「お伽噺を君に」
エピローグ







 黄金の太陽に、銀色の月。
 美しいお姫様に、凛々しい騎士。

 洋燈一つを手に持って、冒険の旅に出かける男の子。
 叶わぬ恋に身を焦がす女の子。

 はたまた動物たちや精霊と、神様の戯れ。

 さあ、あんた達。
 今夜はどのお話が良いかい?

 お腹を抱えて笑ってしまうものから、しんみりと涙するお話まで、あんた達の瞼が閉じてしまうまで、今夜もたんと聞かせてやるよ。

 おや、今夜もあの話が良いのかい?

 《眞魔国の黒真珠》と《ルッテンベルクの獅子》のお話だね。
 《禁忌の箱》を昇華したお話が良いかい?
 それとも、色んな国を巡って、世界の人達と仲良くなっていくお話が良いかい?

『ねぇ、かあさん。むかしはまぞくとニンゲンは、なかがわるかったってほんとう?』 

 ん…?ああ、隣の婆さんから聞いたのかい?そうさ、つい数十年前までは、魔族はあたし達人間の仇敵と言われていたんだよ。それこそ、世界中の悪いことは全て魔族の仕業だなんて言われていたのさ。
 今じゃあとても信じられないだろう?

『うん。いったいどうして、そんなトンデモンナイかんちがいをしてたのかな?』

 いいとも、教えてあげるさ。
 どうしてあたし達が魔族を誤解していたのか。そして、どうやって理解していったのかをね。
 


*  *  *





 魔族も人間も《眞魔国の黒真珠》と《ルッテンベルクの獅子》のお話が大好きだ。

 山あり谷ありの冒険譚は男の子の胸をわくわくと奮い立たせ、恋のお話は女の子達をときめかせる。

 ことに、最後が良いのが一番だ。

『こうして、ウェラー卿コンラートはシブヤ・ユーリ陛下といつまでも幸せに暮らしましたとさ』

 今宵もその一言を聞きながら、子供達は満足そうに眠るのだった。



おしまい