「内緒」
※単発のありがちな調教プレイ(?)です。
有利は調教されていると言うより、呆れて合わせているようにも見えますが…。





 誰にも秘密。
 言えっこない。
 教えてあげる気もない…内緒の話。

 俺が今…本当はどんな格好をしているかなんて。



*  *  *




「ユーリ、えらくぼうっとしているが、一体どうしたんだ?」
「別にぃ?いつもこんなもんだろ?」

 夕闇に染まる血盟城の廊下…ばったり出会ったヴォルフラムが、怪訝そうな顔をして問いかけてくる。有利は今、そんなにおかしな顔をしているだろうか?そういえば、距離を置いて警護している兵達も戸惑い気味だ。
 
「熱でもあるんじゃないのか?」

 ぴとりと形良い手が額に触れるが、その仕草にくすりと嗤ってしまう。
 それは…普段の開けっぴろげな有利からすれば奇妙な印象の笑みだった。
 
「どうした?」
「ううん…何でもない。ヴォルフの手って、暖かいね」
「そうか?火の要素を司るからかな?」
「じゃあ…コンラッドは水か風なのかな?」
「…何を言ってる。コンラートには魔力などないだろう」
「それが不思議なんだよねぇ…あいつの声とか指とか…絶対魔力を持ってるような気がするんだけどな」

 どんなに何気ない接触でも、コンラートの冷たい指が肌に触れたらこんなに《なんともない》ことなんかあるはずがない。
 いつだってびくんと震えて、何かを感じていた。

 そう…この身体がまだ、何も知らなかった頃でさえも。

「あぁ〜…やっぱ、もう限界…ちょっと俺、用足しに行ってくるわ」
「一々言わなくても良いから、とっとと行け!」

 上品なヴォルフラムは《用足し》という言葉に過剰に反応を示して、白絹のような肌を淡く上気させる。

『今…見せてやったら、どんな顔をするだろう?』

 《見苦しい》と嫌がるだろうか。
 それとも…こんな上品な少年でも、欲情を浮かべてごくりと喉を鳴らすのだろうか?そして、兄弟して骨肉の争いを繰り広げるのだろうか?

 兄に開発されて、熟れきったこの肉体を嘆きながら。

『可哀想だから、内緒にしておいてあげる』

 くすくすと口の中だけで嗤って、有利はひらりと身を翻す。
 去り際に見せた流し目にヴォルフラムが反応を示したけど、からかうのはここまでにしておいてやろう。

 ああいう奴でも、何がきっかけで目覚めるか分からないから。

『あいつの弟で、ツェリ様の息子なんだもんなぁ…才能はあると思うんだよね』

 うっかり目覚められては困る。
 この肉体と精神は、彼の兄のものなのだから。

 

*  *  * 




「約束は守っていますか」
「守ってるに決まってる。あんただって知ってるだろ?ずっと見てたんだから…」

 なに喰わぬ顔をして柱の影から囁いた男に、不機嫌そうな一瞥を送る。
 ウェラー卿コンラート…端正な顔立ちに爽やかな笑顔を浮かべた《気の良いお兄さん》風の男なのだが…それがあくまで《風》であることは身をもって知っている。

「おや…気づいておられましたか?」
「ヴォルフが触れてきた時、びしびし殺気を感じたもん。我慢の限界に達して、身体開くとでも思ったの?」
「ええ…そうなったら、どんなお仕置きをしてあげようと思って、わくわくしていました」

 そう、彼はお仕置きが好きだ。
 どうも今現在のマイブームらしい。

「本当に俺の隙をついて、いやらしいことをしていなかった?」
「んなことしないよ」
「分からないでしょう?あなたは魅力的な人だもの。初めて会った王子が、思わず頬に口吻て愛の告白をしてしまうくらいにね」
「だから〜…あんな子どもに灼くなっつーの」

 コンラートのお仕置きは、昨日訪れた同盟国の王子に有利がキスをされたことに起因している。グレタとそう変わらない年頃の少年に本気で灼いているはずもないのだが…何か口実が欲しいのだとしか思えない。

 それにちゃんと乗ってやる有利も有利だが…そこは惚れた弱みというものだ。

「ね…確認させて?」
「…部屋、戻ろうよ」

 ここは血盟城の奥まった場所とはいえ、廊下の一部だ。護衛兵達はコンラートが眼差しを送っただけで《用無し》になったことを悟り、一礼して去ったが…先ほどの遣り取りを気に掛けたヴォルフラムあたりがいつやってくるか分からない。

「いいえ、気になってしょうがないから…今、見せて」
「………」

 この声に魔力がないなんて絶対におかしい。
 きっと、誘惑の魔法が何かを使えるに違いない。

 カチャリ…

 少し手間取りながらズボンに前立てを開くと、そこには黒いレースの紐パンがあった。  

「……」

 恥ずかしくて視線を逸らすが、それだけに…痛いほどコンラートの視線を感じる。
 大国の王である有利が、恥ずかしい下着いっぱいに膨らんだ性器を臣下に視姦されている。そんなフレーズを頭に浮かべるだけで、余計に興奮しているのが分かった。

「うん、俺が締めてあげたとおり…ちゃんと拘束しているね」
「…っ」

 指先で裏筋をなぞられるとびくんと背筋が震える。

 花茎は既に腹を打たんばかりに勃起しているが、瘤の付いた革バンドを巻かれて到達を阻害されており、とろとろと溢れそうになる蜜もじっとりと濡れた粒状の封に押さえられている。粒は蜜を吸いながらにるにると細い芽を伸ばして、尿道内の感じやすい粘膜を刺激していた。 

「ああ…レースに透けて、とてもいやらしな。ね…ユーリ、上着を持ちあげて?影になって見えないよ…」

 言われるままに下腹全体を露出させれば、コンラートはぺろりと紅い舌で唇を舐める。

「いやらしい姿だね…」
「そう思うんなら、早く…取ってよ」

 平静を装おうと思うのに、息が上擦ってしまうのが悔しかった。
 コンラートの眼差しを感じ、声を聞けば素直すぎる生殖器は簡単に興奮してしまう。
 
「焦らないで?もっと鑑賞させてください…こちらに来て、ユーリ。その可愛くていやらしいおちんちんを、俺にしゃぶらせてください」

 綺麗な顔になんとも爽やかな表情を浮かべて、言うことは極めて鬼畜だ。
 騎士の構えで跪いた彼の目線へと花茎を持っていけば…伸ばされた舌先がもどかしい動きでちろちろと鈴口をなぞる。

 そして苛めるようにして、舌先で芽を伸ばした種子を揺り動かすのだ。
 途端に、甘苦しい電流が下腹に広がっていく。

「やめ…っ!こ…この、根性悪…っ!」
「口が悪いなぁ…うちの陛下は」
「陛下って言うなっ!」
「失礼、ユーリ。臣下におちんちんを弄られてアヘ顔を見せる様が、あんまり素敵だったものですから…」
「アヘ顔言うなっ!寛○ちゃんかっ!」
「おや…他の男の名をあげる余裕がまだありますか?」
「っ…あっ!」

 ずる…っと種子を引っ張られると、少しくねりながら尿道内に生育してきた芽がゆっくりと引き抜かれていく。

「動かないで…丈夫な芽ですけど、切れて残ったら厄介ですからね…」
「そんなもん…俺の身体に入れるな……っ!」
「後ろに入れてやったヤツなら、切れませんけどね」
「入れる時に…壊れるわ…っ!つか、お…お願い…っ!ここはマジでやめてっ!」
「仕方ないですねえ…それでは、あちらで手を打ちましょうか?」
「う…」

 コンラートが指し示した先には、ただの壁がある。
 だが…有利はもう知っていた。それが唯の壁ではなく…コンラートが掛けられた絵画の一部を押せば、開く仕組みになっているのだと。
 
 大方、ツェツィーリエが取り巻き連中と背徳的なセックスに耽るために用意した部屋なのだろう。通り過ぎる人々の姿がよく見えるのに、あちらからは室内が見えないのだ。

「…分かった」
「良い子だ…」

 促されるままふらつく脚を動かせば、かしゃりと壁の一部が開き、中に入ればまた閉じる。淡い灯火がつく仕組みになっているので、淫部を剥き出しにした姿はしっかりとコンラートに見えていることだろう。

「さあ、またおちんちんを出してごらん?」
「ん…」
「自分で下着から出して…手を添えていてね?」

 添えてしまえば、思わず奔る快感に花茎をしごきたくなってしまうが、いまそれをするのは更なる責め苦を呼び込むだけだ。までは排出口を確保せねばならない。

「さ…抜くよ?」
「ん…んん……っ」

 ずる…
 ぬにゅ……

 狭い空間に淫靡な水音と荒い息づかいが反響していき、時折哨戒していく衛兵の靴音に、びくりと胸の桜粒が硬く痼った。

「おちんちんはそんなに気持ちいい?」
「う…るさいな…早くしてよ…っ!……ひっ…ぁああっ!!」

 憎まれ口を叩きながらも、ぬぽん…っと最後の芽が抜け出し、付け根を拘束していたバンドを解かれると、耐えきれなくて《びしゃ…どくんっ》と勢いよく飛沫を放ってしまう。
 端正なコンラートの顔中に散った白濁は、この男をこの世のものとは思えないほど凄絶な色香で包む。

「美味しい…」

 ず…ちゅ…っと丁寧に鈴口を舐められ、残渣を吸い出されると…今度は堪えきれなくなってきたのは後ろの方だ。

「後ろも取って…っ」
「おねだりの為の格好を教えたでしょう?」
「…っ!」

 有利はのろのろと服を全て脱ぐと、脇に置かれた大型クッションの上に転って、前転の途中のような格好になる。
 頭はクッションの上に仰向けになり、下肢を大きく開いてくるりと背を巻いているから、お尻の孔を見下ろしているコンラートの眼前に晒すことになる。
 くたりとした花茎はレースの下着の中で再び勢いを取り戻し初め、有利の顔に向かっていた。

 繋ぎ目から溢れたものや、有利自身が放った白濁に顔がまみれていくのだ大好きらしい。

「ん…み、見てください」
「他にも言うことがあったでしょう?」
「……。玩具をいっぱいに銜え込んだ、いやらしいユーリのお尻、弄ってください…っ」
「良くできました。ふふ…本当にぎりぎりまで銜えているね。初めて繋がる時には、孔があんまり小さいんで焦ったけど…媚薬で溶かしたら結構広がるものだね。…というか、ユーリの身体は男を銜え込めるように淫らな造りになっているのかも」

 コンラートは苦痛で有利が泣かなくてすむように、常習性のない媚薬の中でも、特に腸壁の潤みが激しくなるものを塗り込んでいる。
 今も男根を模した張り型にはたっぷりとそれが塗り込められていて、少し弄られるだけで継ぎ目からぬるりとした蜜が溢れてくる。

 まるで女の子のような濡れ方を、コンラートは実に楽しそうに弄り回した。

「俺のよりは少し細いから、ほら…指がまだ入る」
「む…無茶すんな…っ!」
「まだ大丈夫ですよ…ほら、あなたの好きなとこに指が当たっているでしょう?」

 くり…くりりっと弄られれば、感じやすい肉粒から放たれる快感で花茎がとろりと蜜を零してしまう。つつぅ…ぽつっと垂れたしずくが、ひとつ…またひとつと有利の頬を濡らした。
 格好が格好だから、コンラートに嬲られている箇所が丸見えなのも問題だ。

「焦らせないで…お願い。早く…玩具なんか抜いて…っ!あんたのを入れてよっ!」
「おや、おねだりが上手になったね?」 

 くすくすと笑うが、容赦なくコンラートの指は張り型の付け根にあるゼンマイを巻いてしまう。
 キリ…キリリ…と伝わる振動が、何が起こるかを予告していた。

「あ、や…止めてっ!」
「ほら…手を離しますよ…?」
「あ…ぁあああ……っ!」

 グリュリュリュ…っ!!

 有利が絶叫して暴れれるが、がっしりと捕らえられた双丘はコンラートの眼前であられもない痴態を見せつけてしまう。
 実にアナログな製法に見えるが、内部には意外とこまかな細工が施されているのか…ゼンマイ仕掛けの玩具は高速で巧みにうねりながら有利を責め上げていく。その度にぴちゅ…じゅ…っと音を立てて飛沫が散り、有利の白い腿を汚していくのだった。

 太股がびくびくと快感に合わせて跳ね、無機質な玩具で感じていることをコンラートに教えてしまう。

「ああ…ひ…っぃ、いやぁぁ…っ!」
「本当に嫌?こんなに気持ちよさそうに啼かれると、信じにくいなぁ…」
 
 片手で尻を固定されて、もう一方の指に胸の桜粒を痛いほど抓られると、二カ所からの甘い電流に有利は噎び泣いてしまう。
 もうシニカルな笑いに逃げることも斜に構えることも出来ず、ちいさな子どもみたいに髪を振り乱して喚いてしまう。

「いやいやいや…ほんろり…いやぁあ…っ!やめぇ…やめっ……ゃんゃああんっ!」

 とうとう泣き出してしまった有利が体面もナニもなくしゃくりあげると、コンラートはうねりが少し収まってきた張り型を引き抜き、溢れてきた蜜に封をするようにしてずぶりと雄蕊を突き込んでいく。

 ぐちゃ…
 ぐぷ…ぷぷぅっ!

「や…は……っ」
「ふふ、空気が入ってしまいましたか?」

 濡れた空気音が恥ずかしくて嫌々をするが、容赦なく突き込まれる雄蕊は玩具なんかより余程気持ちよくて、気が付けば自ら獣のように腰をふるってコンラートを受け止めてしまう。

「ひぐ…も…そこぉお…っ」
「ここ、お好きですねぇ…本当にユーリはお尻を弄られるのが大好きな変態ですね」

 ひときわ強く弱い部分を抉られた瞬間、有利は頭蓋内に白いスパークが弾けるのを感じながら到達を迎え、ぴしゃぴしゃと降りかかる白濁に顔を汚した。
 一拍おいて、激しい収斂に追いつめられたらしいコンラートも最奥に白濁を放ち、ゆっくりと引き抜くと…ぴくぴくとひくつく蕾が、白い蜜を零していく様を楽しそうに眺めた。

 普段は慎ましく閉じている蕾も、長時間張り型を銜えていたせいでぱっくりと開き、サーモンピンクの肉を覗かせていた。

「こんなに毎夜のように淫らな責め苦を与えてあげているのに…相変わらず綺麗なピンク色をしていますね。あなたの肉から俺の注いだものが溢れて…とても素敵ですよ」

 パシャ…
 パシャ…っ!

 フラッシュが瞼の裏に明滅の残像を残す。
 あられもない姿の有利を、アニシナから入手したカメラで撮影しているのだ。

 彼の手で大きく引き延ばされたその写真は次の性交までに現像され、それを見せつけられながらセックスさせられるのだろう。
 今でも秘められたこの空間の壁いっぱいに、有利とコンラートの繋がりを映した写真が貼られている。

 初めてやられたときにはカンカンに怒ったけれど、コンラートがあんまりしょんぼりしていたものだから…結局赦してしまったのだ。

『おやじ臭いというか…マニアックというか…』

 NASA製の翻訳装置でろくでもない情報を取れられたに違いないコンラートは、時としてこういう変態じみたプレイを好む。 
 それをさほど嫌がりもせず受け入れている有利は、彼に匹敵するほどの変態なのかも知れないが…。

 《似たものカップル》…そんな縁起でもないフレーズが掠めるのを、有利は精液まみれの顔で嘆息した。

『こいつのこと、結局好きなんだよなぁ…』

 妙な男に捕まったものだと思いながらも、実は意外と幸せな自分に呆れてしまう。
 せめて、これだけは抵抗として続けていたい。

『こんなに好きだなんて…絶対教えてやらないんだからな?』

 それだけは、ずっと内緒。
 ひょっとしてバレバレかも知れないとしても…せめて、自分からは言ってやらない。
 



おしまい


   




あとがき

 「まず50万打企画頑張ろうよ」とは思うのですが、唐突にちょっとダーク風味の次男を描きたくてこんなことに…なった割に、相変わらず有利のストライクゾーンがコンラート限定でだだっ広いために、単にいつも通りな話になっただけでした。