虹越え2−2−2






「ん…む……?」



 絡み合ったままの舌がむごむごと動き、口角から新たな水流が伝い降りて有利の首筋を濡らす。有利の身体はそんな感覚にすら反応して、びくりと背を震わせた。

 あるいは、眠っている間とはいえ、《キスだけで逝かせる》伝説保持者にいいように嬲られたことで、より敏感になっているのかもしれない。

 さて、コンラートの方はというと、いつもならそんな可愛い反応を見せられれば相手に気付かせぬように笑みの色を複雑化させるところだが、今は…笑っている場合ではなかった。

 背筋をたらりと嫌な汗が伝い…動きが止まる。

 脳内には動揺を示す伝達物質が大量放出されて、時間の感覚が嫌に長く感じられた。

 

 眠っている少年に…



 それも絶対的上位に鎮座する主君に……



 《唇付け》を、した。



 それも、《唇付け》等という表現は不適切ではないかと思われるほど濃厚な…《舌搦め》とか《歯肉責め》とかいった、所謂深い肉体関係にまで及んだときの《性技》に近いそれを与えていたのだ。

『あなたが魘されていたので、落ち着けさせようとしました』

 なんて、語尾にハートを付けて言っただけでは誤魔化しきれない状況下に、コンラートは居た。

 戦場で多勢に囲まれたときよりも凄まじい焦りがコンラートの脳を灼き、結局採った行動は殆ど本能に任せて実施された。

「コンラッド…?」  

 唇付けられていた事は分かっているだろうに、嫌悪とか拒絶といった感情は顕わさず、ぽかんと惚けたような表情で見上げる有利に、コンラートは内心の恐慌状態とは180度趣の異なる…婉然たる微笑みを浮かべた。

 淡い色なので普段は気付きにくいが…意外と濃く、長い睫毛がふわりと影を落とす瞳…艶めいて光る…今は神秘的な深琥珀色を湛えたその瞳が、すぅ…と細められると、瞬くように銀の光彩が煌めく。

 その様に見惚れるように、有利が一層《ぽやん度》を上昇させていると、臆面もない台詞がさらりと紡がれた。



「これは、夢だよ」



 夢オチーっっっっっっっっっっっっ!

 卑怯っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!



 勝利辺りがこの光景を監視していれば、そう絶叫したことであろう(それ以前に止めに来るだろうが)。

「夢……なの?」
「ええ、そうですよ。だって…」

 コンラートは有利の頭と枕の間に手を差し込むと、自分の掌にすっぽうと収まってしまうその頭部を持ち上げた。そして、ついっ…と淫靡な笑みを含ませて有利の唇を再び奪った。

「ん…んっ……っ!」

 先程同様、技巧の限りを尽くして…けれど今度はやや短めに切り上げると、互いの漿液でしとどに濡れた艶かしい朱花を、人差し指がつぅっと…その感触をより感じさせようとでもするかのように、いやにゆっくりと…横になぞっていった。

「ユーリの名付け親は、こんな事しないだろう?」

 常には隠している獣の瞳で殊更婉然と微笑すれば、有利は得心いったとばかりにこくんと頷いた。

「そっかぁ…夢かぁ……」  



 信じるなぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっっ!



 勝利辺りがこの光景を監視していれば(しつこい)、そう絶叫したことだろう。



 仕掛けたコンラート自身が拍子抜けするくらいあっさりぽんと納得した有利は、安心しきってもそもそと布団に顔を埋めた。

『…………まさか、信じるとは……………』

 一か八かの大勝負に出て、結果として目的は果たしたものの…コンラートの胸には微妙なものが去来する。

 そんなに自分は安全牌な男なのだろうか?

 唇付けすることが夢だとあっさり信じられる程に……。

 悄然としつつも有利のパジャマや布団を寝やすいようにきちんと整え、濡れタオルで口元や首筋を清拭してやると、コンラートは病み疲れた老いぼれ犬の風情で自分のベットに潜り込んだ。

 さて、知らないうちにファーストキスを奪われた渋谷有利はというと、とろとろと心地よい眠りの世界に誘われていた。

「良かったぁ…」

 小さくもごもごと口の中で零したその言葉を、平静なコンラートであれば聞き漏らすことはなかったろうに…。

『コンラッドが…眞魔国に引き戻される夢見て、怖かったのに……途中から何か凄く気持ちイイ夢になって…良かったぁ…………』

 有利の満足しきった述懐を聞いていたのは、彼を包む寝具と夜気だけであった。



*  *  *





「ん…あれ?」

 射し込む曙光に瞼の裏の視界が白く染まると、有利はぽやんとした顔のまま半身を起こした。

「ああ、すみませんユーリ。起きてしまいましたか」

 空気の入れ換えをしようとしたのか、ベランダに通じるカーテンを半分ほど引いた状態でコンラートが詫びを入れる。彼はすっかり身支度を整え、こざっぱりとした仕立ての良いブルーグレーのシャツと、黒いストレートパンツを身につけていた。

「んー、あぁいいよぉ…俺も、もう起きるし……」

 ぐうっと身を逸らして伸びをすると、次第に明瞭になってくる脳味噌の中で何かが囁いた。

「んん?」

 小首を傾げた有利は、まず自分の口元や頬を拭ってみた。

 さらりと乾いていて、寝涎の跡もない。

 つぎに、コンラートの様子を伺った。

 目が合うといつもの爽やかな笑顔を返してくれて、陽光を受ける琥珀色の瞳は明るく澄んでおり、疚しい色や…ましてや、夢で見たような淫靡な色合いなど何処にも見受けられない。

 どうやら、やっぱり夢だったらしい。

 それも、夢の相手に指摘されるという、典型的な半覚醒型の夢。

 だからあんなにもリアルだったのだろうか。

 未だに絡め取られた舌が甘く痺れているような感じさえする。

『うっわ、何だろ?ディープキスなんて他人の唾液がぐしゅぐしゅ絡んで気持ち悪いと思ってた筈なのに、気持ちイイとか思っちゃったよ……まぁ…でも、それも夢だからだよなぁ?確か、セックスだってエロ漫画やエロ小説みたいに我を忘れて没頭するなんて事はなくて、何処か頭の中に冷静な部分があるもんだってモテ系男子が言ってたもんな。キスだけであんなにメロメロになっちゃうなんてことないよな?』

 それにしても淫夢に名付け親を登場させるとは、自分の脳は一体どうしたというのだろう?

『何だろ…コンラッドって時々エロ発言あるからなぁ…グリ江ちゃんなんか《夜の帝王》とか呼んでたし…それであんな夢見ちゃったのかな?でも、何か申し訳ない…』

 いかがわしい夢を払いのけるように頭を一振りするが、起きようと身じろいだ有利は突然…自分の異常に気付いた。

『あれ?』

 股間が、ひんやりと濡れているような気がする。

『え…嘘っ!俺、まさか……』

 顔色がさぁ…っと蒼白になる。

『こ、この年で……おねしょ!?』

 しかし慌てて布団を探ると、幸い股間周辺の布地のどこにも濡れた感触はない。人の家の寝具に世界地図を描いて干されるという辱めだけは免れたらしい。

 だがしかし、少量ながら確かに何らかの液体で自分のトランクスは濡れていた。

 有利は転げるようにして布団から飛び出すと一目散にトイレに駆け込み、ずり降ろした下着を確認した。

『あれ?このぬるっとした感じは……噂に聞くところの……』

 《精液》、というものではなかろうか。

 位置的にも、丁度自分が勃起して射出すればつくであろう位置に染みはある。

『これが噂の夢精ってやつか?』

 勃起まではいったことがあるが、何時も何らかの邪魔が入って到達できなかった射精というやつを、やってしまったらしい…



 よりにもよって、コンラッドの家で



 よりにもよって、コンラッドをオカズにして…

 

『うおわぁぁぁぁぁぁぁあっっっっっっっっっっっっっ!』



 羞恥でのたうちそうになってしまう。

『うはぁぁぁんっ!恨むぜ眞王!何も初体験がこんな日じゃなくたっていいじゃん!フツーにアイドルとか可愛い目の女の子に欲情したときに小学校か中学校で体験してりゃ、こんな辱めうけなかったのにぃぃぃぃぃっ!』

 それが初体験にならないだけで、男にキスされた夢で射精してしまった事実は覆されないが、敢えてそこまで突っ込みたくはない渋谷有利であった。

『うっほう……まぁ……眞王のせいで歪んだ思春期の性生活は送っちゃったわけだけど、問題はこれからの物理的なアレだよ!どーすんの俺!?替えのパンツこれだけじゃん?昨日穿いたパンツをまた穿くのもなぁ……』

 それでも精液で濡れたものを穿いているよりはましかとトイレからそろっと出てくるが、足取りはどうしてもガニ股になってしまうし、爽やかなコンラートの笑みなど見せられては後ろめたさやら羞恥心やらでどうしても頬が上気してしまう。

 思わず顔を逸らしてこそこそと自分の荷物を探るが、昨日脱いでぐしゃっとビニール袋に入れていた筈の服一式がない。焦りに焦って鞄の中身を全部あけだが、出てくるのは野球道具ばかりだ。

「ユーリ、どうしました?」
「あ…あのな、コンラッド…俺が昨日脱いだ服って…知らない?」
「ああ、もう乾いたと思いますよ。昨日の晩に洗濯したものを風呂乾燥にかけてたんです。取ってきましょか?」
「洗ってくれたの?サンキュ!自分で取ってくるよっっ!」

 弾むようにして喜びを表現すると、有利はすぐさま風呂場に向かい、気持ちよく乾いた自分のトランクスに思わず顔を埋めてしまった。他人には見せられない姿である。

 いそいそとパンツを換えると汚れたパンツはささっと洗い、タオルに厳重に巻いて荷物の中に隠した。これで証拠隠滅である。

 満足してリビングに向かうと、コンラートが良い匂いのするアッサム系の紅茶を煎れてくれたところだった。テーブルの上には簡素だが、食欲を誘う香りと暖かな雰囲気が満ちていて、なんだか…

『新婚サンみたい……』

 などと連想してしまった有利は、ぶんぶんと勢いよく顔を振った。

『アホか俺〜っっ!それでなくてもコンラッドの顔まともに見れそうにないのにっ!』

 コンラッドと二人で食事を採るなど、この1ヶ月の中では再々あったことで、以前はそんな事など思いも浮かばなかったのに…。

「ユーリ、どうしました?顔が赤いですよ」
「な…何でもない!わー、食事旨そう!頂きまーすっっ!」

 不必要なほど陽気に振る舞いつつ席に着くと、慣れた動作でコンラートが配膳をしてくれる。コンラートはブルーグレーのシャツの上にブラウンのエプロンをしていて、傷だらけの大きな手を器用に動かしながらサラダをよそってくれるのだが、それが何故だか似合っている。エプロンの形がシンプルながら洒落たデザインをしているせいか、着ている本人が均整の取れた体躯をしているせいか、家庭的な動作がちっとも女々しくならなくて…寧ろ格好イイとすら思ってしまって…ついつい見惚れてしまう。

「ユーリ、どうぞ」
「うん…あ、ありがとう……」

 差し出された小皿を受け取りつつ礼を言うと、コンラートが何故だか安堵したような…甘やかな笑みを浮かべるものだから、直視した有利はまたしても心拍動を速めてしまう。『うう…体に悪いよこのときめき……』

 こんな体験が続いたら何時か不整脈になるぞ…と、有利は内心ひとりごちていたのだが、それは普段彼を取り巻く人々が彼に対して抱いている感想と同一であった。 

 さて、想い人を精神性心疲労に陥れているコンラートはというと、きゅらきゅらとした爽やかな笑みを浮かべつつ……内心、有利が何か言い出さないかと怯えまくっていたのであった。

 昨夜咄嗟に誤魔化したものの、時間がたてばたつほど浮かんでくる思いがある。

『ひょっとして、あのまま思いを告げてしまっても良かったんじゃないだろうか?』

 夢だと思っていたにせよ、有利の性格から考えると唇付けを男と交わしてのに気付いた途端大暴れしそうなものではないだろうか?だが、彼は吃驚とはしていたものの、相手をコンラートと認めた後も不思議そうな顔はしていたが、少なくとも触れあうことに対する生理的嫌悪感といったものは感じていないようだった。

『しかし…今更《アレは夢ではありません》なんて言うのも実に間抜けだし…』

 それ以前に、激しく卑怯な振る舞いであった。

 感極まったからといって相手の許しもなく唇付けをしただけでなく、発覚するや、あろう事か夢オチに仕立ててしまった軟弱ぶりは、我ながら《ルッテンベルグの獅子》などという通り名を降ろしたくなるくらい情けない……。

 思わず零れそうになる溜息を、口に含んだ紅茶の中に融かしてしまう。

「あの…な、コンラッド?」
「なんですか?」 

 極めて平静な…明るい声が出てくるのに我ながら感心する。自分の感情をコントロール出来るよう、常日頃から訓練してきた賜物がこんなところで発揮されようとは思いも寄らなかった…。

「コンラッドは…幾つぐらいの時に初めてキスした?」

 ぴし…っ

 コンラッドの握っていたカップの柄に、小さく罅(ヒビ)が入った。

 あからさまにタイムリーなその話題に…他意は含まれているのかいないのか…。

 何気なく有利の瞳を見やるが、コンラートを責めたり疑ったりしているような風はない。寧ろ、なんだか困ったような顔をしている。

「俺は…十二歳くらいでしたね」
「うぉ!おませサンだなー。つか、魔族の十二歳って人間よりちっちゃい子扱いなんじゃないの?」
「俺は混血ですから十二歳くらいまでは人間と同じように成長してましたよ。ただ、ファーストキスはしたというよりされた方かな?父と旅をしているときに酔った娼婦にいきなり濃厚なのをお見舞いされまして……」

 言いかけてはたと言い淀む。

 『された』
 『濃厚』
 『いきなり』

 何を自分に不利なキーワードを連発しているのかと、自分で自分に突っ込みを入れてやりたい。

 案の定、何か思うところのあるらしい有利が仄かに頬を染めて俯いてしまった。 

「そ…そっかあ……年上の…経験豊富な人にやられちゃったんだ……で、でも…娼婦ってくらいだし…その、気持ちよかった?」 
「いえ、何しろ酔った女性相手ですから酒臭いわ、どろっとした感触の舌が口の中に入ってくるわで、げぇげぇ戻してしまいましたよ」
「へぇ…意外。コンラッドにもそんなしょっぱい思い出があるんだ!」
「誰でも最初はそんなものじゃないですかね?自分から初めてキスをしたときだって、向こうの歯と激突してしまって結構な衝撃でしたし」
「あ、やっぱそういうもんなんだ。そうだよなぁ、キスが気持ちがいいって嘘なんだな!だって舌とか唾液とか絡むんだもんなー。蕩けちゃうくらい気持ちいいって感じるのって妄想とか夢の中だけの話だよね」



『それって何の夢の話デスカっ?』



 聞きたい。
 猛烈に聞きたい。

 そんなに気持ちよかった夢とは昨夜見た夢ですか!?と、問いただしたいところだが、勿論そんな真似が出来るわけもなく、爽やかお兄さん系の笑みを張り付けさせたまま固まりそうになる。

「コンラッドもキスで気持ちよすぎてトロトロになったことなんてないだろ?」
「……なったことはないですよ」

 嘘ではない。

 ただ、相手をトロトロにしたことなら何度かある。それに、昨夜はトロトロまでは行かなくても、トロくらいには気持ちよく耽溺してしまった。

「んじゃさ、朝からこんな話題どうかとは思うんだけど…ちょっと下ネタ繋がりで聞いてもいいかな?」
「ええ、良いですよ」

 物わかりの良いお兄さん(いや、年はおじいさん並だが)に快い返事を貰うと、ほっと安堵して有利は爆弾発言をした。

「コンラッドは…夢で男にキスされて射精したことある?」

『えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっっっっっつ!?』

 内心の絶叫が隠しきれなかったのか、微かに寄せた眉に気付くと有利は俯いてしまった。

「ない…よな、そんなの……」

 しょんぼりと肩を落とした様子は捨てられた子猫のようで、今すぐ抱きしめてぐりぐりしてやりたくなるが、自分の自制心がそれ以上の行為を防御してくれるという確証がない。何しろ、昨夜から自分自身に懐疑的にならざるを得ない行動を連発しているのだ。

「あのさ、俺…創主を倒すまでは眞王に邪魔されてたんだけど、地球に隔離されてからもそんな気分にならなくて、いままで…所謂イクっていう体験、したことなかったんだ…。それがさ、その…何か凄いキスが巧い奴に口の中がぐちゃぐちゃになるくらいスッゲー激しいのをやられた夢を見て…朝、そのぉ…例のモノっぽいのがパンツについてたんだ……」

 有利はいたたまれなくなって、右手の甲を口元に押しつけて泣きそうな顔をした。

「俺…俺、変なのかな?どっか悪いのかな?…眞王に何度も夢精とかマスかくの邪魔されて、そういうときにはお袋とか男の顔が出てくるような体質になっちゃったのかな?」

『変で悪いのは全て俺ですーーーーーっっっっっっつ!』 

 平身低頭して謝り倒したい衝動に駆られる。

 しかし今一歩のところで踏みとどまると、頑強に張り付いている笑顔を無駄に強固な意志力で保持し、必至の抵抗を見せた。

「きっと、そんなことないですよユーリ」
「コンラッド…」

 上目遣いに見上げてくる眼差しの凶悪なまでの愛らしさに心臓を撃ち抜かれながら、コンラートは続けた。

「射精をしていたのに気付いたのは朝なんでしょう?その夢を見ている間には気付かなかったのなら、必ずしもその夢のせいで出してしまったわけではないかもしれませんよ?」「そうかなぁ…」
「多分、その夢の印象が強すぎたんでよく覚えているだけで、その後に普通に女性相手の淫夢をみたのかもしれないし…それに、夢など見なくても生理的な反応で出てしまうこともあるんですよ?」
「本当?」
「ええ、本当ですよ」

 頷いてやると、有利の表情も少し明るくなる。

「そっかぁ…」

 うんうんと小さく何度も頷きを繰り返しながら得心に至ると、ほっとした表情で少し冷めてしまったトーストにかじりつく。

「ありがとうな、コンラッド。やっぱコンラッドに言ってみて良かったぁー!友達にはとても言えないし、勝利とか村田もなんか馬鹿にしそうなんだもん。俺、こういうこと本当、発展途上だからさ、またコンラッドが引くようなこと言い出すかもしれないけど、呆れたりせずに聞いてくれる?」
「勿論ですよユーリ」

 罪滅ぼしの意味でも、どうか聞かせて欲しいところである。

 有利の照れくさそうな笑い声と、コンラートの響きだけは爽やかな笑い声が、明るいリビングに暫く木霊していた…。





 結局、渋谷有利が初めてのキスと射精が一体どういう状況で行われたかを知るのは、暫く後の話になる。    






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