「食べてほしいの」バージョンC

 

※寒冷ネタですのでご注意下さい。









 

 コンラートは、あられもない有利の姿に息を呑むと…ほとんど反射と走性…本能と情動の赴くままに行動した。

 獣のようにしなやかな歩みで接近してくるコンラートに有利が息を呑んでいると…眼前に迫った双弁が熱い視線を投げかけてくる。

「ユーリ…」

「こ…コンラッド……」

 どきどきと拍動する胸の鼓動を整えることもできない有利の前で、コンラートの唇が甘い声で囁いた。

 

「これはなんて…ケーキ(景気)の良いお姿なんでしょう……」

 

「………………え?」

 

 ひゅるぉぉぉぉぉ……………

  なんだろう…夏なのに、盛夏なのに……。

 厳寒期にシベリア特急の窓を開けたような疾風が吹き込んでくるのは…。

 有利は激しい肌寒さを覚えると、股間に盛ったケーキをもっそりとお皿に戻し、お手ふきできゅっきゅと肌を拭うと、しゅるっと首に巻いたリボンも解いた。

 とても、こんな恰好でベットに転がっている気分ではなかったのだ。

「え…?ゆ、ユーリ…俺に食べさせてくれるつもりではなかったんですか!?」

 あからさまに落胆しているコンラートは、どうやらこういう恰好がジャストミートに好みであったらしい。

 ヨザックの助言が適切なものであったことについては感謝すべきだろうが、残念ながら…これは喜びすぎである。

 どうやら彼は喜びの閾値を超えると、寒いギャグが出てしまうらしい。

 そうなのだとしたら、今後あまり喜ばせすぎないのが恋人関係を維持していくコツだろう。

「ゴメンね…俺、仕切直すわ。風呂借りるね?」

 ふぅー…と、妙に堂に入った溜息をつきながら、有利が肩を落として浴室に向かうのを、コンラートは捨てられた子犬のような瞳で見守るのだった…。

 

おしまい

 

あとがき

 冗談のつもりで設定した選択肢だったんですが…案の定得票数は低かったモノの、意外と健闘していたのでついつい書いてしまいました。



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