虹越え3−6−1





  

 ご飯食べたか?

 おーっ!

 お風呂入ったか?

 おーっ!

 歯ぁ磨いたか?

 おーっ!

 よぉし、じゃあ行くぞ…8時だよ、全員〜集合ーっ! 

 えんやーこーらっさっとどっこいさったこーらさー

 

 ケーブルテレビで見たドリフターズの《8時だよ全員集合!》のタイトルコールを想起する今日この時…ワインとジュースで乾杯し、二人で作った晩ご飯で腹を満たし…死んだように眠るヨザックの部屋には念の為鍵を掛け(トイレはゲストルームの中にもあるので切羽詰まることはあるまい)…お風呂に入って、しっかり髪も乾かし歯も磨き…現在の時刻は11時を回ったところである。

 ヨザックを寝かせた部屋から出てきたコンラートは、熱い眼差しと息遣いでこう囁きかけてきたのだ。

『今夜は…あなたと床を共にしても良い?ユーリ…』

 時々しか口にしない…敬語ではないその囁きが、甘く耳朶を這う。

『ふきゃーっ!』

 思い出すと顔が真っ赤に染まってしまう。

『あー…ヨザックもいるし、ヴォルフのことだって今日分かったばっかりなのにさ…早速エッチってやっぱどうなのかな…でもなー…やっぱ、してもいいなら、したいし……』

 スプリングの効いた大きなベットにちょこんと正座した有利は、真新しいシーツの上でもぞもぞとおちつかなげにパジャマの裾を弄っていた。

 いつものパジャマなんて、子供っぽすぎたろうか?

 ツェリ様までいかなくても、せめてヴォルフラムみたいなネグリジェを着た方がコンラートは興奮してくれただろうか?

 折角だから、篠原と買ったレース付きの下着を着てみようか?しかし、風呂上がりにブラジャーを着けてるのもおかしいか…。

 髪はぱさついてないだろうか?

 唇はかさついていないだろうか?

 …《すみません、勃ちません……》なんて言われないだろうか?

『コンラッド…本当は、俺に気ぃ使って調子あわせてくれただけとかいうことあるかなぁ?』

 美しく成熟した魔族の女性と数多く浮き名を流してきたらしいコンラート…。女の子の身体になったとはいえ、こんな発達途上の幼い身体などで本当に興奮できるものなんだろうか?

 二人でわいわい言いながら喋ったりしていると全く気にならないのに、下手に一人きりの時間が出来ると嫌な想像ばかりしてしまい、自分に自信が持てない。

 そんな心持ちでドキドキしながら待っていると、扉越しにドライヤーを使う音が聞こえ…いよいよコンラートが出てくる時が近いことを告げてくる。

『うわぁ…来る、来るよぉっ!』 

 ベットの上でぴょこんと跳ねんばかりの勢いで身を捩っていると…かたりと扉が開き、微かにはにかむような笑みを浮かべたコンラートが寝室へと歩を進めてきた。

『き、キターッ!!』

 くりくりとした目を一層見開いて、今度は本当にビョンッとベットの上で弾むと…コンラートがくすくすと零れるような笑みを漏らす。

『うう…せめてもうちょっとこう、落ち着いた誘い方とかしたいよな…』

 ベットの上で垂直に弾む女など、彼は抱いたことなど無いだろう…。

 呆れられたのではないかと思って顔を伏せていると、コンラートはしなやかな動作でベットの縁に腰を下ろした。そして安堵したように大きく息を吐くと、ほわっ…と、柔らかく相好を崩したのだった。

「良かった…此処にいてくれて」
「え?」
「《やっぱりそういうつもりじゃなかった》なんて言われたら耐えられないだろうな…と、風呂に入っている間中不安だったんです…恥ずかしい話ですが…」
「お、俺も!コンラッドは俺が好きだって言ったのに調子合わせてくれただけで、本当は俺にエッチな気持ちなんか持っててくれないんじゃないかって…俺みたいな奴の身体じゃ興奮しないんじゃないかって…待ってる間、不安だった…」 
「俺があなたに興奮しない?」

 くすりと苦笑を漏らすと、コンラートは有利の手を取って自分の股間に導いた。

「…!」
「ほら…あなたのことを考えるだけで、俺はこんなにも切羽詰まってしまうんですよ?今までは理性の力で押さえていたけれど、もう我慢しなくていいのだと分かった途端、この有様です…」

 コンラートの逞しい下肢の間…どんなに親しい仲でも普通は触ることなど考えられないその場所…急所に当たる場所は、熱く猛って硬度と容積を増しつつあった。

『…つか…デカ……』

 自分に欲情してくれているという安堵と同時に、コレを相手にするのかと思うと冷や汗も禁じ得ない…。こんなモノを、自分でも殆ど触ったことのない場所に導き入れることが出来るのだろうか?

 羞恥に手を引っ込めると、その動きに対応するようにしてコンラートが詰め寄り、ちゅっと音を立てて軽いキスが鼻面に落とされる。そして、頬に…額に…瞼に…くすぐったいような…軽い感触のキスが幾つも仕掛けられる。思わずくすくす笑ってしまったら、その唇の隙間から滑り込むようにして…コンラートの舌が絡みついてきた。

 いつの間にか腰を抱き寄せられ、強くコンラートの腹筋を感じつつ…何度も角度を変えて交わされる唇付けは次第に深さと絡み合う度合いを高めていく。

「はぅ……ふ……」

 執拗なまでの唇付けに、唇は紅を掃いたような色合いに染まり、唾液に濡れて艶やかな光沢を呈する。さくらんぼのような質感の下唇に歯を立てられ、ふにりと甘咬みされ…ちろ…と、舌先で歯肉をなぞられると、ぞくりと背筋を疾る甘い響き…。

『あ…これ……』

 夢だとばかり思っていた夜の…そして、昨夜も交わしたキスの感覚。もう、コンラートのキスとして身体が覚えつつあるその感覚に、とろりと意識が混濁していく。

 蕩けきってしまいそうな自分が怖くて、反射的にコンラートの胸を押し返そうとすると、指を捕えられ…その中指の先の肉を甘咬みされたかと思うと…指の背につうっ…と紅い舌が這わされる。

 激しい唇付けによって紅色に染まった舌は煽情的な色彩と熱さで、有利の思考を灼いた。




※ご注意!※



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 ちなみに、Aの内容は豪快に集約すると、「やることをやったコンユがいちゃいちゃしている話」…です。