたらいいのに』

 夏休みは何時までも続かないし、そもそも有利の両親はあと一週間もすれば帰ってくる。



 期限付きの天国にいられるのは、あとほんの僅かだ。






* お…お題の趣旨とかなり外れているような気がします〜…。お題が有利の自問自答になってますね。当初は「暑い」って言いながらコンラッドに引っ付いてる有利に第三者が突っ込みを入れる展開にしようと思っていたのですが、その前にコンラッドが告白してしまったので出来ませんでした。むぅ〜。この辺、お題って難しいですね。 *



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