第3部 第12話








 《眞魔国に於いて[万国博覧会]なる催しが行われる》…その報は、数ヶ月の後に関係諸国に広められることとなった。

 今のところ、王太子の指導官達を中心に企画を練り、各国の特産や文物を集めたパビリオンを、眞魔国の沿海州を会場として行われるという風に概要が決まっていった。眞魔国としての展示もあるが、その他にも十一貴族の領土単位で区切ってスペース展示を行うことになっている。

 また、話し合いの過程で、博覧会の一部には《舞踏会&武闘会》の要素も加えることになった。十一貴族の中でも、グランツ領やウェラー領では特産や文物については《国外に明示するほど傑出した物がない》との意見が出たのだが、この時、ユーリから《文化系が苦手なら、体育会系の要素も入れちゃえば?》との案が出たのである。

 これまでも国際的な舞踏会、武闘会の大会はあったが、前者については参加国が限定されていて、実際には《国際大会》と呼べるような規模ではなかったし、後者については平等な判定の元に行われているなどと信じる馬鹿はいないというような有様であったから、この案を受けると頬を紅潮させて興奮する者が相次いだ。

『世界一の舞踏家および、武闘家を決定するのか…!』

 長剣の部門では勿論、剣聖と謳われるコンラートや、実戦経験が豊富なルッテンベルク軍人が有力候補であろうが、長槍、レイピア、弓など複数の部門設定があれば、いずれかの部門について、逸材がまだまだ領土内に眠っている可能性がある。指導官自身、選抜試合への日程をどうこなしていくか、真剣に考え始めた者もいる。

 この現象は他国に於いても同様だった。



*  *  * 




「これは、良い機会になるかもしれんな」

 アリスティア公国の君主ポラリス大公は、博覧会の要項に目を通すとニヤリと笑った。傍らで話を聞いていたファリナ公女や、マルティン将軍、双子の息子達もまた楽しそうに頷く。

「ええ、武芸に関しては我が国とてそうそう他国に遅れは取りませんわ。マルティン将軍の二刀流を、世界に見せつける好機ですわね」

 ファリナ公女がそう言うと、マルティン将軍の方は苦笑しながら首を振る。

「いやいや、私はもうそろそろ引退ですよ。それより、息子達を大会に向けて特訓せねばなりませんな」
「はっ!我々も全力を尽くして選抜戦に臨みますっ!!」

 気合い十分な双子は、既に互いを好敵手と認めて意欲を燃え上がらせている。一部門につき代表選手は一名と決められているから、武闘会に参加する前に国内でふるい落とされることになる。戦場の勇と讃えられはしても、試合となれば別問題ということもあり得るから、この二人が代表選手となれるかどうかも定かではない。意想外に、平民の若手が台頭してくることもあり得るのだ。

 そう、今回の選抜に参加資格というものは明記されておらず、その国に在住していて腕に覚えのある者であれば、誰でも選抜者となり得るのだ。

「それにしても、ユーリ殿下が来られてからの魔族というのは随分と印象が変わったものですね」
「そうだな…」

 ファリナ公女の言葉に、しみじみとバルトン大公も頷く。石版に刻まれた記録によって、アリスティア公国が魔族に縁(ゆかり)のある国であることは重々承知していたものの、積極的に国交を求めることがなかった。一つには、シマロンを代表とする強力な人間国家と教会による物理的・精神的な締め付けがあったことも事実だが、やはり大きかったのは魔族に対する《得体が知れない》という思いであった。

 流石に他国の民のように《角が生えていて、仲間内でも同士食いを始める》というところまで誤解していたわけではないが、やはり《人間ではない》というだけで、空恐ろしさを感じていたのも事実だ。

 それを助長するように、魔族は眞魔国から出て対外的な活動を行うことはなく、生活習慣や人となりは謎に包まれていた。

『それがどうだろう?』

 今では、ユーリ達の姿を思い出すと沸き上がってくるのはなんとも言えない慕わしさであり、愛らしかったり凛々しかったりする彼らへの憧れであった。また、アニシナや双黒の大賢者に見られるような、叡智にも感嘆している。

「人間がそうであるように、魔族の全てがあの方々のように尊ぶべき性質の持ち主であると決めつけてはならないのだろうが、どうしても魔族全体に対する印象は高いものになってくるな」
「ええ、こうなると…武芸については勿論のこと、我が国の文化面に於いても、何らか恥ずかしくないものを持っていきたいものですわね」
「そうだな。《交流》と銘打つ以上、文化的財産を与えられているだけでは忸怩たるものを感じよう」

 大公と公女は頷き合うと、早速各方面に手配をして、来年の秋には実施されるであろう万国博覧会に備えることにした。



*  *  * 




 万国博覧会の知らせは、大教主マルコリーニ・ピアザに率いられた教会にも届けられた。まだ完全に狂信的なウィリバルト派を平定したわけではない彼らにとって、大手を振って《よし、参加しよう》とは行かなかったものの、明るい話題に乏しいこの聖都の中で、少しでも自分たちの代表者が上位に食い込めば、失われ掛けた自信を取り戻せるのではないか…そう考えたマルコリーニは、少ない部門で良いから、良い人材を派遣したいと考えていた。

「のう、ソアラ。眞魔国に行ってはみないかね?」
「私が…ですか?」

 涼やかな顔立ちをしたソアラ・オードイルは聖騎士団員であり、ここ近年は指揮官として一軍を率いる身ではあったが、元々は細身の身体に似合わず、高度な技量を持つ剣士であった。勿論、改めて選抜はするが、一年前までは不倶戴天の敵と定めていた魔族の国に行くとなると、実際には直接ユーリ達と交流を果たした聖騎士団員以外には立候補がないのではないかと思われた。

 聖都の民も、今では理屈として魔族を呪われた存在ではないと認識しているものの、やはり生まれたときから染みついた価値観は一朝一夕に解かれるものではない。まずはかの国に対して失礼を働く懸念が無く、優秀な人材を派遣して、その者が丁重に迎えられたという事実からゆっくりと交流を進めていくべきだろう。

『ユーリ殿下は絶対に、他国からの選手に対しても…いや、そうであるからこそ、極めて丁重なもてなしをなさるはずだ。武闘会の判定についても、寧ろ魔族に対して厳しめにつけていかれるだろう』

 この催しは単に、眞魔国の優秀さを世界に喧伝するというような、自己顕示欲に満ちたものなどでは決してないはずだ。大シマロンにはない、《他国から見た自国》という第三者視点が、ユーリやコンラートにはあるのだから。

『眞魔国が真に平和的、文化的国家であることを印象づけるおつもりなのだろう』

 同じく指導的立場に立つ者として、マルコリーニはそのように考えていた。

「分かりました。謹んで、選抜会に臨みましょう」

 恭しく一礼すると、普段は寡黙なソアラ・オードイルの頬に柔らかな笑みが浮かぶ。彼にとっても、あの魔族達と再びまみえることは強い喜びをもたらすのだろう。

『こうして、次代を継ぐ者が交流を深めて行くことが出来れば良い』

 早くそれがこの国の《常識》になれば良いと、マルコリーニは強く祈願した。



*  *  * 




 眞魔国には招請状を送った国々から、続々と快諾の返事を貰っていた。
 その中には直接国交の無かった国家もあり、この機に乗じて眞魔国と友好を結びたいという申し出もあった。ただ、大シマロン南朝等、眞魔国を良く思わない国家からの密偵や、最悪の場合は暗殺者を送り込まれる恐れもあるため、国交がない国家については返答する前に十全な調査をしておくべきだが、それでもこの傾向は歓迎すべきものだろう。出来れば博覧会に乗じて、サミット的な国際会議も執り行いたいところだ。

 ただ、初秋に入る時期になって突然届いた書簡は、ユーリ達を驚愕させることになった。

「え…っ!?」
「聖…砂国…だってっ?」

 聖砂国。それは、眞魔国に残された文献でも詳細を調査することの出来なかった秘められた国家…。大教主マルコリーニ・ピアザから、《凍土の劫火》を所有しているだろうと目されている国である。
 その聖砂国から、一体どのようなツテを辿って万国博覧会について知ったのかは不明だが、唐突に参加申し込みが舞い込んだのである。

「そうなのよ〜。お話には聞いていたけれど、まさか向こうから書簡を送ってくるなんて想像も付かなかったわ!」

 暢気者で知られる現魔王ツェツィーリエでさえ、声の調子を高めて興奮気味に語った。
 珍しく執務室の席に着いている彼女の周りには十一貴族の指導官と村田が居並んでおり、いずれも複雑そうな表情を浮かべている。

 この中の一人ヴォルフラムに、ユーリの視線は自然と向かった。

『《凍土の劫火》の鍵は、ヴォルフなんだよな…』

 今ではすっかりコンラートと馴染んでいる(とはいえ、ツンデレ的な要素は常に漂わせているが)ヴォルフラムに対して、ユーリも愛称で呼びかけるまでに友好を深めていた。講義の際にも熱血教師のけがある彼は全力投球で教えてくるから、ひいひい言いながらではあるが、何とかユーリもついて行っていた。
 そう考えると、以前に比べれば随分と仲良くなっている方だと思うのだが…。コンラートやグウェンダルに比べると、熱し易すぎる性格が、鍵として正しく箱を昇華できるかを危ぶませていた。

 それに、聖砂国側が一体何を考えているかも気になる。タイミング的なことも考えると、残り一つとなった《禁忌の箱》を持つ聖砂国からアプローチがあったことが、《眞魔国に鍵あり》と察知されているのでは…と疑ってしまう。

『まあ、ちょっと考えれば分かりそうなもんだもんな』

 ユーリはともかくとして、他の二つの箱の鍵が三兄弟の内の二人であったことが確定している今、残りの一人であり、火の要素使いであるビーレフェルト家の嫡男が《凍土の劫火》の鍵であることは、おそらく予想しているより多くの国に気取られているに違いない。

『どう出てくるんだろう?』

 ただ、少なくともこの申し出を断る理由はないと思われる。どれほど懸念があったとしても、こちら側から聖砂国に向かう航路が不明である以上、向こうから来てくれるというのは間違いなく朗報である筈だ。

『頼むから、平和的に《凍土の劫火》を昇華させて下さいって話になると良いなぁ…』

 アリスティア公国の《鏡の水底》はその通りであったのだが、果たして聖砂国はどうだろう?
 誰もがもやもやとした仮定を脳裏に浮かべながらも、聖砂国に対する正式な招請状が使者の手に渡された。



*  *  * 




 《謎の法力王国、聖砂国が眞魔国の主催する万国博覧会に参加する》…その報は多くの国を驚かせたが、その最たるものはやはり、小シマロンであったろう。特に、ピンポイントで王とその護衛は驚愕の声を上げていた。

「女王アラゾンまでが、会議に参加すると…!?」
「ええ、そのように伺っております」

 万国博覧会については定期的に、企画概要が詳細化して行くに従って書簡が送られるのだが、その中で決まりつつあるのが《首脳会議》とでも呼ぶべき大規模な会議であった。
 数ヶ月に渡って行われる博覧会の会期中ずっとではないものの、開会式に合わせて一週間程度会議が開催され、これからの世界はどうあるべきか、俯瞰的視点に立った話し合いが設けられる予定だ。その席に、女王アラゾンも参加するのだという。

『母上が…』

 大臣達の前では平静を装っていたサラレギーも、自室でベリエスと二人きりになると、苛立たしげに声の調子を荒ぶらせる。

「ベリエス、お前は聖砂国の王族なのだろう?アラゾンが何を考えているのか、察しは付くのか?」
「おそらくは、《凍土の劫火》に関わることであろうと思われます」
「…っ!」

 さらりと語られた重大事に、さしものサラレギーも心拍を跳ねさせた。

「な…っ!あ、あの国には《凍土の劫火》があるというのか!?何故今まで黙っていた…っ!!」
「聞かれませんでしたので」
「しれっとした顔をして言うなっ!」
「申し訳ありません」

 ベリエスの忠心を疑うわけではないが、この男…《サラレギーのことを思って》と称して、時折酷く重大なことを黙っていることがある。

「《凍土の劫火》の鍵は、フォンビーレフェルト卿ヴォルフラムで間違いないだろう。アラゾンめ…鍵を奪って、箱を開けるつもりか?」
「開けはしないまでも、利用はしたいと思っておられるかも知れませんね」
「開けずに使うことなど出来るのか?」

 これも《聞かれなかったから教えなかった》と言うのだろうか?そんな方法があるのなら、サラレギーとて無茶な実験で大陸を引き裂くこともなかったのに。

「聖砂国王族級の法力遣いの中でも、特に高い力を持つ者が命を賭けなくては出来ませんが…。かつて、箱は死者を蘇らせたことさえあったと言います」
「…なんだいそれ。気持ち悪いな」

 ゾンビの話は小シマロンでも語られている。屍と化した兵士を法力によって、再び戦力として使う技があるのだと。ただ、あまりに呪わしい技である上、他の生ける兵士の気力が萎えてしまうので実用した国家は大陸にもない。もしかすると、大シマロン南朝あたりは起死回生を狙って、その技に興味を示すかも知れないが…。少なくとも、サラレギーはこれ以上小シマロンの国際的評判を下げるわけにはいかなかった。

 しかし、ベリエスの言う《蘇り》はゾンビとは異なるらしい。

「いえ、ゾンビはただ死体を操っているに過ぎません。ですが、《蘇らせる》とはまさに、死者を生者として復活させる方法だと伺っております」
「ふぅん…。でも、どちらにせよ気持ちのいい話じゃないな。生老病死は世の習いだが、権力の強い者ほどそれに逆らいたがる。そんな技があると知れば、世界を手に入れるよりも熱心に求めてくる者達がいるだろうな」
「サラレギー陛下は、生老病死を避けたいとは思われないのですか?」
「死や病はともかく、老は厭だな…。僕…いや、私の美貌が失われるなんて、国家的損失だと思わないかい?」

 ユーリと違って自分の美貌を知り尽くしているサラレギーが心底厭そうに目元の皮膚を引き上げると、ベリエスはくすりと苦笑して跪いた。

「まことにもって、同意にございます」
「全く…恭しくしていれば私が納得すると思っているのか?」
「滅相もございません」

 腹に一物抱えているのだろう男を前にして、サラレギーは軽く溜息をついた。この男だけは、サラレギーの思い通りにはならない。もしかすると、そうであるからこそ傍に置いているのかも知れないが。

「とにかく、調べられるだけ調べておいておくれ。アラゾンが一体何を考えて、眞魔国に来ようとしているのか…。特に、女王と共に持ち込まれる物品の中に、《凍土の劫火》が隠されていないかは注意して見守ってくれ」
「御意」

 ベリエスが頷くのを横目で見ながら、サラレギーは欠伸をして寝床に入った。



*  *  *




「ヴォルフ、よかったらとまってかない?」
「ふむ。まあどうしてもと言うのなら、泊まってやっても良いぞ?」

 正しく(?)ツンデレな発言に対してユーリが笑いを噛み殺しているとも知らず、ヴォルフラムは勿体ぶって頷いて見せた。

「その…コンラートも一緒なのだろうな?」

 前に泊まった時にもコンラートに対してやたらと《あっちに寄れ》だの《無駄にでかすぎる》だのと文句をつけていたものの、一緒の寝台に横たわって眠る内、ぽつらぽつらと正直な心情も明かすようになっていた。宵闇と静寂というものは、長年の秘密も静かに開いていくものなのかもしれない。

 ヴォルフラムの方でもそのように感じているのか、今回は最初からコンラートがいることに期待を掛けているようだ。

「うん、モチロン。あ…なんだったらグウェンもどう?」 
「私がか?」

 冬の訪れを迎える時期になると、十一貴族のパビリオン展示で発表する内容を兼ねて、活発な検討が交わされていた。初期のように王太子と指導官一人で向き合うような形ではなく、今では発表内容が重なる複数の指導官が互いの発表内容を確認してから調整作業を行ったりするので、今日もヴォルフラムとグウェンダルが二人して、騎馬の育成に関する講義をしてくれた。この内容には護衛であるコンラートも深い興味があったし、ウェラー領独特の育成法もあったので、結局三兄弟で熱い議論を重ねていた。

「しかしな。お前達は盛んにお泊まり会とやらをやっているようだが、そもそも同じ血盟城内に住んでいるというのに、何故わざわざ同じ部屋で過ごそうというのだ」

 《狭苦しいだろうに》とグウェンダルはぶつぶつ言っていたが、ユーリは盛んに《とまってってよぉ〜》とおねだりしてくる。

「グウェン、狭苦しいからこそ楽しいのもあるんだよ?」

 コンラートまで笑顔でそんな事を言い出すと、流石に嫌とは言いにくい。

『それにしても…こいつら、いっときに比べると随分と落ち着いたものだな…』

 指導官の結成を祝う宴の夜、不届き者の大臣が引き起こした事件でユーリが陵辱未遂というショッキングな事件が起こった時には、グウェンダルは心底コンラートの心を心配した。
 滅多に誰か特定の個人を欲することのない弟だけに、唯一無二の存在を汚されていたかも知れないという恐れが、彼を病的に追い詰めるのではないかと懸念したのだ。
 だが、その際に思い切って肉体の禁忌を解いたことは、お互いにとってプラスになったようだ。

 関係を持ってからしばらくは、夜の生活に溺れるあまり不摂生をしたユーリが講義中に眠気を催し、指導官達から顰蹙を買ったこともあったが、今では随分と落ち着いてきて、サーディンやクリムヒルデと言った、元々はユーリに含むところのある面々にも一目置かれるまでになっていた。まだ友誼を結ぶところまでは行っていないが、その辺りは仕事として割り切れるようになったのだから、これもまた成長であろう。

 ただ…泊まるとなると、性的な目覚めの遅いヴォルフラムとは違って、コンラートとユーリの仲を具体的に知っているグウェンダルとしては、少々気が引ける部分もある。彼らが二人きりの時にはこっくりと甘い時間を過ごしているのだと思えば、何とも居心地が悪いではないか。

「…どうしてもと言うのなら、私の部屋にお前達が来い」
「え、いいの!?」
「ほう…兄上のお部屋ですか。興味深いですね!」

 しまった。引くかなと思ったのに、寧ろ積極的になられてしまった。これは…墓穴を掘ったのだろうか?少々ギクリとしていることを悟られないよう注意しながら、グウェンダルは厳めしい顔を作った。

「では、夕食が済んで一刻後に来い」
「はい、兄上!」

 尻尾を振らんばかりにして喜んでいるヴォルフラムとユーリ、そっと嬉しそうな貌をしているコンラートを前にして、引っ込みのつかなくなったグウェンダルは、一刻も早く自室に戻って部屋の整理をしようと思った。

 別に、部屋が汚れているわけではない。プライベートを重んじるグウェンダルは侍女にも部屋に入らせないが、元来綺麗好きなので、どんなに忙しくても部屋の掃除を欠かしたことはない。なので、問題があるのは部屋に置いてある代物であった。

『一刻も早く、目に付かないところにしまわねば…っ!』

 廊下の角を曲がると、グウェンダルは一気にダッシュをかけた。



 
 

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