「クリスマスあくま★ハロウィンさんた」-6
さあ、クリスマスになりました。
コンラートが約束の場所でわくわくしながら待っていますと、子どもトナカイに曳かせたちいさなソリでユーリが飛んできました。
そして、路地裏の入り口に降りますと、息を切らせてたったかたったと駆けてきます。
手には真っ赤なプレゼントの箱と、大人のサンタ服を持っていました。
「メリークリスマス!」
そう声を掛け合ってプレゼントを交換すると(ユーリがあげたのは木の実のブローチで、コンラートがあげたのは面白いお菓子を詰め込んだびっくり箱です)、早速コンラートはサンタの服に着替えました。
黒く塗っていた爪も淡い血の色に戻して、短く切り揃えますと…素晴らしく格好良いサンタさんの出来あがりです。
「わあ、コンラッドよく似合うねぇ!」
「そう?嬉しいな…」
にっこりとコンラートが囁きますと、その甘い響きにユーリはぷるぷると震えました。
「コンラッドは声もすてきだね。おれ、あんたの声を聞くと胸が《》ふるる》ってなるよ」
「それは光栄だな…もっと聞かせてあげようか?」
耳朶に爽やかな呼気と共に囁きますと、ユーリは《きゃあ!》と笑い声を上げて飛び跳ねました。ハロウィンの日の奥様方と同じような反応ですのに、コンラートはにこにこと顔がとろけてしまいそうです。
「さあ、街に行こうよ!ハロウィンもすてきだったけど、クリスマスだってきれいなんだよ?」
「それは楽しみだね。では、行こうか」
二人は親子みたいにきゅうっとお手々を繋いで歩き出しました。子どもトナカイではとてもコンラートを運べませんから、ちょっと の間お留守番です。
白い大袋には子ども達に配るプレゼントが入っていますが、ユーリはまだちいさいのでそんなに数はありません。
五つほど枕元や大きな靴下に入れますと、もうお役目は完了しました。
夜が明けるまでの間、二人は楽しく街のお散歩をしました。
ちょっと大きなお家には庭中に華やかなイルミネーションで雪だるまやサンタ、ツリーやリースが飾られていますし、マンションのちいさなお部屋にだって、ベランダにディスプレイをしたり窓ガラスに飾りをつけています。
「ああ…とっても綺麗だ。クリスマスって初めて見たけれど、とても素敵なものなんだね」
「そうでしょ?」
ユーリはにこにこと嬉しそうに笑います。
コンラートが感心してくれると、まるで自分がとっても素敵な存在になったみたいに胸がふくふくとするのです。
屋台で買った熱々のグリューワインや林檎ジュースを啜ったり、首に下げられる大きな星形クッキーを買ってぽりぽりと両側から一緒に食べたり、掌サイズのミニケーキに一本だけ蝋燭を灯して吹き消したり…楽しい夜はあっという間に過ぎていきます。
空が少し白みかける頃になりますと、ユーリは唇を尖らせて文句を言いました。
「太陽の奴も気が利かないなぁ…こんなに楽しい夜なんだもの。もう少し山の中で眠っていたらいいのにね」
「そうだねぇ」
コンラートも同じ気持ちでした。
『ユーリをハロウィンの国に連れて帰れたら良いのにな』
『コンラッドがクリスマスの国で一緒に暮らしてくれたら良いのにな』
二人は同じようなことを考えて手をぎゅうっと握りましたが、それは決して口に出してはいけないことでした。
そんなことをしたら、大好きな人が自分の国で酷いお仕置きを受けることになってしまいますからね。
「また来年のハロウィンに会おうね」
「うん…やくそくだよ?」
二人はまた指切りげんまんをして別れました。
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