「食べて欲しいの」

バージョンB














 とてもとても…長い時間が経過したように感じられた。

 

『うぅ〜…うー…。コンラッド…何か言ってくれよぅ……っ!』 

 何とも恥ずかしいという自覚はある。物凄くある。

 恋人の前にあられもない姿を晒している有利としては、早く何らかの反応が欲しい。

 コンラートの様子を伺うと、取りあえず驚いてはいるようだが、瞳に軽蔑や嫌悪の影は見えなくて少しだけ安心する。

 ヨザックに騙されて、コンラートが苦手なことをしてしまったわけではないようだ。

 だが…好みにストライクというわけではないのではないだろうか?

 少ーし微妙な笑顔を浮かべたコンラートが、じぃ…っとこちらを見詰めている。

 細めだけれど精悍な顎に長い指が掛かり、軽く小首を傾げて微笑むコンラートは見惚れてしまうくらい綺麗で、余計に居たたまれなくなってしまう。

『やっぱ…幾らコンラッドのギャグがオッサン臭いからって、エッチまでオヤジ系ってのは大嘘なんじゃあ…』

 こんな端正な面差しをした人が、ねちっこく脂っこいエロを追求しているようには思えないのだ。

『どうしよう…』

 泣きそうになって俯いてしまった有利をどう思ったのか、コンラートがゆっくりと歩み寄ってきた。

「ユーリ…」

 コンラートはそのままゆったりとベットに腰掛け、やさしく有利の頬に手を伸ばしてきた。

「ありがとう、ユーリ。俺のために、なにをしたら喜ぶか調べてくれたんでしょう?」
「う…うんっ!」

 やさしい声だ。

 そして、とても嬉しそうな声だ。

 それだけでベットの上で弾んでしまうほど嬉しくて、有利は頬に沿わされた手にすりすりと懐いていった。

「もしかして、ヨザ情報?」
「うん…ごめんな。本当は自分で考えた方が良かったんだろうけど、ちょっとズルしちゃったんだ。コンラッド…俺とのエッチの時って、凄く我慢してくれてるような気がするからさ…。いつまでも経験不足とか言ってらんないし、頑張んなきゃって思って…」
「でも…肩に力を入れて頑張るなんて、勿体ないような気もしませんか?」
「え…?」

 予想外のことを言われてね虚を突かれたようにまん丸お目々になってしまった。

「俺は、ユーリとこうして寄り添っているだけでもとても楽しいですよ?特別な何かをしたり、変わった恰好なんてしなくても、あなたはあなたのままでとても素敵ですからね」
「…………あの…も、もしかして…コンラッド、こういう恰好…別に好きとかじゃ…ない?」

 やっぱりやっぱりやっぱり…っ!

 かぁぁ…っと頬に血が上って今すぐ逃げ出したくなるが、コンラートの手はやわらかく…けれど、決して逃げられないように有利を拘束してくる。

 この辺りは流石ルッテンベルクの獅子…抜かりはないようだ。

「とっても可愛いし、ユーリの気持ちはとても嬉しかったよ。甘い香りがして、ユーリまでデコレーションの一部みたいで素敵だ」
「そ…う?」
「ただね?俺は、あなたが好きなんであって、あなたのオプションが好きなわけではないんです。ですから…どんなに可愛いと思っても、そのせいであなたが少しでも無理をしたり、苦しい思いをするのなら辛いんです。ね…待ってる間、恥ずかしかったでしょう?」
「………恥ずかしかった」

 優しく髪を梳いて貰いながら、その心地よさにうっとりと目を細めて有利はコンラートの胸に頭を凭れさせた。

『ああ…やっぱ、コンラッドだぁ…』

 有利に無理をさせるのではなくて、自然体のままの有利をちゃんと見てくれる人。

 ちょっと過保護なときもあるけれど…こういうところはやはり、堪らなく好きだと思う。

「俺…お子ちゃまだと思われてるから、コンラッドが無理して我慢してくれてるんだと思ってた…」
「そんな無理のある関係が長く続くはずがないでしょう?俺はあなたが好きなんです。そのままのあなたが一番魅力的で、綺麗だ……」
「もー…コンラッドってば…」

 恥ずかしいけれど、それは先程までの居たたまれないような恥ずかしさではなくて、胸の中がほこほこするようなあたたかみを帯びていた。



*  *  *




 有利の下肢の付け根を隠すクリームとスポンジ、そしてフルーツの塊が、震えながら《食べて…》と誘っている。

 見るからに甘そうなそれに多少気圧されつつも唇を寄せてみれば…予想外にさっぱりした口当たりに眉をぴくりと跳ねる。

 クリームがとてもフレッシュで、果実のような甘さがある。丁度良い酸味とのバランスに、思わずぱくぱくと二、三口続けざまに食べた。

 どうやら、コンラートの好みを考慮して、かなりさっぱりとした仕上がりにしてくれたらしい。

 しかし、勢いよくぱくつくコンラートに対して有利はどこか及び腰になってきた。

「…っ」

 まさに《食べて》という目的でこのような恰好をしたにもかかわらず、いざ直接秘められた部分に《食べる》という目的を持った咀嚼器官が迫ってくると、生理的な恐怖を覚えてしまうらしい。微かに腰が引けて、両手がいやいやをするようにコンラートの頭髪へと指を絡めてきた。

「美味しい…もっと食べさせて?」

 ぺろりと口元のクリームを嘗めとりながら上目づかいにおねだりすると、ぞくりと背筋を震わせた有利が喘ぐように訴えてきた。

「うん…でも……あの…。ちょっと、怖い……」
「間違えて囓ったりすると思う?ユーリの大事なトコ…」
「あんたに限ってそんなことはないと思うんだけど…。でも…その、恥ずかしいのもあるし」

 そういえば、有利とこのような行為に及ぶ際には極力明かりは消していた。

 《見ないで…》と、真っ赤になって有利が恥ずかしがるので、最低限の明かりしかつけてはいなかったのだ。

 対して、今はかなりの光量に照らし出されており、ケーキを失ったその場所には、愛らしい花茎がお目見えすることだろう。

「そうだね、こんなに明るいところで有利を見るのは初めてだっけ?ユーリは恥ずかしがり屋さんだからね…」
「うん。だから…ね?そろそろお風呂行かない?」

『まずいな…』

 有利と良い雰囲気になったので一瞬忘れかけていたが…この部屋には、おそらくヨザックが居るはずだ。

 有利とのセックスを見られること自体勿体ない話だが、今後、何かの拍子に有利の痴態について奴が口にしたりすれば…随分とショックを受けてしまうに違いない。

 このまま風呂に入って、《改めて後日しましょう》ということも物理的には可能だが、そうなるとこんなに頑張ったにもかかわらず、男体盛り自体は不興であったのだと思って有利が落ち込んでしまうだろう。

 このままセックスを続けて、有利に充実感・達成感を覚えて貰うのは必須事項だ。

 …となると、何とかして決定的なところまで愛撫が進む前に、あの男をおびき出さなくてはなるまい。

 コンラートはつぃ…っと琥珀色の瞳を細めると、少し拗ねたような声を出して有利に躙(にじ)り寄った。

「でも、折角俺のためにこんなに美味しいケーキを用意してくれたのに、流してしまうなんて勿体ないですよ?食べ物を粗末にしてはならないでしょう?」
「う…た、確かに……」

 自分でこんなプレイを仕掛けてきたせいもあり、《粗末》という言葉を出されては有利も弱いようだ。

「じゃあ…良い?」

 大きく舌を出して、ぐぃ…っと一際強くケーキを舐め上げれば、スポンジを押し上げるようにして屹立し始めた花茎の一部がざらりと舐め上げられる。

「……ぁっ!」

 びくんっと背筋を弓なりに逸らす有利は、予想できないタイミングで訪れる愛撫に普段よりも更に敏感な反応を見せる。思わず漏れた…という感じの甘やかな啼き声とも相まって、どうやら有利が普段よりもこの状況に興奮しているらしいことが分かった。

 その証拠に、ケーキの間だから見え隠れしている花茎の先端からは、とろりとした蜜がぷくりと湧いてきているようだ。

 つろ…と舌先で鈴口を突けば、濃い桜色をしたそこはびくりと震えて…喜びの涙でも零すみたいにとろとろと雫を溢れさせた。

「可愛い…クリームを纏って、とっても美味しそうだし」
「や…み、見ないでったら…っ!」

 視線に犯されることで泡立つ肌は、びくびくと小刻みに震えながら上気して…《見ないで》という言葉があまりにも裏腹なものであることを教えてしまっている。

 有利は…この状況に、明らかに感じているのだ。

「折角ですから、ユーリの可愛いところを余すところなく見たいな」

 興奮はコンラートにも伝播して、ぞくぞくするような背徳感に熱が籠もっていく。

 《厭》と口にしながら、その実…このいやらしいプレイに耽溺し始めている少年に、隠された素養があることを教えてやりたくて堪らない…。

『ユーリ…あなたは恥ずかしい場所をこんなにとろとろに濡らしていて…それでも厭だなんて言うんですか?』

 くすくすと笑いながらからかってやりたいが、そんな下世話な真似はできない。

 もっと巧妙に…絡め手で有利自身に自覚させるのだ。

 もしかすると、今夜を契機に二人の夜が一層深まる可能性があるのだから…。

「でも…」
「本当に厭なら言って下さい。ちゃんと止めてあげますから…」
「…っ!」

 有利は何か思うように瞳を開いたが、こく…と小さく頷くと、ダークブラウンの頭髪に絡めた指を少し緩めた。

 有利にも分かっているのだ。

 コンラートに、《厭ではない》と気付かれてしまっていることに…。

「ん…んん……っ」



 ぴちゅ…

 くち……

 ぺちゅ…っ 



 わざと大きく音を立てて舐め上げ…吸い上げれば、堪えきれない嬌声が甘く寝室を満たしていく。手は相変わらずコンラートの頭髪を捉え、限界に近くなると無意識に…自分のそれへと押しつけるような動きまでしてしまう。

『欲しいんですね?決定的な刺激が』

 分かってはいるのだが、まだヨザックの気配が掴めない。

 余程巧妙に隠れているのか…もっと、奴を興奮させなくては。

 思わず、身を乗り出してしまうほど魅惑的に。けれど…決して頂点を迎える吐精は見られないように…。

 結果として、有利は生まれて初めていきたくてもいけないという意地悪な愛撫を一身に受け、身悶えすることになってしまう。

「も…だ、駄目ぇ…。で、でちゃう…よ…っ!」

 手で扱いたり口で愛撫したことはこれまでもあるのだが、《精液は排泄物》という意識の強い有利は、コンラートの口の中で到達することを激しく嫌がった。だが今日のそれは些か趣が違うようだ。

 どうやら、感じすぎておかしくなってしまいそうらしい。

『いままでは、ここまで煽ることはなかったからな…』

 限界近くまで追いつめられた有利は全身から香り立つような艶を放ちはじめ、時折驚くほど淫らな仕草で唇を嘗めるのだった。

 《欲しい》…そう告げるように。

「ユーリ…頭を押さえないで頂けますか?」

「無理…だよ。だって…だって……ぇっ!」

 びくびくと下腹を引きつらせながら、健気なくらい抵抗を示す有利の首で、汗ばみ始めたリボンがしゃらしゃらと揺れている。

 そのリボンに目を遣ったコンラートは、しゅる…っとその一端を解くと、器用に有利の手首を後ろ手に縛ってしまった。

「な…なにしてっ!」
「少しの間だけ、縛っちゃいましょう」
「やだやだ!コン…ゃっ!」

 否定の言葉がそれ以上続かないように、指に取ったクリームで滑らせるようにして脇腹を掌で伝い…触れられても居ないのに硬く痼り始めた胸の尖りにくりゅりとクリームを塗りたくる。

 後ろ手に縛ったリボンに拘束されて、抵抗できないそこにゆっくりと舌を這わせれば、いつになく感度を増したそこはすぐにこりこりとした感触を呈してきた。

「この果物…種があるね。硬くて…甘い」
「ゃ…やっ!」

 くちくちと尖りを弄る間にも、クリームを載せた指が双丘の谷間を辿り、ぐりゅ…と奥まった蕾へとぬめりを与えていく。

『凄い…熱くて、ぬるぬるしている…』

 普段はオイルを垂らさなければ指先を入れるのも一苦労だというのに、前戯が長かったせいか蕩けだしたクリームのせいなのか、綻びはじめた蕾はちゅるりと指を受け入れて、恥ずかしい水音をたててしまう。

 ぐちゅ…

 じゅ…ぐち……

「ぁん…あ、ゃあ…っ!」

 ビクビクと跳ねる身体は二本…三本と男の指を貪り、淫らな肉襞をひくつかせる。

「ユーリの下のお口は、随分と食いしん坊だね。俺の指、美味しい?」
「ゃん…馬鹿…っ!」

 がじっと肩口に噛みつかれて苦笑する。コンラートはまだ襟元ひとつ緩めては居ないのだ。そのまま噛みついたりすれば歯を痛めてしまう。

「囓ったりしては駄目ですよ。今日は、あなたが俺に食べられてくれるのでしょう?」
「ん…もぉ…ぉっ…!あんた…言い方がオッサン…っ!」

 《確かに》と苦笑してしまう。

 そして、思わず没頭しかけた意識を辺りに再び向けてみれば…ベットからほど近い場所に《気配》を感じた。

「……っ!」

 背後に閃かせた視線が、一瞬…凝固しかける。

『おま…よ、ヨザ…っ!馬鹿かお前は…っ!!』

 やはり、ヨザックはアニシナの道具を使っているらしい。



 何故か…全裸で。



 どうして分かったのかと言えば…彼の一部が濡れたせいで、見えてしまったのだ。

 何かと問われれば、《ナニ》と答えるしかない《アレ》である。

 こんな所まで無駄に逞しい逸物が、てらてらと雫をこぼして地上1メートル程度の所にゆらゆらしているのだ………。

『なんちゅー見苦しい……』

 思わずげんなりとしてしまうが、これで距離感も掴めた。

 あとは彼がこのまま気づかず、接近してくるのを待つばかりである。      

「ユーリ…ね、食べさせて?」
「…ゃああんっ!」

 ぐちぐちと前立腺を擦り上げながら花茎を嬲れば、甘い香りを放つそこから苦みを帯びた雫がほろりと溢れ出し、いつしか白い液体までが混ざってしまう。

 限界の近い有利はいつの間にか誘うように腰を突き上げ、指と舌とに嬲られることを狂喜するように身を捩っていた。

 淫靡な艶に、酔ってしまいそうだ。

 

 ごきゅり…



 息が掛かるほどの近くで、唾を飲む音が響く。

 奴もまた、魔王陛下の痴態に煽られ、我を忘れているのだ。

『勿体なくもこの艶やかなお姿を見せてやるのだ。ちょっと手元が狂っても許せよ?』

 にやりと嘲笑を浮かべると、花茎に絡めていた手が電光石火の素早さで剣を掴み、背後の空間を裂く。

 過たず切り裂かれた髪と陰毛とが、ばさりと絨毯に舞う。

 鮮やかなオレンジ色は、間違えようもないヨザックの一部であった。

 残念ながら(?)隆々と勃起していた陰茎は切り損ねたらしい。  



「………っっ!!!」



 声にならない叫びが空間に満ちたかと思うと、足音をたてない限界値で疾走していく気配がある。

 ヨザックは逃げおおせる気で居るのだろうか?

『甘いな…』

 にやりと意地の悪い笑みが深まっていく。



*  *  *




「コンラッド…いま、音しなかった?」
「風の音ですよ。それに…いまは、俺に集中して欲しいな」

『自分こそ、ちょっと余所見したくせに!』

 ぷくぅっと頬が膨らむが、拗ねた子犬のような表情でコンラートがじゃれついてくるものだから、素肌に感じる短髪が擽ったくて歓声を上げてしまう。

「えへへ、こそばい…」
「じゃあ、ここは?」
「わひゃ、あはは…やめてーっ!」

 最初は恥ずかしいばっかりだったが、こんな風にじゃれ合っているとやけに楽しくて、ついつい《たまにはこんなのもイイナー》なんて思ってしまう。

『イカンイカン…!変態道の入り口に踏み込みかけてるよ!』

 我に返ってふるるっと髪を揺らすが、そんな首筋を痛いくらい甘噛みされれば切ないような快感に背筋がびぃん…っと張りつめる。

 先程まで掠めるように…どこか、一番感じやすい所は避けるようにして煽っていた指も、《まさにそこ!》という場所を狙って擦り上げてくるようになると、子どもみたいに笑っていた声に、再びえも言えぬ色香が纏い付いてしまうのだった。

「んん…く…ぁあん……っ」

 鼻に掛かった甘い声…。

 こんな声を、自分が出すようになるなんて一年前には思いつきもしなかったのに…。

 恥ずかしいけれど、ちらりと視線を送った先で満足そうに微笑む男が愛おしくて、半ば誘うように陰部を晒してみせる自分が居る。

『もっと見て…』
『もっと…俺の恥ずかしいところ、弄って…』

 無意識の誘惑を声に出すことはないけれど、意識を飛ばし始めた有利の痴態は、まさに身体全てを使って誘いかけるようになる。

「ぁあん…っ!!」

 クリームでしとどに濡らした花茎を一際強く擦り上げられた時、ここまで焦らされたせいもあるだろう…。勢いよく迸ったミルクは、乳白色の彩りを帯びて二人の恋人の肢体へと飛び散ったのだった。

 びくん…びくん…と、震えながら何度かに分けて放出される迸り…。

 暫くしても意地汚くじくじくと白濁を滲ませるそこを、きゅう…っとコンラートに吸い上げられれば、尿道までのが犯されていくようだった。

「はぁ……」

 あまりの心地よさに、本能による衝動を最高中枢としてしまう有利は、《こっちがまだだよ》と言いたげに…狂おしく腰を浮かせてしまう。

「ユーリ…俺のが、欲しい?」
「……っ…」

 《欲しい…》そんなの分かり切ったことなのに、今宵のコンラートはやはり何処か意地悪だ。

 返事をする代わりに、ぺろぺろと子猫のような仕草でコンラートの頬についたクリームを嘗め取れば、彼の笑みがまた意地悪さを増した。

「頬も嬉しいですが、折角なので別の所も嘗めて貰いたいな」
「…?」

 きょと…っと小首を傾げれば、端然と軍服を着込んでいたコンラートが漸く上着を脱いだかと思うと、シャツの襟元を緩め…ついでにズボンの前立てを緩めてずるりと雄蕊を取りだしてみせる。

「…ま、まさか……っ!」
「俺の…嘗めてくれます?」

 有利の下腹に幾らか残っていたクリームとスポンジの塊を掌で撫で来ると、べちょりと逞しい肉棒に絡みつかせて唇の前まで持ってこられる。

 嫌がる有利に強制的に含み込ませるようなことはないと分かってはいるけれど…手首を戒められた状態で突きつけられた欲の証に、ぞくりと花茎が反応してしまう。

「おや…?嫌がってはいないようですね?嬉しいな…」
「ゃ…っ!」

 自分の蕾を犯す為の雄蕊に、素直に反応を示してしまう花茎が恥ずかしくてしょうがない。

『こ…この親不孝者っ!』

 親に似てちょっとお馬鹿チンで欲望に忠実であるらしい花茎は、ぷくぷくと透明な雫を浮かべて自分に似ているが非なる存在へと、憧憬の眼差しを送っているようだ。

「じゃあ、こうしましょうか?」
「え…?」

 ぽん…と上体を押されてころりと仰向けになってしまうと、交差性にのし掛かってきた逞しい肉体が、有利の身体を潰さぬよう…けれど、逃走経路は完璧に塞ぐようにロックしてくる。

 そして、有利の口元には雄蕊が…コンラートの口内にはいち早く、せっかちな花茎が含み込まれ、素直に《気持ちいい》と叫んでいた。

「ふふ…ユーリのここはぷにぷにして可愛いね。それに、甘くて美味しい…」
「それは、クリームがついてるから…んっ…っ!」

 びくんっと浮いてしまう腰が恥ずかしくて、一方的に嬲られるくらいなら…と覚悟を決める。

『やったろうじゃん!』

 ぱく…と口内に導き入れた雄蕊は熱く…べっとりと絡みつくクリームが有利の頬を汚していくが、お構いなしに頭部を上下させれば、恥ずかしい水音を立てて雄蕊が成長していく。

「お上手ですよ、ユーリ。ん…そこ、先の辺りを舌先で弄ってみて?あぁ…っ」

 思わず…と言った感じでコンラートの声が跳ねると、つい嬉しくて愛撫が濃厚なものに変化していく。

 ここをこうすれば感じるのか…ギリギリの力であむりと噛めばいいのか…。 

 行為に没頭しかけた有利であったが、もう少しで放出を迎える…というところで雄蕊は口内から引き抜かれてしまう。

「あなたのお口に出しては、噎せてしまいますよ」
「今更…じゃん……っ」
「それはまた、今度…ね?」

 悪戯っぽく微笑むと、コンラートは仰向けになった有利の下肢を開き…十分に馴らした蕾に猛る肉棒を押し当て、ずぶぶ…と沈めていく。

「く…は……ぁ……」
「息を吐いて…そう…良い子だ」
「子ども…みた……っ」

 《子どもみたいに扱うな》と言いたいのに、感じやすい場所を残酷な甘さで抉っていくものだから、声が跳ねて言葉にならない。

「子どもに、こんなことできるものですか」

 ずっぷりと埋め込んだ雄蕊を燻らすように回転されると、じんじんと染み渡るような快感が下腹全体に放散していく。

 そう幾度も身体を繋げたわけでもないのに、有利の身体は酷く従順にコンラートの肉体に懐いてしまったようだ。

「ぁ…ん、んん…動い、てぇ……」
「ええ、あなたが望むだけ…」

 十分に馴染んだのを確認してから、絶妙な角度と速度で行われる注挿に、有利の理性は容易く瓦解してしまう。今、ベッドの上で嬌声を上げるのは、快楽に従順な獣の仔なのだ。

「ひぁん…っ!あ…ぁぁっ!…気持ち、良いよぉ……っ!」
「今日はえらく素直ですね、ユーリ」

『…たまにはこういう変態臭いセックスも、ユーリの感度を上げるのには役立ってしまうのかな?』

 ただ、大概にしておかないと、有利が理性を取り戻した後が可哀相だが。

 彼は欲望に忠実だが、それを恥じる理性も強いのだから。

『あなたを感じさせて…でも、傷つけないように…大切に抱かせてくださいね』

 ちゅ…っと啄むようなキスを鼻先に送ると、一際激しくなった交接が淫らな水音をたて、そして…ふたりはほぼ同時に情欲を吐き出したのであった。

「はぁ…は……」

 息も絶え絶えな有利に宥めるようなキスを送りながら、コンラートはゆっくりとグラインドを続ける。

 さて、今宵はヨザックに復讐をしに行かなくてはならないのだが…ケーキが美味しすぎて、離れられなくなってしまった…。

『命拾いしたな?ヨザ…』

 心のどこかで微かに、感謝までしている事を自覚しつつ、コンラートは苦笑を浮かべるのだった。



おしまい









あとがき



 てへ。29日過ぎちゃいましたね…。

 ですが、アンケートにも協力して頂いたり、御意見を頂いたりして、色々と楽しかったです。

 拍手などで頂く感想からだとほのぼの話がお好きな方が多いのかなーと思っていたのですが、意外とエロスキーさんも多かったんですね!エロ好きな方が複数回押しておられる可能性もあるわけですが…。



 それはさておき、お誕生日&ゴットファーザー記念日を何とかお祝いできて良かったです。