第5章 ZーA【濃口】









「んん……っ」

 壁に押しつけられたまま激しいキスに翻弄されていると、そろりと忍び込んできた指は体操着の裾野から、つぅ…と形良い臍をなぞっていく。

「ゃだ…っ!くすぐっ…たい……」

「そう?じゃあ…こっちは?」

「ゃあっ!」

 裾をたくし上げて、現れた肋骨弓に沿って舌を這わせれば…しなやかな背はびくりと震えて壁の上で弾んでしまう。素直な反応を愛でながら舌はますます潤いを帯び、呼吸に上下する胸の膨らみに絡みつき、きゅ…ぅっと吸い上げる。

 そうされれば感じやすい有利の腰には甘やかな電流が流れ、頽(くずお)れそうになるその腰を逞しい腕に抱き留められてしまう。

「ベット…行こうよぉ……」

 もう泣き声混じりになってしまう唇に指を銜えされられ、節くれ立った指をゆるゆると舐めることになる。

『硬い…コンラッドの、指……』

 噛みつくなんて出来なくて、思わず愛おしげに…丁寧に舌を這わせてしまう。

 爪の甘皮に優しく歯を立て、戦闘でついたのだろう傷跡を…そうすれば治るのならばいつまででも舐めてあげるのに…などと思いながら舌先でつるつるとなぞっていく。

 気がつけば喉奥近くまで含み込んだ指がやわやわと押してくるのに、きゅるりと舌を絡みつけた。

「随分とお上手になりましたね…。俺の方が煽られてしまいますよ…」

 そんなつもりはないのだが、情欲の色を濃くしたコンラートに艶めいた瞳で見つめられて頬が染まってしまう。

「もにゅーっ!」

 指を銜えたまま不満の声を上げれば妙な声音になってしまい、ますます頬が染まっていくのだった。

「唾液を零しながら頬を染める姿がまた艶かしい…」

『どんな艶なんだか…』

 艶という点で言えば、コンラートの方が余程つやつやしていると思う。

 ただ、いまは危険な獣を思わせる精悍で妖しい艶やかさなのが、中年期に入って油ギッシュな艶にならないよう祈るばかりだ。

『串カツが似合うようになったコンラッドとか、プールに飛び込むと水面に油の浮くコンラッドってどうだろう?』

 《そんな風になってもやっぱり好きなんだろうなぁ…》などと思ってしまう有利は、かなりの勢いで脳が腐敗している自信があった。

「ん…っ」

 きゅぱ…っと指を引き抜かれれば粘りのある銀色の糸が引き、切れた断端がぴちゃりと唇を濡らすのが羞恥を誘う。

 塗れそぼる指はその粘性の質感を纏ったまま胸の膨らみを捉え、りゅりゅ…っと滑るようにして弄られれば桜色の彩りを帯びてコンラートの目を楽しませる。

「はぁ…っ……コン……っ」

 執拗な愛撫を胸に受け続け、その度に酷く感じてしまう有利はますます背を反らせるのだが、腰を支えられているせいで倒れることも出来ない。いまや有利は頭の一部だけを壁に預けるという不安定な体勢で、殆ど宙に浮くようにして翻弄されている。

 ふわふわと浮き気味な足下…そして、コンラートに向かって突き出されるような腹部…その場所で存在感を示し始めたものに、ぐぃっと腰を押しつけられて有利は飛び上がった。

「ゃっ……やっ!」

 布越しのもどかしい感触にゆるゆると煽られ、痛いような…燻るような感覚が身体の中心で燃え上がっていく。

 直接触って欲しい…布から解放して…

『舐めて…くれたら……』

 恥ずかしい要求をとてものこと口にすることは出来なくて、自分から腰を突きだしてぐりぐと押しつければ、不意に短パンが下着ごと引き下げられる。

「ぁ…はぁ………っ」

 玄関に跪いたコンラートが、有利の高まり始めたそれを口に含んでいる。

 その情景が…よりにもよって丸写しになっている様を有利は目撃してしまった。

 有利がもたれているのと丁度反対の壁には等身大の姿見鏡が置かれている。

 引っ越ししてきた時に、美子が《お出かけの時に身だしなみチェックしとかなきゃ!》といって買ってきたのだ。

『恨むぜお袋!』

 思わず心に叫んでしまう。

 ぶかぶかの長ランを羽織り、濡れた胸元を晒して…薄明るい玄関先で男に挙立を舐め上げられる姿はあまりにも淫靡で、思わず羞恥というより情けなさに目元が潤んでしまう。

「ユーリ?ああ…これは恥ずかしいですね」

 振り返ったコンラートも気付いたのか、薄く苦笑して有利を抱え上げた。

『あー…やっぱりコンラッド優しいや…』

 お姫様抱っこなのも構わずうっとりと目を閉じていた有利だったが、今日のコンラートはそんなに甘くはなかった。

「ん!?」

 すぐさま降ろされた場所は玄関先のままで…しかも、地面に直接座るコンラートの上に背面抱っこ状態で座らされていて…右足に短パンと下着を絡ませ、左足には膝下までの紺のソックスという有様の有利は…鏡に向かって思いっきり脚を開かされている。

「やー、良い眺めですね」

 自分の背後でにこにこと相好を崩しているコンラートまでご丁寧に丸写しである。

「ばっばば…馬鹿かアンタ!?良い眺めな訳あるか!恥ずかしいからヤーメーテーぇぇぇぇっ!」

「見たくありませんか?」

「そうだよっ!誰が見たいもんか!」

「おかしいなぁ…独り立ちした息子さんは何処の世界でも讃えられるのが相場だと思ったんですが」

「その息子さん、違う息子さんだから!」

「じゃあクララとかガンダムとか…」  

「俺の息子さんは詐症で立ち上がらなかった富豪の娘でも、親父の設計したモビルスーツでもないから!」

「しょうがないなぁ…じゃあ、こうしましょう」

 良いことを思いついたとばかりににっこりと微笑むと、あろうことか…コンラートは有利の鉢巻きを解くと、きゅ…っと目元を覆う形で締め直したのである。

「……え!?」

「ね…これで見えないでしょう?」

『もう反論はありませんね?』

 とばかりに、広げられた脚の間にするりと絡みつく指がきつめに鈴口に押し当てられれば、ぬるつきだした先端がぬちゃりと水音を立て、甘過ぎる痺れが下肢を跳ねさせる。 

「ゃっ……ゃあ……っ」

 白い布地に覆われた視界は全く見えないというほどではなく、幅が細いせいもあって微かに下肢の間で上下する男の手だとか、覆い被さってくるダークブラウンの髪だとかが視界を掠めていく。それがあからさまに全てが見えてしまうよりも淫猥に、有利の情欲を煽っていくのだった。

『俺…全部コンラッドに見られてんのに…っ!』

 自分で確認することも出来ない痴態を上から…そして鏡写しに全て見られている…。

 その事が背徳的な悦びにさえ感じられるのか、妙に素直な《息子さん》は元気に立ち上がっていく。  

「ユーリ、イッていいですよ……」

「やっ…だっ……てばっ!あんた……見てるのにっ!」

 玄関先で白濁した液体を射出する様を、こんな明るい場所で見られてしまうのはあまりにも居たたまれない。

「じゃあ…俺も目を瞑りますよ」

「本…当……?」

「ええ、イッたら部屋の中に入りましょう?」

「ん……」

 急に安心してきてほぅっと息を抜くと、強張っていた肩の力が抜けて…すとんと背中をコンラートに凭れさせる。

「感じるままに…イッてご覧、ユーリ……」

 こんな時ばかりざっくばらんな口ぶりになるこの男は、絶対計算ずくに違いない。 

 けれどそんな口車に乗り、節くれ立った大きな手のもたらす感触に身を任せれば…まもなく訪れた絶頂に瞼の裏に白い電撃が奔る。

「ん……んんっっ!」

 びくびくと震えながら情欲の迸りを放つ挙立を…コンラートが見逃す筈など無かった。 きっちりと立ち上がった肉の天頂で色づく、ピンク色の鈴口…音をたてんばかりに射出されていく液体の放物線……そんなこんなを有り難く拝むと、コンラートは獣めいたその笑みを一層深いものにする。

『そう…そうやって感じて下さい、ユーリ…。せめて今だけは、俺のものなのだと感じさせてください…』

脱力した身体をふわりと抱き上げられると、有利は目元を覆う鉢巻きに手を掛けた。…が、その手はやんわりと止められてしまう。

「折角の目隠しプレイですから、そのままでいて下さい」

「え?これ…プレイだったの!?」

 頬をふくらましながらもコンラートの楽しげな声には逆らえずにいると、有利の身体はクッションのきいた革製品の上に降ろされた。肌に触れる感触から居間のソファらしいことが分かる。どうやらまだベットには連れて行ってもらえないらしい。

 そして何十秒か席を空けていたコンラートが戻ってくると、有利の口元に何かを押しつけてきた。

「飲んで下さい」

 唇に触れているのは硬質な硝子の感触。

 そして鼻腔を燻らすのは微かな甘い香り…。

 どうやら、スポーツ飲料のようだ。

「今日は沢山汗をかいていますから、もう一運動する前に水分を取っておいて下さい」

 こういうトコロの心配りは流石に細やかである。

 《もう一運動》の意味するところを深く考えなければ…であるが。

「サンキュ!」

 言われて初めて自分の喉の渇きに気付いた有利は、コップを取ろうと手を伸ばす…が、それも制されてしまい、そのまま少しずつコップを傾けられる。

「このまま飲んで下さい…折角ですから」

 何が折角なのかよく分からないが、上手くコップの傾きに合わせないと零してしまうので、乳飲み子のように必死になって液体の流動に唇を合わせていく。

 こく…こく……

 コンラートの動きに合わせる内、有利は唇の感触が普段よりも敏感になっていることに気付いた。

 見えない分、意識が集中するのだろうか?

 かちりと硝子に歯が当たり…口の端や上唇の辺縁に、含みきれなかった液体が滲む…。

 そして、硝子が離れていった後にゆっくりと触れてきたのは…

 …独特の香りを持つ、熱い猛り。

「これが…何か分かりますか?」

 ぴちゃ…と濡れた先端が唇に触れれば、コンラートのものが微かに震えるのが分かった。

 何なのかは分かる。

 珍しく、コンラートの方からこの行為を求めてきていることも…。

 だが、如何せん舌が縺れて…頬が染まって、その固有名詞を口にすることが出来ない。

「こ…コンラッドの……ャッ………」 

 語尾が小さくなってしまった上、漠然とした表現を使ったせいだろうか?コンラートがくすりと笑ったのが分かった。

「ヤツでは分かりませんね…ちゃんと言って?」

「い…意地が悪いぞアンタっっ!」

 言いにくいことを分かった上で試すような行為を強いる…その真意を掴みかねて有利は眉根を寄せた。

「アンタの……チンコじゃん…………」

「ええ、そうです…舐めていただけますか?」

「ん…む………」

 そっと押しつけられてくるそれに、まだ慣れなくてぎこちない愛撫を施す。

 裏筋を丁寧に舐め、先端の苦い液を啜り、頬を濡らしながら二つの袋を含み、転がす…。 その行為そのものよりも…静かに上方から自分を眺めているだろうコンラートの視線を意識することに羞恥を誘われた。

 まだ息こそ乱れていないが、有利が拙いながらも愛撫を施すたびに高ぶりは隆々と迫り上がり、その硬度と容積を増していく。

 おそらく、それはもたらされる機械的な刺激よりも視覚による要素が大きく影響を及ぼしているのだと推察される。

 目隠しをされた上で長ランを羽織り、乱れた体操着を辛うじて着ていて…

 と、いうところまで思い出したとき…有利はあることに気付いてしまった。

『あれ…俺、パンツ何処行ったよっ!?』

 現在の自分の見てくれをすっかりぽんと失念していた有利は、直接臀部に感じる革の感触から自分の股間ギリギリに体操着の裾がかかり、一度達したにもかかわらず頭をもたげ始めたものが体操着を押し上げているのだいうことを…いま初めて自覚した。

 そんな状態の肢体が…この《チラリズム》を信奉する男の食指に合わないはずがないではないか!

「ありがとうございます。もう良いですよ、後は…」

「わひゃっ!」

 ソファに伏せる形に体位変換されると、スカートのように長ランの裾をたくし上げられ、ぬちょりとした…普段使っているオイルとは異なる肌合いのもの…多分、ぷるぷるとした多少堅めのジェルが、後宮の入り口と再び高まりかけたものへと絡んでくる。

「何…これ…………なんか、熱い……っ」

「発熱粒子が含まれているんですよ」

 小鼻の汚れを取るためのクレンジングジェルに似たそれは、微粒子のカプセルが次第に溶けていって、一過性の熱を付着部にもたらす。それが…それでなくとも感じやすくなった場所で温度を上げていくのだから、有利としては堪ったものではない。

「ぁ……や、やだ……っ、熱……いぃ……」

「そう?それではこちらにも塗っておきましょうか」

 体操着の裾から忍び込んだ指が、ぬちゃ…と淫猥な音を立てて胸の膨らみにジェルを塗りつける。

「はぁ…っ!」

 ジェルに含まれる微粒子の…そのザラリとした感触にさえ有利の背筋は跳ね、最早コンラートの思うままに腰を揺らしてしまう。

 媚薬というわけではない…単に少し熱く感じられるだけのジェルに翻弄され、有利のしとどに濡れた高まりは堪えきれない液を零してしまう。

「おや…お行儀が悪いですよ、ユーリ…。涎をこんなに垂らして……」

「ぁぁぁあんっ!」

 背に覆い被さってくる男の体臭と耳朶に注がれる意地悪な…それでいて甘い声。

 そして高まりへと絡みつつも絶頂は迎えさせてくれない指使いに、有利はあられもない嬌声を上げ続けた。 

「ユーリは本当に佳い声で啼く…ね、もっと聞かせて?」

「ゃっ…や……ぁぁぁんっ!」

 じゅるじゅるとジェルを塗りたくられ、擦り上げられる感触に身も世もなく感じてしまい、自然に滲む涙が白い布を濡らしてしまう。

「こっちにも…欲しい?」

 くぷ…と指先だけを後宮の入り口へと含ませれば、《もっと欲しい》とでも言いたげに括約筋は収縮し、指を奥へ奥へと招き入れようとする。

「ユーリは上の口も下の口も…とってもおしゃぶりが上手だね」

「馬……鹿っ!」

 そうとしかコメント仕様のない台詞に首筋まで真っ赤に染めてしまう。

『うぅ…俺もひととし取ったら、こういうオッサン臭い言葉責めプレイするようになるのかなぁ?』

 《誰にするのか》という突っ込みはさておき、有利には未来に思いを馳せているような余裕はあまり無かった。    

ずぶずぶと…太くて長い指が小さな穴に我が物顔で入り込んできたのだ。

「んんんっ!!」

「熱くて…締め付けてきて……ユーリのお肉は最高にいやらしくて、最高ですよ…」

 一方の手で臀部のまろみを楽しみつつ、ぐちぐちと抜き差しされる指…。 

何時しか3本に増やされた指が、時に繊細に肉壁をまさぐり…時に強引に突き込んでくると、えも言えぬ悦楽を引き起こして有利を一層煽り立てる。

「もぅ…もぅ……お願いっ!」

「何をお願いされているのか分かりませんねぇ…」

『悪代官かアンタはっっ!』

 今日はとことん意地悪キャラで行くつもりなのか、コンラートは嬲るように微苦笑すると、有利の高まりを握り込んだ。

「まだイッてはいけませんよ?先程イッたばかりでしょう?先にそう何度もイかれては寂しいな…」

 何故だか…その《寂しい》という言葉だけが妙にリアルに聞こえてきて…有利は《アレ?》と小首を傾げる。

 なんだか本当に…痛切なくらいコンラートが《寂しい》と感じているよう思えたのだ。

「俺もイかせて下さい…貴方の中で……」

「は……ぁっ!」

 そんな感慨を深く追求する間もなく、硬くて熱い肉棒がゆっくりと…しかし確実に有利の体内へと銜え込まされていく。

『こんなに華奢な子どもの身体に…尊崇すべき主の肉の中に、俺の楔が深々と埋め込まれている…』

 いつもながら、それは感動やら背徳やら征服欲やら…様々な感情をコンラートの中に掻き立てる情景であった。

 コンラートの大きな手ですっぽりと包み込んでしまえる双丘の間の…ごく小さな桜色の穴は、いまや恥ずかしいほどめいっぱいに広げられて成熟した男のものを銜え込んでいる。

 そして彼はまた、ココで《前》でイくよりも深く感じることが出来るのだという。

 その快楽を教え込んだのは…そしていま味合わせることが出来るのは、この世に唯一人…コンラート・ウェラーだけなのである。

『この至上の宝玉のような人を、俺は今独占しているのだ』

 たとえ睦言の間だけのことだとしても…せめて今だけ、そう感じさせて欲しい。

 コンラートは複雑な感情を振り払うようにダークブラウンの頭髪を振ると、十分に馴染ませたそこを抉るように律動し始めた。

「ふぅ……ん……はぁぁ……っ!」

 もう止めどなく溢れてくる嬌声に喉が枯れんばかりに引き絞られ、しとしとと滴を零す高まりは、いつでも達することの出来る状態だというのに付け根を残酷なほどきっちりと押さえられているために達することを許されない。

 不意に…その拘束が解けた。

『やっとイける……っ!』

 歓喜に震えたのも束の間…有利は繋がったまま抱え上げられ、あろうことか、ソファから引きずり降ろされた状態で床に手を突くことになった。

 しかもコンラートは立ち上がった状態で悠々と有利の肉を責め続けているのである。

「……っ!」

 手押し車のように持ち上げられる姿勢はバランスが悪く、自然といつも以上にコンラートを締め付け、その分有利自身も感じてしまう。

「やだ……降ろし…てぇぇ……っ!」

「そのまま…歩けたらね」

「…っ!?」

 この状態で、唯一接地している腕で前に進めというのか。

「出来…ない……っ」

「じゃあ、このままですよ?」

「コンラッド……っ!」

 間違いない。

 この男は何かに対して酷く屈託を感じていて、それを誤魔化すためにいつも以上の行為に耽溺しようとしているのだ。

 おそらくは…どこまで有利が自分の我が儘を聞いてくれるかで、子どもが母を試すようにその愛を確かめたがっているのだろう(単にオッサン趣味が高じただけという可能性もあるが)。

『コンチクショーっ!やってやろうじゃねぇかっ!!』

 どうせやるだけやったら、今度は変に反省してショボンとなるのだ。    

 ならば、今は我が儘でも何でも聞いてやろうじゃないか。

 有利は男前にも(?)そう決断すると、基礎トレを欠かさない生活に感謝しつつ両腕に力を込めた。

 一歩…

 二歩…

 三歩……

 腕への負担と言うより、身じろぐたびに背筋を貫く快楽にびくびくと震えながら有利は進み…そして荒い息を吐いて頽れた。

「も……限、界……っ!」

「良くできました。ご褒美を差し上げましょう……」

 コンラートは優しく囁くと、有利の背を自分の胸に凭れさせて膝裏を抱え上げ…そのまま空中に浮き上がった姿勢で有利を突き上げ始めた。

「ぁぁあああっっ!!」

「貴方が騎馬戦をしておられる間、随分と嫉妬しましたよ。馬役になりたい…とね。けれどこれで胸の痼りがとれました。貴方をこんな形で騎馬させられるのは俺だけですからね」 とんでもない騎馬もあったもんである。

『こんなヤラシー騎馬戦嫌だよっっ!』

 と、いうより…相手を完全に浮かせた状態でこんな連続突き上げ(仮に名付けるとすれば《真空地獄突き》とでもいうところか。いや、真空では息が出来ないが…)が出来る男などそうそう居るまい。

 ある意味芸達者な男、コンラート・ウェラー。

「さぁ…イッて良いですよ」

「ぁあっ……ゃああっっ!!」

 後宮を抉られる感覚に、漸く戒めを解かれた高まりはあっさりと解放され…それと同時に身体の最奥で弾けたジェルよりも《熱い》感触に、意識がふぅ…っと飛びかける。

 有利が甘く激しすぎる余韻に息も整わないまま凭れていると、コンラートはずぶりと繋ぎ目を乖離させたものの…そのまま有利を抱っこした状態でソファに腰を下ろし、有利の肩口へと凭れかかってくる。 
 






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