「大賢者様の野望」C 「お客様も飴たべますか?」 まっしろなうさぎさんの発言に対し、普段の有利なら素直に《うん、食べる食べる》と答えたことだろう。 だが…もう有利は知っている。 この人畜無害な顔をした縫いぐるみが、凶悪な性質を持っていることを…。 「や…止め……っ!」 「まあまあ、遠慮なさらず」 複数のうさぎさんががっしりと有利の下肢を捕らえ、捲り上げたスカートの下から巨大な飴の棒を捧げ持つ。 ごつごつとした房状の飴はコンラートの雄蕊よりも太い砲身を持ち、シロップでたっぷり濡らされているとはいえ、そんなものに突き上げられては有利の華奢な身体が壊されてしまいそうなことは自明だった。 嫌々をする水蜜桃のような双丘を割り、飴棒が押し当てられる…。 しかし、ここは流石にコンラートが防いだ。 ひょいひょいとうさぎの首筋を掴むとあっという間に籠の中に詰め込み、漬け物石のようなチョコレートの固まりをずしりと上に置く。 そして…うさぎ達に汚された双丘を清めるように紅い舌を這わせた。 「ひぁ…っ」 水色のフレアースカートをたくし上げ、きゅっと引き締まった小尻を濡れた舌に舐め上げられると、有利の感じやすい秘部は蕩けるような刺激に蜜を零していく。 「どっちを責めるつもりかな…?ウェラー卿は。全く、うさぎさん達に手伝って貰えば…両方、愉しめるのにさぁ…」 獣の肢位でヨザックの巨砲を蜜壷に受けながら、お尻の上に陣取ったうさぎさんに後宮を責められる村田は不平を鳴らすと、コンラートは忌々しげにいらえを返す。 「どちらも俺の物だ…!うさぎになどくれてやるつもりはない…!」 十分に馴らされた蜜壷をぬるぬると指で確認すると、猛る雄蕊を割り入れて、ぐぶ…っと突き込んでいく。 『ああ…やっと……っ』 大切な人には違いないけれど、不本意な相手からの愛撫ではなくコンラートのものなのだと思うと、それだけで狭い体腔を満たす質量にさえ幸福感を覚えることが出来る。 みっしりと詰め込まれた大きな肉棒に、有利は苦しさと快感の入り交じる嬌声を上げた。 「ん…んん〜…っ」 「ユーリ…大丈夫……?」 「いいから…お願い、もっとして…っ!」 懇願に近い声に反応して、コンラートの律動が激しくなる…。 * * * 『なんて事態に巻き込まれたんだろう?』 コンラートは目眩のような感覚に頭を振る。 それでも…言い訳しようのない快感に締め付けられて《くぅ…》っと甘い声が漏れてしまう。 こんな時ですら、有利という存在に感じきってしまう自分に自嘲の笑みが浮かぶ。 スカートをたくし上げて、すらりとした右脚を肩に抱え上げて突き込めば、白濁に濡れた豊満な胸がゆさゆさと揺れて…熟れた水蜜桃のような先端部分が誘う。 繋がったまま身を捻って桜粒に齧り付けばこりこりとした質感が口腔内で踊り、有利の締め付けが一層きついものに変わったのが我が身で感じられる。 「ひぁあん…っ!」 きゅるる…っと螺旋状にうねる肉壁は清廉な外見にもかかわらず酷く淫らで、あがる嬌声は深い悦楽によって艶を帯びていく。 『これが…俺の願望なのか?いや…ユーリの…?』 有利が相手という絶対条件さえあれば、ありとあらゆる手管で…恰好で、思うさま抱いてやりたいと思うのは正直な欲望として存在する。 こういうエプロンドレスも可愛いし、巫女さんや猫耳、ちょっとあざとくボンテージなんていうのも萌える。だから、願望としてこういう要素がないとは断言できない。 だが…何故ここに村田やヨザックが混入してくるのだろうか? 正直、邪魔だ。 『アニシナ…これは、絶対に設定ミスだと思うんだが…』 コンラートにも有利にも、公然猥褻をするような趣味はない。 それに、浴びるほど女など抱いてきたコンラートにとって、手に余るほど大きな胸など取り立てて固執するほどのものでもない。 いや、思いっきり吸い付きながら言うことでもないのだが。 『有利だと思うと、もうそれだけで何もかも可愛らしく思えるらしいな…俺は』 「ゃあ…ん……っ」 きゅ…っと強く吸い上げれば甘い声が跳ね、びくりと震えて気を遣ったらしい彼の体腔内に、勢いよく白濁を注ぎ込む。 「………っ……っ……」 感じすぎて声も出ず…ふるふると小刻みに揺れている有利を正面から抱きしめて、その華奢な肢体を両腕の中に囲い込むと、熱い脈動がずくん…ずくんと繋がった場所から感じられる。 『大きいのも楽しいが、薄い胸の一部がぽぅっと色づいているのも綺麗なんだよな』 普通ならそんな機能を持たないそこが、コンラートの愛撫で淡紅色に染まり…唾液に濡れてぷるんと痼る様など芸術と呼んで差し支えない美しさだといつも思っている。 『こっちも気持ちよかったけど…』 ずるりと雄蕊を引き抜くと、指で馴らしておいた後宮へと位置をずらして半ば勃ちのそれを宛えば、頑なな蕾がそれでもコンラートの意図を汲むように、ひくぅ…っと開こうとするのが分かった。 受け入れようとしてくれるのだ。 この、ちいさな蕾で…。 『なんて健気で、可愛いんだろう…!』 いつものことながら、きゅうんと胸がときめいてしまう。 ついでにきゅうんと雄蕊も硬度を上げてしまう。 にるる…っと先走りに濡れる先端を押し込むと、やや性急に突き入れて燻らせば…有利は細い腕を伸ばして懸命にしがみついてきた。 「コンラッド…っ」 「ユーリ……っ!」 律動が、激しくなる。 ずぶずぶと突き入れる動きが激しさを増し、応えるように有利の腰が跳ねる。 互いを染める快楽のスパークの中で、二人は意識と視界が白変していくのを感じた…。 * * * 「ん…あれ……?」 「ユーリ…」 「コンラッド、おは…」 魔王居室の寝台の上で、パジャマ姿で目覚めた有利は朝の挨拶もそこそこに布団を捲り、すっかり色を変えてしまっている秘部に赤面しつつも、はぐった下着の中身を見て《ほぅ〜》っと安堵した。 「チン毛ちゃんと生えてるよっ!」 「良かったですね」 くすくすと笑いながらも、コンラートは微かに眉根を寄せて有利の目元を拭った。 「あ…寝ながらやっぱ泣いちゃってたのかな?わー…恥ずかしい…」 「無理もないです。あんな事をされて…。すみません、ユーリ…。グウェンを庇うためとはいえ、もうアニシナの道具の台になどさせません…!」 「いいよ、大丈夫だって!」 にっこりと微笑む有利だったが、気は強いが気のちいさいこの少年にとって、一夜の出来事はそう簡単に払拭できることでもなかったらしい。 その影響は、暫く継続することになる。 * * * 「………気付いてるのかな?」 村田は眉根に深い皺を刻み、心なしか泣きそうな顔をして卓上に肘を突いている。 「どうでしょうねぇ…。隊長は薄々勘ずいてるみたいで、いつも俺を殺しそうな目で見てくれますけどね…」 ピンクのメイド服が心なしか色褪せて見えるヨザックの表情は、こちらは気のせいではなく色を失っている。 証拠がないので物理的には無事だが、色々と精神攻撃を受けているらしい。 「渋谷…僕が近寄ると眼が怯えたり、反射的に逃げようとするんだよ」 「そりゃまぁ…」 あれだけのことをしたのだ。 本能的に避けようとしても無理はないのではないか。 「どうしたら良いんだろう?」 「謝るとか?」 「だって、僕がしたとは思ってないんだよ?」 有利は今でも、あの夢はアニシナの設定ミスによるものだと思っている。だから、純粋に今の行動は村田に怒っていると言うよりは…怯えているのだ。 村田の姿を見ることで、半陰陽の肉体を剃毛されたり、うさぎの縫いぐるみにフェラチオされたという信じがたい体験を思い出すのが怖いのだろう。 「前にやったのも酷かったですけど、あん時は猊下…ちゃんと撲たれて、怒られたでしょう?」 「……うん…」 「今回は、ある意味もっとタチが悪かったですからね…。俺達がやったとは知らせずに、夢の中で蹂躙しちゃったんですから」 「他人事みたいに言うなよ!君だって…」 「ええ、俺も楽しんじゃいましたし…そもそも、止めなかった。同罪ですよ。だから言うんです。正面から謝るべきだってね」 「………」 策略によって事を解決する性癖がある村田にとって、《正面切って謝る》ことが難しいことが分かっていて、それでもヨザックは告げた。 まだ思い切りがつかないらしい村田は、何か考えるように暫く沈黙していた。 すると…コンコンと扉を叩く音がした。 「ありゃ、アニシナちゃん…」 「馴れ馴れしい口を利くものではありませんよ、グリエ・ヨザック」 扉を開けたフォンカーベルニコフ卿アニシナは、いつものように小気味よいほどの毒舌を振るうが…その眼差しの鋭さはただ事ではない。 どうやら…何かに激しく怒っている様子だった。 釣り上がった水色の瞳が鮮やかに色を変え、眩しいほどに光っている。 「猊下、私を騙しましたね?」 「え?心外だなぁ…僕はフォンカーベルニコフ卿の実験に協力を…」 「陛下に、あのような行為を強いることを私が望むとでも?」 アニシナの言葉に村田の口角が引きつる。 「で…データを……」 アニシナには記録されたデータを都合良く弄ってから渡したのだが…どうやら、発覚したらしい。 「は…っ!舐められたものですね。私の造った魔道装置にあのような改竄をして、ばれないとでも思ったのですが?サクサクっと解除して記録されたデータを確認したら…。まあまあ…随分なことをしでかして下さったものですね?幾ら双黒の大賢者様とはいえど、許されることではありませんよ?」 びきびきとアニシナのこめかみに怒り筋が浮き上がり、組んだ両腕が神経質そうに震える。 アニシナは基本的に、魔王陛下に忠誠を誓っている…というよりは、魔王陛下のちんまりとした可愛らしさが大好きだ。 その有利を陵辱する道具として自分の造った魔道装置が悪用されたことは、激怒に値する凶行であるらしい。 「も…申し訳ない、フォンカーベルニコフ卿!僕も今回のことでは反省を…」 「では、形で表して頂きましょう!」 にんまりと嗤ったアニシナは、勢いよく大賢者様とヨザックの襟首を掴むと、ずるずると引きずっていった。 向かう先はアニシナの実験室なのだろう…。 * * * 「…先日は、世話になった…」 憮然とした顔をしているが、それが照れ隠しなのは明確だ。 フォンヴォルテール卿グウェンダルはアニシナに邪魔されることなく、心ゆくまま仔猫たんの面倒を見たことで心癒されたのか、いつもより明るい顔色で有利に声を掛けてきた。 手に持っているのは、可愛くラッピングされた包みだ。 「えー?気にしなくて良いのに…俺にくれるの?」 「ああ…あれから、アニシナも《陛下の口利きで猊下が実験に付き合ってくれてますから、あなたは好きなだけ生物と戯れていなさい》というのでな…。時間があったのだ」 「編みぐるみかな?」 ごそごそと包みを解いて、不細工な編みぐるみの種族名を正確に言い当てることが出来るかどうか懸念していたのだが…現れた布の固まりに、有利は一瞬絶句した。 「……これは…」 「可愛いだろう?今回は気合いを入れて、お前が喜ぶように正確な図面を引いたのだ」 確かに、見事な縫製を施された縫いぐるみは、普段の珍妙な編みぐるみとは出来が違う。 だが…それだけに、有利にとってはちょっと困ってしまうのだ。 何故なら…妙に出来の良い縫いぐるみは…あの悪夢の中に出てきたうさぎさんに激似だったのだ。 「う…嬉しいな〜…」 「うむ。抱き人形として使えるように出来ているから、寝室で使うと良い」 機嫌良く頷くグウェンダルに、突き返すことは出来なかった。 かといって、こいつにしてやられたことを考えるとグレタにあげるのも嫌だ。 『ど、どうしよう〜…』 困り果てた有利の手の中で、光の加減だろうか…うさぎさんがニヤリと嗤ったような気がした…。 おしまい あとがき 何か、B級ホラー映画の引きみたいな終わりに…。 いや、それ以前に色々とアレなんですが、個人的には自分のある種の嗜好を満たせて楽しかったです。 時々、有利を羞恥の涙にくれさせたくなっちゃうのですよ。 ですが、ヨザックの独白にもあるように《羞恥に啼かすのは良いが、屈辱に泣かすのは嫌》なんですよ…。んで、酷いことをした後で加害者が反省してないのも嫌なんです。 なので、やっちゃった後の幕引きがいつも難しい…。 ずっと仲良しではいて欲しいですしね。 結局、村田はアニシナさんに色々としてやられたお陰(?)もあって、有利にちゃんと謝ります。 でも…基本的にこのシリーズ(まさかのシリーズ化。一年に一回、書いてしまいそうです。ごめんなさい…)の村田は欲望を止められない人なので、来年もまた何かしそうです。 この話、もともと需要は少ないだろうなーと思っていたら案の定反応が薄かったので、「感想下さい〜」と泣きついたら反応して下さった優しい方々がおられて嬉しかったです。ありがとうございました。 圭様も少し元気になられたようで、読んで頂けて良かったです! |