「クリスマスあくま★ハロウィンさんた」−2




 それが、クリスマスの国に暮らすサンタ族と、ハロウィンの国に暮らす魔族です。

 これはサンタ族の子どもと、魔族の青年の間に起こったお話です。

 


 ある年のハロウィンのことです。
 ハロウィンの国のウェラー卿コンラートは、普段とあまり変わらないテンションで街に繰り出しました。

 飄々とした気質のコンラートは《まあ、ゆるゆると楽しもうかな》くらいの心づもりでした。

 コンラートだってこの仕事をやりはじめた頃は一生懸命だったんですけど、どうも今頃は反応が悪いし、コンラートの顔はあまり怖くないみたいで、子どものお母さんは別の意味の《きゃー!》をくれたりするのです。

 ええ、いっときは面白がって奥さん方の耳元に《trick or treat…》なんて素敵な美声で囁いたりはしてたんですけどね。みんな身を捩って《あぁん、もっと…っ!》なんて要求してきて、なかなかお菓子をくれないんですよ。
 やっぱり、もう少し怖がってくれないとやり甲斐がありません。

 ふわふわをお空を飛んで仮装行列の群れを探していますと、どこからか…《わぁあん、わぁあん》という泣き声が聞こえてきました。
 
『おや、なんて可愛い声だろう』

 コンラートはちょっとうきうきしました。
 こんなに良い声で泣く子どもは滅多にいません。これで泣き顔が可愛ければ、更におどかし甲斐があるのですが…どうでしょう?






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