「シュークリーム」 ある日、黒うさぎは料理好きの橙うさぎに作りたてのシュークリームを貰いました。 箱を開いてみるとバニラの良い香りがしますし、皮はゴツゴツのぱりぱりで実に黒うさぎ好みです。 ただ…1個が橙うさぎの拳ほどもある大ぶりなものですので、なかなかに食べるのが大変そうです。 「わー、嬉しいな!でも、コンラッドは甘いのちょっと苦手なんだよね…」 「じゃあ、2個とも坊ちゃんが食べちゃえばいいですよ」 「でも…それじゃ不平等だろ?何か甘くないお茶請け買って帰ろうかな…」 「いえいえ、大丈夫ですって!多分とっても喜んでくれるはずです」 「そう?」 半信半疑で黒うさぎはお家に帰りました。 * * * 「いっただっきまーす」 「はい、どうぞ」 美味しいミルクティーを入れてくれた茶うさぎは、やはり《俺にはちょっときついかな?》と、シュークリームを見るだけで胸焼けしそうな顔をしていました。 黒うさぎの方も、大ぶりなシュークリームを崩さずに食べるのが大変そうです。 「あー…」 精一杯大きなお口を開けてガブリと行ったはいいのですが… 「ん…ふく…ん……っ!」 口を塞がれたまま焦ったように喘ぐ黒うさぎに茶うさぎは吃驚しました。 勢いよくかぶりついたせいでシュークリームの底が抜けてしまい、とろとろのカスタードクリームが溢れ出てしまったのです。 黒うさぎは慌ててクリームを吸い上げ、手で底を押さえようとしますが、底辺には目が回らないのでどうして良いのか分からないという顔をして目を白黒させてしまう。 「ユーリ…っ!」 茶うさぎは反射的に唇を寄せると、シュークリームの底から《ちゅー》っとカスタードクリームを吸い込みます。 「ん…んん…っ!」 「ふぬ…くぅん……」 どうにかこうにかシュークリームを食べ尽くしたものの、二羽の口元と指はクリームでとろりと濡れています。 いいえ…濡れているのはそこだけではありません。 「ユーリ…」 「コンラッド……」 お互いの口元や指をぺろぺろと舐め合いながら、二羽の瞳とある場所はとろりと潤んでいるのです。 「……………早く…誕生日、来ないかな?」 「ええ…でも……キスは、良いんですよね…」 「ぅん……」 二羽はそろりと舌を差し出して、クリームを載せたまま互いの口腔内を味わいます。 それはそれは甘いキスを一体どれほどの時間していたことでしょう。 もうクリームなんてどこにもなくなったとき、身を離した二羽は思いました。 『俺達の自制心って…凄いと思う…!』 凄いかどうかは、ご覧になった皆様の判断に委ねますね? * 日々あった出来事をそのまま書くことが多い黒うさシリーズですが、実際にあったのはシュークリームの底が抜けたことだけであり、残念ながら夫婦でこんな甘々な事をやっていたわけではありません。時々…うさぎさん達が羨ましくなったり、「いや、旦那さん大好きだけど、実際にこれをやるのは引くな…」と思ったりしています。 * |