「さくらんぼの嘘」B







 学ランに似た黒衣の合わせ目は、小さな裏地釦で止めるようになっている。
 貴石製の無駄に豪奢な釦をするすると外されると、白いシャツの下からうっすらと汗ばむ肌が現れた。

 見詰められれば一層肌へとシャツは密着し、まるで灼けつくような視線から主を護ろうとしているかのように絡みついてくるが、寧ろそれは逆効果で…淡く透けて見える白地から胸の桜粒がぷくりと存在を主張してしまう。

 胸元は先程外気に晒されていたのを寝台に載せられるに際して、こそ…っと隠しておいたのだが、余計に恥ずかしいことになってしまった。

「ん…っ…」

 その痼(しこ)りの先端を《つくん》…と指先で掠められれば、喘ぐような声と熱い吐息が漏れてしまう。

「綺麗だ…」
「いやいや…コンラッドさんこそ…」

 うっとり見惚れるように呟かれるのが気恥ずかしくて、つい近所のおばさん同士の褒め殺し合戦みたいな受け答えをしてしまう。

「俺が綺麗ですか?」

 上目づかいの瞳は悪戯っぽい色を載せていて、有利は嘴(くちばし)みたいに尖らせた唇で不平を鳴らした。

「恥ずかしいから…そういうの、聞き直すの反則…!」
「すみません、つい…」

 聞き慣れたフレーズに有利の瞳がぱちくりと開かれる。

「どうしました?」
「思い出せない?コンラッド…いっつもそうやってさ、俺…あんたが《陛下》って呼ぶたびに《ユーリって呼べよ》って怒ってたんだぜ?そしたら決まってあんた、さっきみたいに謝ってくれたんだ…」
「すみません…思い出せないようです」

 哀しげに伏せられた睫が切なくて…有利は身を起こして瞼にキスをした。

 今、有利は寝台の上でコンラッドと向き合う形になっている。
 《攻受》問題はなにやら有耶無耶の内に有利受で話が進んでいるのだろうか?コンラッド主体で巧みに押されているせいで、気が付いたらするすると脱がされつつある。

 それがちょっと不満に感じられて、上着を脱がされてシャツの裾をズボンから引き抜かれたとき…有利は嫌々をするように身を捩って、コンラッドの服も脱がせ始めた。

「ユーリ?」
「俺だけ脱がされんのヤダもん」
「ユーリは主体的なのがお好きなんですね?では…俺も脱ぎますから、あなたも自分で脱いで頂けますか?」
「え…?」

 予想外の反応にぱちくりと目を見開いたものの…コンラッドがわくわくと無邪気な好奇心を見せるものだから、《嫌》とは言いにくくなってしまう。
 それに…コンラッドを脱がせるのはともかく、自分が脱がされるのはまるで新米お父さんに着脱の世話をされる子どもみたいで嫌なので、それを考えればマシかも知れない。

「では、俺も脱ぎますね」

 有利が考えている間にも、コンラッドの脱衣ショーは始まっている。
笑みを湛えた瞳はずっと有利を見詰めたまま…ゆっくりと軍服の襟合わせが解かれ、革製のごついベルトが引き抜かれると、いつもはぴったりと体躯を覆う軍服がたらりと絡んでくる。それを流し目を交えながら情感たっぷりに脱ぐと、今度は白いシャツに手が掛かる。


 ごく…


 思わず身を乗り出して、シャツの合間から覗く引き締まった胸筋に見惚れていたら…つんっと鼻先を摘まれてしまった。

「恥ずかしいから、ユーリも一緒に脱いで下さい」

 《恥ずかしい》にしては堂々たる脱ぎっぷりだったのだが…。

『そっか、コンラッドも恥ずかしいの我慢してるんだな?んじゃ、俺も頑張らなきゃ…!』

 有利は素直なよい子であった。

 コンラッドの言葉を額面通り受け取ると、手早くシャツを脱いでズボンのベルトも引き抜き…前立てのチャックを降ろしたところで動きが止まった。

「どうしました?」
「な…何でもない……」

 前屈みになって慌ただしくズボンから脚を引き抜くと、急いで下半身をシーツで隠してしまう。
 だって、何の気もなく着替えているときならともかく…《恋人》として脱ぐなんて恥ずかしいではないか。

「あれ?隠しちゃうんですか?」
「コンラッドがパンツ一丁になったら出るよ。だって、寒いもんっ!」
「そう…じゃあ、急いで脱ぎますね?」

 くすくすと笑いながらシャツを脱ぎ去ると、逞しい肩周りと引き締まったウエストの均衡が絶妙で…丁度有利が憧れるような実戦向きの筋肉にうっとりと見惚れてしまう。

『うわ〜…胸筋が良い感じに盛り上がって、腹筋も凄い綺麗に割れてる!』

 一緒にお風呂に入ったこともあるのに、こうして改めて見詰めると…その肉体美に惚れ惚れしてしまう。

 ムキムキマッチョの見せつけ型筋肉ではなく、本当にしなやかな肉体は即座に敵の懐へと飛び込めそうな俊敏さがある。
 ズボンから引き抜かれた下肢も吃驚するほど長く…大腿部やふくらはぎ、そして小気味よく締まった足首から目が離せない。
 
「ね…さ、触っても良い?」
「良いですよ?その代わり…俺も触りますよ?」
「良いよ!」

 それはまあ、有利が触るんだから触られなくては不平等というものだろう。
 有利は上機嫌でこくこくと頷いた。
 
「うわー、凄いなぁーっ!イイナー…俺も早くこういう筋肉つけてぇ〜っ!」

 ぺたぺたと上腕二頭筋やら胸筋やら触っている内に、コンラッドの指もするりと有利の首筋を伝い始める。
 最初は密やかに…次第に大胆になってくる指が腰の高まりを撫でつけた時、くん…っと紐パンの結び目が解かれた。

「わ…っ!」

 慌てて結び目を押さえるが、身を屈めてきたコンラッドの唇が上前腸骨棘に寄せられてきて、白い歯がカリリ…っと痛いほどに齧り付いてくれば妙な声が迸(ほとばし)ってしまう。

「ひぁ…ん……っ…」
「俺も脱ぎますから…ユーリも、見せて?」

 コンラッドは獣のように四つん這いになって有利に覆い被さり、蠱惑的な光を帯びた瞳がぺろりと下腹部のやわらかな肌を咬む。
 喰われてしまいそうな恐怖と、相反する快感がぞくりと脊柱を這い上がってきて、有利はどうして良いのか分からないまま両手で花茎を押さえ込んだ。

 微かな布地が心許なかったのもあるけれど…それ以上に、秘められた場所が奇妙な変化を示し始めていることが恥ずかしくて堪らなかったのだ。

『み…見られたら、笑われちゃうかな?』

 でも…恋人同士ならおかしくないのだろうか?
 男同士でも、興奮して花茎が勃ちあがってしまっても…。

 コンラッドは何も言わないまま…片手で器用に下着を脱ぐと、ぽいっと寝台の脇に放り投げる。
 一糸纏わぬ姿となった彼は、四つん這いになっているので有利からは下肢の合間が見えなくなっている。

 引き締まった下腹の先がどうなっているのか…目を凝らしたり、少し角度を変えれば目にすることが出来るのだろうけど、恥ずかしくてきゅうっと瞼を閉じてしまう。

「ユーリ…顔、真っ赤ですよ?」
「だって…だって……っ!」
「可愛いな…ほっぺたがさくらんぼみたいだ…」
「うるさいな〜…どうせ俺はチェリー君ですよっ!」
「そうなんですか?嬉しいな…俺が、初めて?」

 人に関する記憶はつるっと無くしている癖に、どうしてこういう事だけは地球知識まで持ち合わせているのだろうか?

「どうせ…童貞だもんっ!百戦錬磨の夜の帝王から見たらみっともないでしょーよ!こ…こんな…恰好良過ぎなあんたの身体見てコーフンしてるような子ども、からかうのもいい加減にしろよっ!」
「興奮なら、俺の方がもっとしてます…」

 熱い吐息を耳朶に吹き込まれると、コンラッドの身体がぴたりと合わさるほど寄せられていることに気付く。
 怖くて目を開けないでいる有利の手が一つ導かれて…コンラッドの下腹を伝ってふわりとした恥毛を掠め、隆々とたかぶる熱い肉棒を握らされた。

「……っ!」
「ね…?」

 骨盤に響く甘い声も、幾らか上ずって…言葉通りに彼が興奮していることを知らせてくれる。

『わ…わ……っ、これって……っ!』

 これが《何》なのか、感触で分かる。
 良く見知っている筈の肉…でも、有利が知るものとは桁違いの質量と感触に、掌の皮膚が異様に敏感になってしまう。

 ぬる…

「…っ!」
「ほら…あなたを想って、こんなに濡れて…恥ずかしいな」

 人差し指を取られて鈴口と思しき部分で前後されれば、ぬめやかな感触と淫猥な水音が響いて…有利の全身を朱に染めた。

『うーうーわぁあああ……っ!熱い、デカイ…すっごい、硬い……っ!』

 有利とは全く違う大人の質感に頭の中が沸騰しそうになるが、掌から伝わる感触はそこで終わらなかった。
 一回り大きな掌に誘導されて、熱く猛る肉棒を掴まされたまま上下に擦る動作を促されると、そこは更に熱く硬く変化し…先端から溢れる蜜が絡んで淫靡な響きを呈するようになる。

 ぬちゅ…
 ず…ずる……

『わ…わわ…わぁあん…っ!』

 目が潰れてしまいそうなほど硬く瞼を閉じていたら、ふわりと軽やかなキスが幾つも顔に落とされて、こんな行為を促しているとは思えないくらい優しい声音が歌うように囁きかけてくる。

「ユーリ…そんなに怖がらないで?大切なあなたを、決して俺は傷つけたりしないよ?どうか力を抜いて…?」
「う…ぅん……っ」

 言われるままに強張りを解こうと努力した途端、黒い紐パンの小さな布地ごと花茎が包み込まれてしまう。

 今度は、コンラッドの手が有利のそれを覆ってしまったのだ。
 そしてそのまま、鈴口を塗らす蜜を絡め取られて布地ごと上下されてしまうと、骨盤から背筋に駆けて初めて感じるような甘やかな電流が流れ、自分が自分ではなくなるような恐怖を感じてしまう。 

「こ…コンラッド…っ!」
「嬉しい…俺に、感じてくれてるんですね?」

 《恥ずかしいからヤメテーっ!》…と叫びたかったのだが、あんまり嬉しそうにコンラッドが囁くものだから止められなくなってしまう。 
 それどころか、その嬉しそうな顔が見たくておずおずと瞳を開き…案の定、白百合の如く輝く笑顔に見惚れたものの、無意識に降ろした視線の先で握り合っているあんまりなモノに息を呑んでしまった。

 互いの手の中に握り込んだ肉は人体が示すとは思えないくらいの紅に染まり、どくん…どくんっと拍動を伝えては頂点を求めて雫を零している。
 
「ああ…本当に嬉しいです。記憶を無くしたときにはどうしようかととても不安に想いましたが…ユーリみたいなやさしい子がひとときとはいえ恋人になってくれるのなら…記憶なんてずっと無くても良い」

 満足そうな吐息がふわりと首筋に掛かればびくりと背筋が震えるけれど、有利は懸命に身動いで訴えた。

「そんな…ヤダよ。今まで事は今までのことで、やっぱり大事な記憶だよ?」
「ですが、俺にとっては…少し、怖い」

 切なげな声は、微かに震えていた。

 きゅ…っと握り込まれて、意地悪なくらい巧みな手淫を加えられると…あえやかな声が次々に喉から迸って下腹部が蕩けそうになる。
 
「く…はぁ……っ…」
「怖い…ユーリ。記憶が戻ったら、俺とあなたは恋人同士ではないのでしょう?唯の臣下や友人に戻るなんて怖くて堪らない…っ!」
「ん…ん……ゃあ…っ!」

 今にも弾けてしまいそうな花茎に、信じがたい愛撫が加えられる。
 驚いて見下ろした先で、コンラッドの形良い唇が先端を含み込んでいるのが見える。
 紅く染まる幼い肉をぱくりと銜え込み、ねろりと舌を這わされれば堪えきれない雫が白濁を混じらせて限界を知らせる。

「やめ…ゃ…出ちゃ……ぁ…っ!」

 甘く幼い声を恥ずかしいと感じる余裕もなく、更に信じがたい場所へと愛撫を施されて悲鳴をあげる。
 あろうことか、コンラッドの指が蜜と唾液をたっぷりと絡めてつぷりと淫華を乱し始めたのである。

「ゃあ…や…な、何して…っ!」
「大丈夫…しっかり解しておきますから…」
「ほん…と?だ、大丈夫…?」
「ええ、俺は人に関する記憶はありませんが、部分的に、大変都合良く…こういうことは覚えているようです。丁寧に解しておけば…そう、この辺りを弄っておけば大丈夫…」
「やぁああん……っ!」

 ぐり…っと肉壁の一部を擦り上げられた瞬間、どくりと吐き出された白濁がコンラッドの頬に浴びせられる。
 
「あ…ゃ……っ…駄目ぇ…っ」

 もう何が駄目なのかも分からないままどくどくと白濁を放ち続けていたら、頬に蜜を伝わせたまま…艶かしい眼差しをしてコンラッドが花茎を含み込み、有利に見せつけるようにして尿道に残った残渣を吸い上げた。

「駄目って…駄目って……言ったのにぃ……」

 ひっくひっく泣きじゃくる有利をあやすように、細い腰や腿を撫でつけてはキスを落とすのだけど…切なげに責められて、コンラッドも途方に暮れたように詫びてきた。

「すみません…こういう事をしたときに、相手がどんな顔をしていたかまでは思い出せないんです……」
「ひぅ…」

 泣きじゃっくりはまだ収まらないのだけど、コンラッドの哀しそうな表情と声に胸を締め付けられれば、どんな羞恥にでも耐えられそうなのだから不思議だ。

「喜んで貰えると思っていたのですが…やはり、俺が相手では気持ちが悪いでしょうか?」
「ち…違うよ!気持ちは…その……凄く良かったんだけど…恥ずかしくて……」
「恥ずかしいだけでそんなに泣いたりしないでしょう?ああ…俺は今すぐ裏山に穴を掘って埋まってしまいたい…あなたのつぶらな黒瞳を涙で濡らしてしまうなんて…」
「本当だよ…!恥ずかしかっただけ…っ!凄い気持ちよかったから埋まんないでっ!!」
「本当でしょうか…。不安だな……」
「うーっ!だって、あんただって同じ事されたら絶対恥ずかしいよ!?ち…ちんぽしゃぶられるんだぞ!?」
「そうですね。何事も平等にしなくてはいけませんね。ユーリにおしゃぶりして貰ったら、俺もその恥ずかしさが分かるかも知れませんね」
「…………………え……?」

 あれ…何だろうこの流れ…。
 
『俺…転がされてない?』

 流石の有利もちょこっと怪しく思い始めた。
 …が、

「……駄目、ですか……?」
 
 捨てられた仔犬だか仔獅子だかに見詰められると抵抗できなくなってしまう。
 
『畜生…っ!何でこう俺って流されやすいんだ…。つか、コンラッドに愛嬌があり過ぎなんだよ……っ!』

 地団駄踏んで悔しがりたいところだが、有利は結局頷いてしまうのだった。

「良い…ユーリ?」
「ははぁ…これは大層なお手前で………」

 寝台の上にへたり込んだユーリの口元へと、膝立ちになったコンラッドの雄蕊が突きつけられれば…立派なモノを見せつけられて、もはや自分で何を言っているのか分からない。何故か三つ指突いてお辞儀をしてしまう。

 腹を打たんばかりの勢いでそそり立つ肉は既にぬらぬらと淫靡な艶を纏っており、紅を基調としつつも有利とはまた違う…使いこなれた武器を思わせる光沢を湛えていた。

 これを今から、《おしゃぶり》するのだ。

 ちらりと見上げれば片鱗も羞恥を見せないコンラッドが期待に満ちた眼差しを送っている。

『あーれーれ〜……。俺、やっぱ騙されてませんか?』

 変な汗が額に浮いてくるが、《嘘つき》と言われるのはもっと嫌だ。
 下手くそな有利の愛撫であれば、きっとコンラッドの方から《もう良いです》と言ってくるに違いないと踏んで、有利は清水の舞台から飛び降りるような心地でぱくりと亀頭を銜え込んだ。

 最初に感じたのは、しょっぱさと意外にぷくりとした滑らかな質感。
 自分の口の中でそれでなくとも大きい雄蕊が容積を増したこと。
 そして…《くぅ》…っと、初めて聞くような…艶やかな声音が頭上から漏れたことだった。

『俺が舐めたので…気持ち良くなってるのかな?』

 どきん…と、胸の中で暖かなボールが弾み、有利は乳を求める仔猫のようにちぅちぅと亀頭を吸い上げた。

「ん…気持ちいい…ぃや……恥ずかしいですね。ユーリのお口に、出してしまいそうです」
「良いよ…俺も、あんたの顔汚しちゃったし……。それよか、俺…下手だろ?気持ち悪くない?」
「いいえ、あなたの可愛いお口の中に俺のが銜えられている姿だけで…今すぐイってしまいそうですよ」

 肉体の反応は正直だ。
 言葉以上に敏感になった雄蕊はびくびくと打ち震え、開放の時を懇願するように有利の口内へと侵入してくる。

「むぐ…っ…」
「苦しい?」
「ん…くむ……」

 こふ…っ
 げふ……っ…

 喉奥にまで入り込もうとする巨大な肉棒を流石に含みきれなくて、有利は涙目になって噎(む)せてしまった。

「すみません、お口ではこの位が限界ですね」
「ま…まだ、大丈……っ…」

 けふけふと咳き込みつつも、折角気持ちよさそうだったコンラッドを中途半端で放り出してしまうのが申し訳なくて、有利は再戦を願うべく唇を寄せると、どうして良いのか分からないまま…まふりと小袋を含み込んでころころと舌の上で転がし始めた。

 これも気持ちよさそうだったのだけど…どうしてかコンラッドは身体を離し、真剣な眼差しで有利に懇願するのだった。

「ね…お願い、ユーリ。あなたの中で俺をイかせてください」
「だから、俺の口で…」
「いいえ、ユーリのちっちゃなお口では苦しめてしまいます。もう少し大きくなれるところがありますよ。さっき解しておいたから…きっと大丈夫」

 下肢を抱えられてころりと寝台に押し倒されると、柔らかな双丘が押し広げられて…熱く猛る雄蕊が、《ぐぶ…》っと圧倒的な質量を押し込め始めた。
 あろうことか…有利の秘められた淫華の中に。

「む…無理ぃい……っ!無理、絶対無理だからコンラッド!容積オーバー…積載過多で道路交通法に違反するからっ!」

 ぶんぶんと頚を振って抵抗するけれど、がっしりと捉えられた腰は殆ど動かず…《ずぶぶ…》っと埋め込まれてくる雄蕊の形をありありと感じることになる。
 有利の体腔内がコンラッドの形に変えられていく…その過程が、拍動する熱感と共に伝えられるのだ。

 どくん…
 どくん……

 命の拍動を伝えながら、到底不可能と思われた侵入が果たされていく…。
 
「ぁ…は……無理ぃ…こ、壊れ…ちゃあ……っ」

 全身から汗を噴き上げながら涙を零すと、緩やかに旋回する雄蕊が先程擦られた肉粒に擦り寄ってくる。

「ぃや…駄目…そこぉ……イ……っ」

 口角から唾液が零れていくのも気付かぬように有利は悶え、次第に声の質を変えていく。
 清廉な野球少年が欲望の快淫に染め上げられて、あえやかに息づいていく様はコンラッドの喉を鳴らさせる。

 ぐぷ…
 ず……っ

 ぐりり…っと強く肉粒を抉りながら、まだ半ばほどしか潜入を果たしていない雄蕊をコンラッドが扱いて頂点を促す。
 すると…ドゥ…っと溢れ出る白濁がまだ浅い肉筒の中で弾けてどぷりと淫華を濡らした。

「きゃうぅ…っ!」

 狭い体腔内で弾けた雄蕊は無理矢理に肉筒を濡らし、まだ誰も触れたことのない場所を男の精液に満たしていく。しかも、まだ硬度を残したままの剣はぬめりを帯びたのを良いことに、巣穴の子鼠を捕獲しようとする蛇よろしく更なる深みを抉り始めたのだ。

「ひぁあ…っ」
「凄い…きつい……ユーリ…。誰にも、触れられたことのない場所を、俺に晒してくれるんですね?ああ…嬉しい…っ」

 ぐぷぷ…
 ずぷ…ぐちゅ……っ

 滑らかになった注挿が淫らな水音を立て、有利の理性を蕩け崩していく。

「あぁん、もっと…そこ……っ!」
「もっと欲しい…?ユーリ…ああ、素敵だな。自分から下肢を抱えて、俺に見せつけるみたいに蕾を晒してくれるの?」

 言われて初めて気付いたが…有利はいつの間にか自分で腿を掻き寄せて、《もっと頂戴》とお強請りするみたいにコンラッドの雄蕊を求めていたのだ。
 だって、自分からそうすれば自由になったコンラッドの指は有利の花茎を好きなだけ扱いてくれるし、どろどろに濡れた小袋を掌の中で転がしてくれるのだ。

「頂戴…もっと……っ!」
「良いですよ…今だけでも、あなたを一杯にしてあげたい…」
「やだぁ…っ!」

 理性も何もかも吹っ飛んでしまった有利は、幼い口調で本心からの願いを叫んでいた。



「やだ…やだぁ…っ!今だけなんて嫌…っ!」



「ユーリ…」

 驚きに目を見張るコンラッドに、駄々っ子みたいにしがみついてわんわん泣いた。

「ずっと…もっと、してぇ…っ!記憶が戻っても戻らなくても、俺だけのコンラッドでいて…俺を、ずっと抱いていて…っ!」
「ああ…ユーリ…っ!」

 一際強く突き込まれた雄蕊が、身体の最奥でどくりと息づいたのが分かった。
 有利の花茎が、自分自身の腹と顔と…コンラッドにも飛沫を飛ばしながらはしたなく頂点を迎えたのも。



 そして…自分を見詰めるコンラッドの瞳が喩えようもなく幸せそうなのを認識した瞬間、有利は意識を手放した。 
  

 


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