「君と暮らすこの素晴らしき日々」
10.待ちわびたこの日









 暖房を効かせてはいるものの、幾らか底冷えする高等学校の講堂に生徒や保護者達が着席している。

 普段は制服をチャラけた着崩し方で身につけていた男子生徒も、この日ばかりはきっちりと襟元まで留めており、女子はと言えば去りゆく先輩や、送り出してくれる後輩に少しでも可愛い姿を見せたいのか、結い髪の後れ毛やリップクリームの滑りを盛んに気にしている。
 式典開始前なせいか、まだ泣き出している生徒は誰も居なかった。
 
 当事者である卒業生も、高校生最後の日を迎えるに当たって、誰もがまだ実感を掴めずに浮き足立っているようだ。

 式の前には生徒達本人よりも、父兄や教員の方が感慨深く感じているものなのかも知れない。
 
『ああ…いた』

 ここにも一人、深い感慨に耽っている男が居た。ぽこんと人の群れの上から顔が覗いてしまっているので、端正な容貌のせいもあって先程から衆目を集めている。しかし、本人は真っ直ぐに有利だけを見つめているので、人々の視線には全く頓着していなかった。

『今日でユーリが高校生じゃなくなるのか…なんだか、不思議な感じだ』

 有利は今、卒業生の列の丁度右端辺りにいる。
 コンラートの目にはいつも子どもに見えていた有利も、下級生達に比べるとやはりどこか大人びていて、ふとした仕草や笑顔にも以前は見られなかった深みや落ち着きが感じられる。
 一年生の頃にはぶかぶかしていた上着やズボンの裾も、腕については少し寸足らずなくらいだ。

『俺は…ユーリの成長の過程を、見守ることが出来たんだなぁ…』

 今にして思えば、コンラートが得ることの出来たその幸せの代わりに、渋谷家の家族は大切な息子が最も伸びやかに成長していく時期を見逃すことにもなっているのだから、コンラートととしては努々(ゆめゆめ)、彼らを疎かにするつもりはない。大事な日々をくれた人達に、生涯を尽くして感謝の意を伝えねばなるまい。
 
 瞼を閉じれば…色鮮やかに有利との日々が蘇る。

 共に暮らし始めた頃のぎこちなくて…それでいて、目が合っただけで飛び上がってジャンプしたくなるくらいウキウキとしていた時期が過ぎ行き、少しずつ互いの感覚を調和させ、今ではしっとりと染み混み合うように馴染んできている。
 これから十数年、数十年と時を共にしていけば、またその年月に合わせた熟成が進んでいくのだろうか?

 大切な大切なこの子と過ごした日々は、決して色褪せることなくコンラートの心に刻まれている。その土壌の中からまた様々なしあわせの花が芽吹き、咲いていくのかと思うと嬉しくてしょうがない。

『…今夜から、夜の花の方も咲かせたいな…』

 なんて、ちょっぴり正直な事も思ってしまうわけだが。



*  *  * 




 手にした卒業証書は、昔のように紙を丸めたものを筒に入れるのではなくて、アルバムのように二つ折りになった厚紙に張り付けられている。ちょっと絵図らとしてはイメージと違うが、それでもこれは、有利にとって大きな一歩を踏み出す為のチケットとなる。

『これで、卒業だ…!』

 寂しさは勿論あるのだけど、それ以上に沸き立つような歓喜を感じるのは、やはり…、。

『コンラッド…これで俺、ホントにあんたの家族になれるんだよ…!?』

 証書の授与が続いている間、有利はちらちらと視線を送ってコンラートを見つめていた。落ち着いた色合いのスーツを纏う彼は、有利にとってはずっと追いつくことのできない《大人》の様に感じられていたが、このチケットは二人の距離を一気に近寄せてくれるのだ。

 式典が終わりに近づき定番の蛍の光や校歌が歌われると、様々な思いを胸に生徒や保護者達の啜り泣きが響く。それに先立つ感動的な送辞、答辞が彼らの感情を高ぶらせていたに違いない。

『これで、本当に…卒業なんだ』

 右隣で佳い声で謳っている園田の声も、微かに震えていた。ふと目が合うと、男らしい一重まぶたの下で、普段は比較的鋭く眇められている瞳が涙を滲ませていた。それを見た途端、心のスイッチを押されたみたいに有利の目元にも涙が浮かぶ。

『園田…良い奴だったよな』

 彼は唯一人、有利がコンラートと結婚を前提とした同棲生活を送っているのだと告げた相手だった。時々は男の友人同士でしか話せないような下世話な相談にも乗って貰って、色々と励まされたりしたっけ。

 気が付くと園田の腕が伸びて、荒っぽく肩を抱かれる。

『そっか、ウェーブみたいに繋がっていくのかな?』

 ピンと来た有利が左隣に立っていた鈴木の肩を抱くと、既にボロ泣きしていた彼はどっと涙を溢れさせて更に左隣の立花の肩を抱き、更に左側に…と肩が繋がっていく。気が付けば、卒業生全員が繋がって肩を揺さぶりながら校歌を熱唱していた。

 その様子に、見守っていた教員達の目にも涙が滲む。

「いやぁ…今時の生徒はちょっと白けた所が多いと思ってましたけど、今年は横の繋がりが強かったんですかねぇ」
「久しぶりに感動的な式ですわね…」

 その切っ掛けとなった園田だけが、最後の最後まで分かってくれなかった友人を想って、別の意味の涙を流していることなど知るよしもなかった。



*  *  * 




「卒業おめでとう、ユーリ」
「コンラッド…!」

 式を終えた有利に素早く近寄ってきたコンラートが花束を渡すと、そこに下級生達がどっと集まってきた。

「渋谷先輩…!お、お別れでずね゛…っ…」
「宮田、そんなに泣くなって!」
「ぜんばいごぞ…」

 塗り壁のように大きな体格をした宮田は、有利の運営する草野球チームの後輩だ。今は巌のような顔を真っ赤にして泣きじゃくっているが、実は有利と出会った頃には随分と荒れた印象だったそうだ。
 元々は小、中学校と野球部のパワーヒッターとして活躍し、将来を嘱望されていたものの、中学3年の時に膝を壊してしまい、高校では公式野球部でやっていくことが出来ないと知ってから、すっかり人生後ろ向きに生きていたのである。

 それが、教室まで来て勧誘してくれる有利に絆されて草野球チームに入ると、代打の切り札として活躍すると共に、意外なほどチーム運営を積極的に手伝ってくれるようになったのだ。
 有利の存在に、彼は随分と救われたのだろう。

「ぜんばい、花…もらってぐだざい」
「ありがとう…!」      

 ふわ…っと、それこそ花のように有利が微笑めば、宮田の涙はまた細い瞳から溢れ出していく。
 忠誠心に篤い、大型の土佐犬が泣いているかのようだ。

「宮田、これで最後みたいな泣き方するなよ〜。これからもチームで会えるだろ?」
「ばい…っ!」

 それでも泣きたくなるのは、やはり学校という共通の箱の中で有利を見ることが出来なくなる為だろう。

 他にも、有利の方はあまり覚えていないらしい後輩の女の子達からも花束やぬいぐるみ等が贈られていた。こちらは有利がしてくれたちいさな親切を、忘れずにいてくれた子達らしい。
 有利本人は全く意識していないようなのだが、彼はふと目に付いた《困っている人》を放ってはおけない子だ。その恩義を忘れずにいて、ちゃんと感謝を伝えてくれることがコンラートには嬉しかった。

『こうやって、ユーリはいつの間にかたくさんの人たちに愛されているんだな』

 少々嫉妬したりもするのだが、やはり恋人が多くの人たちの愛情を受ける存在であるというのは、素直に誇らしいものだ。

 少女達はさわさわと囁き交わすと、有利の手を握りながら妙にうきうきとした表情で笑っている。

「先輩、ウェラーさんと仲良くしてくださいね!」
「うん!」

 素直に頷く有利だが、コンラートの方は何ともいえない少女達の微笑みに何か感じずにはおられなかった。
 案の定…少女達が去り際にくすくす笑いながら囁き交わしていた言葉の中には《やっぱり渋谷先輩ってばネコよね〜!》《今夜から凄いのかしら!?先輩、バージンだよね?》《大丈夫よぉ、渋谷先輩めちゃめちゃ愛されてるもん。舐め転がすみたいに大事にナニしてもらえるわよ》なんて言葉が散っている。

 二人の仲を疑うだけならまだしも、正確に《今はまだイタしていない》と見抜く辺り、少女達の観察眼や恐るべしである。

『でも、確かにユーリの清潔感からいくと、そんなコトを俺としている…なんて思わないよな?』

 キスはしない日が無いくらいにしまくっているが、それ以上の行為はと言うと律儀にこの日まで堪えてきた。そのせいか、有利は陽光を浴びると清らかな水を湛えた杯のように澄み切って見える。
 あの身体に今宵触れるのかと思うと、喜びと共に恐れをも感じずにはおられなかった。

「宮田、じゃあ俺…行くね?」
「ばい…っ!」

 深々とお辞儀をする宮田の後頭部をさすさすと撫でる手の、何と愛らしいことだろう?
 なんと慈しみに満ちているのだろう…。

 たくさんの人たちに、これからも差し伸べられるだろうその手。
 それを独占することはコンラートにはできない。

 けれど…。

「コンラッド…!」

 自分に向けられた輝くような笑顔を、《俺のものだ》と言えるのはコンラートだけなのだ。そのことに満足しながら、コンラートは大切な少年と肩を並べて校門を出て行った。



*  *  * 




「まあ…ゆーちゃん、綺麗…綺麗よぉお…っ!」

 美子が瞳を潤ませて、両手を組んでこちらを見つめている。

「なんとなぁ…とうとうこの日が来ちゃったんだなぁ…」

 勝馬が溜息混じりに苦笑を浮かべるものの、どこか感慨深そうに呟く。

「ゆ、ユーリ…お前、本っ当ーに後悔しないんだろうな?」 
 
 勝利が涙の滲む目で睨み付けてくる。
 いずれも、留め袖やスーツという礼服を身につけていた。基本的には卒業式からのスライド登板だが。

「後悔なんか、するわけないじゃん」

 有利は唇を尖らせると、美子に《口紅がずれちゃうわよ!》と怒られた。
 そう…今、有利は白無垢に身を包んで背もたれのない椅子に腰掛けているのだ。その顔や髪はきっちりと整えられて、まるでお人形さんのように精緻な美を湛えている。

 本人はさんざん嫌がったのだが、華々しい結婚式を拒否する代わりに内々のお式ではちゃんと白無垢、色打ち掛け、ウェディングドレスにカクテルドレスまで全て制覇しろと厳命されてしまったのだ。

 ただ、神前式もチャペル婚も両方というのでは如何に言っても奇妙なので、互いの両親の前で愛を誓うという人前式を選択した。

 午前中に卒業式を終えたばかりの身でそのまま式場に向かった渋谷家の面々は、そこでコンラートの親族とも合流した。やはりツェツィーリエが崇拝者に捧げられた本格的なチャペル付きホテルには溢れんばかりの華が飾れており、貸し切りにした分ガランとして見えないようにと配慮が為されていた。

「ユーリ…これが和装の結婚装束なのか?ふむ…なかなか、良いではないか」

 滑らかな日本語で声を掛けてくれるのはグウェンダルだ。そのとろけきった眦が示す感情は、とても《なかなか》等という控えめな形容詞に収まりきるものではない。

 有利も懸命にドイツ語を覚えて、《お兄ちゃん、よろしくです》などとあどけない言い回しをして狂喜させていたのだが、なかなか詳細な会話が出来ぬと言うことで、焦れたグウェンダルが2ヶ月程度で日本語を完全マスターしたのである。

 ちなみに、ツェツィーリエはさっぱりだが、ヴォルフラムについてはぼちぼちの会話が可能になっている。
 彼らはまだ有利が男の子だということを知らないが、結婚式の場で女装姿など見せてしまっては、一体どのタイミングで明かせばいいのか分からない。

『いっそ、この秘密は墓まで持っていくべきかな?』

 下手に明かして、幻滅させるのは心底心配な有利だった。
 後日、やむにやまれず告白する羽目には陥るのだが…結局のところ、そんな心配は杞憂があったことが分かる。その時には、もはや性別の問題など関係ないほどメロメロな有利贔屓になっていたのだから…。
 
「ユーリ、着物が重いようなら俺に凭れる?」
「ううん。平気」

 傍らで心配そうにしているコンラートは、先程着物を抱えてみてその重さにぎょっとしていた。身につければゆるゆるとは歩けるものの、確かに総重量たるや結構な重さがあるのだ。

「式の間くらい、頑張れるよ?」
「ユーリ…」

 にこ…っと微笑めば、羽織袴(尤もらしいウェラー家の紋様が入っている)姿のコンラートはうっとりと有利に見惚れていた。

「こういう衣装も可愛いね」

 にこにこしながら頬に手を寄せれば、ヴォルフラムが偉そうに胸を張る。

「うむ。三国一の嫁を貰ったのだ、心して守り抜くんだぞ?浮気などしたら殺すぞ、コンラート!」

 水色の華やかなスーツ(勿論、胸元のシャツはヒラヒラ)を纏ったヴォルフラムは、普段は結構癖のある子なのだが、有利のことはすっかり気に入ったらしく、まるで妹のように可愛がっているのである。

「絶対にしないよ」
「コンラッド…俺だって、絶対しないよ?」

 見つめ合う夫婦の熱々ビームに撃たれながら勝利は胸焼けしたようにうずくまり、美子は新婚時代を思い出しているのか瞳をキラキラと輝かせつつも、時計に目を遣って声を掛けた。そろそろ式の始まりが近づいているのだ。
 
「さぁさ、誓いの言葉は後でしっかりやりなさい」
「あ、すみませんお母さん」
「まあ…うふふ。今日で本当にコンラートさんのママにもなれるのね!」

 美子は母親らしく窘めたものの、コンラートに《お母さん》と呼ばれると笑み崩れてしまう。

「俺は絶対にあんたを《お兄ちゃん》なんて呼んだりはしないからなっ!」
「ええ、それはもう…妻の兄上なのですから、俺の方から呼びますよ…」

 勝利は相変わらず半泣きでコンラートへと指を突きつけるものの、あっさり返り討ちにあってしまう。


「お兄ちゃん…

「妙に佳い声で呼ぶなぁぁぁああ……っ!」


 勝利の絶叫は、控え室の中に殷々ととどろき渡った。



*  *  * 




 三三九度を取り交わし、ぽっと頬を上気させた有利は瞳を潤ませて誓いの言葉を交わした。
 《永遠の愛》…それは大抵の夫婦が結婚する際に力強く誓うものの、継続することこそが至難の業と言われている。

『ずっとずっと…護りたいよ』

 焦がれ続けてきたこの人を裏切るなんて、そんな勿体ないことなんて出来はしないし、コンラートはそんな不誠実な男ではない。…ということは、二人の愛はどうしたって永遠のものとなるだろう。

 バツイチ(ないし、ニ、サン)の方々に鼻で嗤われようとも、お目出度いくらいに信じていこう。

「コンラッド…俺、幸せだよぉ…っ!」
「俺が今、どんなに幸せか全部伝えられたら良いのにな」
「ハイ、新婦さんお時間ですよ〜」

 手と手を取り合って見つめ合う二人だったが、結婚式というのは意外と忙しい。特に有利はお色直しをたくさん予定しているので、式場の担当者にテキパキと連れ去られてしまう。



*  *  * 




「まあ…本当に綺麗なお肌!やっぱり若いって良いわねぇ…っ!胸はちょっとちっちゃいけど…でも大丈夫よ?二十歳を過ぎたら吃驚するくらい大きくなるから!あの綺麗な旦那様がたっぷり揉んでくれるでしょうしね」

 四十がらみの気の良いメイクさんは、有利の肌の瑞々しさやほっそりとした体つきに感嘆しつつも、きっちりとボディスーツを身につけているせいか性別には気付いていないらしい。喜んで良いのか哀しんで良いのか微妙なところではあるが…。

 白無垢の後に色打ち掛けも着て、今度はいよいよウェディングドレスである。滑らかなシルクをふんだんに使い、細かなレースとたっぷりとしたドレープを棚引かせた真珠色のドレスを着ると、やはり胸元が寂しいのでたくさん詰め物をされた。

『胸…も、揉んだりするのかな?』

 この2年半というもの、奥手の有利だってやっぱり好奇心を覚えて、ネットや色んな媒体からなんとなくは男同士の《夫婦生活》というものがどんなものなのかは知っている。
 詰め物のおかげで少し豊かになったかに見える胸元へと両手を添えると、メイクさんは励ますように背中をポンっと叩いてくれた。

「あんまり心配しすぎないのよ?優しそうな旦那様だもの、きっと胸なんかちっちゃくたって可愛がってくれるわよ〜っ!」
「は…はあ…」

 本当に喜んでくれるだろうか?
 胸なんか無いのは重々知っているはずだし…。

『大丈夫だと良いなぁ…』

 化粧もドレス用に整えてから会場に戻ると、《おお…っ!》というどよめきが起こった。



*  *  * 




『綺麗だ…』

 白無垢や色打ち掛けの時にも愛らしかったけれども、白塗りだった顔がナチュラルメイクになると、はにかむような素の表情が露わになって素晴らしく可愛らしい。

『生きていて良かった…!』

 コンラートが胸をふるわせていると、こちらに気付いた有利の方でも《はう!》と息を呑んでブーケを抱き寄せている。

「ユーリ…とっても素敵だよ?」
「あんたこそ…!めっちゃ格好良い…。あーあ…良いなぁ!俺もそういうの着たかったーっ!」

 有利はちょっぴり悔しそうに唇を尖らせている。本来は男前な性格をしている彼のことだから、幾ら魅惑的な花嫁さんになっていても、やはり花婿衣装の方に憧れるらしい。

「後で、二人きりの時にタキシードも着てみて?」
「良いの?」
「勿論。だって、俺は男の子のユーリと結婚したいんだからね」
「コンラッド…!」

 胸元に花嫁さんが飛び込んできたら、花婿さんがする正しい行動はなんだろう?

「ん…っ」

 この良き日を迎え、とうとう理性が決壊寸前となったコンラートは、華奢なお嫁さんを抱きかかえるようにして熱烈なキスをお見舞いした。

「まあ…」
「うふふ…コンラートったら、せっかちさんね!」

 バシャ…!
 パシャ…っ!

 なし崩しに誓いのキスを始めてしまった新郎新婦に向かって、眩いフラッシュが焚かれる。

「皆様、シャッターチャンスですわよ…っ!」
「やぁん、熱烈ねコンラートさんっ!」
「コンラート!ちょっとキスの時間が長すぎるのではないか!?ユーリの頬が真っ赤ではないか!限度を考えろ貴様…っ!!」
「うちのゆーちゃんを窒息死させる気かぁああ…っ!!」

 笑い声と怒号と花の薫りに包まれながら、二人は幸せな結婚式を迎えたのであった。

 初々しくも熱々な新郎新婦に、幸いあれ!

 


おしまい






あとがき



 イチャイチャらぶらぶのパラレルコンユ、如何でしたでしょうか? 
 何の困難も障壁も断崖絶壁もないという、たぬき缶ではある種珍しいシリーズでありました。

 本当は、コンラッドがツェリ様に気を使って男の子と婚約させられたと思い込んだグウェンに邪魔されるというお話も考えてたんですけどね、こんなに有利が乙女オトメしている話って珍しいので、「ああ、このゆーちゃんを故意に泣かせるような奴は許せないわ〜っ!」と思ってしまったんですよ〜。

 ちまちまとしたお題シリーズ等で、今後も登場させて頂ければ幸いです。