「君と暮らすこの素晴らしき日々」
7.休日はお部屋でゴロゴロ









 ころん…
 ころころ

 春の息吹が感じられる3月末つ方の日曜日、有利とコンラートは久しぶりに窓を開けて、もふもふの布団の上に転がった。今日は気温が4月中旬くらいの陽気だそうで、心なしか吹き込む風にも芳しい花の匂いが混じっているかのようだ。

「良い匂〜い…」
「うん、陽射しも気持ちいいね」

 最初は午前中に干しておいた布団を取り入れて寝室に運ぶつもりで居たのだが、あんまりふかふかで良い匂いがするものだからコンラートがもふっと乗っかって、そこに有利も便乗したのだ。

「ふくふく…」

 もっふりと頬を寄せて瞼を閉じた有利は何とも心地よさそうで、コンラートと腕や脚が絡んでもちっとも頓着しない。同居を始めた最初の頃はちょっとした接触にも緊張したり赤面したりしていたのに、随分と馴染んできたものだ。
 今では、乱れた前髪をさらりと指で梳いてあげると、心地よさそうに目を細める。まるで、顎を撫でられた仔猫みたいだ。

「あ〜…このまま昼寝しちゃいそう」
「それも良いんじゃない?」
「うん…お休みだもんね…」

 既にとろとろと微睡み始めている声は、すっかりお昼寝モードだ。
 指を伸ばすとそれでも指で応じてくれて、ふにふにと指を絡めて互いの感触を確かめ合う。

 ぎゅ…
 きゅう……

 野球によるタコはあるけれど、全体的にコンラートよりもちいさくて華奢な手は、握ると適度な弾力をもって握り返してくれる。ちいさくても、女の子みたいに砕けてしまいそうな脆さはなくて、それがまだ嬉しい。

 ちゅ…っと悪戯なキスを頬にすればくすくすと喉奥で転がすような声がして、《キスして?》というように唇がつんとおねだりの形になる。

『そんな風に誘われたら、いい加減ムラムラしちゃうぞ?』

 なんてことは相変わらず言えなくて、今日も穏やかで心地よいキスを交わす。
 春を迎えて近所のネコは盛んに求愛行動を取っていたけれど、コンラートの春はまだまだ先のようだ。

『こういう春も、勿論楽しいんだけどね?』

 何かに向かって言い訳するみたいに、ちゅっ!と音を立ててキスをした。
  



 

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