第三章 YーA【濃口】









「ゃ……」

 ふうっ…と、腰から背中に掛けてせり上がってくるようなその感覚が、性的な興奮のためだとまだ理解することが出来ない有利は、まだ触れられてもいないのに硬くしこってくる胸の突起をもどかしげにパジャマに擦り付ける。

 その動作が目に入ったのだろうか…コンラートは唇の端だけで婉然と微笑すると、かり…と有利の鎖骨に歯を立て、胸元の白い肌にくっきりと紅の花弁を刻むと…器用に右手だけでと3つばかり釦(ボタン)を外してしまう。

「わ…っ!」

 意識するよりも早く胸元をはだけられ、無防備に空気に晒されたふくよかな膨らみを大きな右の掌に包み込まれると、広く肌に当てられたその乾いた《大人の男の手》の感触にぶるりと背が震える。

 コンラートの端正な顔立ちが胸元に近寄っていくのが…スローモーションのように鮮やかに有利の網膜に刻み込まれた。

 ふくっとした柔らかそうな胸と、その間隙の鳩尾部分で羽を広げる紅い蝶…。

 その蝶に唇付けられると、身体中がかぁっと火照った。

「…っ!」

 既に硬くなり始めていた胸の突起が、意想外に暖かな口腔内に引き込まれて…優しく…けれど残酷なくらい明確な快感を響かせて、きゅうっと吸い上げられる。有利の喉からは声にならない嬌声が響き、そこからはもう…暫く自分が何をしていて、何を喋っているのか分からないほど興奮してしまった。

「ぁっ!…コンラッ…あっ……」
「ユーリ…可愛いよ……それに、なんて滑らかな肌なんだろう…この桜色の蕾も俺の唾液に濡れて、今にも咲き始めそうで…」
「やっ……」 

 執拗に片側ばかり舐り…指先で捏ねて苛めていたら、突き出すように片側の蕾をコンラートの口元へと運んでくるから、そのことで有利が羞恥を感じる間を与えずに口に含み、丹念に愛撫を加えていく。

「こっちも…気持ち良い?」
「うん…気持ち良い…気持ち良いよぉ……っ」

 しゃらしゃらと音を立てて髪を取り乱すと、目尻に滲む生理的な涙が頬を伝うのを舌で舐めあげて、再び濃厚な唇付けを与える。

「ふ…くぅ……んむ……」

 おずおずと差し出される舌が、まだ不器用な動きながらコンラートの舌に堪えようと健気に反応を返してきて、思わず我を忘れて貪るように絡みつくと…びくんっと震えて有利は気を放ってしまった。

『なんとまぁ…感じやすいお人だ……』

 キスだけで意識を失うほど感じてしまうとは…余程快感に反応しやすい体質なのだろう。

 さてこの隙に…と、明瞭な意識状態では絶対に抵抗されると思しき未開の地にそろりと指先を送り込むべく、パジャマのズボンに左手を忍び込ませる。シンプルな綿素材と思しき感触を指先に感じると、下腹のすべらかさを楽しみながら、するる…と窮屈な布間に潜入していく。

『ほわほわだ…』

 兎毛の感触に笑みを誘われ、ついつい指の腹で撫でつけて毛並みを整えてしまう。こんな場所の毛にしては珍しい、柔らかくて細い毛質が小さな兎を思わせる。

「んっ…」

 擽ったそうに身を捩られたことで我に返り、更に奥へと指を進めれば…とろりとした愛液を纏う襞が触れて、すっかり濡れそぼったその場所は尚もぬるつく液体を滴らせ、臀部に掛けての下着を濡らしていた。先程気を遣ったことでそうなっているのだろうが、どうやら相当愛液の量が多いタイプらしい。普段の生活の中で悪戯しようものなら、こんな風に下着を濡らす羽目に陥るかもしれない。

『…これからは外出先にユーリの着替えを持参した方が良いか……』

 それよりも、外出先で触るのを控えてやれよ…という指摘はこの際受け取り拒否の方向で行きたいらしいコンラートであった。

 時間の経過と共に冷たくなってくるだろう下着をズボンごとずり降ろすと、丈の長いパジャマの裾野から…白い下肢が微妙なラインから覗いて何とも言えない眺めになる。

『肝心な場所が見えそうで見えない…これが噂のチラリズムかっ!』

 ロドリゲスの擦り込んでくれた《日本文化の極み(?)》らしい概念に感嘆の念を抱く。これは確かにむっつりスケベ心をまさぐられる映像だ。夢見心地で陶然とベットに身を横たえた有利…。肌理細かな胸の膨らみがパジャマの合わせ目から覗いており、執拗に舐られた左胸の蕾はあえやかに色づき…コンラートの唾液を帯びて艶やかに光る。

 パジャマの裾野は一度達して濡れているだろう秘部を人目から守るささやかな防衛ラインとして存在しているが、そぅっと裾を摘んで覗き見れば、黒くほわほわとした毛の下で…桜色の肉襞が呼吸に合わせて蠢いている。

 その前縁に隠された真珠のような突起…まだ機械的刺激に弱いであろうそこは無理に擦らず、ちょいちょいと誘いかけるように優しくつついてやると、有利の瞼がぴくっと反応を返し、薄く開かれた唇から快感を示す嬌声が漏れた。

「…ゃあっ!」

 甘く愛らしいその声に…コンラートの瞳が欲望の焔を宿して愛し子の肢体を愛でた。

 コンラートにすっかりその身を預け、しどけなくくねるその様は…淫猥になってもおかしくない筈なのに…相変わらず清らかで、それだけに貴賓に触れる崇拝の念と…相反して感じられる背徳の念が情欲を一層煽る。

 この身に触れることをずっと禁じてきた…。

 この行為は禁忌なのだと…。

 しかし今、求められてこの人を抱くことが出来る喜びをどのように表現したらいいのだろうか。

 溢れ出す歓喜で、この身が弾けてしまいそうだ。

「ユーリ…ユーリ……」

 愛し子の名を…大切な宝物の名を…舌で包むようにして口にし、そろ…と中指を蜜壺の中へと導き入れていく。

「…っ!」

 自分も知らない未知の場所…柔らかな粘膜のただ中に入り込んできた無骨で長い指に、有利は失いかけていた意識を取り戻すと、真っ赤になって身を捩った。

「ゃあ……ヤダよ……そんなトコ、恥ずかしいって……」
「御免ね、ユーリ…出来る限り優しくするから…」

 耳朶に注ぎ込まれる囁きに対して身体は正直に反応を返し…大好きな人の、低く…響きの良い声に、有利はきゅうっと蜜壺を締め上げてしまい、そのことで余計明瞭にコンラートの指の存在を感じ取ってしまった。

「ん…っ!」

 思わず漏れそうになる甘い声を抑えようと、有利は手近にあった枕を掴んで噛みしめてしまった。

「ユーリ、そんなに口に銜えては疲れてしまうよ?」
「んんっ!」  

 有利はふるふると首を振ると一層大きく枕を銜え込んでしまう。

「ほら…駄目、声を聞かせて?」

 やや強引に枕を引き剥がすと、有利は涙目になって抵抗した。

「だって…ヨザックに聞かれたら恥ずかしいよ…」
「この部屋の壁は厚いから大丈夫ですよ。それに…そんな風にしていると顎が疲れますよ?」
「平気だって。俺、声を殺すの最近慣れてきたし」

 妙な請負方をする有利に、コンラートの眉がぴくりと跳ねた。

「…慣れた?……どうして?」

 まさか理由を問われるとは思わなかったのか有利はきょとりと首を傾げていたが、コンラートに目線で促されて仕方なく口を割った。

「俺…風呂とかでコンラートのコト考えて、一人エッチすんの癖になってたんだよ……家でそういうことすると、声が漏れたらまずいじゃん?勝利とか絶対なんか言ってくるし…」「俺のことを考えて?」

「う…やっぱ引いた?ずりネタにして御免なさい…」
「いいえ、光栄ですよ。あなたにそんな風にされてたなんて…かなり興奮しますよ?想像の中で、俺はどんな顔をしてました?」 

 淫靡な…艶を帯びた眼差しを注ぎ込まれて、有利はしどろもどろで言葉を返す。

「…今みたいな、顔……俺、コンラッドっていつもの爽やか笑顔の印象が強かったから、想像でそういう顔作ってんのかと思ったのに…本当に、そんな顔すんだ…」
「嫌い?こういう顔」
「う…ぅぅん……」

 言い淀みながらも、肯定はしない。

「いつもよりエロくて、ちょっと怖くて…ドキドキするけど……その顔も、スキ…」

 嬉しい言葉に唇付けが襲いかかり、息が乱れるほど激しく貪られながら左手で感じやすい胸の膨らみを嬲られ、熱く狭い蜜壺に長い指を抜き差しつれると、羞恥を誘う程いやらしい水音がくちゅくちゅと夜気に響いた。

「素敵に濡れて、柔らかくて…ぬるぬるして気持ち良い…。感じてくれてるの?ユーリ…」
「感じすぎて…ヤバイ……っなんか、金色のきらきらしたのが…目の中で泳いでるみたいに見えるぅ……」

 知らず…コンラートの指に擦り付けるように揺らしていた腰に、本気で危険なものを感じてしまう。

 …はしたないことこの上ない。

「まだまだだよ…」

 危険な響きを孕んだ声に耳朶を嬲られると、指の動きが急に変わった。様子を伺うようにちゅくちゅくと抜き差しされていたそれが、内腔を広げようとするかのようにぐるっと円の動きをとった途端、先端の真珠を掠める感触に堪えきれない嬌声が上がる。

「ぁぁぁぁんっ!」

 あまりの快感に羞恥も忘れ、ただコンラートの与えてくれる感覚を追おうと瞼を伏せて恥部に集中する。

 がっちりとした骨組みの長い指の、その硬く肥厚した胼胝…形良い爪…剣を持つためにある騎士の指が、有利の感じやすい場所を思うさま嬲って

 …ぐちゅ…くち……

 …くぷっ……

 …と、愛液と空気の混じるいやらしい音楽を奏でていく。

 その度に有利のその場所は熱く潤み、まだ男を知らないにも関わらず、誘うように内部の襞が蠢くのだった。

 コンラートはさり気なく体勢を入れ替えると、有利の右脚を自分の肩に掛けて…自分の指を銜え込んだ有利の蜜壺を淡い照明の下に晒した。

『綺麗な桜色の襞が…俺の指を美味しそうにしゃぶっている……』

 可哀想でとても口に出来ないような隠語が、沸きたつような喜びと共に心に響き渡る。この辺は百年越えの年季の入った魔族らしい感慨といえようか…有り体に言えば、ちょっと親父臭い。

「や…見ないでぇ……ゃだ…」

 灼け付くような眼差しに視姦されて啜り泣くが、陶然とした声で返されてしまう。

「とても綺麗ですよ…見せてあげられないのが残念なくらい……。慣れてきたら、ビデオでも回してみますか?」
「ゃ…やだぁっ!」

 本気で抵抗されそうになって、コンラートは慌てて愛撫の種類を変えた。

「ひゃうっ!」

 有利の肢体が柔らかいのを良いことに、大きく下肢を割ると頭を挟み込ませて襞を舐めあげる。尖らせた先端にちろちろと馴染み始めた真珠を擽られ…敏感な襞を伝うざらりとした舌乳頭の感触に、有利の背が弓なりにぴぃん…と反り返る。

 れる……

 じゅぷ………

 半分被さっている襞を押しのけて直接的に甘咬みし、同時にぐるっと指を掻き回されると、見ていて分かるくらいの勢いでぷしゃあっと愛液が噴き出してきて…コンラートの指から滴り落ちていき、シーツとパジャマの上に小さな水たまりを作った。

 所謂、《名器》と呼ばれる体質の一種、《潮吹き》のようだ。挿入時に頂点を迎えさせれば暖かい愛液が勢いよく吹き付けてきて、何とも言えない感触をもたらしてくれると聞く。

『それにしても、パジャマはもう脱がせてやった方が良いだろうな』

 あえやかな胸が露わになり、愛液に濡れる兎毛もまざまざと見ることが出来るにも関わらず、釦一つでギリギリ身体に絡みついているパジャマが、それはそれでそそるシチュエーションだったのだが…するりと腕を抜かせて一糸纏わぬ姿をシーツの上に晒すと、華奢ながら滑らかなラインを描く肢体は、想像していた以上に瑞々しく…美しかった。

『綺麗だ…』

 心からの讃辞を込めて、うっとりとその姿に見入ってしまう。

 作り替えられてしまったとはいえ、やはりその身を構築するのは有利であり、内に秘められた精神もまた有利だから…譬えようもなくこの心は震えるのだろうか?

「ん…」 

 腕に引っかかっていた布が無くなったことで開放感を覚えたのか、有利が無防備に両腕を挙げて伸びをすると…すんなりとしたその両腕の付け根…つまり、腋部分に目がいった。

「…?」

 有利の腋は柔らかそうな白い皮膚に覆われて、つるりと…一本の毛も生えていないすべらかなものであった。

『…自分で剃ったのか?』

 しかし、それにしてはつるつると滑らかすぎるし、風呂場にそんな道具はなかった。コンラート用のひげ剃りは置いてあるものの、そんなものでこんな柔らかい肌など剃ってはこんな風に剃り上げることなど出来まい。下手をすれば傷を付けてしまうだろう。

『そう言えば…もともとそうだったような気もするな』

 記憶を辿っていけば、ヴォルフラムとの決闘に際して豪快に真っ裸を晒したときも、腋に毛はなかったかも知れない。その後、モルギフ探索、ヒルドヤードの温泉街と裸の付き合い(?)は続いていたが、その間コンラートが気に止めたことはなかったように思う。

『まぁ…ヒルドヤード辺りではなるべく直視しないように努めていたしな…』

 悪戯心を覚えてつう…と右の乳房縁から腋窩前壁にかけて舌を這わせれは、目に見えて背筋が跳ね上がった。

「ゃうっ!?」

 ちぅ…

 やわやわとした肌を強く吸い上げて口内に取り込めば、有利は身を転ばせて必死で腋を庇う。

「何すんだよっ!!へ、変なトコ舐めるなよっ!」
「嫌?」
「当たり前だろ!?そ…それに、俺の腋…変だろ?」
「変?何故?」
「……分かってるくせに……俺のココ…毛ぇ生えてないだろ?」
「そうですね、恥ずかしいんですか?」
「ハズカシイに決まってんだろっ!?」
「そう言えばモルギフを取りに行くときも、最初脱ぐのを嫌がってましたっけ。でも、ヴォルフと決闘するときの脱ぎっぷりは豪快だったような…」
「あん時ゃ、やけっぱちだったからね。腋毛がどうこう言ってらんなかったけどさ…結構、気にしてんだよ……」

 多感なお年頃の少年には悩み事が尽きないのである。

「腋毛が生えないのがそんなに気になりますかねぇ…?」

 陰毛が生えていなかったりすれば流石に気になりそうだが、そちらには可愛い兎毛がふっさりと素敵な毛並みを湛えているのだから良いではないかと思うのだが…。

「気になるって!持つ者には持たざる者の苦悩なんて分かんないんだっ!」

 またぷりぷりと怒って、有利はコンラートの右腕を無造作に抱え上げる。

 コンラートの腋には頭髪よりやや淡い色の毛が普通に生えており、思わず自分の腋と見比べてしまう。

「何か鳥皮みたいで不細工だよー…。何で俺、生えないんだろ…育毛剤とか使った方が良いかなぁ?」
「やめておいた方が良いですよ。育毛剤は肝臓や腎臓に蓄積して悪影響を及ぼすことがありますからね。それに…毛なんて生えてない方が良いですよ」
「何で?」
「こういうこと、し難いじゃないですか」

 くすりと意地悪な笑みを閃かせると、コンラートは挙げた有利の上腕を捉えて拘束すると、舌先でぺろりと腋を舐め挙げる。

「ゃあ…っ!」
「ほら…ユーリは此処が結構感じやすいから…だから毛が生えてないのが無防備に感じて不安なのかも知れませんけどね」
「や、止めろってっばコンラッド!そこ駄目っ!」

 しかしベットサイドに追い詰められて逃げ場を失った身体はやすやすとコンラートに捕まり、両の手首を左腕一本で拘束されると、舌は脇腹から腋窩へと伝い上がり、やわやわとした皮膚をかり…と咬まれれば、甘やかな感覚が腰骨から電気のように放散していく。

「俺は好きですよ…ここ。柔らかくて感じやすくて…普段、ユーリが人に見せないところだと思うと…余計に興奮します」
「馬鹿…」

 まろやかな隆線を描く頬が紅色に染まり…目元が艶を帯びていく。その様は、咲き始めた花のような香しさでコンラートの欲を誘った。

「ええ、ユーリ馬鹿一代ですからね」

 ウエストから這い上がっていく右手掌が感触を確かめるように胸の皮膚をまさぐると、指先に触れた突起が小さく震えた。

「ここも、特別感じやすいユーリの果実を…俺だけが味わうことが出来るんですね……」
「当ったり前だろ…あんた相手じゃなきゃ……誰がこんなコトするかよ」

 怒ったような…照れたようなその物言いに、コンラートの笑みが深くなる。

「全くあなたって人は…何処までも俺を甘やかせてくれますね……」
「あ…ゃっ……っ」

 しゅるりと小指…薬指…中指…示指と順に握り込みながら腋のラインをなぞれば、有利の胸は捧げられるようにしてコンラートの顔前へと突き出される。その先端で濃く色づく膨らみをちろりと舌先でつついてやれば、乳房がもどかしげに揺れてしまう。

 その仕草に笑みを誘われながら、今度は大きく口を開いてその軟らかな肉を口内に含み込み、暖かく濡れた空間で思うさま蕾を嬲ってやれば、既に二度イッた筈の蜜壺からとろりと愛液が滴ってくる。

「そんなに気持ち良い?ユーリ…ここ…俺の指がふやけてしまうくらい濡れているよ。ほら…ユーリの甘い蜜で溺れてしまいそうだ」

 とろりとした液体を纏う指を有利の唇に這わせてやると、薄い塩味のする液体に眉根を顰める。その様が嗜虐心を誘うとも知らずに嫌々をするものだから、ついつい歯裂を割って舌にまで絡ませてしまう。

「ユーリ自身の愛液は嫌?こんなに甘いのに…」
「何…言って……しょっぱいよ、こんなの……」
「そうですか?俺にとっては天上の甘露もかくやというほど甘やかに感じますけどね」

 くるりと俯せの体位をとらせて、ぴら…と襞を捲れば、白くまろい双丘の谷間に紅色の華が咲いたようだ。

 甘い蜜を滴らせ…艶やかに咲き誇る華のよう…。

「や、止め……っ」

 体勢が恥ずかしいのか身悶える有利だったが、二度の絶頂ですっかり下肢の感覚がおぼつかなくなっている有様では、とてもコンラートの拘束から逃げる術などない。

 つい…と舌先が真珠のような陰核を擽り、左右から示指で襞の奥底まで見抜くように引き広げれば、濃い桜色の肉壁が露呈し…流石に狭かった蜜壺も2本の指を挿入できるくらいにはほぐれ始めた。

「綺麗だ…ユーリは身の内までこんなに美しい色をしているんだね…至高の色彩である漆黒もいいけれど…こんな艶やかなピンクにはどんな花弁でも適わないな…」
「馬鹿…コンラッドのヘンタイ……も、やだぁ……」

 本気に涙声になってしまう有利だが、コンラッドの舌先がぬるりと蜜壺の中へ侵入し、奥深くまで硬く尖らせた舌尖で抉られれば色味の違う嬌声が甲高く迸り、またしても気をやってしまう。

『いける…かな?』

 現状の有利の肉体では、この解れ具合が限界というところだろう。しかし、有利の入り口には村田の忠告通り難関が控えていた。

『コレが処女膜というやつか…』

 膣孔の後壁から、懸念されたほど大きくせり出してはいないものの、それでもコンラートのものを押し込めば、確実に切れてしまうであろう襞を指先でふよふよと弄る。きゅっとすこしきつめに指で挟み込めば…可哀想に有利は小さく悲鳴を上げ、しっかりと神経も分布していることを知らせてくる。

『いっそ麻酔でも掛けて、鋭利な刃物で切ったりはできないものだろうか?』

 処女膜が大きすぎて性交に支障がある場合は実際、そのような措置も行われているらしいが、有利は断固反対するだろう。コンラートとしても、有利のこんな場所を医者などに見せたくはない。 

『少しずつ慣らしていくしかないか…』

 ただ、問題はその《少しずつ》という行程に自分の理性が持つかどうかだ。

 今でも双丘を揺らす婉然たる肢体に煽られて…何ら機械的な刺激は与えていないにも関わらず、コンラートのモノは腹を打たんばかりの勢いで隆々と猛り勃っている。



 …正直、毛細血管が拡張しすぎて……痛い。 



 しかし、いきなり突き込んでは可哀想なので…心地よさそうに脱力している身体を仰向けにさせると、腰を引き寄せてつぷりと先端を押し当ててみる。

『…くっ……』

 熱く濡れた襞が…艶めかしく鈴口を擽る。 

 思わず眉根を寄せ、小さく呻くような声を漏らすと…細心の注意を払いながらゆっくりと挿入を開始していくが、先端をくぷりと飲み込ませた段階で既にきつい締め付けに見舞われた。

 きゅるっ…と巻き込むような襞の動きと、活発に運動していることで骨盤底筋も鍛えられているのか、力強い膣の収縮がコンラートの性感をいたく刺激し、このまま衝動任せに腰を振り動かしたい誘惑に駆られてしまう。

「ん…んぅ……コンラッ…ドぉ……」

 敏感な場所への侵入に漸く気付いた有利が、コンラートを求めて両腕で空を掻くのを捉え、身を伏せて縋る縁(よすが)を与えてやる。コンラートの背中に腕を回した途端、ほうっと安堵したように力を抜いたのを見計らって、少し強く腰を突き入れたのだが…これは流石に強引であった。

「ぁ…っ!」

 小さく鋭い悲鳴と共にコンラートに抱えられた両下肢が跳ね上がり、二人の継ぎ目からつぅっ…と紅い筋が滴り落ちていく。

「すまない…ユーリ……直ぐに抜こうっ……」

 蒼白になって腰を引こうとするのを許さず、有利は持てる限りの力でコンラートの背を抱くと、思いの丈を言の葉に乗せた。

「いいからっ…そこまで、過保護にしないで……。い、痛くしても良いから……俺の中でイって……っ!」
「…あなたって人は…何処まで俺を悦ばせるおつもりですか?」

 有利は懸命に身を逸らすと、伸び上がってコンラートの耳朶に囁いた。

 聞こえるか聞こえないかという…ほんの小さな声で。

「あんたが、望むなら…どんなことだって……」
「…っ!」

 健気すぎる発言に、もうコンラートは欲望を御しきることが出来なくなった。

 反射的に逃げを打つ腰を大きな掌でがっしりと抱き込み、逃げ場を断たれた蜜壺の深部へと熱した楔を打ち込んでいく。

 ぬるつく愛液を纏って淫靡に光る凶器が幼い壺を抉り、軋ませ…引き裂いてしまう。

 ぽろぽろと堪えきれない涙を零す眦を舐めあげ、噛みしめようとする唇を自分のそれで含み込んでしまうと、コンラートは少しでも早く主を解放すべくピッチをあげた。

「くぅんっ…んっんんっ……っ!」

 自分で律することの出来ないリズムに踊らされ、ベットの上で弾む身体から漏れ出る声は啜り泣くような響きを持つが、懸命に拒絶の言葉を堪えているのが分かる。

「ユーリ…ユーリ……っ!」

 胸がどうにかなってしまいそうな程…狂おしいほどにこの身を締め付ける甘い痛み。込み上げる想いを乗せて一際強く腰を捻り、蜜壺を抉った瞬間に…白濁した液が有利の体内で弾けた。

「ぁ…っ!」
「く…!」   

 二度三度と…性の迸りを注ぎ込むと、ゆっくりと腰が引かれていく。

 先端の膨らみが《つぽん》と抜け出た途端、互いの興奮を示すような漿液と白濁した液が有利の襞裂から溢れ出た来て…そこに混じる紅色の水流に、コンラートの胸がきしりと痛んだ。

「すみません…ユーリ……傷つけないようにと注意をしたつもりだったのですが……」
「ぁ…謝まんなよっ!良いって俺が言ったんだしっ!」

 身を起こそうとして腹圧を上げた途端に、有利の内腔からは恥ずかしい液体が溢れて内腿濡らし、有利は身も世もないという表情を両手で覆ってしまった。

「ぅっわ…ハズカシー……お、俺…風呂はいるっ!」

 ころころとベットの上を転がって床に立とうとする有利だったが、力を込めた途端…裂けた部分に痛みを感じて呻いてしまう。それに、何度も擦られた部分全体が何とも言えない痛み…調子に乗って日焼けした肌のようなひりつく感触を呈していた。摩擦によって薄皮が剥け、損傷した粘膜組織から漿液が滲出しているのかもしれない。

「痛……」

 へたり込みそうになるのをふわりと勢いよく抱き上げられると、そこからはお姫様抱っこでバスルームにゴー!であった。

「こ、コンラッド!歩けるよっ!」
「俺にやらせて下さい。…俺が望むことなら何だってして下さるのでしょう?」
「う…」

 性交の際の睦言を冷静なときに引用しないで欲しい…。

 そうは思いつつも、結局されるがまま隅々まで洗われてしまったが…その間中いきり勃っているモノを隠している風なコンラートを見てしまっては、文句も言いようもなかった。体力自慢の軍人にして、夜の帝王の異名をとる伊達男のこと…本当なら後何セットかはいきたいのだろうが、初めての行為後に無理はさせまいと自重してくれているのだろう。

 正直、《悪いなぁ…》とは思いつつも、確かに今すぐまた突き込まれたのではとても身体がもたない…。それなら明るいバスルームで、執拗に胸や尻の膨らみにふわふわの泡を塗りつけられ、つるつると滑る感触を味わうように大きな掌でまさぐられても、何度も指を抜き差しして蜜壺を洗われても…その際にまじまじと指を含んだ肉襞を観察されても、しょうがない…ものなのかなぁ……?と、有利は考えていた。

 ただ、しょうがないとは思っても…身体の方は無駄に熱くなってしまって、洗浄の為の動作なのに恥ずかしいほど鼻に掛かった声で甘啼きしてしまい…またしてもイかされてしまったわけだが…。





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