第2部 第38話






 ギルビット商業港には、往年の賑わいが戻ろうとしていた。

 《地の果て》開放実験による海底地形の変動は、《風の終わり》昇華時に大地への呼びかけも行われたことから相殺されていたし、ミッシナイのヒスクライフを初めとする商人達が挙(こぞ)って工人や資材を投入してくれたことから、ルッテンベルク軍が帰還してくる頃にはすっかり国際港としての面目を取り戻していた。
 眞魔国の軍艦だけでなく、様々な国々の大型船舶が同時に就航していることからも、その変化は一目で見て取れる。

 街の賑わいも、以前の比ではなかった。

 《歌謡祭》の時には参入した商人達の出店で賑わっていた街にも、今では工事途中とはいえ地元民常設の店舗が建ち、店先に並べられた商品は近海で水揚げされた魚介類は勿論のこと、様々な国々から珍しい商品も小売りで並んでいる。問屋として大型商人の間を取り持つだけではなく、カロリアに住む人々が嗜好品・希少品に手を出せるくらい経済状態が改善されている証拠だ。

 そういった変化が最初に感じられるのは、女性達の装いであろう。
 ことに、ルッテンベルク軍が戻ってくる直前くらいから綺麗な宝飾品が飛ぶように売れたそうで、行き交う女達は少々派手目に髪を結い上げたり、潮風や日焼けにも負けずに化粧も施している。

「いやぁ…随分と雰囲気が変わったなぁ!」
「そーう?」

 カールの手を引いたアリアズナは、ぷらぷらと港町を散策している。カロリアにはいると宿営地で平服に着替え、ぷらぷらとそぞろ歩きをしながら海岸を目指しているのは、平原育ちだというカールが《うみってどんなとこ?》と盛んに聞いてきたからだ。

『青くてでかくてしょっぱくい水の溜まったとこだ』

 と説明したのだが、どうにも理解できない様子だった。
 こういったことは、何回言葉で説明するよりも実物を見た方が早い。海岸に連れ出したカールが目を輝かせて駆けていくのを見ると、改めてそう実感した。

「うみ…うみーっ!?」

 何度も《うみ》と叫んでぴょんぴょん跳ね、振り返ってはアリアズナに確認を求めるカールに、少々面倒くさそうにしつつも、アリアズナは苦笑しながら何度も《そうだよ》と返してやった。その様子は、端から見ると実に優しい父のそれであった。

 おかげで、声を掛けてくる女性は大概年寄りか子連ればかりであった…。

「あのむこうに、アリアリさんの国があるの?」
「そうだよ」
「いいとこ?」
「そりゃあ…なあ」

 眞魔国という国全てが《良い》かと聞かれれば、差別や矛盾を幾つも抱えたそこを、一概に《良いとこ》とは言いにくかった。王太子やコンラートのおかげで、混血にとっては生きやすい国に変わっていけるのだとしても、人間の子であるカールにとってはやはり暮らしにくかろう。

「なぁ、カール…」

 ひとしきり海で遊ばせたら、孤児院を探してカールを頼んでこよう。アリアズナが所持している金…いや、少し借りてでも多めに金を積んでおけば、独り立ち出来るようになるまでは面倒を見て貰えるだろうか。

『人間は、人間の中で暮らした方が良い…』

 きっとそうだと自分に言い聞かせながら、アリアズナは砂浜ではしゃぐカールを眺めた。その内、近隣の子ども達も集まってきて、一緒になって遊んでくれた。

『このまま、カロリアの子になるんだ』

 それが一番良いことだと思っているのに、どうしてだろうか…目元には熱いものが滲んでしまう。思いのほか情が深い性質らしいアリアズナは、旅の中で面倒を見続けたせいですっかりカールの存在に馴染んでいたらしい。別れを予感して、泣けてきてしまうくらいに。

『こいつは…俺の勝手な感傷だ』

 犬猫を飼うみたいに、一時の感傷でカールの人生を台無しにしてはいけない。そう思って目元を手の甲で擦っていたら、急に声を掛けられてぎょっとする。

「アリアリさん…っ!どうしたの…っ!?」
「カール…」

 上機嫌で遊んでいた筈のカールが顔色を変えて、アリアズナのシャツを掴んでいる。どうやら、遠目にもアリアズナが泣きそうになっていたのが見えてしまったらしい。《大の大人が…》と、頬が染まった。

「なんでもねぇよ…ちょっと、目に潮風が染みただけだ」
「うそ」

 どうでも良いことはさらっと信じるくせに、どうしてか、この子は人の気持ちに関することでは誤魔化されない観察眼の持ち主だった。

「ちがうよ〜…アリアリさんは、なんかかくしてる」
「……別に、そんなんじゃねぇよ…」
「ほんとのこと言って!」
「………」

 憮然としてしゃがみ込むと、目の前にカールのまん丸な目がある。旅の間に少しだけふっくらしてきた頬の上で、その目はまっすぐにアリアズナを見つめていた。吸い込まれそうに青い、春の空みたいな色合いが、アリアズナは気に入っていた。

「…カール、お前…ここで人間と一緒に暮らしな」
「ヤダ」
「ヤダってお前…。俺と一緒に来たって、良いことなんかないぞ?」
「いいことはあるよー。さがしたら、いっぱいあるもんだよ?」
「探したら…か」
「そうだよ。アリアリさんもいってたじゃん。せいいっぱい生きるってことがだいじなんだって。せいいっぱい生きるってことは、生きてることをたのしむってことだろ?たのしいことは、だれかにもらうもんじゃなくて、自分でさがしたり、だれかにあげようとするときに見つかるもんだって、母ちゃんは言ってたよ?」
「至言だねぇ…お前、アホみたいな顔してそういうことはよく覚えてるもんだ」
「アホじゃないもーん」
「うん…」

 《そうだな…》と呟いて、アリアズナは頷いた。
 《アホ》はアリアズナの方なのかも知れない。そう確信したのは、後の遣り取りによってだった。

「カール…お前、俺といたいのか?」
「うん」
「俺は魔族だ。混血だから魔力はないが、寿命はお前よりも遙かに長いんだぞ?」
「それがどうしたよー。せいいっぱい生きるのに、長さなんかかんけいないじゃん」

 まさに、至言。
 目元が急に晴れ渡るような心地を感じて、アリアズナは息を呑んだ。

「そう…だな…」

 アリアズナは夏の潮風を胸一杯に吸い込むと、すっきりした顔をしてカールを肩に抱え上げた。

「俺と生きるか?カール」
「うんっ!アリアリさんと生きた〜いっ!」

 カールのちいさな拳が天空に突き上げられて、ぶんぶんと力強く振り回される。
 
『こうやって、魔族と人間ってのは繋がっていくのかもしれねぇな…』

 禁じられていようが、幸せになれそうかどうか分からなかろうが、人間の女達は魔族の男と結ばれる道を選んだ。アリアズナの母もまた、そうだった…。案の定苦難に晒された女達を、不幸と決めつけることは不遜に過ぎるだろう。

『俺だって、こうして生きてら…』

 生まれてきたことは…産んで貰えたことは、絶対に有り難いことであった。
 こうして今、《幸せだ》と感じることが出来るのだから。

 だったら凸凹コンビの妙な《親子》だって、幸せを感じる事も出来るだろう。

『しょーがねぇ…やってくかぁ……』

 見上げた空には、むくむくとした真っ白な雲が膨らんでいた。
 地上に息づく者のちいさな気付きを、おおらかな心で祝福するように…。



*  *  * 




 出航の時が来た。

 眞魔国の大船団には続々と兵や物資が載せられ、カロリアの民や交流のある商人達が港を賑やかに飾っている。人々の手には巻かれた紙テープや紙吹雪の袋が握られ、表情には寂しさと共に、どこか沸き立つような歓喜もある。彼らはこれが今生の別れではないことを知っているのだ。気持ちよく泣いて別れて、また会えた時歓喜に躍り上がることが出来る…その事を知っているからこそ、今は晴れやかな表情を浮かべることが出来る。

『そうよ…また、会えるわ』

 フリンはそう思いながら、また香りの気に入っている華を髪に挿した。
 何度か髪に挿していたせいか、華好きの侍女リタが教えてくれた名は《ミラ》。花言葉は…少々複雑な心境にさせられる、《切ない片思い》だった。

『有名な花言葉なの?』

 と、ついつい強い語調で確かめてしまったが、《見た目が地味な花だから、大抵の人は知らないでしょう》とのことだった。

『だったら良いけど…』 

 でも、博識なエリオルなら知っているのではないかと疑われて、挿した華を外しかけ…《馬鹿馬鹿しい》と手を止める。知っていたから何だと言うこともない。フリンは別に、エリオルに愛の告白をしたわけでもないのだから。

 殊更毅然と背筋を伸ばし、決然とした足取りで靴音を響かせれば、何だか自分がとても頑なな女であるように感じてしまう。

『…知ってるけどね!』

 ふん…っと荒々しく鼻息を噴きだしながらフリンが歩いていくと、こんな時に限ってエリオルと出くわしてしまう。

「お別れの挨拶に参りました。本当にお世話になりました」
「…こちらこそ、大変お世話になりました」

 淑女の礼をとって会釈すると、今日に限って身に纏ったドレスがふわりと裾を翻す。頑なであったはずのフリンも、最後の瞬間くらいは女らしさを滲ませたいと、無意識に思っていたのだろうか?

「あなたには、幾らお礼を申し上げても言い尽くすことは出来ません」
「私もです。あなたとお会いできたことで、初めて種族を越えて分かり合える可能性を信じる事が出来ました」

 ああ…こんな事が言いたいのではないのだ。
 通りの良い社交的な会話など、既に何度も交わしているのではないか。

 では、一体何を話したいのかと自問自答すれば、明確な言葉は浮かんでこない。

「………」
「……………」

 ふ…と、言葉が止まり…二人して同じように黙り込んでしまう。
 何かを言いたいのに口に出来ない時、人は言葉の無力を思い知るのかも知れない。

「…っ…」

 喘ぐようにして、エリオルが漸くのこと口を開いた。

「私は、ヴォルテール領に戻ります」
「ええ…存じておりますわ」
「そして…また、カロリアを訪れても良いでしょうか?」
「ええ…お待ちしておりますわ」

 しぃん…と静寂が訪れた。
 《な…なにっ!?》…妙に雰囲気に、無表情を装いつつもフリンが内心慌てふためいていると、意を決したようにエリオルが言葉を紡いだ。


「故郷で様々な物事を片づけたら、カロリアで…《暮らして》も良いでしょうか?」


「……っ!」

 漸く、意図が通じた。
 精一杯の告白であったらしいエリオルは見る間に頬を真っ赤に染め、隻眼によって大人びていたはずの顔が、フリンよりも遙かに年下に見えてしまう。

『全く、もう…』

 にやけてしまいそうな頬を必死で矯正しながら、フリンは精一杯威厳を込めて囁きかけた。ちょっぴり、語尾に甘さを含ませて…。

「お住まいになるのでしたら、この館をお使いになると良いですわ。空き部屋は、たくさんあるから…」
「ありがとうございます」

 まだ愛を告白したわけではない。
 多分…それは、エリオルの更なる成長と、フリンの踏ん切りを待たねばならないだろう。

 けれど確かに交わされた約束に、二人の足取りはふわふわと雲の上を歩くように軽やかなものとなった。



*  *  * 




 ヒュン…っ!
 ヒュヒュン…!!

 紙テープが幾重にも船縁に投げられる。子ども達の投げたものは船縁には到達できずに海面へと叩きつけられたが、それでも伸びた直線は色取り取りの模様を刻んで、別れのシーンを彩っていく。

「さよなら…!」
「ありがとう……っ!!」

 今なら心から、精一杯の声を張り上げて言える言葉も、ついこないだまでは欠片ほども湧いてこないものだった。彼らの胸を浸していたのは得体の知れない《異邦人》への警戒であり、何が起こるのかという漠然たる不安であった。

 それがどうだろう?
 いまでは愛おしい《友人》を別れがたい思いで見送っている。

 多くの奇跡を起こしてくれた有利を代表とする、《魔族》という種族全体への親愛の情もだが、彼らの多くは魔族と直接の交流を持ち、個々に深い友情を感じていた。

 ある者は破損した住居の修繕をしてもらい、ある者は親しく声を掛け合う中で、互いの中にある暖かな心を感じていた。

 勿論、カロリアの民全てが魔族への愛に満ちていたわけではないけれど、少なくとも表だって敵視するような風潮は消え失せていた。

 ほんの僅かな例外を除いては。

『双黒の王太子…なんという男なのだ……っ!』

 独房の中で、壁に頭部を打ち付けている男がいる。
 名は、ジーンスナー・レイン…有利を暗殺しかけた男である。

 彼は先日、スヴェレラからルッテンベルク軍と共に訊ねてきた家族から、《王太子殿下に心を込めて謝れ》と叱責の言葉を受けていた。
 最初は、家族が拷問でも受けて考えを変えさせられたのかと思った。
 次いで、洗脳か何か、おぞましい手法によって呪われた考えを刷り込まれたのかと思った。

 けれど…どれほどジーンスナーが否定しようとしても、家族は毎日訪れては粘り強く説得しようとするのである。

『急に変われないのは分かってるわ』
『私達だって、そうだった…』
『だけど、父さんならきっと分かってくれる…私達、信じてるから』

 そう語る妻や娘達の表情には、教会への信仰では得られなかった輝きがあった。
 誰かを殺めたり、傷つけたりすることではなく、会話によって分かり合う事が出来るだなんて、信じてしまったら…そこで、ジーンスナーは恐るべき心理状態に陥る気がした。

『認めるものか…っ!』

 ゴッ…っ!

 鈍い音を立てて一際強く壁にぶつけた額から、たらたらと熱い血液が滴っていく。
 痛みに気付いて動きが止まると、次第にじんじんとした痛みが強まっていく。

『痛い…』

 王太子も、痛かったのだろうか…?

「……っ!」

 咄嗟に浮かんだ考えに、恐怖した。
 なんと言うことだ…なんと言うことだ!
 いけない、双黒の魔族が…呪われた少年を殺めようとしたことが、傷つけたことが…《悪いこと》だったなんて認めたら、心が壊れてしまう。

『いやだ…嫌だ厭だイヤだ…っ!』

 額の傷を爪で掻きむしりながら、ジーンスナーは地べたを這いずるようにして苦鳴した。気が付いたら涙が溢れ出して、血と混じりながら視界を染めていく。

 脳裏には、鮮やかな紅い髪をした魔族の言葉が蘇る。

『初めて自分自身の目で見、耳で聞くことで、知りなさい。あなたが犯した罪の重さを。あなたが…傷つけてはならない者に対して罪を為したことを、心から後悔する日が必ず来る』

 《反省など誰がするものか…っ!》
 頑なにそう叫び続けるものの、じわじわと浸食するようにして襲撃の場面が蘇ってくる。

 悪魔の手先として認識していた時には、禍々しいとしか感じられなかったあの少年に矢を射掛けた。けれど…彼の肉体からは人間と全く変わりのない赤い血が噴き上げ、華奢な体躯はくたりと力を失っていた。
 しかも捕まったジーンスナーは極めて理性的な裁きを受けて、独房に捕まっている。

『あの子は、呪われた悪魔などではなかったのか?』

 怖い怖い怖い…っ!
 そんなことを認めたら、生きてなんかいけない。 

「おい、大丈夫か!?」
「放っておいてくれ…っ!」

 物音に気付いて駆けてきた衛兵が声を掛けるが、荒々しく叫んで地べたを転がり続けるジーンスナーに驚いたような眼差しを送った。

「…あんた、自分のやったこと…考え始めちゃったのかい?」
「違う…っ!」

 悲鳴じみた叫びは、返ってそれが事実を言い当てていると教えてしまった。
 衛兵は暫く何も言わなかったが、その場を立ち去ることもやはりなく、静かにジーンスナーの息が収まるのを待っていた。

「……何のつもりだ?」

 沈黙に耐えきれなかったのは、ジーンスナーの方だった。叩きつけるように意を問うと、衛兵は《別に》と呟いて、また待ち続ける。そして…またジーンスナーが焦れ始めた頃、急に訥々と喋り始めた。

「俺な…2年前まで、小シマロンに徴兵されてたんだ」

 《それがどうした》とも思ったが、想定していたような説得の言葉ではなかったせいか、また、他人との会話にも飢えていたせいか(自ら拒んでいたのではあるが)、ジーンスナーは静かに衛兵の言葉を待った。

「そこで、俺は…俺達の部隊は、ある村を全滅させた」
「…っ!」
「女も子どもも年寄りも関係なく、みんな殺した。《命令なんだから仕方ない》《軍人なんだから仕方ない》そう思おうとしたけどさ…正直、今になっても…そう思おうと思うほど、しんどいんだ。今でも、夢に見るよ…《子どもだけは殺さないでくれ》としがみついてきた女を、剣で切った感触を。返す刃で、子どもを貫いた感触を…。生きて、カロリアで待っててくれた連れ合いを抱きしめるたびに、いつだって胸が疼く。何度も死にたくなった。でも…死ぬのは怖かった」
「………」

 なんのつもりなのか、衛兵は淡々と自分の話を続ける。軍人として命令に従っていた時、どんな凶行に及んでいたのかを語った後、ぽつりとこう漏らしたのだった。

「あんたは、良いなぁ…。殺さずに済んだんだもんな」
「……っ…」
「生きてるその人に、謝れるんだもんな…」

 《俺はさ…謝れないんだ。死んだって、その人達のとこには…行けそうにないもんな……》衛兵は、独り言のように呟く。

 ジーンスナーは何を言うことも出来なかった。
 ただ…もう、頭ごなしに拒絶できなくなったことを自覚しながら、しゃがみ込んでいた。

「じゃあな…」

 《ああしろ》《こうしろ》と、促すようなことは何も言わないまま、衛兵はその場を立ち去った。
 一方的な懺悔…ただ、それだけの筈だった。

 けれど…ジーンスナーは衛兵に辛い告白をさせた人物が、誰であるのか分かってしまった。

『双黒の、王太子…』

 彼がそうしろと言ったわけではないだろう。
 直接面識があるとは思えない衛兵をさえ突き動かしてしまう、双黒の王太子…。

 ああ、彼は…彼は…。

『認めるしかないのか…っ!』

 《傷つけてはならない者》…それは、恐るべき復讐をしてくるからではなかった。
 傷つけることで、多くの者を哀しませてしまう存在だったのだ。

 そう理解した瞬間、頑なだった心の障壁が溶けてしまった。

『私は…私は……っ!』

 涙が頬を濡らしていく。今までの涙とは質を異にする涙が…贖罪の意味を込めて、流れていく。

 とうとう認めてしまったことが、ジーンスナーを泣かせていた。


 謝りたい。


 初めてそう感じた時、地獄の中を彷徨っていた心が…光を浴びるのを感じながら。





第二部 了





中休み

 大陸編でのお話が収束致しました。
 螺旋円舞曲に比べると何やらあっさりと人々が改心しているような気もしますが…あちらは三つの箱が不完全燃焼してから十年後(今の眞魔国は4001年、螺旋円舞曲は4011年ってことになってます。確か)なので、人々の心の腐敗ぶりと追い込まれ具合が相当違うせい…ということにしておいて下さい。

 十年前と言えば、ギリギリで螺旋円舞曲に出てきたカールは意思疎通の出来る年か…!?と思って、アリアズナ絡みで「人間と魔族」という第二部のテーマに絡めてみました。ついでに、同作では不遇の人だったリタ(レオ次男の子を身籠もったと疑われた人)もフリンの侍女として登場しています。孤児になっていないので、普通にメイドさんしています。
 そして、螺旋円舞曲では名前も出ずに《地の果て》の鍵として使われ、死亡していたエリオルがすっかりフリンさんと初々しいカップルぶりを見せております。まだ告白していないけれど、ここまで来たら「そう言えば結婚してたみたい」と後日談でサラッと流せそう。

 多くの人にとってはかなりどうでも良さそうな小ネタではありますが、ちょこっと思い出して差違に思いを馳せていただけると嬉しいです。

 しばらくは3周年記念のお話を書いて、完了したところでまた戻ってこようと思います。やっとのことで眞魔国に戻って来るコンユが、ヴォルフラムを初めとする貴族連中と宮廷劇を繰り広げます。ちょっと学園青春モノっぽくなるようなならないような…。

 ゲーゲンヒューバーは大陸で何とかしようとしたのですが、上手く填らなかったので聖砂国に持ち越しです。これもまた忘れそうな気がしますが…流石にニコラちゃんが可哀想なので、忘れずに何とかしようと思います。

 ではでは、今暫く続きをお待ち下さい。