「ウェラー氏の秘められた嗜好」








 大好きな大好きな《お兄ちゃん》。

 そのフレーズは実の兄が聞けば狂喜乱舞して、浅草サンバカーニバルにでも乱入しそうな勢いを呈するであろうが、申し訳ないことに対象者は彼ではない。

 真のお相手の名はコンラート・ウェラー。日本在住のドイツ系アメリカ人で、家族ぐるみのお付き合いをさせて貰っている、大富豪シュピッツヴェーグ家の次男だ。住居としている館は宮殿のような大豪邸で、明治時代に建てられた重厚な建造物である。赤煉瓦の外壁が特徴的なためか、ご近所では《血盟城》とも呼ばれていた。実に部屋数が多くて、昔から探検させて貰った有利も全ての部屋を見切ってはいないので、正確な配置や部屋数は分からない。何のためだか、抜け道なども多くて大変不思議な構造になっているのだ。
 
 この館の持ち主は年齢不詳の華やかな女性、シュピッツヴェーグ・ツェツィーリエである。彼女には三人の息子がいるが全員名字が異なり、当然父親も異なる。現在のところツェツリーリエは夫を持たず(三人の夫はそれぞれ死別や離婚を経ている)自由恋愛の旅に出ていて、あまり日本には帰ってこない。長男と三男もそれぞれドイツやらオーストリアやらに留学しているから、その館に現在住んでいるのは殆どコンラートだけだ。

 コンラート自身は館を引き払って気楽な一人暮らしを希望しているようだが、住む者がいないと住居は荒れてしまうしと、仕方なしに執事やメイド連中を従えてのおぼっちゃま生活を余儀なくされている。母親の財産だけで一生暮らせるだけの金はあるそうだが、《暇すぎる》という理由で結構な大企業に勤めている彼は、世の人々から見れば腹立たしいくらいのリア充だろう。それでも、直接彼を知る者が面と向かって皮肉を言うことはない。言えば自分が惨めになるくらいに爽やかな青年だからだ。

 精悍な顔立ちに逞しい体躯、運動神経抜群で昔から成績優秀。話し上手である以上に聞き上手とくれば、それはもう非の打ち所もない好青年である。27歳になる今、それはもう多方面から狙われる好物件だから、少々あざとい手を使ってモノにしようとする強者の女性もいるが、それすらもそつなくサラリとかわして悠々自適の独身ライフを過ごしている。少なくとも、有利が見ている限りでは決まったお相手と親密に過ごしている気配はない。クリスマスだバレンタインデーだといった年間行事の際には、いつだって有利の傍にいてくれたからだ。

 来る者拒まず去る者追わずのコンラートだが、有利のことは縁あって名付け親となった縁もあってか、特別に可愛がってくれていると思う。有利も実の兄以上にコンラートに懐き、幼い頃には《こんあっどにぃに》、小学校時分には《コンラッドお兄ちゃん》と呼んで慕っていた。

 それなりに反抗期を迎えた中学生時分には、単に気恥ずかしくて《コンラッド》と呼ぶようになったのだけど、それでも、時々甘えたい時には《お兄ちゃん》と呼んでいた。

 それが意地でも《呼べない》と思うようになったのは、高校1年の夏だった。



*  *  * 




「コンラッド…もう俺、子どもじゃないんだぜ?」
「そうだねぇ、もう高校生になったんだものね。16歳か…大きくなったね」

 有利の勢いに対して、コンラートは実に感慨深そうに目を細める。それが余計に年の差を感じさせられて、ぐぬぬと歯がみしてしまう。

 無駄に広いコンラートの部屋は、シンプルながら質の良い調度品に囲まれている。廊下や共有ゾーンはツェツィーリエの趣味で華美なほどの装飾が為されているが、コンラートはモノトーンを好むので、自室だけは異なる趣を持つ。その室内で、有利はゆったりとソファに腰掛けるコンラートに詰め寄っていた。酷く喉が渇いていたけれど、熱い紅茶を飲む気にはなれなくて、自分のティーカップは卓上で手を付けられることなく冷めていく。

 冷房はしっかりと掛かっているのに先程から顔が熱くて、汗ばんだシャツの襟元を緩めた。ごくん…と粘っこい唾を飲み込むと、意を決して口を開く。
 
「俺は、コンラッドのことが…大好きなんだっ!」

 必死の思いで口にした告白を、コンラートは綺麗な微笑みで迎えてくれた。

「嬉しいな、ユーリ。俺も大好きだよ」

 どこからどの角度で見ても《じゃれついてくる近所の男の子に、爽やかな好意を示す青年》という感じで、とても男同士、10歳の年の差を飛び越えて、恋愛感情を直接受け止めてくれたようには見えなかった。だから、有利は頬を真っ赤に染めて尚も言い募ったものである。

「あのな、コンラッド!お…俺の好きってのは、愛してるってコトだよ!?恋人として俺を見て貰えますかっていうお問い合わせだよっ!?」

 《好き》という気持ち自体は小さい頃から挨拶代わりに交わしていたので、大体コンラートの反応は想定の範囲内であった。だから時間を掛けて分かって貰うべく、優雅にティーカップを傾けるコンラートに詰め寄っていった。

「俺…コンラッドと、キスしたり、せせせせ…セックスだってしたいとか思ってんだっ!」

 《言っちゃった》
 《あぁぁああ…言っちゃいましたよ俺》と、有利は脳内を真っ赤に充血させる勢いだったが、後悔は無かった。彼なりに思い悩んで、胸の内には秘めておられなくての告白だったから、コンラートが引いてしまっても踏ん切りがつくと思ったのだ。
 
 辛いけれど、《ゴメンね、ユーリのことは大好きだけどそんな対象としては見れないよ》と言われたら、スッパリ諦めようと思った。好きでいることを止めることは出来なくても、今までみたいに無邪気な触れ合いの中に欲望を見いだすのは止めようと心に誓った。恋愛感情のないコンラートに不用意に触れて、困らせることはしないと。

 しかし…コンラートの返答は、有利の予想の斜め上32度くらいのところに返ってきた。

「ユーリ…俺は、変態的なセックスでしか感じないんだけど、それでも良い?」

 有利はぱちくりと目を見開いて、コンラートの顔をまじまじと見つめた。いつも通りに爽やかなコンラートだった。精悍さと気品を兼ね備えたその面差しは中世の騎士を思わせ、琥珀色の瞳は澄み渡り、真摯に有利を見つめている。薄く形良い唇からは並びの良い歯列が垣間見えて、とてもそこから《変態的なセックス》なんて言葉が飛び出したとは信じられない。

『俺…試されてんのかな?』

 多分そうだ。
 そうに違いない。

 ならば、思いの丈を真っ直ぐに伝えるしかあるまい。

「あ…当たり前だよ!コンラッドと恋人になれるんなら、セックスだろうがなんだろうが、あんた色に染まっちゃうよっ!?」
「本当?嬉しいな」

 ふわりと微笑んだ顔はもう…それはそれは綺麗だった。まるで白い花房が開くような艶やかさの中に、どこか淫靡な香りがたちこめて、有利の芯をずくずくと痺れさせる。それは、時折コンラートから感じていた媚態だった。ただ大好きなだけであれば何の問題もなかった彼に、有利は時折それを感じとってしまい、花の蜜に誘われる昆虫よろしく虜になってしまったのだ。

「今日は泊まっていけるんだよね?」
「うん!お泊まりセットも万端だよっ!!」

 コンラートの問いかけに、力強くバシンと鞄を叩く。ただ、それが幼い頃からお泊まりする度に交わしていた遣り取りであることを思い出すと、軽く頬が染まった。恋人として泊まるというのに、相変わらず二人の間にはほのぼのとした親族間の共感がある。

「む〜…」
「どうしたの?ほっぺた膨らませて」

 気が付けばぷくりと頬が膨らんでいて、それを指先で突かれればまた顔が朱に染まる。言った端から何をしているのか。

「いや…俺、あんたに恋人ってちゃんと想って貰えるように大人にならなきゃいけないのに、こんな事でいいのかってちょっと恥ずかしくなったんだ」
「つかぬことを伺うけど、ユーリは俺を抱きたいの?」
「うんっ!」

 ぎゅうっと抱きしめられて、コンラートは少し困った顔をする。

「男を抱くためにはどんな準備がいるかは調べてきた?」
「え?準備がいるの!?」

 ぱちくりと目を見開けば、コンラートは《やっぱり》と言いたそうな顔でクスクスと笑っている。その様子はどこかほっと安堵したようにも見えた。そして、更にあれこれと質問をされたのだが、恥ずかしいことに全てしどろもどろになってしまった。

 有利としてはコンラートを抱くための具体的な策というのは無くて、その色香に誘われるまま本能的に求めてしまっただけらしい。問われれば問われるほど明確なビジョンが無かったことが自覚されて、何だか半泣きになってきた。

「男同士のセックスには色々と準備がいるんだ。特に、俺が好きなのは縛ったり道具を使ったり、特別な衣装を身につけたりするやつだから、少なくとも最初は俺がリードした方が良さそうだね」

 馴れた物言いでそんなことを口にされて初めて、胸を灼く感情に気付いた。コンラートは今まで、他の誰かと《変態的なセックス》とやらをしたのだろうか?それはそうだろう。《それでしか感じない》とまで言うのだから、散々普通のセックスをした挙げ句に新境地を拓いてしまい、それでしか満足しない身体になったに違いない。

『昔のことなんだから、大人の顔してスルーしないと…』

 そうは思うのに、コンラートがどんな顔をして他人とセックスしていたのかと想像するだけで、じりじりと焦げ付くような痛みが胸を苛んだ。

 

*  *  *




「はい、じゃあお尻を出して?」
「へ?」

 自室を出たコンラートは、どこからか清潔そうな救命箱のようなものを運んできた。そして有利を浴室に連れて行く。大きな浴槽のある広々とした浴室なのだが、やはり西欧風なのかトイレもついていた。

 バス用品が置いてあるカウンターの上で救急箱を開くと、中から取りだしたのは注射器のようなものだった。ただ、先端は針ではなくて段がついた柔らかな樹脂のようだ。そこを個別包装のアルコール綿花で拭くと、有利の動きを笑顔で待っている。また、大きなチューブのようなものを取り出すと、そのキャップも外した。

「ズボンと下着を降ろして、四つん這いになってごらん?俺とセックスする孔を綺麗にしてあげる」

 …ということは、見たこともないその道具は浣腸の為のナニだというのか。
 絶叫しそうになるのをすんでのところで止める。コンラートは《変態的なセックス》と言ったではないか。それを許容しておいて、コンラートの行動のひとつひとつに驚いたりしたら、きっと彼は傷ついてしまうに違いない。
 ここはひとつ、勇気を振り絞ってケツを出すべきだろう。

「じ、じゃあ…シツレイします……」

 膝丈の短パンをトランクスごと引き下ろせば、コンラートの視線が股間に集中するのが分かる。どこか熱を含んだその眼差しに、頬や首筋が否応なしに染まっていく。

「ねえユーリ、洗浄の前に剃毛していいかな?」
「へ?」

 《驚いてはイケナイ》と心に誓ってはいたのだが、これは単に言葉の意味が分からなくて問い返してしまった。

「テイオウ?」
「テイモウ。おちんちんの毛を剃っちゃうことだよ」
「なんでぇっ!?」

 流石にぎょっとして問い返すと、コンラートが綺麗な眼差しを切なそうに眇めて、憂いを湛えてしまった。

「駄目…かな?」
「いえいえいえいえっ!大丈ブイっ!!」

 いかん。哀しませてしまう。
 こんなことでは変態行為のお相手は務められない。有利は心を奮い立たせて、ズボンと下着を完全に取り去ると、おずおずとではあるが下肢を開いていった。タイルは適温に保たれているから直接座っても冷たくはないが、やはり硬質な感触に鳥肌が立つ。

「可愛い恥毛だけど、ユーリはつるつるの方が可愛いよ」
「そそそそ…そう?」

 可愛いなんて言葉で形容されることを有利は嫌っていたが、どうしたものか、コンラートに甘く囁かれると満更でもない。彼が可愛いと言ってくれるのなら、やっと生えそろった茂みがなくなっても仕方ないかなと思うくらいに、惚れきっているらしい。

 たっぷりと泡立てたクリームを撫でつけられ、ショリ…っと剃刀が添えられると血の気が引く。コンラートのことを信用してはいても、急所に刃物が添えられるのはやはり怖い。

 ショリ…
 サリリ…

 慎重な手つきで毛を削いでいくコンラートは、酷く嬉しそうな顔をしていた。微かに淫らな気配も感じるが、とろけるような眼差しには愛情が溢れ、お湯で毛と泡を流し去った後には、《ほぅ…》と熱い吐息さえ漏らして有利の陰部に見惚れていた。

「ああ…やっぱり可愛い。なんて綺麗なピンク色だろう!」
「さようですか…」

 居たたまれないけれど、そんなに喜んで貰えるのなら仕方ないかな、と、引きつった笑いを漏らす。称賛を浴びた淫部はと言うと、こちらは持ち主以上に素直なのか、この異常事態に興奮しているのか、ピンと勃ち上がって雫を零し始めていた。

「本当に可愛いね。感じ始めているの?」
「ゃあっ!」

 指先で悪戯に弾かれると、信じられないくらい甘い声が迸った。それを満足そうに聞きながら、コンラートの唇が有利のそれに触れてくる。

『ふわぁ…キス、してるぅ…っ!』

 そういえば、お付き合いの基本はキスだ。
 いきなり浣腸プレイから入るのかと度肝を抜かれたが、ここにきてやっと人並み(?)の幸せを追求できるらしい。嬉しくてぎゅうぎゅうと唇を押しつけ、腕を伸ばして抱きついていくと、コンラートも狂おしく抱き返してくれた。

 しかし、つるんと忍び込んできた舌が縦横無尽に咥内をまさぐり始めると、有利の脳は次第に惑乱してきた。ぐちゅ、れちゅ…っと浴室内に響く粘性の音が、二人のキスによって発生した水音なのだと気付くのにも暫く掛かり、気付いたら気付いたで恥ずかしさに背筋が震えてしまう。

 喰われそうな舌と唇と、唾液の混ざり合い。有利の抱いていたキスのイメージから遙かに逸脱した行為に、身も世もなく震えしかない。

 しかもコンラートの動きはそれに留まらなかった。いつの間にかチューブからジェルを押し出したらしく、ぬるぬるとぬめるピンク色のそれを有利の股間へと塗りたくってくれたものだから、その辺りがヌルヌルぬめぬめする上に何だかぽかぽかする。触れた場所が暖かくなる効果もあるのだろうか。

「あつ…」
「もっと熱くなるよ」
「ほんろ?」

 《本当?》と問いたかったのに、口はちゃんとした発語が出来ない。たっぷりと含まされた唾液が咥内に溢れて、赤ちゃんみたいな喋り口調になってしまうのだ。恥ずかしさに眉根を寄せる有利とは裏腹に、コンラートは実に楽しげだ。唾液にまみれた有利の口元をねっとりと薄い舌で舐めあげると、シャツの裾野から忍ばせた指で、胸の尖りにもジェルを塗り込めていく。

「ぁ…っ!?」

 ぴくん…っと背を弾ませたことで、小さな粒に過ぎないものが、そんなにも快感を与えてしまうのだと有利にもコンラートにも知らせてしまう。にるにると滑る指がもどかしいような動きで尖りを撫でていけば、そこは刻々と硬さを持っていった。同時に、隠すものとてない股間のモノはすっかり完勃ちしきって、とろとろと雫を溢れさせていた。いやむ、もうそれは雫と呼んで良い範囲を越えているかも知れない。今までぼんやりとした想像の中で自慰をしていた時には考えもつかなかったような快感が襲い、今すぐ欲を吐き出したいと猛っていた。

「可愛い…こんなに感じて、イきたくてしょうがないって感じだね」
「うん…うん、スゲェ…感じる、から…お願い、イかせて…っ!」

 素直に要望を出せば、今までのコンラートならすぐさま叶えてくれたはずだった。けれど、素敵な笑顔を見せた彼はふるふると首を振る。

「まだ駄目だよ。記念すべきユーリの初めてだもの。思いっ切り気持ちよくなって欲しいんだ」
「も…十分気持ちイイのに……」
「まだまだ、こんなもんじゃないよ?」

 そんなに慌てて奥深すぎる世界を完成させなくていい。半泣きでそう思うのに、コンラートはにっこりと爽やかに微笑んで、何かバンドのようなものを花茎に填めてしまう。根っこを押さえられたそこはぷるぷると揺れて、切なそうに透明な液体を零していく。血流をせき止められているせいか、次第に色を濃くしていくそこは不安なくらいに赤くなっていた。

「こぇ…らに?」
「我慢しなさいって言っても、初めてじゃそんなにコントロール出来ないからね。俺が良いと思う時まで、おちんちんを縛っておくんだよ」

 そんなイイ笑顔で言うようなことだろうか。変態プレイも恐るべしだが、そんな行為をこんなにも清涼感たっぷりに告知出来るコンラートが、何より奥深い男に思えた。流石有利が惚れた男である(←我ながら、感心のしどころが分からなくなってきた)

「さあ、孔も綺麗にしようね」
「ひ…っ!」 

 忘れかけていた浣腸用注射器を取り出すと、コンラートはその先端を挿入する前にジェルで濡らした指を蕾に押し当て、無理をさせない程度にぬめらせていく。

『ぅわ…っ!』

 恥ずかしい場所に、憧れ続けたコンラートのしなやかな指が埋められている。まだ先っちょだけとはいえ、出す専門の孔を弄られるのは想像以上の衝撃だった。

「こんなトコ…き、綺麗にしてどーすんの?」
「綺麗になったら、俺のを挿れてあげる」

 コンラートの指し示すストレートパンツは、飛び散ったジェルと有利の先走りで斑に汚れている。タイトなデザインのそれはコンラートよく似合っていたけれど、今は一部変形していた。

「…っ!」

 何だか、異様に大きい何かが布を押し上げている。
地殻変動で海底火山が噴火する直前のような異様を湛えて、むくむくと勃ちあがった何かがそこを圧迫しているようだ。
 
『ケツの孔に、コンラッドのをいれちゃうわけっ!?』

 ろくな知識も無しにコンラートを抱きたいなどと言った自分の無知が恥ずかしい。おかげさまで、そのプレイが一般的(?)なゲイ行為なのか、変態プレイなのかさっぱり分からない。まあ、分かったところで確実に実行するしかないわけだが。

『世の中のゲイとヘンタイ凄いよ…!こんな苦難を乗り越えて愛を育むんだもんっ!そりゃ俺だって頑張らないと…っ!!』

 覚悟を決めた有利の蕾に、つぷりと指ではない何かが差し込まれる。そして…《行くよ》と痺れるような甘い声で囁かれながら、お腹の中にじゅるじゅると液体が注ぎ込まれていくのを感じた。それに伴って腹を打つほどに成長した花茎が、開放を求めてのたうち回る。一体いつまで我慢すればいいのだろうか?苦痛と快感の狭間で、有利は我を忘れて苦鳴を放ち続けた。

「ぃ…いっ…くふぅ……っ!」

 情けないくらいにぽろぽろと涙が溢れて、鼻水やら唾液も筋をつくって流れていくのに、コンラートはがっしりと下肢を押さえて逃がしてはくれなかった。それでいて、拘束のために痛みを与えることは一切無いのが、彼の才能を感じさせた(←惚れた欲目で全てが素晴らしく感じられるのか…)

「まだ入るよ。ほら…全部、飲み込んでね。ユーリのピンク色をした孔が、たくさん舐め回しても、ナニ入れても大丈夫なように…」

 ぺろりと紅い舌が唇を舐めていく様がたまらなく淫靡で、それを見ているだけで込みあげてくる何かが、びくびくと有利の背を弾ませた。

「ひ…っ…ひ、ぅうう……っ!!」
「ああ、イっちゃった?」
「ぇ…?あ…?」

 そんな筈はない。がっしりと堰き止められた花茎からは白濁は迸ってはいない。それなのに、確かに射精感に似た疼きが下半身に奔っていた。

「流石に限界かな…。あまりドライでイくと、体力的に辛いよね?」

 《よね?》とか言われても、さっぱり知識のない有利は頷くしかない。とにかく、この気持ちいいけれども苦しすぎる行為をなんとかして欲しかった。

「じゃあ、全部入れたら…一度イかせてあげる」
「ふぁ…っ、あっ…ぁっ…っ!!」

 じゅぶ…っと液体を全て注入されると、心なしかお腹がたぽんとしたような気がする。傷つけないようにゆっくりと抜き出された先端を脇に置いて、コンラートは蕾に更なる細工をした。何か塊状のもので、栓をしたのだ。

「ひぁ…っ!」
「しばらく溜めておかないと、奥まで綺麗にならないからね。その代わり、栓をしている間におちんちんを可愛がってあげる」

 幼い頃から遊んでくれた、とってもとっても可愛がってくれたお兄さんが、変わらない笑顔で花茎を咥内に含み込む。いやらしい舌遣いでちろちろと先端の割れ目をなぞり、柔らかに甘噛みされる中でようやくバンドを外されると、いつもならビュグっと勢いよく飛び出すはずの白濁が、じわじわと滲むようにして溢れていく。先程イった時に堰き止められていたモノが、今になって開放孔を得たのだろうか。

「ひ…ひぃ…っ!」

 放出の余韻で感じやすくなった花茎を容赦なく舌と歯で嬲り、唇で煽っていくコンラートに、有利は身も世もなく悲鳴を上げ続けることしかできない。

「こんあっど…こんあっぁあ…っ!」

 音階の狂った叫びの中で、コンラートを呼ぶ声は幼い昔のような拗音を呈する。それが堪らなく嬉しいというふうに、コンラートはちゅぶちゅぶと愛撫を深めていく。

「可愛い…本当に、昔からずっと可愛いままだ、ユーリ…」
「あ…あっ…あふぅ…っ!!」

 うっとりと囁く甘い声とは裏腹に、愛撫は容赦なく有利を高めていく。苦痛に近い悦楽の中でびくびくと腹を震わせながら、有利は今度こそ勢い良く迸る白濁によって、喩えようもない快感を覚えていた。瞼を全開にしたそのまなざしは、半ば白目を剥いていたに違いない。
 


*  *  * 




 幸い、コンラートはスカトロ(って言うらしい)趣味では無かった。なので、有利は愛しい人の目前で排泄行為に及ぶのだけは回避できた。《出し切ったら声を掛けてね》と言われて暫くの間、一人にして貰った有利は、ほっとしたような切ないような心境を抱えながら腹の中のモノを然るべき場所、便座に排出していく。

『あぁあ〜…。のっけから凄すぎるよコンラッド…』

 一体、どこまでが普通で、どこからが変態行為なのだろうか?境目がよく分からないが、全てが未体験なので、当然の如く全てが新鮮で刺激に満ち過ぎている。
 それでは、ついて行けないのでコンラートから離れたいかと言えばそうではない。寧ろ、楽しそうに有利を弄り回すコンラートに、《こんなに喜んで貰えるんだぁ…》と、素直に悦ぶ自分もいる。

『どれだけコンラッドのこと好きだよ、オイ…』

 ウォシュレットも使ってしっかりお尻を洗い、さてもう大丈夫という状態になってから、はたと自分の格好に気付いた。
 全裸だ。それはもう、見事に丸裸だ。
 剃毛までされてしまったので、いっそ潔いほどに丸裸だ。

『これがケツの毛まで抜かれるっていう状態か…』

 微妙に状況にそぐうようなそぐわないような感慨を抱きながら、有利は恥じらいつつ扉を開くと、隙間から外の様子を伺った。浴室の外は内庭に面したサンルームになっており、今はレースのカーテンが陽光を淡くしている。ゆっくりとお風呂に入った後はそこで飲み物を口にしながら汗を引くのを待つ。何とも贅沢な部屋割りである。

「やあユーリ。全部出た?」
「うん…。多分」

 コンラートはふかふかのバスローブを着せつけてくれて、背もたれのある籐製のカウチに有利を座らせると、すぐにスポーツドリンクを飲ませてくれた。《脱水症状を起こすといけないからね》というコメントがえらくリアルだ。

『コンラッドって、こういうの馴れてんのかな…』

 甘酸っぱいスポーツドリンクが、心なしか苦く感じられる。
 年間行事に於ける有利の占有率から考えると、やはり恋人と言える存在がいるとは思えないが、それでも、変態的なセックスをする相手は確かにいたのだろう。そうでなければ、あんな道具がぽんぽん出てくるとは思えない。

『他の人にも浣腸して、こんな風に甲斐甲斐しく飲み物とか用意してたの?』
 
 何しろコトがコトだから、侍女や執事達には知られないようこっそりとやっていたのだろう。そうなれば当然、準備から後始末までコンラートがしていたに違いない。

『俺以外の奴と…』

 考えたらやっぱり悔しくなって、コップの端を噛みながらぼろぼろと涙を零してしまった。その様子をどう思ったのか、コンラートは顔色を青ざめさせると、静かに瞼を閉じていった。

「やっぱり…無理だよね?」
「違うっ!む、無理じゃないっ!!」

 抗弁しても次から次へと涙を溢れさせていては説得力など無い。コンラートは何かを諦めたように哀しげな微笑みを浮かべると、有利を宥めるように髪を撫でつけてくれた。少し湿った髪がコンラートの指に引っかかって、まるで二人の心境のズレを顕しているみたいだった。

「無理じゃない…俺……」
「良いんだ…ユーリ。ここまで付き合ってくれただけで、もう十分だよ。ずっとずっと、君に抱いていた夢が一瞬とはいえ叶ったんだ。後は、妄想だけで生きていける…」
「なんだよ…っ!ちょっと泣いたぐらいで放り出すなよっ!初めてなんだからしょうがないだろ!?あんたが知ってるような馴れた人たちとは違うんだからっ!か…勝手に、比べんなよぉっ!!」

 ずひっと鼻水を啜りながら絶叫すれば、コンラートはきょとんとしたように小首を傾げる。れっきとした大人の男なのに、彼は時折そういう可愛い仕草をするのだった。全くもって、悔しいくらいに可愛いと思いながら睨み付ける。

「誰かと比べたわけじゃないよ?」
「嘘つきっ!他の奴にだって、何度も浣腸とかしたんだろっ!?」
「まさか!医療行為でもないのにどうして俺がユーリ以外ケツ孔なんか洗浄しなくちゃいけないんだい?」

 如何にも心外だと言いたげにコンラートは喉を鳴らすから、有利は呆然として立ち竦むしかない。

「え…?だって、コンラッド凄い詳しいし…第一、道具とか…」
「そりゃあ詳しいさ。何しろ、長年に渡って調べ尽くしたからね。道具だって買いそろえて、ちゃんと鈴○医療器の正規品で練習したから、尿道カテーテルもお手の物だよ?」

 誇らしげに微笑むコンラートは、棚から立派なケースに入った下半身の模型を取りだした。どうやら、介護の練習用に開発された浣腸や尿道カテーテルの仕様練習機らしい。(有利は知らないが、新品だと何十万円もする高価な機器である)屋敷は大きいし、家族はいないしで、こんなヘンテコな道具類も集め放題だったようだ。

 けれどそんな高級機器眺めながら、どこか遠い目をして語り続ける。

「ユーリを好きだと…抱きたいと意識したのは、10年前のことだ…。こんな想いなんか伝えたら、きっと酷く傷つけてしまったろう」
「それは…」

 確かにそうだろう。6歳の子どもに受け止められるような欲望じゃない。

「好きだからって、到底口にすることも、行動に起こすこともできやしない。でも、無駄に欲望が強かった俺は、君と気持ちよく結ばれる為にナニが必要なのか、どんな方法があるのかを調べては自慰に耽ったものだ」

 丁度今の有利くらいの年頃に、コンラートもまた堪らない欲望を抱えて悶々としていたのか。考えてもみれば、有利の方は相手が年上の成人男性だから告白しようもあるが、コンラートの場合は無心に慕ってくれる(流石に当時は純粋な好意しか持っていなかった)名付け子相手なのだ。罪悪感は計り知れなかったろう。

「自分がとんでもない変態野郎だっていう自覚はあった。けど、それが余計に背徳感からくる悦楽を深めて、俺の嗜好はますますマニアックになっていったよ。ユーリ以外のむさくるしい男なんて眼中に無かったけど、さりとて綺麗な女の子にも食指が動かなくて、自慰にばかり詳しくなっていった」

 嫉妬しておいてこう言うのも申し訳ないが、それは物凄い宝の持ち腐れだ。

「それが…思いがけずユーリからの告白を受けて、舞い上がっちゃったんだよ。でも、後から俺の嗜好を知られて嫌われるのも怖かった…。だから、もう最初から知られてしまえとばかりにぶつけてしまったんだ。…怖かったろ?ゴメン…ね」

 泣きそうな顔をしているのに、どこまでも優しく微笑むコンラート。
 《変態でもイケメンなら許される》という法則を、身をもって証明するリア充の童貞君は、堪らなく………可愛かった。

 有利は跳躍するようにして飛びつくと、荒っぽくコンラートの唇に自分のそれを重ねていく。

「今は…ゴメン、これくらいしか出来ないけど…。ちゃんと、俺も勉強するから…!俺と、いっぱいエッチなことして?あんたが俺を欲しいと思ってしてくれた妄想…全部、俺でして?」
「ユーリ!何を言ってるか分かってるのかい!?」
「分かってるさっ!俺は…だって……さっき泣いたのは、居もしない、あんたのセックス仲間に嫉妬してただけだもんっ!」
「え…?」

 コンラートは心底驚いたように目を見開いている。そちら側の疑いを掛けられるとは思っても見なかったようだ。

「尿道だろうが、ケツ孔だろうが、好きに弄ってよっ!!」

 そう言って勢い良くバスローブをめくると、《ドンと来い》と言わんばかりに大股を広げるが、何故だかコンラートは我に返ったように真っ赤になって裾を戻してしまった。

「どうして?したかったんじゃなかったの?それとも…実物見たら、引いた?」

 一気に血の気が下がってくる。そう言えば、6歳の幼児に興奮した筋金入りのロリコンが相手なのだ。もう16歳なんかになっていたら、幾ら剃毛しているとはいえど限度があるだろう。

「俺…もぅ……むさくるしくなっちゃった?」
「違うっ!」

 荒々しく叫ぶと、コンラートはがっしりと有利の肩を抱き寄せる。多少同年代に比べれば華奢とはいえ、毎日野球に励んでいる青少年の身体は男としての成長過程にある。ふにふにしていた幼少期とは全く感触も違うだろう。

 けれど、コンラートは欲望を証明するようにぐりぐりと高ぶる股間を押しつけると、耳朶に狂おしいような声音を注ぎ込んだ。

「さっきの君の姿を思い浮かべながら…3回イった…っ!」

 《どーん!》とでも効果音を鳴らしたいような気迫で告げられた言葉は、往来で口にすれば即刻しょっぴかれそうな発言であったのだが、佳い男が佳い声で告げる…というか、好きな男が自分に興奮してくれたと告げられるのだから、有利の方はどうしたって興奮してしまう。

「マジ…?」
「俺が知ってることは、全部知識と妄想の産物だ。けど…さっきの君は、あり得ないくらいリアルな現実の君だった。《ユーリなんだ》って…そう思うだけで、イってしまいそうなくらい感じてる。何より吃驚したのは、妄想ではもうぴくりとも反応しなかった、キスなんて基本的な行為が何よりも幸せに感じたことだ」
「キス…好き?これだったら、俺も上手くはないけどそれなりに出来るよ!」
「うん。まずは、たくさんキスをするところから始めよう?」

 そう言って、コンラートはチョンと鼻先を合わせて来た。琥珀色の瞳はやっぱり澄んでキラキラと光り、昔から憧れた通りの《王子様》みたいな青年のままだった。どんなに変態的な行為を追求しようとも、彼の心根までが歪んでしまったわけではないのだ。

 嬉しくて嬉しくて、二人は貪るようにして唇を重ねていく。
 全てはここから始まるのだと思ったら、キスはより深く、心地よく感じられるようになった。



*  *  * 




 じゅる…
 えじゅ…

「ん…美味しい」
「ひ…ぁ……っ…」

 びくびくと背筋を震わせながらも、有利は大きく広げた脚を閉じようとはしない。燦々と夏の陽が降り注ぐ午後のサンルームに、淫らな水音が響いていったが、羞恥はあっても嫌悪は一欠片もない。

 今、有利の蕾を深々とコンラートの舌が嬲っている。沢山の道具を綺麗な化粧箱に詰めていたコンラートだったが、それは後日のお楽しみらしい(←使うのは使うのか…)今日はもう何の道具も使わずに、ただ自分の身一つで有利と結ばれたいのだという。

『こんな風に思えるんなんて…信じられない』

 感慨深そうに囁く言葉には実感があって、コンラートとしては、本当に信じられないのだと分かる。自分一人の妄想を繰り広げて、その世界だけで有利に陵辱の限りを尽くしていたらしい(←全貌を知りたいような知りたくないような)コンラートにとって、こんな風に《普通》に抱き合うことで興奮できるなんて、信じがたいことなのだろう。

 そう思ってしまうくらいに、有利とのセックスを妄想の中でやり込んでいたのだと思えば、一層愛おしさが募る。

「好き…大好き…こんあっどぉ…っ…」
「大好きだよ、ユーリ」
「あっ…ぁっ…おにぃちゃ…っ!も、おちんちんちょうだい…おにいちゃんのおっきぃので、ユーリのおしり、ぐしょぐしょにしてぇ…っ!」
「ユーリ…ユーリ…っ!」
 
あまりにも時間を掛けて執拗に弄られるものだから、有利はいつしか理性を飛ばして涙を零し、呂律の回らない舌で幼児のように愛撫を強請る。堪らなく淫らで、それでいて幼い声音は背徳感をそそり、コンラートを否応なしに高ぶらせていく。

 大きく割り開いた下肢の奥に、灼けそうな熱塊を押し当てるが、十分に濡らしたそこは処女腔をぬるりと犯していく。

「…くっ…」
「きつい…はぁ…でも、熱くて、ぬるぬるして…最高に気持ちいぃ…っ!あ…はぁ…っ!こんなの、想像の中には全然無かった…っ!!」
「く…はぁん…っ!」

 行為自体が明確には想像出来ていなかった有利にとっては、手放しの賞賛も殆ど耳に入らない。ただ、漠然と喜ばれていることだけは分かって、口元に笑みを閃かせた。

「きもひ…いぃ…」
「ユーリぃ…っ!」

 ずぷ…ぬぐ……っと攻め入ってくる肉棒に刺し貫かれ、全身に何かを詰め込まれるような圧迫感に息が詰まるけれど、巧みに誘導されて呼吸を続けていったら、つるつるにされた淫部に毛の感触を覚えた。コンラートの陰毛が、有利のそこを擦っている。

「全部…入ったぁ……」

 ひくりと喉を震わせて腰を揺らめかされれば、今回はバンドなどなしで自由にされた花茎から、ぴゅぐりと雫が溢れ出す。

「おちんちん…出ちゃう…」
「イイよ、ユーリ…。イきたい時にたっぷり出して?何度でもイかせてあげるから」
 
 それはそれでしんどい筈だが、性を知ったばかりの若い有利にそこまでの判断力は無い。
 
「あぁんっ!イ…くぅう…っ!!」

 コンラートと繋がった下腹部に両手を挟み込ませる形で、ピンク色の花茎を握り込んで激しく上下させる。柔軟性を生かして下肢を抱え込まれているから、天井から降り注ぐようにしてコンラートに腰をふるわれ、花茎の先端を自分に向ける形になってしまう。

『いまイったら…俺……』

 自分自身の白濁を浴びることになるだろう。それが分かっていて、何故か有利は背筋が震えるような興奮を覚えていた。どろどろの蜜に染まった姿を、コンラートは気に入ってくれるだろうか?まるで《おいた》をしてミルクをひっくり返した赤ちゃんみたいな有利を見て、可愛いと思ってくれるだろうか?

「はぁああん…っ!!」
「くぅ…っ!!」

 大量の白濁が有利の腹どころか胸や顔にまで飛沫を飛ばす中、コンラートの砲身も欲望を開放して、清められていた腸内に注ぎ込まれていく。

「ぁ…っ…あ…っ」

 息が整わないまま朦朧として舌を伸ばしていたら、頬を伝った自分自身の白濁が咥内に流れ込んでくる。青臭い液はとても美味しいモノではなかったが、それでも…コンラートを煽るようにぺろりと舌で舐め取っていく。

 ゾクリ

 見下ろす琥珀色の瞳に欲情が湧いている。その事を感じ取るだけで再び花茎が勢いを取り戻していった。同時に、有利の中に銜え込まされたままの雄蕊もまた、ちいさな孔を押し広げて容積を拡大していく。

「は…おっきぃ……。こんあっどおにいちゃ…おっきいよぅ…」
「ユーリを気持ちよくしてくれるおちんちん、スキ?」
「ん…大好き……」

 素面で交わすことなど到底不可能と思われる会話を交わしながら、ずぷずぷとコンラートの砲身が抜かれていく。内膜を捲っていくようなその動きに、有利は切なくなって泣きべそをかいた。

「やだぁ…いっちゃ、ヤ…」
「行かないよ…ほら、いっぱい食べさせてあげる」

 ずぷ…っ!
 ぎりぎりまで引き抜かれた雄蕊を再び押し入れられると、身体が2つに裂けそうな衝撃と共に、えもいえぬ快感が下腹を押そう。

「ひぐぅ…っ!」
「ここ、気持ちいいでしょ?ここがユーリのイイところだよ。たくさん味合わせてあげる」
「ひっ…ひっ…っ!」

 ごりごりと遠慮容赦なく抉られる場所が、前立腺なのだということは後から教えられたことで、この時にはただただ恐ろしいくらい気持ち良すぎる場所を責め暴かれることに嬌声を上げ続けた。

「ユーリったら、処女なのにこんなに感じてくれるんだね。嬉しいよ…どんな妄想より、そのままのユーリが一番いやらしくて…可愛い」
「んんっ!」

 褒められているのか貶されているのかそれすらも分からないまま、有利はミルクタンクが空になりそうな勢いで精液を吐き出し続けていた。



*  *  * 




「は……」
「ふぅ……」

 満足そうな吐息と、力尽きたような溜息。
 どちらがどちらのものなのか言及すべくも無いが、敢えて言えば遙かに多くの発射を余儀なくされた有利は、指一本動かすことも出来ずに転がっていた。コンラートはというと、実のところまだまだいけそうな勢いは残しているのだが、力無く横たわる有利に甲斐甲斐しく世話を焼くこと自体が楽しいようで、にこにこしながら腰のマッサージなどしてくれる。

 既に身体は清められているのだが(その最中に、もう一度有利はイってしまったわけだが)、腰を適度な力で揉み込まれていると、もう無理だと思うのに花茎が反応しそうで困る。

「処女なのに、無理をさせてゴメンね?」
「処女って言うな…」

 今更のように恥ずかしくなって両手で顔を覆っても、この口が迸らせた淫らな言葉はどうにもならない。《ユーリのとろとろケツまんこ、お兄ちゃんのミルクでいっぱいにしてぇ…!》なんて、どこのエロゲーで得た情報なの俺、と、意識していないつもりで実の兄に毒されていたらしいことを知る。

「……辛かった?」
「…………んなこと無い」
「じゃあ、またしてくれる?」

 小指を出して《約束♪》なんて、あんな無体の限りを尽くした変態嗜好の男がどの面下げて言うのか。

『………この魅惑的極まりないね傍迷惑なほど格好良い顔で言う訳だ……』

 その男に身も心も染め上げられている有利は、観念したように小指を絡ませた。
 《あんたが俺を欲しいと思ってしてくれた妄想…全部、俺でして?》さてはて、その言葉がどこまで達せられるのか、怖いような…それでいて、どこか楽しみにしてさえ居る自分は、変態な年上彼氏にぴったりの人材であるのかも知れない。


おしまい




あとがき


 うっわ。気が付けば5ヶ月ぶりの更新ですよ…!あと一息で「この広告は○○月間更新のないサイトに掲示されるものです」っていう表示が出て、廃墟サイトになるところですよ!

 エロが消えたわけでは勿論ないのですが、何しろ旦那さんのご両親同居は色々とやりにくいです。なんせ、ネット部屋(兼、仏間)の隣がご両親の部屋で、トイレに行くためには確実にネット部屋を横切るという…。お互いにとって気まずい場所です。

 自分が休みで旦那さんが仕事に行って娘が京都の母の元に遊びに行っている間くらいしかエロ原稿の時間がなーい!次は2学期の行事後の代休が狙い目です。9月、11月あたりは何か上げられるでしょうか…。

 そもそもこのサイト自体が忘れられている可能性も高いですが…!(涙)
 
 爽やかに変態で、エロ頭でっかちなコンラッドと押せ押せユーリのお話、気に入って頂けましたら感想など頂けますと嬉しいです。