「しんぱいごと」
※15歳黒うさ話








 橙うさぎはとても面白いうさぎです。
 ちょっと斜に構えていますが、実はとてもやさしいうさぎだということを、黒うさぎはよーく知っています。
 
 ですから、そんな橙うさぎが自分の友うさぎである村田と恋に落ちたときも(村田は「あいつが一人で側溝に填ってるんだよ」といっていますが)、驚きつつも祝福しました。

 でも…《あること》についてだけは素直に祝福することができずにいます。


*  *  *




「村田…その……あの……な?」
「さっきからそればっかりだねぇ渋谷」

 村田は優雅に紅茶を飲みながら、頬を上気させてしどもどしている可愛らしい友うさぎを見やりました。

『ほんっと…可愛いなあ…』

 くすくすと笑い出したいのを我慢しながら、村田はすました顔をしています。
 実は黒うさぎが聞きたい事なんて百も承知なのですが、恥ずかしそうにへどもどしている様子があんまり可愛いものですから、わざと口をきくまで待っているのです。

「あの…うっ…あうっ!あぁあ…あのさっ!?村田って村田って…ヨザックとやっちゃったって本当!?」
「何を?」
「何って…っ!」

 かぁああ……っと黒うさぎのお顔はよく熟れたトマトみたいに真っ赤っかになりました。
 村田はやっぱり《可愛いなぁ…》という顔をして悦に入ってます。

「せ…せっくす……」

 語尾がちいちゃくなるのが何とも愛らしく、長い睫が淡く濡れたような黒瞳に影を落とす様子も絶妙です。
 その様子を十分に堪能しながら、村田は言いました。

「ああ、やってるよ?」
「うぅうう〜……」

 友うさぎに先を越された悔しさなのか何なのか、黒うさぎは唇を尖らせて唸っています。
 実のところ、橙うさぎにはもっともっとちいさい時分から《やりたくてしょうがない》と言われていたのですが、ず〜っと寸止めで我慢させていたのです。
 村田もそういうことは嫌いではありませんから、ぼちぼち身体が出来てくれば止めるような理由もなかったのです。

 一応、身体年齢も一足先に16歳になってますしね?

「何か不満?」
「うー…先に大兎になられたような感じ…」
「馬鹿だね」

 つんっと尖らせた唇に人差し指を押しつけると、《ふにゅっ》という感触が心地よくて、ついつい村田は笑顔になります。

「僕は君より先に大兎になれてよかったな」
「あー、やっぱりお前だって大兎の階段登りたかったんだな?」
「違うよ。君より先に体験しておかなくちゃ、予防策が取れないだろ?」
「何の?」
「君とウェラー卿がやるときに、君が痛い思いをしない為には何が必要か、どこをどうすれば良いか教えてあげられるじゃないか」
「……っ!?」

 よほど思いがけない発言だったのか、黒うさぎはぱちくりとお目々を見開いています。

「そ…そのために?」
「それだけじゃないけどね。まぁ…良い経験になったよ。ヨザックは経験豊富だから色々知ってて、気持ちよくしてくれたしね」
「ぅわーっっ!それ以上はもーいーデスっ!」

 黒うさぎは首筋まで真っ赤に染めるとその辺りをぴょんぴょん飛び跳ねました。
 
「君ねぇ…そんなことで本番大丈夫なの?」
「ぅうわわー……っ!ま、まだ3ヶ月あるもんっ!」

 涙目で黒うさぎは訴えますが、3ヶ月経過したから成長するというものでもないと思います。

 ただ、村田の好みからいって《セックス?平気平気!自分で○○して××するから!》なんて、あばずれみたいなことを黒うさぎが言い出したらとてもショックを受けるでしょうから、いつまでも無垢で可愛くあってほしいなぁ…という願望はむらむらっときます。

 なので、村田はこの心配事を解決する為にこう考えることにしました。


『ヨザックに頼んで、ウェラー卿の方を教育しよう』


 調教師グリ江ちゃんがきちんと《ルッテンベルクの獅子》を教育できたのかどうか、確認する日は後3ヶ月後に迫っています。







* 「長編を頑張ろう」と思うのですが、息切れがしてついつい黒うさ話を書くというターンを繰り返しております。うん…大丈夫。ぜひーひゅー、ぜひーひゅー…。別に慌てて書かなくちゃ行けないわけじゃないしっ!落ち着いて書いていきます。 *