「ワガママゆって?」−2









 ホテルのベッドに飛び込むなり、荒々しく唇を重ねる。
 普段なら二人して会話を愉しみながらシャワーを浴びるのだけど、今回に限ってはそんな余裕など互いに欠片もなかった。

「コンラッド…身体の奥が熱いよ。薬も使ってないのに…こんなの、俺…エッチなのかな?」
「そういうユーリも大好きだよ?ね…俺の前で恥ずかしい姿全部見せて?」
「うん」

 こくんと頷いたユーリは自らズボンを脱ぐと、四つん這いになってお尻を突き出し、下着の隙間から恥部を晒す。男に抱かれることを知った身体であるせいなのか、それとも、初めての体験がアナルの潤滑を促す薬品だったせいか、ユーリは性感が高まると自ら女の子のように透明な蜜を垂らしてしまう。今もお漏らししたみたいに下着が濡れていて、とろとろと蕾から溢れては硬さを帯び始めた陰嚢を濡らしている。

「いやらしい眺め…とっても素敵だよ?」
「ん…はずかし……」
「大丈夫。俺だけが見てるからね」

 近寄っていって双丘を左右に割り、舌先をつるりと入れてやる。それだけで腰が砕けそうなほど気持ち良いらしい。

「ひぅん…っ!コンラッド…コンラッドぉ…っ!」
「気持ち良い?ユーリ」
「きもちいい…。うねうねして、生き物みたいにコンラッドの舌があ…っ…」

 《ぴゅるっ》《びゅっ》と先走りを飛ばす花茎も下着からはみ出ており、下着は殆ど意味を為さない拘束具のように肌を戒めるばかりだ。仰向けにしてシャツを銜えさせると、ブラジャーに似た小さな下着がお目見えする。それでなくとも殆ど透けてしまっているシルクをぺろんと舐めれば、殊更乳首が強調されるようだ。

「ぷくんと勃ちあがってきた。ちっちゃくて可愛いね」
「ちっちゃい言うなぁ…っ…」

 《やーん》と喉奥で啼きながらも、ユーリは殊の外この場所への刺激が大好きだ。布ごと乳首を摘んで持ち上げれば、ぴぃんと立ち上がった釣り鐘状のちっぱいが感じきって、コリコリと乳首が痼ってくる。

「おちんちんも美味しそう。また舐めても良い?」
「でも…コンラッドは?」
「じゃあ、舐めあいっこしようか?」
「うん」

 69の体位になってユーリのものをしゃぶるけれど、結局気持ちよすぎて舌が覚束ないユーリは、殆どコンラートの雄蕊を抱き枕みたいにしてヒンヒン啼くことになる。

「あ…欲しいよぉ…おちんちん。おっきいおちんちん…いっぱいいれて?お尻の中、ゴリゴリしてぇ…っ!」
「いっぱい愛してあげる」

 ユーリの願いはコンラートの願いでもある。
 嬉々としてまんぐり返しの体勢にしてやると、十分すぎるほどに濡れた蕾に《ぐぷんっ》と雄蕊を突き込んでいった。

「すご…ぁあーっ!」
「動いて良い?」
「ぅん…うんっ!」

 思うさま突き込んでも殆ど苦痛を訴えなくなった。挿入時の軽い違和感を突破すれば、後はもう感じやすい場所を探すばかりだ。コリコリした質感を後宮前壁に探し出すと、雄蕊の先で強く擦る。
 《ずちゅっ…》《ぐぷっ…!》淫音を立てて出し入れする度にユーリの腰が跳ね、勢いを取り戻しつつある花茎からも露が溢れては散っていく。

「コンラッド…ね、きもちいい?」
「ああ…ユーリの中はぬるぬるして、暖かくて、抱きしめられてるみたいだよ」
「おれも…コンラッドでいっぱいになってるみたいで…気持ち…ぁ…っ…イぃっ!!あ、中で大きくぅ…っ!」

 何て可愛いことを言うのだろう?コンラートは益々容積を膨張させてしまう。
 大変満足なエッチを、二人は夜明け近くまで続けたのだった。



*  *  * 



 
「ユーリちゃん、罰を受けましょうか〜?」
「へ」 
 
 遅い朝食なのか早い昼食なのか良く分からない時間帯に、ホテルの部屋で軽い食事を採っていたら、一体どうやって入ってきたものやらヨザックが傍に寄って来て、ひょいぱくひょいぱくとミニクロワッサンを口に放り込んでいく。大きめの口なので、何だか吸引されているような様子だ。

「罰って…え?なんで?」
「一度でも願いを拒絶したら、罰を受けるって約束でしょ?」

 ニカっと笑うヨザックに、少しぬるくなったカフェオレを一気飲みされてしまう。

「えーっ!?でも俺、全部拒絶してないよ?」
「い・い・え!証拠がここにあるのよぉ〜ん?」

 ヨザックが胸元から採りだしたヴォイス・レコーダーのスイッチを押すと、あられもない声で叫ぶユーリの声と、艶やかに上擦るコンラッドの声が聞こえてきた。

 《ぁんっ!こんらっどぉ…っ!も…むりぃ…っ!》
 《我慢出来ない?》
 《らって…おしっこでちゃう…はずかしいよぉ》
 《ああ、それはいけないね。抱っこして連れて行ってあげるから、やっておいで》

「ヨザっ!貴様…どうやって録った!?」
「てへ。ホテルなんて幾らでも隠せるトコあるわよぉ〜ん。諜報部員舐めないでよね?それよか、一番気持ち良いときにおしっこ我慢出来なくなっちゃったおちんちんに、最高のお仕置きあるよぉ〜?」
「俺がやっておいでと許可を出しているのが聞こえないのか?この耳は一体何の為についてるんだ?あァ?」 

 かなりブラックに顔をして凄むコンラッドは、ユーリが今まで見たことないような、凶悪な面構えになっている。そういえばヨザックと付き合っていられるくらいだから、コンラッドにだって黒い部分もあるのだろう。

「え〜?お仕置きしないのー。つまんないつまんない〜っ!」
「誰のための誕生日だと思ってるんだ、全く…。それでなくても俺の我が儘を聞くなんて、ユーリの為になっているのかどうか心配なプレゼントだっていうのに、ホントにお仕置きまでしたら帳尻が合わないだろう」
「なんだ。はなっからお仕置きする気0かよ。つまんないなー」
「お前を満足させるための誕生日じゃないから」

 冷たくあしらっているように見えて、コンラッドの口調はかなり砕けている。そんな様子を見ていると、ユーリの胸にはちょっとした嫉妬心が芽生えてしまうのだった。

「コンラッド…俺にもそんな風にぶつちゃけた口調で話してくれたら良いのに」
「これは砕けてるんじゃないよ。呆れてるんだ」
「でも、俺より仲良さそうに見える〜」

 唇を尖らせて拗ねていたら、あんなバカなことばかり言っていたヨザックが頭に大きな手を乗っけてくれて、良いお父さんみたいな顔で笑う。

「そうやって拗ねてあげなよ、ユーリちゃん。ユーリちゃんが素直に感情を出して我が儘言えば、こいつだって言いやすくなるからさ」
「俺…かなり我が儘だよ?」
「んなことねェよ。元々良い子ちゃんなのもあるけどさ、こいつのこと、凄く人物が出来た好青年だって思ってるだろ?」
「…うん」
「でも、思いっ切り我が儘言って欲しいって願ったって事は、好青年像だけがこいつの本質じゃないって見抜いたわけだ。俺ぁ、かなり嬉しかったんだぜ?こいつのそういうトコ見抜いた上で好きでいてくれる奴珍しいからね。大抵奥底の部分に入り込めないまま、一方的に憧れて終わる奴が多いんだけどさ、そういうの…ちょっと寂しくない?」

 コクンと素直に頷く。
 なんとなくもやもやと抱いていた想いを、分かりやすく言葉にして貰ったような気がする。

「ヨザ…お前、勝手なことを…」
「あんたもあんたでさ、ちょっとずつで良いからユーリちゃんに本心明かしていきな?そのドロッドロした本性明かしても、この子なら大丈夫さ」
「無責任なこと言いやがって。それで嫌われたらどうする」
「責任取って俺が慰めてあげる。主にチンコで」
「ユーリ、俺を嫌いにならないでね?」

 そっと両手を握ってかなり真剣な眼差しで囁かれると、これにも素直にコクコクと頷いた。

「うん!ならないよ、絶対。だからコンラッドも安心して本性明かしてね?」
「うーん…。まあ、おいおい…ね?」

 ヨザックはカラカラと笑いながら二人を見守る。
 ちょっと余計なことも言いながら。

「取りあえず今年は、結構エロい下着が好きってことだけは分かったよな?」
「ヨザ…貴様、撮ったのか…?」

 ヨザックに襲いかかって懐を確かめようとするコンラッドと、取られまいとするヨザックの闘いは、ちょっとした野生の王国のようだった。



おしまい


あとがき



 多分うち史上一番エロい設定のお話であるにもかかわらず、当社比で一番真っ当な次男が生息しているので、意外と我が儘の範囲が小さかったです。