「お庭番の観察記録」
〜 夜ヴァージョンB 〜







「まだイっちゃ嫌ですよ?俺以外のものを銜えてイくなんて…寂しいじゃないですか」
「はぅ…ぅうん……っ……」

 拗ねてみせるコンラートに対して、有利の方はもう意味のある言葉を吐くことも出来ない。涙でぐっしょりと濡れた目隠しも哀れな姿で身悶えするしかなかった。

 ぐ…ぷ……
 ごぷ……

 夜仙果を抜かれると、淫らな水音を立ててジェルが溢れ出してくる。
 
「やらしいな…こんなに沢山溢れ出てくる。まるであなた自身が感じて、濡れたみたいだね?」
「ひ……ぅ……」
「苦しい?」

 声が、先程までの余裕を失って微かに上ずる。
 荒い息を吐いて打ち震える有利の姿があまりに可哀想だったせいか、コンラートの焦らしプレイはそこで限界を迎えたようだ。
 
「いきたい?」

 こくっ…こくっと勢いよく頚を振ったのが拙(まず)かった。
 コンラートが了承の声を出さずに下着の紐を一方解き、到達直前の花茎に加えていた戒めを解いたタイミングも実に拙かった。

 有利が否応なく悦楽の頂点を極めるのと、目元を押さえていた目隠しが取れるのとはほぼ同時であった。

「あ…ひぃぃん……っっ!!」

 びくん…びくぅぅう……っと幾度も小さな痙攣を繰り返しながら白濁を放出していく有利は、背筋から骨盤へと駆け抜けていく快感が落ち着くに従って…自分の置かれた状況に気付いてしまった。

 コンラートの手の中にあるのが、有利の世界の記録媒体であるということに…。
 そして、有利の放った欲情の証が全身に飛び散る様を…紅く染まった蕾からジェルが溢れ出てくる様を…今まさに撮影されていたということに………。

「コン…ラッ……ド…?」
「……」

 《信じられない》という顔をしてぱかりと目を見開いた有利に、コンラートは無表情であった。
 それが、彼がテンパったとき特有のポーカーフェイスであると言うことに、ヨザックだけは気付いていた。

『ぎゃあぁぁあああ……っ!ど…どーすんだよ隊長っ!』

 真っ青になって悶絶するヨザックだったが、寝台の上は恐ろしいほどの静寂に包まれていた。

「コンラッド…それ、どうして…今の…撮ってたの?」
「………すみません…。俺は…」

『な…なんて言い訳するつもりなんだ?』

 
「……ユーリフェチなんですっ!!」


『……はい?』

 ぽかんと呆気にとられているのは有利も同じだろう。

「ユーリの吐息から些細な仕草にいたるまで、全てを我がものにして愛でたいという欲求に抗し難く…とうとうこのような凶行に及んでしまったのです…っ!」

 コンラートは有利の上体に腕を回すと、先程まで敢えて触れあおうとはしなかった肌に擦り寄った。滑(ぬめ)る肌が密着すれば強張っていた有利の頬が解れ、申し訳なさそうに何度も謝罪の言葉を口にするコンラートの背をやさしく撫でていく。

「もう…良いよ。出来心なんだろ?そのデータ消してくれればそれで…」
「それは出来ません」

『きっぱり言い切ったーっ!?』

 だが…それはそもそも村田の所有物ではないのか?
 はらはらしながら見守っていると…ヨザックは不意に気付いてしまった。

『あれ………微妙に猊下の機械と違う!?』

 有利にあんな姿をさせた最初は、確かに村田の機械を使っていたはずなのだ。
 だが…コンラートが現在手に持っているものは微妙に形状と色彩が異なっている。
 
「ユーリ…俺は、あなたがチキューに帰っておられる間…孤独に耐えなくてはならないのですよ?あなたの姿を見ることが出来ないのは勿論のこと…性欲が高まった夜に、あなたを抱けない寂しさで死にそうになるんです…!」
「そんな大袈裟な…。つか、俺のハズカシー恰好の映像なんかあったって、抱けないのには違いないだろ!?」
「大違いです!なるべく詳細にあなたの艶姿を再現しようとすると、どうしても感覚を追う方が疎(おろそ)かになってしまうのです。ですが…この映像があれば、エンドレスで再生しながら何度でもイけるじゃないですか…っ!」

 一体何を力説しているのか。
 半分以上本気成分を含有しているせいか、妙に説得力があるのも困る。

「ん…く……っ」

 コンラートの指がぐちゃりと蕾の中に入り込み、燻らすように揺れ動いてから次々に数を増やしていくと、元気の良い魚みたいに有利の身体が跳ね返ってしまう。

「やだ…狡い…コンラッド…ご、誤魔化そうとしたって…っ!」
「誤魔化すなんてとんでもない…。俺は、ユーリの身体に聞きたいんですよ…」

 この状況でよくもそんなに真摯な声と顔が出来るものだ。いっそ感心しながら見守るヨザックの前で、反り返った雄蕊が《ぐぷぷ》…っと音を立てて蕾の中に潜り込んでいく。

『うわ〜…羨ましいー……。めちゃめちゃ気持ちよさそう…』

「ん……っ…」

 あえやかな声を漏らすコンラートは軽く眉を寄せ、瞼を伏せた様子が凄絶な色香を纏っている。
 ぬらりと濡れた肉筒が蠢いているのだろう…軽く前後させる動きだけで悦楽に瞳が濡れていく。

「ユーリは…本当に、平気なんですか?離れて過ごす日々の中で…寂しくてどうしようもない夜はないんですか?」
「コンラッド…」
「俺は…寂しくて、死にそうになります…っ!」

 涙混じりの声を上げて、しがみつくようにしてコンラートは有利を掻き抱く。耳朶に熱く甘い言葉を流し込まれると、理性を溶かされて行く有利は恋人の声に酔いしれてしまった。

 コンラート以外の者が口にすれば《情けない》と称される恐れもある言葉ながら、彼が切なく訴えかけると、どれほど堅牢に心を閉ざしている者でも愛を請わずにはいられなくなるから恐ろしい…。

「そう…なの?俺を思って…どうしようもなくなるの?」
「そうですとも…っ!けど、情欲の処理のためとはいえ、俺は決してあなた以外の者に触れないなどとは思わない…っ!あなたが…あなただけが、俺に全てをくれる存在だから…っ!」
「コンラッド…っ!」
「俺には…あなただけなんです……っ!」

 情熱的な愛の言葉に有利の瞳も潤み、コンラッドの頚にしがみつくと自ら腰を振って誘いかけた。

「じゃあ…好きにして、俺を…ぐちゃぐちゃにして、どんな格好でもさせて?あんたにされるのなら…俺…俺、どんな恥ずかしい事だって出来るよ?」


『言わせたーっ!!』

 
 ヨザックは危うく絶叫しかけた口を両手で塞いだ。

 ウェラー卿コンラート恐るべし…あれほど羞恥心の強い少年にここまで言わせてしまうとは…これは夜仙果の効能だけの問題ではないだろう。
 コンラートの天性の才能(ジゴロ業…?)が、有利限定の才能で本当に良かったと思う。

 彼がその気になれば各国の王を籠絡して、コンラートの寵を得るために戦わせることも可能であるだろう…。

「ユーリ…嬉しい……」

 感動に声を震わせるコンラッドは、迷わず有利の身体を誘導すると膝立ちにさせてエプロンの裾を持たせた。

「では、そのままゆっくりと持ち上げて下さい」
「こ…こう?」

 ふりふりレースの付いた裾野をぺろんと捲れば、濃い紅を纏うようになった花茎が半ば勃ちの状態で現れ、ふる…っと先端を濡らして揺れた。
 
「可愛い…。さっきイったばかりなのに、こんなに濡れて…。さあ…あますところなく、ユーリの全てを撮りますよ?」
「ふ…わ……っ」

 舌先を使って鈴口をなぞり、茎の部分を手で包み込んで上下させれば、夜仙果の効能もあってかすぐに発射可能な領域まで花茎は育ちきってしまう。

「脚を広げて?全部…ユーリの恥ずかしいところが丸見えになるように」
「こ…う……?」
「ええ、そう…そして、下のお口でもう一度これを食べて見せて?」
「ん……っ」

 夜仙果を受け取った有利は自ら蕾の中へと先端を含ませていくと、ぬち…くち…っと出し入れしては感じやすい場所を擦って嬌声をあげた。

「ぁん…っ……あ、熱い…よぉ…っ!」
「ほら…こうすると、もっと恥ずかしい格好になるよ?」
「やぁ…っ!」

 片脚をコンラートの肩に載せられ、横寝の状態で大きく下肢を割られると、夜仙果をもっと深く差し入れられてしまう…。

「駄目…ゃ…深ぁい……っ」
「俺ので広げておいたから大丈夫…ほら、ずっぷりと全部はいってしまうよ?凄い…こんな小さな蕾が夜仙果でいっぱいに押し広げられてる…」
「あ…っ」

 恥ずかしいその場所に、至近距離から機械の照準が合わせられる。
 痴態を写し取られていることに恐怖と快感を覚えてしまうのか、ぴくぅん…と露わになった花茎が揺れて、ぽたりと雫をこぼしてしまう。

「感じすぎて…触れてもいないのにこんなになってるんだね?」
「ひぅ…んっ……あっ…」

 コンラートの唇が花茎の先を含み込み、わざと濡れた音を立てながら《ぐり》っと夜仙果が抉り込まされると、勢いよく茎部分を上下されたせいもあってか一気に欲情を放ってしまう。
 それを旨そうに…尿道に残った残渣までも丁寧に吸い上げたコンラートは、夜仙果を抜いたそこに自分の雄蕊を宛うと、十分すぎるほどに解された場所へとめり込ませていった。

「あ…ぁああ……っ…ひぁあ……」

『で…でたぁ…っ!』

 ヨザックが再び絶叫を堪える。

 コンラートの腰が…上下左右斜方向に巧みな動きを見せ始めたかと思うと、有利の表情が一層恍惚として、蕩ける接合部と濡れた唇からは淫らな音楽が惜しげもなく流されていく…。

 それにしても、何という腰使いだろうか?

 ゆるりと円弧の動きを見せたかと思えば俊敏に突き込む動作が続き、繊細に蠢いたかと思えば鋭く一突きしてくる…。
 これが噂に聞くウェラー家の最終奥義、花鳥風月円舞絶倫超動斬なのだろうか?

 ダンヒーリー・ウェラーはこの技でツェツィーリエを虜にし、息子にも実地で教えようとしてツェツィーリエ相手にやっているところを無理矢理見せたのだと聞く(ただ見せるだけならともかく、薬を盛られて動けなくなってるところに夫婦で色々と悪戯したらしい……)。

 当時はわりと淡泊だった息子は、兄に相似した皺を眉間に刻みながら《当分精神外傷が残った…》と言っていたが、きっちり伝授されてしまったところを見るとやはり天授の才があるのかも知れない。

「やぁあああ……っ…おかしく…なっちゃ……あぁん…っ」

 喜悦の涙を流しながら嬌声を上げ続ける有利は一体、この年でここまで開発されていいのだろうか?

「おかしくなんてならないよ。ユーリ…とても可愛い……愛してるよ…っ」
「ひ…ひぃん…っ!……っ」

 俯せにされ、大きく尻を上げた体位を取らせると、ここからはまさに本領発揮と言うべきか…凄まじいまでの突き込みに有利の声が悦楽を濃くしていく。

「もっとぉ…突いてぇぇ……俺を、むちゃくちゃにして……っ!」
「ユーリが欲しいだけ、いっぱいあげるよ?」

 欲望を希求する獣と化した少年に、無体なまでの艶戯が施されていく…。
自ら望んで罠に掛かった兎は、美味しく狼に食べられてしまったのだった…。
 
 
   

*  *  *




『えらいことになってしまった……』

 それは、寝台の上で事切れるように失神した有利のことではなかった。
 ぴったりとした下着が愛欲の証でぬるぬるになったヨザックの立場である。

 濃い情欲の香りが漂っている今は良い。
 一人分の男臭が増えたところで大した問題では無かろう。

 だが…寝台が清められ、部屋が換気されたらどうだろう?
 幾らアニシナの不思議道具を使っているとは言え、臭いから察知されてしまうのではないだろうか?

 だが、好機はやってきた。
 コンラートが有利を抱きかかえて浴室に向かおうとしたのだ。

『今だ…!』

 この際、村田の機械のことは考えないことにしよう。
 多分…微妙に違う機械はコンラートが個人的に手に入れていたものなのだ(有利について何度か地球にも行っているから、その時入手していたに違いない)。
 きっと村田の機械には大した映像は入っていないはずだ…。

 そう信じたい。

『さーて…』

 マントを被って素早く部屋を出ようとしたその時、浴室の扉が開いてコンラートが出てきた。どうやら、たっぷりと積まれたタオルの上に有利を横たえてきたらしい。

『なにぃっ!?』

 ぴた…とヨザックは動きを静止させた。
 姿は見えていないはずなのに…ちょっとでも動けばばれてしまいそうな気がして生ける彫像のように固まってしまう。

『早くあっち行けよ〜っ!!』

 祈るようにしてヨザックは鼓動の音を隠していたのだが…コンラートは何故だか、殊更ゆっくりと近寄って来る…。 

「ヨ〜ザー…?何処にいるのかなぁ〜…?」

『ひぃいいいいい……っっ!!気付いてるーっ!?』

 泣きそうになりながら、硬直しきってぷるぷると震えるヨザック…。
 
「ユーリとやっている最中に、お前の喘ぎ声が聞こえた気がしたんだがなぁ…。どーこーだー…?」

 ひたひたと寄ってくるコンラートは、すれすれのところでヨザックを通り過ぎると寝台下の空間を覗き込んだ。
 やはり姿は見えていないらしい。

「ヨザ〜…?」

 ふと、コンラートの声が心細そうなものになった。

「……出たくなかったら良い。だが…お願いだ」

 やや薄めだが形良い唇がきゅう…っと噛みしめられ、切なげな声が漏らされる…。

「あんなことを陛下に強要する俺を…軽蔑しないでくれ……」
「隊長…」

 縋り付くみたいな声が愛おしくて、ついつい反射的に声を上げた途端…。
 ………ゆっくりと、コンラートの頚が回った。

「………そこか?」

 瞳に湛えられていた色は先程までの哀切に満ちたものなどではなく…明確に、《引っかかったな?》…と語っていた。


「うわぁぁああああああ………っっっ!!!」 
 


 夜の静寂に、木綿を引き裂くような悲鳴が響き渡ったという……。



*  *  *




「それで?君が撮れたのはこの映像だけなのかい?」
「ええ…その直後に隊長に見つかりまして、叩き出されました…」
「ふーん…。中途半端にこういう映像を送ってくるとはねぇ…。ウェラー卿ってば、良い度胸だよ…」

 《叩き出された》事実だけは証明できるボコられぶりに、村田も一応は納得してくれたらしい。
 それに、目隠しエプロンうさ有利の姿はそれなりに彼の欲望を満足させたらしい。

「グリ江ちゃんの働きは…まあ、ちょっと不満は残るけど、ウェラー卿相手じゃ健闘した方かな?」
「ははは…」

 何とか満足していただけたらしく、ヨザックは《ほぅ》…と安堵の息を吐いた。

 しかし…村田はきゅるんとした顔を上向けて、実に可愛らしくお願いしてきたのだった。

「実はさぁ…どうもウェラー卿も僕と同じような機種を持ってるらしいんだよね。グリ江ちゃん、データの入ったSD盗み出してくれない?多分、がっつり渋谷の映像が入ってると……」

 村田はまだ何か言い続けていたが、ヨザックは脱兎の勢いで逃げ出した。
 後で何か報復を受けることになろうとも、もうこの二人の間に挟まれるのはこりごりなのだ。

 

「もう赦して下さい〜っっっ!!!」


 
 グリエ・ヨザックの悲鳴混じりの声が、春の暖かな大気の中に響いていった。 

 頑張れグリエ・ヨザック。
 行け行けグリエ・ヨザック。

 君の観察に全国のコンユファンの眼差しが送られているぞ!






おしまい






あとがき



 …というわけで、今回も気の毒だったヨザックのコンユ観察話でした。
 なんだかんだで結構書いてますよね…。

 ほのぼのとした拍手文にエロエロとしたおまけ話をつけるのに意外とページ数を嵩ませてしまいましたが如何でしたでしょうか?

 全国の(多分少人数の)マニアックエロコンユファンの皆さん、よろしければ感想などお聞かせ下さいませ。