「まぶしい」
※15歳の黒うさ話











「眩しい…」

 お散歩中、ふと茶うさぎが呟きました。

 確かに辺りは4月の強い陽射しに照らし出されて眩しく輝いています。
 新緑は清々しい黄緑色や艶々とした深緑色をしていますし、ツツジは透けるような白とか淡いピンク、濃い赤紫色など色とりどりに咲き乱れています。

「ほんとだね、凄いまぶしいや。それに陽射しが強くって暑いねぇ…」
「ええ…」

 はふーっと息を吐いて、黒うさぎは肘の上まで袖口を捲り、先程一つ外したシャツのボタンももう一つ外して、ぱたぱたと襟元を動かして胸に風を入れようとします。

「ユーリ…肌着を着ないと余計に汗でシャツが引っ付いてしまうよ?」
「えー?だって肌着暑いもん…」
「でも、シャツだけだと夕方になって急に冷えてきたときに、ぴゅっと汗が冷えてしまうから風邪を引きやすいよ?今からでも帰って肌着を着ましょう?」
「えー?」

 ぶうぶうと文句を言いつつも、黒うさぎは基本的に茶うさぎの言うことに逆らいません。
 だって、茶うさぎは絶対に黒うさぎのことを深く深く深く深く深く深…っく考えて言ってくれるのですからね。

 少々感覚が年寄り臭いな…と思うことがあっても、結局はこくりと頷くのでした。

「むー…分かったよ」

 ぽてぽてと家の方に戻りながら、せめてもの反抗とばかりに黒うさぎはシャツをズボンから出してぱたぱたやります。
 そうすると初夏の悪戯な風がぴゅうっと吹き込んできて、黒うさぎは気持ちよさそうに目を細めます。

「気持ちいい〜っ!」
「ユーリ…お臍が見えちゃうと、雷さまに食べられてしまうよ?」
「大丈夫だよー、あんたが護ってくれるもん!」

 そんな可愛いことを言う黒うさぎに、茶うさぎは複雑な微笑みを返しました。


『俺が一番に食べてしまいそうなんですけどね…』


 なんて、思いながら。