「そう…でもね、ユーリ。そういうことなら俺は少し困ってしまうな」

「え?困るの?」

「ええ、ユーリがたくさん赤ちゃんを産んだら、ユーリはその度にお腹が大きくなってしまうから俺と一緒に遊べなくなってしまう…俺は、他の仲間の誰よりもユーリと遊びたいから、赤ちゃんはいなくても寂しくないんですよ」

「そーなの?」

「ええ、ですからユーリもこの服は洗って母に返してしまいましょう?とても可愛いですが、遊ぶのにこの服は不向きですからね」

「そっかぁ…良かった!コンラッドのためだから我慢しなくちゃって思ったんだけど、足が凄く痛くて泣きそうだったんだ!」

 ユーリが早速靴下を脱いでしまうと、可哀想に…踵も指先も真っ赤に染まっていて、所々皮が剥がれています。きっとお風呂に入ったりしたら酷く染みることでしょう。  

「こんなになるまで我慢して…可哀想に……」

 痛々しい様子に茶うさぎの耳が垂れてしまいます。

「もう平気だよ!」

 心配を掛けまいと、黒うさぎは一際高くぴょーんと跳ね飛びます。

 白いエプロンと紺色のスカートがひらりと翻り、月明かりの中で黒うさぎはたいそう愛らしい様子でした。

 ですが、黒うさぎが痛かったり苦しかったりするのには、茶うさぎは到底耐えられないと思うのです。

 ですから、やっぱり黒うさぎはいつもの格好が一番だと思うのです。

「明日になったら、いつものシャツとズボンを着て俺と遊びましょうね」

「うん、いっぱいいっぱい遊ぼうね!」

 どうやら黒うさぎはもう、赤ちゃんのことは気にしていないようです。

 茶うさぎは大切な宝物である黒うさぎを両手で抱え上げると、二人の家に向かって歩き始めました。    



 お月様が微笑みかけるように優しい光で照らす道を、二人は家路につきます。

 こうして二人でいられることを、お互いに《なんて幸せなんだろう》と感謝しながら…。



  
おしまい








あとがき

 さて、如何でしたでしょうか?
 『やっぱりユーリのエプロンドレスは良いデスのぅ』という主張のためだけに書いた話でしたが、個人的には『うさぎ家族集結の図』が気に入っております。

 次のシリーズは『黒うさぎ故郷に帰る』と題しまして、ぼちぼちアップして参ります。