「彼女の秘密」−2
そこはお洒落なイタリアンのお店らしく、店員達の殆どがカンナに声を掛けていた。 「今日はまた可愛い子連れてきましたね〜」 「うっふふ〜、素敵でしょ?」 《また》ということは、普段もこんな風に気に入った後輩を連れてきているのだろうか?気っぷの良い鉄火肌の姐さんに見えるから、きっと面倒見が良いのだろう。 席に着くと、カンナと有利は料理だけを食べていたが、コンラートが酒が強いと聞くと、彼にだけ結構色んな種類のお酒を出してくれた。そのせいだろうか、コース終盤になるとコンラートとしては珍しく目つきがとろんとしてきて、少し眠たそうな顔になってしまう。 『あ〜…でも、俺もなんか変だなぁ…。身体がぽかぽかするや』 そう言えば、コースの中に少しお酒を使ったメニューがあったから、そのせいかもしれない。料理の味付けとして使われている分まで目くじらを立てるのもなんだから、そのまま食べてしまったのだ。 「あ…俺、トイレ行く」 「連れて行ってあげる。ちょっとココのトイレって分かりにくいのよ」 連れて行かれたトイレはこういう店に相応しい、清潔でお洒落なデザインだった。足下を照らす間歇照明はムーディーだが、化粧を直せるように鏡の所だけが強い照明になっている。 出すものを出してすっきりした有利だったが、鮮やかなタイルをはめ込んだ洗面所にカンナが待っているのを見かけると、待たせていたのかと思って一礼した。 …が、その上体がぐらりと揺れてしまう。 「あ…れ?」 「ユーリちゃん、どうしたの?」 「ごめんらさ…なんか、へん…」 一体どうしたのだろう?呂律もちゃんと回っていないような気がする。 「ユーリちゃんって本当にお酒に弱いのね。さっきの料理、ちょっとお酒多かったから…酔っちゃったのかしら?」 「そーかも…」 くたりと脱力した脚は見る間に崩れていったが、その身体を細身の女性とは思えないほどの力で抱き上げられる。 「少し休憩する?暑くない?服…脱ごうか?」 「ん…ん……」 こく…っと頷いて誘導されると、有利はすぐにピンク色の照明に彩られた可愛い部屋に入った。ハートマークがふんだんに使われているがデザインが洒落ており、センスの良さが光る内装だ。 「かーいぃ部屋…」 「そーでしょ?あたしがプロデュースしたのよ」 「ふーん…」 プロデュース…イタリアンレストランの内装ならともかく、その建物内の寝室にまでデザインしているとはどういう事だろう?少しだけそんな考えが頭を掠めたが、どうも頭の芯がぼんやりして考えがまとまらない。 ぽす…っとベッドに載せられると、ふかふかとした布団が気持ちよくて、少しひんやりしたシーツに頬を擦りつけてしまう。 「んん〜…気持ちいい……」 「もっと気持ちよくしてあげる。ほら…下着取っちゃおうよ」 「ん…?」 カンナの手が服の下に忍び込み、するするとブラジャー、ショーツをかすめ取ってしまう。 「ふふ…かーわいぃ〜…。ほら、飾っちゃうよぉー?」 「…え?」 きょとんとして見守ると、シーツの上に自分のブラジャーとショーツが並べられた様子に流石に声を上げてしまう。 「や…っ。な、なにして…っ!?」 「あたしも脱いじゃおっとーっ!」 良い脱ぎっぷりでカンナが脱衣していくと、スレンダーな体つきを包み込むセクシー下着がピンク色の照明に晒される。 「……っ!!」 なんということだろう…っ! 小さなレース製のショーツに包まれていたのは…コンラートと比べても遜色のない、立派なマグナムだったのである。 「…なーっっ!?」 「うっふふ〜…。胸はシリコン入れてるんだけどぉ〜竿の気持ちよさはなかなか捨てきれないのよね」 ぺろりと舌で唇を舐めると、欲情に濡れた眼差しでカンナは有利の下肢を捕まえる。 「さぁ〜て、ご開帳〜…」 「や…やや…やめっ…っ!」 ふわふわとしたミニスカートな上に、何らかの薬で自由を奪われているらしい有利の身体は有効な抵抗が出来ない。 下肢をM字に曲げられると、有無を言わさぬ力でゆっくりと開かれていく。 「コンラートさんって、巨根?こんな可愛い顔して、ユーリちゃんのおまんこがガバガバに開いてて、黒くなってたらヤダなぁ。ニールの馬鹿じゃないけど、あたしもユーリちゃんの処女膜眺めたかったなー」 「や…やぁあ…っ!コンラッド…コンラッド、たすけてっ!」 「コンラートさんにはしばらく眠っておいて貰うわ。ふふ…大丈夫。きっとお酒を飲み過ぎて寝ちゃったって思うだけよ?今夜一晩あたしに付き合ってくれて、記念にムービー撮らしてくれたらもう手出ししないから安心してね?」 「あ、安心なんかできない〜っ!!」 嫌だ。 絶対に嫌だ。 たとえコンラートにばれないのだとしても、彼以外の者に犯された身体でどんな顔をして今後付き合えと言うのか。 有利は…絶対に自分を許せない。 無かったことになんか、絶対に出来ない。 「ええ、出来ませんよねぇ…?」 突然響いた声に、びくりとカンナが振り返る。 そこには…信じられないことに、酔色を殆ど伺わせないコンラートがいた。 「あ…あんたっ!酔ってたんじゃあ…っ!」 「あはは…少しは酔っていますよ?強い酒に薬を混ぜられていたみたいですね、直線方向に歩けません。困ったなぁ…」 朗らかに笑っていた顔が…突如として、肉食獣の殺気を漂わせたかと思うと、飛来した手刀がカンナの首筋を打つ。 「…手加減が、出来ないじゃないですか…」 くすくすと嗤うコンラートは、がくりと脱力したカンナを手早く手張り紐で後ろ手に縛り上げて転がす。 しかし、一転してベッドの上で震えて泣いている有利を抱き寄せると、やさしくキスを降らして落ち着けさせた。 「遅くなってすみません…。店の者がなかなか口を割らなかったものですから…」 「コンラッド…コンラッドぉ……っ!」 ひっくひっくと泣きじゃくる有利に何度もキスをすると、そのまま深く口吻けて舌を絡め取っていく。 「ん…んん…」 「誰にも見せたりしませんよ…こんなに可愛いお口をね」 「ぁ…っ!」 コンラートが次に唇を寄せたのは、ふわふわミニスカートの下の《お口》であった。 「全く…ガバガバで黒いだなんて失礼ですよね?こんなに綺麗な色をしているのに…」 大きく下肢を開いて、左右の指でぱくりとヒダを開けば…とろりとした蜜が芳醇な香りを漂わせてながらしたたり落ちていく。ちろちろと舌先でクリトリスを弄ると、ふるふると有利の腰が震えた。 ヒダもその奥も綺麗なサーモンピンクをしていることに、ニンマリと笑みが深まった。 「や…やめ……っ」 「すみません…ユーリ。俺が油断していたせいで…媚薬を盛られたようです。だから…今日は加減が出来ませんよ?」 苦しげだがどこか甘い囁きに、有利はひくりと喉を反らした。 * * * 全くもって油断していたとしか言いようがない。 あまりにも積極的すぎるのが気がかりだったものの、カンナは女性にしか見えなかったし、念のため彼女の手元から料理に忍ばせているものが無いか確認はしていたのである。 だが、店の者もグルだと気づいた時にはかなりの酒を呑んでいた。 尋常ではない酔い方に異常を感じたコンラートは、わざと限界前に酔態を晒すことでカンナと店員の油断を誘い、寝込んだふりをして店員に連れて行かれたのである。寝室に横たえられたコンラートは、そこで店員を取り押さえて意図を問い正した。 すると、この店がカンナとつるんで素人娘を誑し込み、レイプビデオを作成しては売りさばいている業者と結託していることが分かったのである。 カンナはニューハーフのモデルだが、嗜好としては《女が好きすぎて自分も女の形を真似た》タイプのオカマであり、その点ではグリエ・ヨザックと対局を為す存在である(こんな時に引き合いに出してすまない…) 彼女…いや、彼は趣味と実益をかねてモデル仲間やタレント志望の少女を酒と媚薬で意識混濁させては強姦を繰り返していたのだ。おそらく修正なしのマスターテープを押さえれば、罪を確定することが出来るだろう。 「さて…困りましたね。下半身が落ち着かないと動けないですよね?」 本当に困っているのだろうか。 声はちょっと喜色を帯びてはいないか? 「やぁ…っ…やっ…そこ…きもひぃい…っ」 有利はコンラートの愛撫の中で次第に意識をとろかし、淫蕩に腰をくねらせては涎を流して笑みを浮かべる。びくびくとベッドの上で跳ねては、《もっと》と繰り返す姿に、しみじみ到達が遅れなくてよかったと胸をなで下ろした。 挿入されないまでも、幾度も繋がっているのに可憐なままのヴァギナや桜色の乳首、お尻の蕾だのを弄られていたら堪ったものではなかった。自分以外の指も目線も、決して有利に触れることを許せないコンラートは、決して狭量なわけではないと思う。 『それだけ…ユーリが大切なんだ…』 ちゅぶちゅぶと淫らな水音を立ててクリトリスを吸い上げ、歯で甘噛みしていけば、ぶしゅう…っ!と噴きだす潮がシーツとコンラートの顎を濡らしていく。 「相変わらず…感じやすい。媚薬のせいもあるでしょうけどね…」 元々感じやすい身体に媚薬など毒にしかなるまい。 《可哀想に》と思いつつも、素直に感じ易すぎる身体を愉しんだりもする。 「おっぱいもしゃぶっちゃいますよ?ユーリ…脱ぎ脱ぎして、おっぱいみせて?」 「ぅん…」 素直にこくりと頷くと、ぽろんと転げ出た形良い乳房にコンラートの喉が鳴る。 すぐに愛液で濡れた指で摘めば、《きゃぅんっ!》と声を上げて有利が跳ねた。そのまま唾液をたっぷりと絡めて、ぬるぬると粒と乳輪とを濡らし、歯先で舌で追いつめていく。 ふと傍らを見やると、ビニールのパッケージに包まれた新品の玩具を発見した。 あまり見たことのない性具だが、折角なら使ってみようか。 「これは…と」 「ん…んんっ!?」 びくんと有利の背筋が跳ねる。 それでなくとも敏感乳首を挟み込むように、緩くピンチを噛ませたのだ。ふわふわとしたピンクのウサギ毛がついているから、マイクロミニのブラジャーを着けているようにも見える。しかも、スイッチを押すと微細ながら震える仕組みらしい。 ジジジジ……っ 「や…ぃやぁあっ!」 びくびくと震える身体を俯せにして、ぺろりとスカートを捲れば水蜜桃の様なお尻が剥き出しとなり、大きく吸い付いて舐めあげれば、相変わらずのすべすべ肌に笑みが沸く。 双丘を押し広げた間に、慎ましやかに存在する蕾もやはり可憐だ。 その可憐な蕾に…オイルを絡めたショッキングピンクの粒を飲み込ませていく。 所謂、アナルパールというやつだ。 入れる時にはそこまで抵抗はないのか、つぷ…つぷりと次々に粒を入れられても、有利は抵抗して動くたびに揺れる乳房の先で振動するウサギ毛に感じてしまうらしく、こちらにはそこまで反応しない。 だが、全て入れきったところで雄蕊を雌芯に添え…ずぶずぶと銜え込ませていけばそうもいかなかった。 「ひぅうう……っ!?おく…ごりごり、するぅ……っ!」 「く…っ!」 容赦なく食い込ませていくたびに、確かに薄い肉壁越しに数珠状のアナルパールを感じ、挿入しているコンラートの方も普段とはまた違った快感を覚えてしまう。 ずっぷりと完全に飲み込ませたところでスイッチを入れれば…こちらも縦横無尽に後宮内を暴れ、二人に肉体同士ではあり得ない悦楽を与えた。 「ひうぅうう…っっ!!」 「あ…くぅう…っ!」 思わずコンラートの唇からもあえやかな嬌声が迸ってしまい、それが相乗効果になったように有利の声が艶を増していく。 「ぁああ……んんんっっ!」 「行くよ…ユーリ……っ」 道具に負けてはならじと腰をふるえば、薄い肉壁越しの衝撃に有利が歓喜の嬌声をあげていく。 崩れてしまった腕を背後から引っ張れば、まるで船舶の突堤につけられた女神像のように有利の上体が反り返る。 弓なりの背筋は見惚れるほどに美しかった。 「啼かせてあげる…もっと…っ!」 「あーーーーっっっ!!」 縦横に肉の責め苦を受けた有利が高い声を上げて絶頂を迎えた時…コンラートの白濁が蜜壷内で弾け、薄いゴムの液溜まりをぶくんと膨らませたのだった。 * * * 「ん…」 「気が付きました?」 有利が次に気づいたのはタクシーの車内だった。 まだとろけかけている意識で身じろぐと…《ぁうんっ!》と上がり掛けた声をさりげなくキスで塞がれてしまう。 タクシーのおじさんは強面の顔をぴくりと引きつらせたが、敢えて何も言わない。 「こ…コンラッド…っ!」 「もうすぐですよ。声…潜めてくださいね?《栓》をしていますから…」 あのあと幾度繋がったのかは朧気にしか覚えていないが、お尻の蕾はともかくとしてコンドームを使った蜜壺にまで栓をする必要はないではないか。それに…乳首にもまだ例のものが噛みついている。 「も…な、なんで?」 「だって…零したら大変でしょ?」 「ばか…っ」 さわ…と服の上から掌が胸を掠めていくだけで、びくんとあえやかに喉が反ってしまう。これで嬌声をあげるなというのは拷問に等しいのではないだろうか? しかし、その反応にちょっとだけ納得もしてしまう。 我ながら感じやすいこの身体は…微かな動きにも愛欲を感じて蜜を溢れさせてしまうのだ。きっと、何も栓をしていなければミニスカートを濡らしてしまったに違いない。 『うう…悔しいなぁ…』 だが、危ないところでニューハーフの魔の手から救ってくれた手腕や、《誰にも見せたりしませんよ…》という甘い囁きが思い出されると、全ての責め苦が快感に変わってしまうから不思議だ。 『畜生…好きだよ、コンラッド…』 どんな事件が起ころうとも、結局はどうしようもなく…この男に惚れていることを再認識することになるのだった。 * * * タクシーが到着したのは何故か渋谷家ではなく、初めて目にする瀟洒なマンションであった。 「え…?ここ、どこ!?」 「実は華々しく紹介するつもりでいたのですが…こんな時ですみません。二人きりで過ごすために契約した部屋なんです」 抱きかかえられて向かった先は…モデルハウスかと思うような豪奢な部屋で、広々とした空間には生活感のない家具が並んでいる。 なんと、コンラートは有利が本格的に魔王を始めてからも二人きりの時間を作るべく、部屋を買ってしまったらしい。財源はどこかというと…例のボブである。一体どうやって金を引き出したのだろうか。 聞くと、 『はは…彼の弱みの一つや二つや三つ知っていますし、猊下も応援してくれたりしますからね』 と、怖いことを言う。 頼むからあの友人と、あまりこういう方面で力を合わせないで頂きたいものだ。 「さ…では、気兼ねなくいただきます」 「わ…っ!」 純白のテーブルクロスが掛かった食卓に載せられると、下肢を大きく広げられて…下着のない淫部を思いっ切り晒されてしまう。 胸元を覆う布地も口で銜えて引き下ろされると、ぷるんと飛び出した胸のピンチがはずされ、じんじんと甘痛い痺れが滲む場所に舌を這わされた。 「恥ずかしいーから、や、やだぁ…っ!」 「いいじゃないですか、二人きりですよ?誰はばかることなく…エッチしましょ?」 「あんた、ここ買ったのってそれが目的かっ!」 「やだなあ、それが全てではないですよ?」 全てではないが、一部なのは確からしい。 「さ…お口は閉じて?」 「んむ…」 唇を深く重ねられたところに、するりと淫部に回された指が二つのフックを引き抜いていく。 ずる…ぬ……ちゅっ! きゅぽんと抜けた孔はひくひく震えて蜜を零し、しとどにテーブルクロスを濡らしていった。 「ひぁ…っ」 「さ…。玩具より美味しいものを食べさせてあげる。どのお口で食べたい?」 二本の指でぐちゅぐちゅと二つの孔を弄り回されて、有利は舌を震わせながら仰け反ってしまう。どちらも気持ちよすぎて…《どっちにも欲しい》等と口走りそうだったのだ。 『あー…もぅっ!』 がっしと下肢を絡めて恋人にしがみつくと、有利は切ない声でコンラートの耳元におねだりした。 『あんたの好きにして…』 …と。 おしまい あとがき すっかりお待たせしてしまってすみません〜。 ちょっとテーマの方が長編の「虹を越えていこうよ」のテレビ番組スタッフを手伝わされた時と被ってしまって「どうしよう〜」と思ったり、如何にも「有利を狙っています」という男性キャラにお持ち帰りされると、コンラッドの不甲斐なさを責めてしまいそうなので、結局《気の良い姐さんタイプが実は…》という展開にしてみました。 どうなんでしょ〜。エロの幅が狭いので、同じシリーズでやっているとやたらと道具ばかりが増えて申し訳ない。 精進して、立派なエロマスターになりたいものです。 |