「お庭番の観察記録」@
※突発話であり、たぬき缶の他作品との間に関連性はありません。








 はぁ〜い!
 華麗な女装からぴっちぴちお庭番スーツに身を包んだ隠密行動まで何でもござれのグリ江ちゃんよん。

 そんなグリ江もたまに暇なときがあってね?
 こないだも血盟城でぶらぶらしてたらこんなシーンを見かけたわけよ。



*  *  *




『へぇ…良く寝てらぁ…』

 すぴー…くー…
 すぴー…くー…

 愛らしく健やかな寝息を立てながら、魔王陛下は中庭の木陰で芝生に埋まりつつお休み中だった。

 無邪気・無謀・無防備の三無主義者(?)たる魔王陛下は、血盟城内だと常に油断しきっている。
 血盟城以外でも神経を研ぎ澄ましているとは言えないが、血盟城内であれば《誰かが自分を傷つける》なんて可能性は皆無だと思うらしい。

 確かにこの城の中で故意に《傷つけたい》なんて思う奴が居るはずはないんだが、何せ相手は美貌の双黒ちゃんだ。
 愛でたい、撫で転がしたい、嘗め回したいなんて欲望でギラギラしている奴はごまんといる。

 そんなわけで、陛下がころりんと木陰で居眠りなんかしようものなら、蜜に誘われる昆虫よろしくざわざわと臣下の心をざわめかせる要因になる。

『大体なぁ…こんなに可愛らしいお顔で眠ってるってのに、スルー出来る奴なんているのかね?』

 形良い小作りな鼻はちょこんと愛らしく、その下でふわりと開かれた唇は、まるで小さな薔薇の蕾みたいだ。
淡紅色に染まったなめらかな頬に長い睫と梢の影が落ちて、風が吹くたびに揺れる様を見ていると、ついつい手が伸びそうになってしまう…。

『いけね…見てるだけ見てるだけ…』

 陛下に多少は警戒心も持って欲しいのだが…こうして何の懸念も抱かずに眠っていて欲しいとも、やはり思ってしまうのだ。

 陛下が安堵しきって眠っていられるってことが、この国が信じられないくらいしあわせな世界だって事の証明みたいに見えるから…。

 この眠りを護って差し上げたい。

 そんな風に思っているなんて、俺のキャラじゃないから口が裂けても言えっこないけど…。

『あなたはそのまんまでいてくださいね…』

 《ガラにもないこと言ってるなぁ》…って、自分でも思うから突っ込みはナシの方向でよろしくね?






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